百鬼夜行は音の夢を唱えるか   作:絞りカス

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ほんとにすんませんでした


対話その2 錬金術師

「やぁ敦也君」

「部室でロマンの塊を構えながらいう台詞ではないのは確かです。」

 

「そうかい?敦也君ならわかってくれると思ったんだけど。」

「どこに兵器構えられて理解出来る人間が存在するんですか。」

 

 ここは空き教室に構えられた探究部部室。

 今日の来訪者は、昨日冗談だと思っていた天馬司の発言通りに実験台にしに来た神代類という男。この時ばかりは敦也も1度あの名優の顔を陥没させなければならない所まで一瞬考えた。

 

「...貴方のテストに付き合うかわりに後でクリームパンを所望します。」

「分かったよ。君の居場所も大体分かってきたからね。」

 

「僕来たり来なかったりするのになーんで場所理解されてるんですかね。」

 

「あー...言わなくてもいいです。どうせ司辺りが教えてるのでしょう。それで、どの噂の正誤をご所望で?」

 

「あぁ、情報は要らないよ。僕のテストに付き合って欲しいだけだよ。」

「今すぐ行う訳では無いでしょう?」

「君が承諾してくれれば今でもするよ?」

「よし探究部としての活動をしましょう。」

 

 両者は共に笑みを浮かべながら軽く言葉を交わし合い、敦也は司には人間性の濃い人が集まる事を遅ばせながら理解した。

 

 

「さて...何から話したものでしょう...。貴方の好奇心を埋められるものかは分かりませんが、探究の議題が思いつきませんのでゲームでもしましょう。」

 

 そう言った敦也はどこからともなくカードを出して、類の机の前にカードを投げた。

「トランプかい?」

「ご察しが良い。隣に未開封の束が置いてあればそうなりますか。」

 

「無難にポーカーにしましょう。開けて欠品の確認をお願いします。」

「本格的だね。」

 

 類はセキュリティーシールを剥がし、中のトランプを確認した。

「中身は揃っているね。」

「分かりました。確認ありがとうございます。」

 

 双方がの様にカードを確認し、互いにシャッフルをしていく。

 

「配りますよ。」

 類に 敦也に とシャッフルされたカードが1枚ずつ配られていく。

 5枚が配られ、昨日の司との対戦の様に静かに始まった。

 

 類の手札は

 ♠9 ♠1 ♥3 ♣3 ♢1。

 交換が無ければツーペアではあるが、勝利にはまだ少し心許ない。

 

 敦也の手札は

 ♠6 ♢2 ♢6 ♣2 ♥13

 此方もツーペアではあるが、相手の手札次第では負けは充分にありうる。

 

「僕は1枚交換するよ。」

 類は♠9を放出し、カードを新たに1枚引く

 互いが互いの手札を知らない為、

 ポーカーにおいて確実の勝ちは配布の時点では存在しない。

 この場合1枚交換によって得られるのはフルハウスの成立。

 勝ちに近づけるためには充分と言える。

 

「では、私は3枚交換します。」

 

 敦也はここで♠6 ♣2 ♥13を放出した。

 

 互いの手札は交換され、後は公開を待つのみ。

 

「「勝負」」

 決着は 早かった。

 

「フルハウスだね。」

 類 ♣1 ♠1 ♥3 ♣3 ♢1、

 一方敦也は

「...ノーペアです。」

 ♢2 ♢6 ♢8 ♢9 ♠3

 類の勝利だ。

 

 ポーカーにおいて同じ役の場合、次の判定基準は数の大きさにある。最弱の数は2であり、そこから数が増えて最強が1という数え方をする。先程の類と敦也の手はツーペア同士ではあるが、敦也のペアの最大は6であり、類の1のペアに勝つことの出来る札は存在せず、加えて敦也最弱の2のペアを揃えてしまっている。

 この場合フルハウスを引いたとしても相手側が3のスリーカードを揃え、敦也が6のスリーカードを揃えなければ勝利はない。

 

