百鬼夜行は音の夢を唱えるか   作:絞りカス

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帰省したのに実家から片道五時間の旅を出される奴いる?
いねぇよなぁ!
いるさ!ここにひとり!()
年末年始に何してるんだろ僕。


対戦その4 鳳

 ジリジリと、暑い太陽の日差しが肌を焼く季節。

 ジリジリと木に止まった蝉が1週間の命を燃やす季節。

 窓に垂れた風情を感じる為の風鈴は、硝子同士がぶつかる事なく静かに佇んでいる。

 敦也は伝う汗を拭い、少し錆びた水道から出た鉄分の滲み出た水を流し込む。

「もうこんな時期ですか。」

 季節は夏。カレンダーは4から二枚剥がれ、春の終わりを否が応でもわかってしまう。

「換気したって風が吹かないんじゃどうしようもないですよこんなの。」

 

 1人蒸し暑い探究室の中で愚痴がこぼれる。

 扉も開けて風通しもよくしようと思い、扉の取っ手に手を伸ばした。

 

 

 

 

「敦也くーん!」

「は?」

 取っ手に手が届く前に扉は顔面に迫り、固定する金属を吹き飛ばしながら敦也にダイレクトアタックを仕掛けてきた。

 ぶつかった敦也のサングラスは綺麗に舞い、10点満点の点数を付けられる着地を机の上に行った。

 

「敦也くん!おはよう!」

「鳳様それは私のサングラスです。」

異なる学校からの突如の来訪者。

ワンダーランズ×ショウタイムのメンバー。

鳳えむが扉の先にいた。

 

 

「鳳様。本日はどのようなご要件で?」

「えむでいいって言ってるのに!」

「失礼。えむ嬢はどのようなご要件で?」

「あんまり変わってないよ〜...」

 わかりやすく、明るく表情がコロコロ変わるえむを尻目に机のサングラスを回収し、再び目元を隠す。

「うーん...」

「どうかいたしました?」

「敦也くんサングラスばっかりでちゃんと顔を見れた事ないなって。」

「さっき私をサングラスと認識した上での発言?」

 

 確かに敦也のサングラスは、鳳えむが、天馬司が、神代類が、草薙寧々が、彼等が瀬文 敦也という人間を認識する上で自ずと必要となるピースである。

 胡散臭く、掴めず、目元を覆うサングラスが特徴的な男。

「見ない方が得ですよ?」

「でも1回くらい見たって」

「えむ。」

えむの肩が少し跳ねる。

 えむは、司や類の声の怒った時のような声とは違う、無感情に冷たく呼ばれる様な声が敦也から聞こえることに驚いた。

「...申し訳ありません。色々あって見せられないんですよこれが。」

「...ごめんなさい。」

「いいんです。探究部の人間がひた隠しにすること自体がちゃんちゃらおかしいだけです。」

 えむからは決して見えない敦也の瞳は、しっかりとえむの目を見て謝罪した。

「そのかわりです。司も類も寧々嬢も知らない秘密を私とのゲームに勝ったら教えちゃいます。」

 

「ほんと?!」

「えぇ。私は約束は違えませんとも。」

えむの表情に再び明るさが戻る。

 

「さ、探究部の活動を始めますよ。

準備は宜しくて?えむ。」

「もっちろん!」

 本日の部室は風通しも日当たりも雰囲気も良好の様だった。

 

 

 

 

「それで!なんのゲームで遊ぶの?」

「ボードゲームやテレビゲームもありますが、手っ取り早いのはコイツですね。」

 そう言って敦也は手からマジックのように突然カードを取り出した。

「わっ!手品だ!」

「宴会芸程度の実力ですよ。」

 敦也はカードを伏せ、机の上に掌ごと置き、手を離せばカードは54枚の束に増えている。

 

「トランプですが、最近ポーカーばかりで疲れたので別のゲームにしましょう。」

 

 表面のデザインをカード1枚を使ってひっくり返し、パラパラと崩れるドミノのような速度で数字の描かれた面に変えていく。

「『スピード』というゲームはご存知ですか?」

 

スピード。

 対戦人数は2人で勝負可能の反射神経がものを言うゲーム。

 山を分け、4枚を開示し、互いの山札の一枚目を捲れば勝負が始まる。

 出た数字の階段になるように山を捲り切れれば勝ち。至ってシンプルなゲーム。

 ジョーカーを抜き52枚の束を27枚に分け、対面のえむの方に準備された。

「やります?やりません?」

「やりたい!」

「元気なお返事ありがとうございます。

天切りは済ませてありますので、4枚捲れば勝負ができますよ。」

 

「OK! Open the game!

