百鬼夜行は音の夢を唱えるか   作:絞りカス

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杏ちゃんバナー走ってました。
3500位まで行って4000の称号もらいました

1月空く前に更新できました
多分自分書くの向いてないですヘタクソです
イベント話数的には3~5です


煙る縁(えにし)の先までも 中編

3.周り道の答案合わせ

 

「...全部話さなきゃ行けないわね。」

「まず、ココはセカイ...なのか?」

「いいえ。ココはセカイとは少し違うわ。」

司の問いに、IAは首を振る。

 

「あなた達はアツヤとリュウスケが繋いだ事でここに来れるようになったの。普通なら来ることは無い。」

どうにも煮え切らない少し外れた返答がIAからは返ってきた。

 

 

「...色々と聞きたいことがあるんだけれど、いいかい?」

 

司たちはIAに、問わなきゃいけないことがあった。

 

「ここはセカイでは無いと言ったね。

そうして、ここは夢に近いとも。」

 

類が、IAに向かって、一つ疑問を投げかける。

 

「コレは、敦也くんの夢なのかい?」

 

当然の事だが、類はいつになく真剣な視線でIAの方を見やる。

 

「半分は正解。」

「半分は...?」

 

IAの返答を類が反復するように呟く。

 

「ここは、この村に住んだ者たちの大小含めての思いによって形作られているの。」

「だけど、それだけじゃ足りない。」

 

IAは一呼吸ついて、意を決するように言葉を紡ぐ。

 

「...ここはね、あの子のセカイ。」

「...敦也か?」

「違う。」

 

司の答えにノータイムでIAは否定の返答をする。

 

「あの子はずっと、木と一緒に夢を見てるの。」

 

そう言ってIAは、木の前に立ち、ある物を取り出した。

「勾玉...?」

「この中には、あの子達の記憶が詰まっているの。」

「いわば、この勾玉はアツヤの想いの欠片。」

「アツヤはこれを切り離すことで、自分を保っていたわ。」

 

「切り離す...?」

「アツヤにとって、認めたくないものが詰まったもの。自分の後悔が詰まっている。」

 

司たちからはよく見えないが、手際良く勾玉に何かを行っている。

 

「アツヤはアソコにいる。」

そう言って、何かしらの準備のし終えた勾玉を手にIAは不自然に扉の付けられた木に向けて指を指す。

 

瞬間、奴空間が白黒に止まったかのような感覚を錯覚する。

えむだけはこの感覚に見覚えがあった。

その感覚は、いつだったか敦也の本心に手を触れかけた時のこと。

そうして、木の幹にジャラジャラと鎖が伸びていく。

木を一周囲むように巻かれた鎖は、ガシャン!と音を立てて錠前がかかった。

錠前は様々な色をしている。

金に近い黄色、薄い紫、薄く白みがかった黄緑、そして、桃色。

それらの錠前の色は、図らずか彼らの与えられた勾玉の色と、一致していた。

 

「...アタシ、これ知ってる。」

「あつや君に聞いた時に、出てきたやつと一緒の」

 

「この錠前は、貴方達にしか開けない。」

 

えむが自らの既視感を言葉にすると、IAは静かに語り出す。

 

「これは、アツヤが貴方達に用意した心の壁。」

「来て欲しい、だけど知られたくない。」

 

「矛盾したアツヤの想いが形になったもの。」

錠前は、敦也のどうしようもない矛盾で作られた彼ら来訪者に対しての壁。

 

「...どうすれば、開けるの?」

寧々が、作られてしまった錠前の開け方を聴く。

「本来は開けられない。」

 

「でも、ここまで来たってことは、貴方達は、見る覚悟があるのね。」

 

 

「だから、私がいる。」

えへん、と少し誇らしげに胸を張るIA。

 

「私が認めれば、錠前に対応する鍵は現れる。」

「ちょっと強引な手段なんだけれども、私もアツヤをそのままにはしておけない。」

「だから、これを知って欲しい。」

 

そう言い終えた所で、不意に自分達の持っていたあるものが光り始める。

それは、自分たちが敦也から貰った勾玉。

 

「万一の為にアツヤは貴方達にソレを渡した。」

「それは、貴方達の4つと私の1つ 合わせてひとつの記憶になる。」

「鍵は、アツヤとのつながり。」

 

「だから、この記憶を見て。」

 

光っていた各々の勾玉が更に光り輝く。

 

