百鬼夜行は音の夢を唱えるか   作:絞りカス

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一回データごと消えたので文がちょっとおかしいところあるかもしれない。

敦也のちょっとした一幕です。
いわゆる幼少時の敦也ってやつです。
プロセカ要素ほぼありませんが許してください。


閑話 一炊之夢 (いっすいのゆめ)

 虫共の叫びがうるさい夏の昼。

 大きな街から遥か彼方遠い場所にある、森に囲まれた小さな村。

その代わり、自然と共に子供は育つ。

 

 身体にめいっぱいの日差しを浴びながら子供達は野をかけている。

 

「へへんだ!きっかりあんのクソぼーずの所から抜け出してやったわ!」

幼い少女は、集まった2人に鼻を擦りながら自慢する。

「みつ姉。けが、してないか?」

「あったり前よ!アタシを誰だと思ってんの?

村のいちばん大事な『くしのみや』の娘よ!」

「なら、いい。」

『みつ姉』は自分の事を後に、2人の事を聞いた。

 

「そういうタツは?どこもやられてないわよね?」

「ない。おれはがんじょーと速さがうりのてんぐの子だぞ。」

「知ってるわ。」

言葉数少なく少女を心配する『タツ坊』は、自身の身体を自慢する。

「アツ坊?まーたボコボコにされたの?」

「ちがう...!わしは」

「そうね。あんたが泣くのはいつもアタシらのことをバカにされたときだもんね。」

「...わしはなきむしじゃ。」

「そうじゃない。おまえは1ばん優しいおとこだ。」

メソメソと涙を流しながら、目元を拭う『アツ坊』を2人が励ます。

「タツ。準備はできてる?」

「むろん。」

「わしもいく!」

「よし!バカにしたヤツらをギャフンと言わせにいくわよ!」

 

 

 これは、遠い過去の話。

櫛野宮 密芽が

海野 龍介が

瀬文 敦也が

 手の付けられない村の悪ガキ三人衆になった時の話。

 

 

 

大木に作られたひみつ基地の中で、3人は敦也をいじめた者に対する報復の方法を考えていた。

「どうやりかえすんじゃ?」

「こぶしだ。」

「バカねイタズラに決まってるでしょ。」

「イタズラいうても何するんじゃ?

クソじじいの頭に落書きする?」

「あれアタシやれって言ってないんだけど?」

「「おもしろそうだったからやった。」」

「流石アタシの団員ね。」

 密芽は内心頭を抱えそうになったが、大事な同胞に言えるわけも無く、同胞の仕業を褒める事にした。

「じゃあ、また書くか?」

「同じイタズラは面白くないでしょ。」

 龍介の提案を却下し、3人はどのようにイタズラをするかを考える。

 

「ほかのヤツらはみんなして祭りの準備しとるせいではなしにならん。」

「霊木祭り。まいどまいどやるけど、行けたことない。」

「アタシら子供を置いて、楽しそうしてるのは毎年腹が立つわね。」

「...祭りにイタズラはどうじゃ」

「「ダメ」」

「そうけ...あ〜祭り行きたいのぅ。」

 

 彼らの興味は段々と報復から村の祭りへと移っていく。

「わしにはただのでっかい木になんであんな拝むんかわからん。」

「ごっつい桜が咲くから、いい。」

「綺麗よねぇ...ま、景色で腹が脹れるかって言われたらそれまでだけど。」

「そうじゃ。見たって腹いっぱいにはならん。

じゃから大人たちが見ながら食うんじゃろ。」

 

「...」

「なんじゃみつ姉いきなりだまってニヤニヤしよってからに。」

 

「思いついちゃったのよ。アタシらがスッキリして、周りに立つ鳥跡を濁しまくるイタズラが。」

「なんぞそれ。」

「祭りよ!」

 密芽はザッと足元の草木を踏み締め、2つのお面を2人に差し出しながら立ち上がった。

 

 

 