楽しい一騎打ちを始めましょう。」

 

そうして彼らの勝負は始まった。

 

 

 パラパラとカードを捲り、始めに提示されたカードを1秒だけ見て互いに状況把握し、5枚のカードから火蓋を切った。

 始まってしまえば、もう止まらない。

 互いのカードが置けない状況に幾度かなったが、その度に山を捲り、新たな数字に連なるカードを互いに置いていく。

 27枚の山はあっという間に無くなり、残るは自分の目の前に見えている4枚のカードと山だった場所に残っていた1枚となっていた。

 

「やはり貴方凄いですね...」

「そうかな?」

「30秒かからず札が尽きたんですからそりゃもう。」

 ここまでの出来事、彼らの会話を含めて僅か30秒を切っている。

 

「じゃ、ケリつけますよ?」

「うん。」

「「スピード!」」

掛け声と共に互いの1枚を裏返す。

 敦也は捲ったカードの数字は5で自身の元に対応する数字は無かったが、えむの捲った8の上に乗る9があった為、手を伸ばし、カードを叩きつける。

しかし、置いたと思った時には遅かった。

「これでおしまい!」

既にえむは手札を使い切り、満足そうに笑顔で敦也を見ていた。

「...見事。」

トランプを使った文字通りスピード対決。

勝者はえむだった。

 

 

「敦也くんに勝ったよ!」

「そうか!奴に勝てたか!」

「目の前で勝利自慢するとは驚きです。

というかいつの間に来たんですか司。」

「えむが走り去っていくのを見たからな。」

「あぁ...」

敦也は納得の声を上げた。

 

「秘密を教えてくれるって言ってたけど...」

「そうですね。サングラスを外すことは出来ませんが、それくらいならお教えしますよ。」

「敦也のことで分かっておきたいもの...」

何故か司が頭を抱え、敦也への秘密の開示内容を考え始めた。

「いや、あなたには...もういいや。司も込みで一つだけです。えむと話し合って決めてくださいね。」

「じゃあ敦也くんの楽しかったことについて!」

「話聞いてました?

ホントに私の楽しかったことでいいんですか?」

少々特急列車が過ぎると頭を抱えかけたが、敦也は教える秘密の再確認を行った。

「ダメ...かな?」

「いえ、そうではなく...私の楽しかったことですか...」

そう言った敦也は顎に手を添えて、少しだけ自身の記憶を遡る為に考え込んだ。

 

「そういえば私都会生まれではなく、森の奥の方にぽつんとある村出身なんですけど知りませんよね?」

「えっ?そうなの?」

「そうだったのか?てっきりこの近辺で育ったのかと...」

「まぁほとんど言ってませんでしたし、聞かれませんでしたからね。」

備え付けの机にある回転椅子に座り直し、敦也は天井を見上げた。

「まぁ私、そこの悪ガキ3人組の1人みたいなやつだったんですよ」

 

「1人はイタズラをして

1人は木々を飛び回って

私がどっちにもついて行って、

逃げ道を見つけてくる。」

 

「そんな子供のごっこ遊びの繋がりの日々が私のいちばん楽しかったことですよ。」

 

「もっと聞きたい!」

「うーんどうしましょう...」

「何か聞いちゃ不味いことがあるのか?」

「いえどこまで話そうかと。

単純に悪ガキとしてやった事が多過ぎるので...」

 どこかバツが悪そうに敦也は自身の行いを口にすることを躊躇っている。

 

「例えば?」

「寺の坊主のカツラを祭りの日に一番目立つところに祀ったり。」

「待って?」

想定していないタイプのイタズラだったからなのか、えむからイタズラ内容の暴露にストップがかかった。

「いやぁもうちょっとできたんだよなぁこれ。」

「いや、イタズラの規模がおかしいだろ!」

?と敦也は首を傾げ、何がそんなにおかしいのかがわかっていないようだった。

「え?イタズラってこれくらいしません?」

「「しない。」」

「えぇ?...なんだミツねぇの感覚がおかしかっただけか。」

「みつねぇ?」

「イタズラの考案者ですよ。

本名 櫛野宮 密芽 (くしのみや みつめ)

悪ガキの1人です。」

後は、と顎に手を添えてまた考え始める。

「神社の賽銭が軒並みカラスに取られたから奪い返したり。」

「カラスから?」

「えぇ」

「それってヒーローみたい!」

えむは敦也の話に目を輝かせる。

 