 今回の敦也は賭けに出た。

 手札に揃っていた♢を用いたフラッシュを目指したが、時の運を手繰り寄せることはできずブタ...つまりは役無しとなった。

 

「分かっちゃ居ましたけど...賭けて負けたので何も言えませんね。」

 ふぅと息をついて、敦也は身体を伸ばした。

「分かっていたって言うのは?」

 

 

 

 

「貴方を観察して、ある程度のクセ見抜いて何を持っているかを予想しました。」

 

 あろう事か類の目の前の男はクセを見抜いて手を予想する離れ業をなんでもない様に言った。結果は負けなのだが。

 

「負けは負け。勝負の敗者に栄光はありません。」

 

 常人離れした事を言ってのけた人間は、手をヒラヒラさせて降参の意を示し椅子に深く座り込んだ。

 

「まぁ何となくあなたの来訪理由も分かりますし。」

「...へぇ。」

 

 類の目は細いものに変わる。

「いやぁ久々でしたよ。ここまで腹の探り合いで対抗してくる方は。逆に情報取寄せやすかったんでありがたいんですけどね。」

「...初めて会った時から思ってはいたけれど、君に向かって物事を隠すことは出来ないみたいだね。」

「えぇ。残念ながら、見えちゃうものですので。」

 

 へにゃりと敦也は見えぬ目元と口元を緩ませた。

 

「貴方から見て、私の事、どう見えます?」

「...」

 

 神代類という人間は、客観的に見ても天才である。

 喜怒哀楽の感情を見るまでは行かないが、感情の機微を読み取り相手が次に何を言うかの予測がつく。それらによって相手との対話を優位に持っていくこともできる人間である。

 

「そこの見えない人間...かな?」

「底が見えないですか...見えないんじゃなくて底が割れてないんじゃないですかね。」

 

 からからと笑う敦也に類は自身の心中を出すこと無く、微笑むしか無かった。

 

「どうして君は噂の確かめ屋なんてやっているんだい?」

「そこに噂が跋扈して、気に入らない理不尽が罷り通っているのが癪だったからですよ。」

 

 既に対話とトランプ勝負にかけた時間によって、互いの机に置かれたコップのコーヒーは既に温度を失いつつある。

 

「もし度が越えたり、私の噂で誰かに害が及んだら、灸を吸えてます。それが今では学校の怪談扱いです。」

「結局たかが都市伝説一個で人の噂なんて止まりませんよ。」

「人間は基本脳と腕と口があれば他者の攻撃を考えることができます。チンケな理性や感傷で止まるようなものじゃないんでしょう。」

 カーッと酒を飲んだ中年のように、敦也が一気にぼろぼろと不満が出し切った後、ふぅとため息をつく。

 

「そもそもここに本当に来る生徒なんて大抵がろく出なし案件です。残りのちょっとが暇潰しか善意100%の人間か悪意で来るアホです。」

 

 善意100%で来る人間の具体例を上げる間もなく、類はどういう人間が来るのか予想がついていた。

「司くんは、いつ頃からここに来るようになったんだい?」

「最初期からですよ。初めのうちは来訪者が彼しかいなかったんですが、彼のおかげで度々キチンとした話のできると人達が来てくれるようになりましたよ。」

 そこまで話した時、スピーカーから昼休み終了のチャイムが鳴った。

 

「...時間のようです。実験には手伝います。議題はその時また話しましょう。」

「そうだね。またね。」

 

 そう言って扉をキチンと閉めて類は自身の教室へと帰って行った。

 それから間もなく、休日に響くフェニックスワンダーランドでの実験の被験者の断末魔は2人に増えたのは別の話。

 

 

 類side

 

 

 

 僕にとって瀬文 敦也という人間は、興味を引く存在であった。学校の全ての噂の正誤を確認できる異常な人間。そして、人間離れしたイメージのついた部。

 僕が彼を知った時は探究部の噂を聞き、どのような人間なのかの興味本位で覗きに行った。

 

