馬鹿ですね。
夏の日差しもよりいっそう強く感じ、人々の肌を変色させにくる太陽を尻目に、本日も探究部は平常通り1人の人間によって始まる。
同時にもう1つの面としての活動も始まる。
「なぁ頼む...それについて教えてくれるだけでいいんだ...」
「出来ないと言っているでしょう?その耳はどうやら皮膚につながっているだけの飾りのようですね。」
「なんだと?信用ならないって言うのか!」
「飲酒強要の常習犯が何を言う。」
「...なんで...その事を。」
「ここどこだとお思いで?君らが好き勝手に作った都市伝説がある探究部ですよ?」
「クソ野郎...」
「中々のお前が言うな発言ですね。」
自身の汚点が知られていた男子生徒は椅子を乱暴に立ち上がり、苛立ちを吐き捨てた。
「あぁそうだ。」と敦也は男を呼び止めた。
未だ苛立ちの収まらぬ男は振り返る。
「██████の忠告破るべからずですよ。」
鈍い痛みが走り、そこで男の意識は途切れた。
処理を施した事で時間が無くなり敦也はじっくりと活動する事が出来なくなった為、この日はそのまま帰ることした。
しかし、来訪者は止まらない。
次の日も、
「貴方も他人への飲酒を棚に上げて人の追求ですか。」
「うるせぇ!お前には」
「目障り。」
鈍い音で男子生徒の意識を刈り取る。
時間切れの為、帰宅。
次の日も、
「二股の調査て。人のこと追求出来る立場じゃないのに貴女素晴らしいですね」
「アンタに何がわかるの!?」
「喧しい。」
パン!と目の前で手を叩き、女子生徒の意識を落とす。
丁寧な運搬による時間切れの為、帰宅。
「いいから教えて頂戴?」
「姦しい。」
意識を落とす。帰宅。
「教えろ。」
「浅ましい。」
意識を落とす。帰宅。
「教えろ。」
「耳障り。」
意識を落とす。帰宅。
「ヒャッハー!!」
「世紀末に帰れ。」
入念にセットされたモヒカン頭に踵を落とし、意識を落とす。運搬の際に帽子をモヒカンに被せ、帰宅。
「なんなんですかね。馬鹿しか来ません。」
いつの日か噂を求めてくる者はろくでなししか来なくなっていた。
敦也のこめかみの皺は来訪者が来るたびに増やし続けている。
「棚上げの才能があるなら品卸でもやってろ。」
最近、明らかに噂を求める者が増えていた。
その度に敦也は処理を行い、保健室に運び込む。
その影響は噂にもよく出ており、
噂を求めた生徒が次々に『その直前までの記憶と確かめたかった噂』について気がつけば忘れ、いつの間にかに保健室にいる事から
、探究部が人の記憶を操り始めたなんて噂が流れた。
「頭に衝撃与えりゃ記憶なんてそりゃ飛ぶだろうに。」
内心阿呆かと思いながら敦也は深く椅子に座り直した。
噂が流れる事で噂を欲した愚か者が来ることは無くなると思っていたが、逆効果だったのかもしれないと敦也頭を悩ませていた。
探究部での活動。
都市伝説としての行い。
その2つから、敦也は人の行いを観察し続けている。
「本当に何してるんですかね...」
結局、両手で数えられる人数ほどしか、心の底からの対話を望める者はおらず、大半が話を聞く気にもならない、噂に踊らされる愚か者だった。
愚か者からはああはならないという戒めの教訓しか得られず、当然ながら敦也自身の望む結論ではなかった。
ー夢を探るべし。ー
ー支えたいと思うなら手を貸すべしー
ー見たいと思うなら見届けるべし。ー
ー叶えたいなら、夢を探すところから始めるべし。ー
恩人の言葉通りに探究を通して探しはするが、どいつもこいつも敦也の目に映ったソレは濁っていた。大自然の鬱陶しくも感じた緑の鮮やかさが恋しくなる程に。
結局、敦也の見た中で一番輝かしく光っていたのは1番初めに見た友人の夢だった。
「ま、どうでもいい。」
気分をコロりと切り替え、探究部としての、思考を始める。
議題を決め、過程を書き連ね、自身の主張を書いた所で、敦也の手は止まった。
ホワイトボードに書き連ねる手が止まってから数分が経ち、何も頭で進展しないことに敦也は頭を抱えた。
頭の中でぽこぽこと浮き上がる仮定と結論はどれも自分の意思であり、意思ではない。そこに心からそう考えられる筋が通っていない。
「...ダメか。」
他人の探究の末の道筋を聞く事はしてきたが、1人で考え、結論を導き出す事は、好意的な来訪者が増えてからは、久しく行っていなかった。
故に発想から結論付けの全ての過程で行き詰まった。
「早々に切り上げて帰りますか。」