「それもその密芽って人の考えでか?」

「いえ、これは違う奴が見つけたのに便乗してヒーローごっこしただけです。」

「それもその3人の中の1人か?」

 

「当たりです。

海野 龍介 (うんの りゅうすけ)

よくタツ坊で呼ばれてました。」

「私と、タツ坊と、ミツねぇ。

何やるにしろ集まらなきゃ形になりません。」

 

キンコンカンと、最早対談と呼べるかは不明だが対談終了を告げるチャイムがなった。

 

「さ、今日はこれでおしまいです。えむも気をつけて帰るんですよ?」

「うん!じゃあ敦也くん!司くん!またね!」

「あぁ!」

「えぇ。また。」

そうして訪問者は嵐のように現れ、去っていった。

「...そういや、手品は何処で学んだんだ?」

「見様見真似の猿真似ですよ。ここで学んだんですよ。」

そう言って、敦也は1枚のビラを見せた。

 そこには、アルシロイチザと大々的に書かれた銘打たれ、1人の老人と5人の長帽子を被ったマジシャンが描かれていた。

 

「或城一座か。俺も知ってるぞ!」

「そうですか。公演を見に来たりしました?」

「あぁ。咲希...妹が見たいと言ってな。共に見に行った事がある。」

「成程。もしかしたらそこで私のことを見たかもしれませんね。」

 ふぅ、と椅子に再度座り直した敦也はそう言った。

「どういうことだ?」

「これの灰色の帽子の奴いるでしょう?」

「あぁ。」

「これ私。」

 

「なるほど!

 

 

 

 

 

 

な、なにィィィィィ!?

 

突然のカミングアウトを聞いた司の絶叫が学校中に響き渡った。

 

 

 

 




瀬文敦也
えむの来訪後、泣く泣く1人で扉を打ち直した。
「来るのはいいんですが扉ぶっ壊すのだけはやめて(涙目)」
鳳えむ
嵐を呼ぶご令嬢。
「敦也くんのサングラス無しバージョン...見てみたいなぁ。」
天馬司
絶叫により、後で校内放送で呼び出された。
「俺は悪くない。」

最近、カードゲームの大会でボコボコにされました。
天門ル○プ滅べマジで()
どうでも良いとして、
見切り発車だったのでこれから先また更新がカタツムリ並のウスノロになるかもしれませんが、皆様のお気に入りした小説の更新の合間にでもまた読んでいただけると幸いです。

感想と評価の程お待ちしております。











「...ふぅ。」
 司の絶叫により鼓膜が破壊されかけ、職員室に司がドナドナされていってから時間が経ち、敦也は1人、昼にえむ達に語った思い出達の事を浮かべる。
 夏の日差しが肌を焼いたあの日のこと。
 ジリジリと蝉の音が五月蝿く耳奥這いずり回る風物詩の事。
 硝子がぶつかり、割れる事を想起させる程揺れた風鈴の事。

 滴り落ちる汗を雨のように流れ出しながら、3人で駆けずり回ったあの日のこと。
ーこの妖怪共が!ー
ー貴様らのせいで!ー
ー貴様らが!ー
 そして、掴み損ねた█████████のこと。

そこまで脳の海馬の奥に手を伸ばしかけた所で中断した。
 邪心を振り払うように頭を横に振り、自身のスマホの音楽アプリに追加されている楽曲を再生する。眩い光と共に意識が暗転する感覚を身に浴び、目を閉じる。
そこに一切の戸惑いは無かった。
 目を開けば、そこは真夏の昼。
 先の学校と暑さ日差しは変わらないが、致命的に違う点は景色だった。
 灰色の壁に覆われた校舎と辺り一面の緑と木々の間から差し込んでくる熱い木漏れ日。
 1週間の命を燃やし続ける必死こいた蝉の音。
「ここに来るのも何時ぶりだ?」
 彼の目の前には1本の御神木とも呼べる程の大樹を前にしながら、彼は呟いた。

「いるんでしょう?











ミク。」


『...久しぶり、アツヤ。』
から傘を指し、和服に身を包んだミクと呼ばれた少女が、大樹の上から降りる様に現れた。

「賭けに負けて思い出しちまったもんでな。」
『そっか。』
「...ミク。
ヨルまでどれくらいもつ?」

『ごめん。あんまり時間は残ってないかもしれない。』
「...そうけ。」
その答えになんとなくの察しがついていたように敦也は返した。

 この景色は、瀬文敦也が作り出したセカイ。
観客は創造主唯一人。

次は誰と対話する?

  • 草薙寧々
  • 鳳えむ
  • 東雲彰人
  • 青柳冬弥
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