衝動的なものですのでぴたりと更新が止まることもあると思いますがトロトロと書いていこうと思います。
我々日本国民には知る権利が保証されている。
芸能人のゴシップから国の昔の秘密まで、知ろうと思って請求する事で情報は見ること聞くことが出来る。
優しい世界だ、とはいかない。
知られる側にはプライバシーの権利が発生する。
政治・経済・倫理の時間の政治分野で勉強することだが、諸々の説明を省く。
基本はプライバシーの権利が優先され、知る権利は大抵志半ばで消滅する事となる。
だが、知る側としては何としても知りたい物がある場合の救済として人の秘密の場合は興信所が存在する。
某掲示板スレッドの復讐板の住人やスレッドのまとめを見た者はよく聞く施設だろう。
社会では人の秘密を他人に探らせることが出来る仕組みが設置されている。
では社会の準備段階である学校ではどうだろうか。
基本は人の噂がその代わりだ。
尾びれ背びれの付いた話が真偽を問わず、小分けされた閉鎖的空間で飛び交う。噂の矛先は無条件で臓器くじのように誰にでも向き、アフターケアもないのでよりタチが悪い。
神山高校にはこのような部が密かに設立されている。
探究部
人の営みを探究し、人の成り立ち 存在する意味を思考する部活として成り立った。
有難いことに私はその部活に席を置いている。
同時に神山高校で新たに都市伝説が生まれた。
人のありとあらゆる秘密を知ることの出来る場所がある。
しかしてその秘密を人の不幸に使ってはならない。
使えば 百鬼か韋駄天か亡霊か 正体不明が罰する。
知るな。見るな。聞こえるな。
そんな噂の人外は理科準備室の隣の空き教室を根城にしている。
迷惑な事に私の部室だ。
☆
「敦也よ。今日も来たぞ!」
「部室を堂々と自由に出入りできる身分なのは部員だけなんですが?」
「普段敦也が何をしているのか、という秘密を貰う為だ!」
「会話になっていませんよ。」
バタンと勢いよく扉が開き、大きく響く声が室内に響き渡る。
「今日ここに来た目的はそれだぞ?
そして、敦也とも話がしたいのがあるがな。」
「...分かりましたよ。報酬としてクリームパンを後で請求しておくので忘れずに。」
部屋の主である黒の混じった白髪のサングラス男、瀬文敦也の友人の1人である天馬 司
変人扱いを受けている人間の1人でもある。
「しかし、これで何回目ですかね。君が私の部室に駆け込んでくるのは。」
「さぁな。5回を超えた辺りから数えるのは辞めた。」
「5回を超えた辺りで観念してもらいたかった所です。」
「面と向かって会えるのはこの場位だからな。」
「もう茶も菓子も出しませんよ。」
「それでいい。」
バイプ椅子に腰掛けた人間は部屋をぐるりと1周見渡して、敦也の行動を探そうとしている。
「...司。ゲームをしましょう。」
「ゲーム?ポーカーか?」
「正解です。何度も押しかけているだけあって察しが早いですね。」
「敦也とのゲームは合計で38回目で、全て負けている...」
「なんで来訪回数を覚えていないで勝敗だけ細かな回数覚えているんですかね」
敦也の
「今日こそ勝ってみせる!」
「本日の私発言権奪われてます?」
そんな些細なやり取りをしながらも、敦也は束になって置いてある未開封のトランプを準備した。
「毎度思うが、必ず1度も空いていないカードを使うんだな。」
「1度ここに来た人にイカサマを疑われまして、それ以来私が言い逃れ出来ないよう買いだめて置いてます。」
「そうか。」
周りに見せている振る舞いは一切無くなり、ただこの場のカードに集中している。
セキュリティーシールを剥がし、中のトランプを司に確認させた。
「欠品は?」
「無いな。」
カードの束は双方確認され、手際よくシャッフルされていく。
カードは1枚を司の元へ。もう1枚を敦也の元へ。
手札を5枚揃え、カードの確認が始まる。
始まるのはインディアンポーカーでは無く、ごく普通の一般的なポーカー。
司の手札は
♠2 ♥2 ♠7 ♣4 ♣13
と初手の時点でワンペアのある状態だ。
「3枚交換だ。」
「私も3枚です。」