「大丈夫。私が責任もって、伝えるから。」

 

眩い光が大きく視界を覆う前に、IAは最後に誰かに対して、そう言ったのだった。

 

 

 

 

 4.クソガキ達の最悪な一日

 

 その日もなんてことの無い、いつも通りの強い日差しの中だった。

いつものようにミツ姉が突拍子も無い提案をして、タツ坊が止める。

わしはソレを止めながら、面白そうな方に着く。

 

わしは、この日常に引き込んだ二人に感謝している。

 きっと、わしがこの二人に引き込まれていなければ、今も何も感じずに笛を吹いて、見送っていただろう。

子どもとして、一つの楽しみも知らずに、ただ機械的に、つまらなく過ごしていた。

 二人に連れられるまで、わしは、かけっこなんて知らなかった。

 かくれんぼなんて知らなかった。祭りのひっかきまわし方なんて知らなかった。

 

 それらが、楽しいなんて、一切知らなかった。

 自分の役割の笛吹きをやることを嫌とは思っていない。

 だけど、わしは、二人に教えられた楽しみもやりたかった。

 

わしは、どうしたらよいのか。

 そんなことをミツ姉に零したこともあった。

『アンタバカね。そんなことでウジウジ悩んでたの?』

 こっちは真剣にどうしたらいいのかを決められないのに、鼻で笑われた。

『そんなの、その気持ちでやればいいのよ。』

 なんてことのないように、結論を出した。

『人生ってのは、その時の自分の気分や気持ちの優先の選択の連続なのよ。』

『難しく考えることなく、今のアンタがやりたいことやればいいのよ。』

 その言葉が、すんなりとわしの何かにストン、と落ちた気がした。

『で、アンタの気分はどうしたいのよ。』

 

わしの心は、決まっていた。

『笛を吹く。』

『そう。』

『じゃけど、ミツ姉たちともっと好き勝手もしたい。』

 

『わしゃ欲張りじゃろうか。ミツ姉。』

『そうね。最高の欲張り者よ。流石あたし達の弟分なだけはあるわ。』

 

 こうやって、ささいな悩みも解決した。

わしはどっちもやるように欲張ることに決めたんじゃ。

 ある時は、死に際の者を安らかに旅立たせる笛吹き人。

 ある時は2人の後を付いて、村のアレコレをかきまわす妖怪。

どっちもわしじゃ。それでいいんじゃ。

そう決めることが出来た。

 だから、こうやって、わしら3人がかけまわることがずっと出来ると思っとった。

 

 

 

 

『あ、アタシ今年の霊木の生贄だから。』

 

この世で1番聞きたくなかった、どうしようもない事実を、ミツ姉が明かすまでは。

 

 

 

4.クソガキ達の最悪な一日

 

 

 

『『...は?』』

当然、わしらは耳を疑った。

 

突然、じゃあ明日死ぬから。と言ったら誰だって反応できんじゃろ?

 

直前までミツ姉のやることにあーだこーだと反論していた龍介でさえ、言葉を失った。

 

『冗談にしては度がすぎるぞ。』

『...なんじゃ、ミツ姉。機嫌悪いんか?』

 

突然のカミングアウトに、どうやったって頭の処理は追いついてくれない。

追いついたところで、ミツ姉が今年の贄だという事を言った事を理解してしまうため、もう頭を使うことなんてしたくなかった。

 

『冗談でも、なんでもないわ。』

『明日の霊木の鎮魂、アタシが下に埋まるのよ。』

 

ミツ姉の言うことは、どこまでも残酷な真実だった。

 村の祀っている木は毎年その神秘なるものを保つ為に、ある程度の捧げ物が必要になっている。

 その年の作物、限界まで濾過され透明以上に透明な水、

 

 そして、その年の人柱だ。

 

 この人柱を知ったのは、昨年の事。

今年もやるのかななんて呑気に話していたら、ミツ姉が泣き出した。

 ミツ姉が泣く事なんて無かったからどうしたのかと思って聞けば、その年の贄は自分たちも世話になった近所のあねさんだった。

 

わしはそこで、村のおぞましさを知った気でいた。

 

 だが、どうすることも出来なかった。

わしらがそれを知ったのは、既に贄の儀が終わった後だったからだ。

気の毒だけど、仕方ない犠牲なんだ。

そう言い聞かせるしか、出来ることはなかった。

 

だが、それは間違いだった。

都合のいいことだとわし自身でも思うが、

初めてそこで、わしは怒りを覚えた。

誰が言い始めたのかもわからん得体の知れない木の為にミツ姉が犠牲になる?