 それから数日経ち、村はとある祭りの準備で活気立っていた。

 開けた場所には櫓が立ち、櫓を中心に提灯が吊るされ、提灯達は自らが照らす騒がしい夜を待っている。

 

 あくせくと櫓にものを運ぶ大人も入れば、ひと足早く酒を汲んで呑み交わす大人もいる。

 しかして、大人達の『祭り』を行う事という目的は達成されつつあった。

 

 既に日は傾き、肌を焼く日差しは空を橙色に染める事に収まった時間。

 これから数刻すれば、太鼓の音と共に祭囃子を鳴らしながら開催されるだろう。

 大人は祭りの準備を行う中、子ども達は退屈そうに歩く。

 この祭りの参加者はどれだけいっても大人であり、子供にはただのつまらない時間でしかなかった。

 

そこにあるのは櫓の対面に大きく伸び佇む『木を祀った』という名目。

子供たちにとってはそんな名目は退屈の一言に尽きる。

子供達には許されぬ本日限りの無秩序無礼講。

大人達の霊木祭は、行われようとしている。

 しかし、大人達がザワザワと何かが違う事に気づきざわめき経ち始めた。

 祭りの始まりを告げる花火が上がらずに、自分たちの気分の羽目を外すタイミングを測りかねているのだ。少人数はそんなことお構い無しに酒を浴びているが気の所為だ。

 

 

 

 

「大人って馬鹿だよねぇ。周りのことなーんにも見てないんだもの。」

「自分たちの祭りが、既にハチャメチャになってることに気づいてないんだからな。」

「ワシらの事もなーんもわかっちょらん。」

 

 ざわめく大人たちは無邪気に煽る子供の声の聞こえる方へと顔を向ける。

 全ての顔は櫓の屋根の上を向き、天から伸びる3つの影の姿を捉えた。

 

「こんばんは暇で退屈な大人たち!

今日は祭りで皆ウハウハなんでしょ?」

「その割にはそこまで楽しんでいそうにないぞ。」

「ほんまじゃ。皆してつまらんシケたツラしちょる。」

 その子供達は少女らしき子が小面の面を2人の少年は天狗の面と童子の面を口元部分を隠さずに付けていた。

 

 村の大人も子供の頃にその親や住民に教わった御伽噺にもならない伝承。

 多くの者が与太話と笑い話と一蹴し、恐れることすら忘れた者たち。

 

一様にその伝承を頭から思い出し、

妖だ。

 そう皆が想像した。

 

「あたしは腹が立つの!アンタ達だけがお酒とつまみで気分良くイベントに参加してる事!」

「大人のお楽しみを子供は指くわえて見てろってか。」

「心底腹の立つ行事じゃ!」

 

「だからね、アタシらちょっとした遊びを仕掛けることにしたの。」

 

「山の神社の神主の宝物を俺たちはちょろまかしてきた。」

 

「わしらは、それをちょいとしたところに祀ってきたんじゃ。」

 

「そう。祀ったのよ。」

祀った。その一言で、大人の村人達の顔色がみるみるうちに変わっていった。

 

「大人の皆さまは大変よねぇ?

本来祀られるべき木を祀る儀式は出来ずに、別のものか祀られちゃったんだから。」

「見ろ。既に顔真っ赤なのと真っ青なのと真っ白なのに別れた。」

「ほー不細工な蓮の花じゃけぇ。笑えてしゃあないきに。」

 

 1連の話を聞いた大人達のざわつきは、

なんて事を、このバチあたりめ!