しかし、それでは勝てないと踏んだ司はカードの交換を切り出し、7 4 13を捨て、スリーカード、フォーカード、フルハウスを狙いに行った。
「では、」
「勝負!」
司の手札は2が3枚、5が2枚のフルハウスとなった。
対する敦也は、
7のフォーカードだ。
「ま、また負けた...ッ!」
内心勝てるかはギリギリではあった敦也。
最初の時点での敦也の手札は
役のないブタ。見事なまでに運が悪い配布札だった。
しかし、そこは幾度も挑まれた勝負人。見事に引いた札を揃え、役を完成させたのだった。
「...正味貴方との勝負が1番神経使いますよ。
何度も勝敗をつけている間柄ですし、こちらの癖やら何やらまで観察されて、まぁとにかくやりにくい。」
「フッ ...俺はスターとなる男だ!何度でもお前と戦うのさ!」
「この読めなさと諦めの悪さですよホントに」
負けたはずの司はすぐさま再戦の方向で次を考えている。敦也はふぅと息を吐き戦いの疲れを出した。
「結局、探究部で探究しているものは何なんだ?」
「色々ですよ。歴史に思想に宗教に、人が普段から身近にあるものが故に考えたことの無い事象まで。探究する物としては有り余っています。」
「1人でか?」
「ええ。面白いことに訪問者は次から次へと来ますから、退屈しませんよ。
知れましたか?私の部活動内容。」
「…まるで分からん!お前と一緒に探究した方が分かるかもしれん。」
胸を張って言うことではないと敦也は思うが、ここで1つ閃いた。
「なら...1つ一緒に考えてみます?」
「いいぞ!敦也と何がするのは久々だからな。」
司は自身の友と行う探究に胸を踊らせた。
「そうですね。
...スワンプマンという思考実験にしましょう。」
紙とペンを机に置いた敦也は司に問題を出すことにした。
「スワンプマン?…聞いた事がないな。」
敦也はさらさらと人と穴と雷の絵を紙に描いていく。
「男がハイキングの途中で雷にうたれて亡くなります。
この時に近場の沼と雷が化学反応を起こして
沼の泥から死んだ男と全く同じ見た目で、同じ記憶をもつ存在が生まれます。
これをスワンプマンと呼ぶ事にしましょう。」
「...中々ぶっとんだ話だな。」
「思考実験なんてそんなものです。
...話を続けますよ。」
敦也の話は続く。
スワンプマンは脳や心の状態も死んだ男と変わらずに生まれ、記憶や知識、感性も全く同じ生物。
趣味嗜好や癖、体質まで、スワンプマンと死んだ男と違うところは何一つない。
スワンプマンは死んだ男と同じ自我と記憶を持っているため、「自分は雷にあたったが奇跡的に生きていた」と認識している。
死んだ男とスワンプマンが入れ替わって生活していても周囲にもバレず、スワンプマンすらも自分が泥から生まれたことに気が付いていない。
スワンプマンと男の違いは何一つ無いため、誰も気が付かず、スワンプマンも周囲の人も、誰も困ることはない。
「...ここで司君に質問です。」
「この場合スワンプマンは死んだ男と同一人物と言えるのでしょうか?」
「うーむ...なかなか難しい質問だな...」
「初めに私も聞かれた時は頭を悩ませましたよ。
答えの導き方は人それぞれ千差万別です。」
敦也は自身の手元に置いた清涼飲料水のキャップを開けて、少し飲んだ。
「...俺は男と泥人間は同一ではないと言いたい。」
「探究において最も重要なのは答えを導いた道筋...理由が大切です。聞かせて頂きます。」
敦也は元々座っていたパイプ椅子に、より更に深く座って司の考えを待った。
「仮に男が俺A。雷に打たれて出来た泥男を俺Bとする。
俺自身の人生がその雷によって奪われたとしても、
天馬 司という男の人生を歩むのは雷に撃たれる前のAの俺ではない雷に撃たれて生成されたBの俺だ。」
「そうですね。」
「その時点で、元々の俺であるAは居なくなったのだろう?ならば、全てが同一であろうともBの泥男が同一とは考えない。」
あくまでも自分の人生における天馬 司 というAは、全てが同一の存在のBにも変えられない存在だというのがこの男の考えであった。
「...成程。」
「ただ、俺は居なくなり泥から出た俺はが自覚が無くとも、天馬司としての人生を歩むのならば、俺はそれを応援したい。」