『...私を見に来ましたか。今の私は疲れてます。

 貴方のご希望に答えられませんよ。』

 第一印象は胡散臭く、どれだけの探りを入れようともあれよこれよと避けられそうな雰囲気を纏っていた。

『...胡散臭い。煙臭い。そう思ったでしょう。』

 

 そう観察した矢先、目の前の彼は瞬時に心の声を見抜かれた。

『どうしてだい?まだ何も言っていないのに。』

 その後の僕が言葉にしようとした疑問すらも彼に見抜かれる。まるで、頭の中そのものを覗かれているようで、常軌を逸した彼の行動に背筋が凍ったような寒気がした。

『...ここまでにしておきましょう。』

 

 僕は胡散臭いという評価は変えざるを得なかった。

 

『申し訳ありません。初見の方なのに振るいに落とすような真似をして。』

 そう言って僕の分の茶と菓子を用意した彼は、先の思考の窃盗を侘びるように

『私は瀬文 敦也。ようこそ探究部へ。』

 サングラス越しに笑いかけながら、僕の来訪を歓迎してくれた。

 そこからは早かった。

 彼の人となりも知れ、見た目にそぐわず意外と茶目っ気旺盛だったり、人並みにロマンを持っていることも分かった。

 ある日司くんが敦也君にショーメンバーとして参加しないかと、勧誘した事があった。彼は誘いを断ったが、その時に彼は自身の夢を口にした。

 その時の夢を僕は司君経由で聞き、言葉には出さなかったが何か引っかかるものを感じた。思い立ったが吉日とは言うもので、次に彼に会った時にこの疑問を問いてみた。

 

「君は、生きる事を夢...と言ったけど、具体的にはどういう事なんだい?」

 僕の質問に面食らったような顔をした後、少し考えるそぶりをする。

『私、ここら一帯の都市生まれじゃないんです。』

『地図にも載らない森のずっと奥の集落。』

 唐突に彼は自身の出自を話し始めた。

 

『私の役割は、笛を吹いて、見送るものでした。』

 

 そう言って、彼は自分の懐から小さな笛を取り出した。

 

『確かに、私は人を笑顔にすることが出来ます。』

『だけど、同じ人の笑顔は二度と見れない音楽です。』

 

 吹いて聞けば終わる。まるでギャラルホルンですね。と、そう語る彼の顔は下に向いて、見ることは出来ない。声色からも察せられない。

 

『私を含めて、3人。一緒に集落から長い家出をしてます。』

『家出の途中で2人とは逸れ、1人で流れ着き逸れた彼らとは集合の合図だけを共有し、散り散りのままです。』

 

 サングラス越しに見えるその視線はどこか寂しい目をしていた。

 

『彼らから再び集う合図があるまで、私は『誰かの夢を見守る』というやりたいことをやろうと思うのです。』

 

 そう語る彼の顔は、園児が秘密基地で内緒話をする様に無邪気な顔をしていた。

 でも僕はその言葉への違和感を拭い取れなかった。しかし、胸に生じたこの疑問だけは、口に出せなかった。

 頑丈に封鎖された幾つもの心の錠前を、砕けさせてしまうかもしれないと思ったからだ。

 だから僕は、彼のことをどう見えるかと聞かれた時、少しだけ躊躇した。

 

「底が見えない...僕としても少し違ったことを言ってしまったかな。」

「煙に巻かれている...の方が正しかったかもしれないね。」





瀬文 敦也(せぶみ あつや)
特技は見抜くこと
待ち人は2人いる。
神代 類(かみしろ るい)
ご存知変人ワンツーの片割れ
敦也の心に何か抱えていると気付いて踏み込まなかった天才

初回から毎日投稿が重要なのにゼミナール選択面接と課題レポート提出とプレゼン発表を抱えたバカは私です。
ゼミはスーツで意欲を見せてどうにかしましたがプレゼン資料データを提出した所教授側のミスでデータが吹き飛びました。fu○k!

次は誰と対話する?

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  • 東雲彰人
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