ホワイトボードに結論部分を未到達と書きボードを裏返した時、バタンといきなり扉が開いた。
「敦也!来たぞ!」
「ちょうど良かった。帰りますよ。」
「急だな...しかし!俺もお前を誘って帰ろうしていた!都合がいいな!」
「貴方から誘ってくるなんて明日は雷親父と槍でも降ってくるんですかね。」
「天候に関係ないものを降らせるな!」
そうやり取りする敦也と司の顔は、双方共に笑顔だった。
「で?何が目的で?」
「何故俺が目論みあっての誘い前提なんだ?」
下校通路を歩きながら、敦也は司に問いかけた。
「馬鹿言わないでくださいよ。
貴方、私から何を抜こうとしてます?」
司はサングラス越しの敦也の追求の目に晒される。
司はその視線を、お高い人形の硝子細工の目玉に見られている様な、見ているはずなのに何もかもを見ていない様な、得体の知れない視線のように感じた。
「仮にそうだとしてなぜ俺が目論見を持っていると?」
司はすかさず反応するが、敦也の結論づけは甘くない。
「クセですよ。貴方は嘘や隠し事をする時に左手の親指と人差し指を擦り合わせる。」
それ、貴方自身も気づいてないでしょうけど。
敦也は、司自身ですら気付いていない己のサインを言い当てられて、固まった。当てた本人は、「これ言うと次対策...しないか司ですし。」と追求先関係なしにクセの対策をされる事を危惧している。
笑みを浮かべた司は、敦也からの追求に答えを出す。
「やはり、隠し事は出来ないか。」
「当たり前でしょう。貴方私とポーカーして何度見抜かれたと思ってるんですか。」
司は観念し、己の負けを認めた。
ー
司は己の目的を話すことにした。
「実は、お前のことを知りたくてな。」
「生憎求婚は受け付けていません。」
そう茶化すが、今度は逆に司の目が敦也を離さない。
「俺は、お前を友として信頼できると思っている。」
「光栄な事です。」
「だが、俺はお前の事を何も知らない。」
「そうですね。」
「だから、俺はお前の事を知りに来た。」
「うーん唐突。で?それが私と帰る事と?」
即決即断とはよく言ったものだ。
敦也は司の驚異の行動力に感銘を受けつつも、まぁ司だからやってもおかしくないとも納得した。
「ま、人と帰るなんて探究部の看板背負ってる限り少ない機会です。ちょいと寄り道と買い出しだけして帰りますけど、よろしくて?」
「構わん。知れるからな。」
「グイグイ来ますね。知識Botにでも転生しました?」
「ボット...?なんだそれは。」
「オーケーこの話はやめましょう。」
帰路の途中、くだらない談笑と棘の投げ合いをしながら、司と敦也は、 買い出しの為にショッピングモールに来た。
「買うものはトランプと...なんだっけ?あぁそうだクッキーと...」
「紅茶は要らんのか?」
「あぁそれも。感謝しますよ司。」
「敦也。お前は俺や類が来ない時、お前は何をしているんだ?」
「探究ですけど。」
「いや、そのだな...」
「...あぁ。【都市伝説】の方ですか。」
「...すまん。」
敦也からの簡素な返答に司が戸惑う姿に、敦也はそっちの方かと結論を出した。
「別に構いませんって。怖ーい噂のどれを聞きたくて?」
指を折り、幾つものある噂でどれを知りたいのか司の要望を答えるように待っている。
「俺は、お前が何故都市伝説として居続けるのか、それを知りたい。」
しかし、予想していたものから程遠い疑問をぶつけられて敦也はずるりと転びかけた。
「何故、ですか。」
敦也は、手に下げる買い物カゴを整理しながら、司の問いを考える。
都市伝説で居続ける事。
敦也にとって、その肩書は心のどこかでどうでも良く思っていた。探究部の活動をする中で、来訪者がいない時は1人黙々と、議題→過程→結論と導き出し、自分一人で納得する。
邪魔者は実力行使で追っ払い、再び思考に明け暮れる。精々、都市伝説の肩書で思考の時間が増えるだけのメリットしかない。そこまで至った上で目を瞑り、溜息を吐いて敦也は結論を口にした。
「ありません。」
「...ない?」
「えぇ。よく良く考えれば勝手にそうなってるだけでしたねコレ。」
「...都市伝説としての探究部を否定しないのか?」
「貴方は花子さんが『ワタシ都市伝説なんかじゃないんですぅ。』なんて言って信じます?」
「信じないな。」
「私神高で最も信頼のない男を断言出来ます。
それがコレを言って信じます?」
「…すまん。」
でも、と続ける。