「...貴重な考えをありがとうございます。」
「これも正解は無いだろ?」
「ええ。思考実験に答えはありません。今回のスワンプマン問題における考え方の焦点は自分と他人を分ける境界線です。」
この死んだ男を自身に投影した時、または自分ではない他の人間がそうなった時の投影が前提条件とする。
この時、何を主体に考えるかは大体3パターンに分かれる。
肉体を構成する物体の違い
心や意識の違い
時間の流れ
「肉体の違いで考えた場合、スワンプマンと打たれた男の肉体は脳から細胞が原子レベルで同一です。」
「構造上は全くの同一だから男とスワンプマンは同じ...という事か。」
「理解が早い。
次は心や意識の違いで考えた場合です。」
自分の意識はそこで一生失われたが、全く同じ意識を持った生物が次に生まれる。ではそこでの記憶は完全だろうか。
片方は打たれて死んだ認識をして生涯を終えている
もう片方はその時死ぬところだったという認識をしてその後を生きて行く。
この場合、男とスワンプマンには「死んだという認識」と「その後の意識や感覚」の有無に差がある。
「死んだ男とスワンプマンは認識の違いがあるから2人は同一ではない...」
「正解です。
もう1つは...ほかの2つ以上にややこしいので省きますが、まぁこんな答えが帰ってくると思っていましたが...」
「今ある自分が盤上から降りた時点でそれは同一ではないですか。良い考えを聞きましたよ。」
紙を片付け、ペンを机にしまった敦也は司の考えを尊重した。
「スターたる者考え方もスターでなければな!」
「その考えがスターであるかは関係ないと思いますが...このように何かの事に理由づけした結論を出す。これが探求部の活動内容です。」
「俺には性にあわないが...敦也と話ができる場だ。やはり良い部活だな!」
「内容云々よりも目的が私ですか...まぁ訪問者に飽きませんので良いですよ。」
そんな事を話していれば当然時間は過ぎ、昼休み終了のチャイムがなった。
「さ、授業に遅れますよ。」
「そうかもうそんなに時間が経ったのか。」
「遅れて責任転換で私まで類の実験台行きは嫌ですからね。」
「俺は歓迎するぞ!」
「何実験台行き確定させてるんですか。」
「この間類に敦也が実験に協力的だと話したら是非とも実験台にと言っていてだな...」
「はっ倒しますよ?」
本人の預かり知らぬ場所で司の友人の実験台が確定した敦也だった。
☆
瀬文 敦也という人間は、不思議な人間だ。
気づいた時には俺の近くにいて、俺と事あるごとに対話という名のトランプ勝負をする。
のらりくらりとしながらへにゃりと笑うアイツの真剣な顔が見れる俺にとって唯一の機会でもある。
俺はアイツを一度、ショーキャストとして誘った事がある。
面白そうだと乗ってくれるかと思ったが、やんわりと断られた。
「確かに私は貴方のショーの夢に興味があります。」
「でもせっかく盛り上がった場所を鎮めてしまっては元も子もありませんよ。」
その時のアイツは今みたいにサングラスじゃなく布で目を隠していて、話したこともわからなかったが、聞こえた声は、とても寂しそうな声だった。
「ええい!お前には何か叶えたい夢とか無いのか?」
「夢...夢ですか。」
まるで今まで考えたこともないと言わんばかりに呆けた声を上げ、少し悩んだ敦也は俺に
「生きる事。」
なんでもない日に笑える仲間と環境を過ごす事、ですかね。
へにゃりと物腰柔らかく笑う敦也の姿は今でも忘れない。
その言葉と姿は、どこかに消えてしまいそうなほど色の薄い煙。朝露のように溢れ出た透明な夢だった。
瀬文敦也という人間が、誰の夢を見届けるのかは解らない。だけど、アイツが見届けるのが俺の夢なのだとしたら、
俺はアイツを心の底から楽しませたいと思った。
瀬文 敦也(せぶみ あつや)
癖を見抜くカードゲーマー。
天馬 司(てんま つかさ)
皆さまご存知のスター。
アホほどどうでもいいけど私ことクソボケ作者は心と聞いて一番最初に思い浮かんだのゲームがキングダムハーツだったりします。
次は誰と対話する?
-
草薙寧々
-
鳳えむ
-
東雲彰人
-
青柳冬弥