などという悲鳴と怒号に変わっていく。

 櫓に向かって、盃や石が投げ込まれコツンコツンと屋根に当たる音が悲鳴怒号の裏拍のように打ち込まれた。

 

「さて、退屈な貴方達にいい勝負を作ってあげる。」

「俺たちの祀った神主の宝物。」

「誰が見つけるかの競走じゃ!」

 ドドンと効果音がつきそうな宣言に、村人達は困惑した。

 何が目的なのかを誰も彼もが理解出来ず、投げ入れる手頃なものもなくなり、櫓の妖共の言葉を聞くしか無かった。

 

「大人のお前らは金策かけた大競走。」

「子供のわしらは、おもちゃかもしれんお宝探しの参加者じゃ。」

「大人も子供もキチンと平等な公平な勝負よ?」

クスクスと笑う妖達は、高らかに村民を宝探しを宣言し、

「「「妖からの挑戦状。しかとその身で受け付けたまえ。」」」

 

 妖怪達の笑い声をきっかけに半ばパニック気味に人々が宝探しへと駆り立てていった。

 

 

 

 

 

 大人も子供も狂乱しながらの宝探しは、辺りを汚し散らかしながらも進み、宝は見つかった。

 

 

そう。器用に飾り付けられ、大木の真ん中で

提灯に照らされながら、神主のヅラがあった。

 

 村の全てを巻き込んで行われた宝探しの宝は、ただのヅラだった。

 

話は少し遡る。

祭りの喧騒から少し上にある神社。

 そこは、櫛野宮の娘の住処でもあり、悪ガキ達の出没場所のひとつでもあった。

『...今日くらいはあのクソガキ共は来んじゃろう...』

 

箒を片手に喧騒を上から眺める老人。

『毎度毎度荒らしていきおって...お嬢様もなぜあのような低俗な者共と...』

 ブツブツと1人で小言を吐いていると、少女が歩いてきた。

「...おお。蜜芽様!何様でございますか?」

「ねぇ?祭りに持っていきたいものがあるの!」

「はい。なんなりと。蜜芽様のお願いならばなんでも聞きますとも!」

 

老人は蜜芽のおねだりを笑顔で受け入れている。

 

「ありがとう!」

 

 

 

「じゃ、それ貰ってくね!」

 そう言って、蜜芽は老人の頭に手を伸ばし、髪を引っ張る。髪は抵抗もなくさらりと頭から離れ、蜜芽は、老人のヅラを手に入れたのだった。

 

「...蜜芽さま?」

「じゃーねー!クソジジイ!」

 

「...あんのクソガキ共の仕業かァァァ!」

 

 鏡のように光を頭部で反射しながら、老人は激高した。

 

時は戻り、神主の宝がヅラだった。

その事実に気付いた村人達は口を揃えて、

『この妖共め!』

と憤慨し、怒りを爆発させた。

 宝探しに参加した子供達は、宝の中身に怒りはしたが、大人ほど苛烈なものではなかった。

 大半の子供たちは寧ろ、楽しみを与えてくれた彼らをありがたく思っていた。

 

 3匹の妖は大人たちをおちょくりながら、子供たちに楽しみを与えることを成功させたのだった。

 

「宝は見つけてくれたみたいね。」

「酒の入ったおぼつかない足で必死こいて駆け回る大人を見るのは中々に面白かった。」

「カカカッ!ヒーッ!ダメじゃ!笑い過ぎて腹が痛うてしゃあない!」

三者三様の反応をしながら彼らは再び現れた。

「あなたたちにアタシ達は何に見える?

子供?それとも妖?」

「子供と思うなら残念。」

「妖と思うてくれるなら万々歳ちゅうやつじゃ。」

 

妖を模した子供の後ろで、霊木祭の開始を告げる花火が上がる。

彼らは全てを

「それじゃ、祭りは返すわよ。

アタシらはさっさとどっかに消えるわ。」

「見つめて心をさらけ出す」

「飛んで散って目を散らす」

「煙で包んで目を眩ませる」

「アタシらの怖さ思い出してくれたかしら?」

クスクス笑いながら彼らは怒りに燃えた人々を煽る。

 

「「「我らは百鬼夜行の妖に候。」」」

 

そう彼らは宣言し木々から木々へ飛び交い、気付けば物音ひとつもせずに、たった1つの紙切れを残して消えていった。

 