わしらに百鬼夜行として、妖としての自分を与えてくれたミツ姉が犠牲になる?

わしの恩人が、犠牲になる?

ふざけるのも大概にしろ。

どこまで大人は勝手なんじゃ。

頭を回せば回すほど、これらを決定した大人に怒りの罵詈雑言が湧いてくる。

恥ずかしい事に、身内に牙を向かれて初めて反抗の気持ちが湧いたのだ。

そして、わしも龍介も立ち上がったはいいが、やる事は1つじゃった。

村の催事を執り行っている場所にカチコミをかけて、暴れ散らかすことしか無かった。

 

じゃが、結局それも上手くいかなかった。

そりゃそうじゃ。

 祭事の直前のなんだから警備だってガタイのいい大人が警備しているのは当たり前のことだ。

 何度も続けた祭事を子供の癇癪程度でどうにか出来るほど、甘くなかった。

 ガキの1人や2人が何を喚こうが、大人からすれば、蚊が飛んでいるようなもの。

それでもやることはした。

 腕が折れようが、足が折れようが、みっともなく泣き喚こうが、暴れる事だけは止めなかった。

 タツ坊なんて、不意打ちで股蹴り上げて大人1人倒しとるからな。

ワシもボロボロになりながら、大人のようわからん部分に噛みついた。

 

長くは続けられなかった。

 龍介もわしも、色の変わるほど熱された焼きごてでぶん殴られ、背中に当てられたり、その後は村の儀式が終わるまで牢にぶち込まれた。

 正直、やられたことの内容は覚えてない。

 

そうして、気が付いて、外に出てボロボロのわしらの目に一番最初に飛び込んできたのは、

クソったれな儀式がとうに終わり、霊木に捧げられた四角い木箱だった。

うそじゃ。嫌じゃ。嫌だ。そんなの嘘だ。嘘じゃ。

いいわけがない。そないなことあっていいわけがない。

 

わしは、その中身をわかってしまう。

わかって、しまった。

 

大事な事ってのは失ってから気付く。

わしらはその日、自分達の導を失った。

 龍介はその背に消えない罪の跡を背負い。

 わしは、その目で二度と恩人の姿を拝めぬ罪を背負い。 

総大将は、この世から奪われた。

 

 それが百鬼夜行の、たった1回の、失敗した祭りだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 もくもく。

 

 喉からどうにもならない怒りと悲しみと悔しさのぐちゃぐちゃが込み上げる。

 

わしに何が足りなかった?

何もかも、わしにはミツ姉のように見通す目が足りんかった。

 

じゃあ、今必要なものは?

 

『アンタはバカっぽいからね。色々知って賢くなりなさい。』

 

ミツ姉の言葉が頭をよぎる。

 

賢くなろう。

 

誰にも騙されず、誰にも見透かされることの無いように。

 

もくもく。

 

誰も信用するな。誰にも気を許すな。

 

『アタシ?アタシは見えちゃうから大人を出し抜けるのよ。』

 

全てを知れ。その上で大人より有利になれ。

 

自らの心を悟られるな。

 

もくもく。

 

アンタもちょっとは素直になりなさいよ。

 

本心を仕舞え。理性をつけろ。常識をつけろ。

 

もくもく。

 

必ず、理性が本心だと思わせろ。

 

もくもく。

 もくもく。

 

本心さえも利用しろ。

 

理性でさえも利用しろ。

 

大事なものは煙の中の奥の奥の奥に隠せ。

 

本心なんて、誰にも分からないように。

 

もくもく。

 

 モクモク

 

  黙々と。

 

種火の想いも覆うほどに立ちこめる煙は、地を這い、積み上がり、自らすらも覆い隠す。

 

わしの意識は、そうして再び離れた。

 

そうして、私は生まれた。

ほら、どうにもできない、惨めな妖怪。

否、醜いバケモノの誕生だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…そう思っていたのに。

そう在れれば良かったのに。

 

あの日、見つけてしまった。

手を、引いてくれる人たちを見つけてしまった。

出会えてしまった。

 

 

あぁ、私は、どうなろうとしたんでしたっけ。

 

 

 

 

5.覚悟、並びに白煙(しろけむり)

 