「探究部としての活動が続けられるなら、私にとって都市伝説は有益な物ですよ。」
そう敦也は司からの疑問の回答を締め括った。
「なぁ敦也。お前はどうしてそんなに考え続けるんだ?」
「今日は欲張りですねぇ。」
「私に2人程、仲間がいることは話しましたよね?」
「あぁ。」
「そのうちの一人に言われたんですよ。
『アンタは素直すぎるから、物事考えてもっと賢くなりなさい』って。」
「考えて、人の裏かけるまで見れるようになりなさいって。」
それのせいで性格曲がったんだと思います。なんて敦也は冗談混じりに自虐した。
「まだ時間もあります。貴方と散策したい場所は他にもありますから。あなたの疑問には目いっぱい答えますよ。」
「そうか!」
そう言って、彼らの下校は騒がしく続いた。
ー
「ミク。今日はお菓子を持ってきました。」
「ホントに?」
そう言って、がさりと置かれた袋には水飴に煎餅、羊羹に練り切りと、茶の欲しくなるような菓子だった。
「ホントだ...ありがとう!」
「おや、どうしてとか聞かれるかと思いましたが、聞かないんですね。」
そこは、前に来た夏の日差しの差し込む森の中では無く、提灯の並んだ祭りの会場のような世界だった。だが、その足元は常に真っ白く濃い霧が覆っている。
「...私に新しく夢を持つなんてできるんでしょうかね。」
「わからない。それを決めるのは私たちじゃなく、アツヤ自身だから。」
「...やっぱり霧、増えてますね。」
「私もここにいつまでいることが出来るか分からない。」
「...すみません、勝手に作っておいて、こないな場所になってしまい。」
「アツヤが悪い事は1つもない。」
そう言って、敦也の後ろからミクとは異なる薄紫の着物を来て、扇子を持った少女が現れた。
「...IAですか。」
「私達は貴方の想いから生まれた存在。」
「アツヤが思った物語を語るのが私の役目。」
「アツヤが強く想ったから、出来たセカイ。」
「だから、ここがどんな姿に変わっても、私は受け入れる。」
IAと呼ばれた少女は扇子で口元を隠しながらそう言った。
「...ありがとうございます。
仲良くお菓子食べて下さいね。」
2人に励まされた敦也はそう言い、そのセカイから去っていった。
セカイから去った次の日、買い出しによって増えた備品をしまいに帰ってきた部室の中で、敦也は暫く椅子に座っていた。
引き出しを見れば、言質を取る度に増えていったSDカードの入った段ボール。
手元の机には、それらを録音する為のボイスレコーダー。扉前のゴミ箱には、毎日のように貼られる罵詈雑言の呪詛がこもった無数の紙キレ。
自身の後ろには裏に未回答の議題の書かれたホワイトボード。
それら全てがこの探究部を作り出していた。
ー妖怪なんぞの名を継ぎよって!ー
ー正気の沙汰では無い!ー
ー櫛野宮の娘を誑かした罪は重いぞ!ー
ーこの妖怪が!ー
「喧しい...」
セカイの景色を見たことで否応なしに這い出てくる地元の記憶に蓋を閉じ、敦也はホワイトボードの議題を消していた。
【夢を否定するには】
そんな議題を抹消し、ため息をつく。
「一体どっちが人でなしなんだか。」
愚民か自分か、或いは両方か。
久しぶりに誰も邪魔のしない時間の中で、敦也は別の議題を立て、思考を始める事にした。
瀬文 敦也(せぶみ あつや)
最後のモヒカン姿の世紀末来訪者は普通に不審者て頭を抱えた。
「北◯の拳に影響されたとして...えぇそっち?」
天馬 司(てんま つかさ)
敦也の事を知るかどうかを相談した相手は類。
「類に相談してな、そこで決心をつけた。」
多分修正箇所全然あるんでどっか修正入ります。
癖バトルしましょう
私の癖はダウナー系ヤニカスお姉さんです。
貴方の癖も素晴らしいですね投了します対戦ありがとうございました。
ここまで音楽要素1つもないってマ?バカだろこの作者(正解)
次は誰と対話する?
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草薙寧々
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鳳えむ
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東雲彰人
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青柳冬弥