紙切れには、3つの色が混ざった人魂のような不気味な落書き。

覚えたての筆書きのように拙く少々崩れた字で、

「百鬼夜行」

そう書かれていた。

 

 

 

「どうよ!今回のイタズラは!」

「なんだかやりすぎた様にも感じるが...」

「ええんじゃええんじゃ!大人達が泡吹いとるのを見れたんじゃ!」

 

 お面をズラし、蜜芽、龍介、敦也達は成功させたイタズラの余韻を各々で大いに話し合う。

普段、気に入らない大人相手にからかい続けた大立ち回り。

そうして成した、退屈盗み。

3人の気分は、清々しいほどに晴れていた。

こうして、彼らの初陣は大成功を収めた。

笛を吹き、三味を鳴らして、少女が舞う。

そこに大人も酒も不要。

彼らの宴は、その夜の間中、どこまでも響き渡っていった。

 

 

 

記憶の再生は、そこで途切れる。

景色は暗転し、次に目を開いた時には、先ほどまでの自分の目線と地面との距離離れていた。

敦也は夢を見ていた様だった。

辺りはもう日が沈み、敦也自身の目の前には大きな大きな生命力溢れる大樹が、少量の月明かりに照らされながら、ただ風に揺られて佇んでいた。

そこに、誰の賑わいも感じない。

 

 霊木祭の一件。

それ以外にも行った数々のいたずら達が脳裏で瞬間的に過ぎていく。

自らが周囲を考えずに暴れれば暴れるほど、敦也たちを見る目は増えていった。

奇異の目、羨望の目。形は何であれ、存在を認識する者が増えた。

同じくらいの子供たちからはヒーローのように見られ、何故か後を付いて来るようになったりもした。

 その行いが良いか悪いかの判別を付けられる人間はもう限られているが、敦也にとってはどうでもいい事だった。

 その行いによって、作られた夢。

 その時間によって、作られた夢。

 その仲間によって、作られた夢。

「随分、懐かしいものを見せてくれますね。」

ため息交じりに、敦也は呟く。

 

「おまんは、どこまでわしに、夢を見せるつもりなんじゃ。」

 

 自然と口から零れた敦也の問いを、真正面の大樹は葉の擦れる音でかき消す。

まるで答えることを拒否するかのように。

 

「…黙って続きをみてろ。ちゅうことかい。」

 

木々の揺れは、一層激しくなる。

その音は、さらなる夢への子守歌。

ほんの少し冷える風を感じながら、敦也は再び夢に堕ちた。

敦也達の初陣の時のと同じ月の光を、狂おしいほどに、美しい月の木漏れ日を浴びながら。

 

 

 

 

 




 
櫛野宮 密芽
3人組の一番上。
当時7歳の白髪赤目の活発な女の子。
いい着物を着ながら裸足で駆け回る。
明るい、いいとこの家のちょっと我の強い女の子。
小面の面を手に取ったのはこの娘。

海野 龍介
当時7歳の次男坊的立ち位置。
密芽のいたずらをやり切ろうとするしっかり者。
木登りが一番得意で、早い登り方を2人に教えたうえで木の上で一番俊敏。
天狗の面を手に取ったのはこの少年。

瀬文 敦也
当時7歳の悪ガキ3人組の一番下。
話し方が幼く、めちゃくちゃ訛っている。
ほぼどっかのイゾーさんになっちゃった。
童子の面を手に取ったのはこの少年。

神社の老人
ハゲた。
櫛野宮に仕えるジジイ。
ヅラを祀り上げられた。かわいそう。

この百鬼夜行のこの3人、年の違わない子供です。
噓みたいだろ?この時点で全員7歳なんだぜ。
どうでもいいけど、小説書いていらっしゃる他の方々
自分のマイページにTwitterリンクとか貼ってないけど、自分の方が異端なんすかね。
評価と感想お待ちしております。
気軽に書いていいと思ってるんであれ。

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