勾玉に詰まった記憶、IAによる再生が終わった。

「これが、アツヤが見た全て。」

 

IAが静かに、再生の終了を皆に伝えた。

 

誰も、口を開けなかった。

 

何かはあるとは皆思っていた。

 

しかし、これは酷すぎるだろう。

 

 

 

敦也...否、彼らの運命は余りにも非情な理不尽によって潰れていた。

そうして、4人は気付いてしまった。

 

『自分の心に折り合いをつけるだけです。』

 

敦也の返したその言葉が、どれだけ彼にとって重く辛いことなのかを。

 

 

 

「アツヤは、あなた達に知ってほしかった。」

 

「自分の辿ってしまった運命を。」

 

「自分がどうして、こうなったのかを。」

 

 

 

「...何故だ?」

「...?」

 

 

 

「どうして敦也はここに、辛いものしかないはずの故郷に、戻ってきたんだ?」

「...」

 

IAは、絞り出された司の、その疑問に口を噤む。

少女は、少し悩み、視線を下に向けて、首を横に振った。

 

「...私が言うよりも、本人から聞いた方がいい。」

 

「...何故だ?」

 

「あの子の決意は、あの子の口から紡がれなきゃダメ。」

 

 

 

「あの子が泣いて、悩んで、蹲って、それでも決めた事を、私が語っていいわけないじゃない。」

 

 

 

「あの子の決意は、あの子だけしか言葉にしちゃいけないもの。」

 

 

 

「だから、私はこうするの。」

 

 

 

そういうと、IAは先程まで持っていた記憶の勾玉を錠前の近くに持っていく。

すると錠前は、カタカタと音を立てて震え出し、パリン、と次々に解錠されて散っていく。

 

「鎖も錠前も、全てはアツヤがあなた達を拒否するためのもの。」

「でも、全てを知ったあなた達ならもうこの拘束に意味はない。」

 

その鎖は、次々と木から離れていく。ジャラジャラと音を立てて解かれていく中で、

 

 

『あぁ、私は、どうなろうとしたんでしたっけ。』

 

不意に、微かに敦也の声がどこからともなく聞こえた。

 

その言葉は、悲鳴にも等しい誰かに向けての嘆きの叫び。

 

聴いているだけで、胸が締め付けられるような出涸らしのように絞り出されたか細い声。

 

 

 

「「「「敦也(君)!!!」」」」

 

彼らの足は、扉に向かって走っていた。

 

 

 

 

扉が勢いよく開く。

中は白い煙が立ち込めて何も見えない。

幸いなことに吸っても害のないものが充満している事に気が付くが、単純に酸素が足りない。

 だが、扉が開いたことにより行き場のなかった白煙はたちまち外に出ていき、ある程度出切った所で、1つ、黒い塊が白煙の中に見える。

次第にそれが人影という事に気付き、4人がその人影の傍に行く。

 

 

「...どうしてでしょうね。」

 

「自分でここまで来るように誘導して、貴方達に来て欲しかったのに、ここに来れないように回りくどく面倒に妨害をする。」

 

「私は、いや、わしは、どうしたかったんじゃろう。」

 

言葉の節々からは憔悴した様子が見て取れる。

 

 日々の生活の中で見ていた白黒半々か一部黒の混じった髪は、今はもうその色が失われ、全てが先程まで部屋に充満していた白煙と同じく、真っ白に染まっている。

格好は、いつか礼として見せた景色と曲の時のような時とは違い、白い薄着物の上に前回の煙の渦の巻いた着物を羽織った形だ。

下の薄い着物は、まるで、白装束のように一切の色が抜け落ちている。

 

「...ばかだよなぁ。わしは。」

充満していた煙は、既に足元近くまでに密度を散らしている。

 

そこには、悲しみを抱える友がいた。

 

 たった一人で、胸の内にその身に余る悲劇を抱え、背を丸めて体を縮こませ、弱気な言葉を吐く。

理性も本心もひっちゃかめっちゃかになった、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

右目の赤い、瀬文敦也その人がいた。





瀬文敦也
生き残ってしまった。

海野龍介
どうするかは、お前が決めろ。

櫛野宮密芽
享年8歳

ワンダーランズ×ショウタイム

これでいいなんて、言ってたまるものか。

感想、評価、お気に入りのほどよろしくお願いします。

次は誰と対話する?

  • 草薙寧々
  • 鳳えむ
  • 東雲彰人
  • 青柳冬弥
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