TS劣等生の婚約者   作:排他的

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答辞

達夜がエリカと美月、そして残る2人の女子生徒と話していた頃、カメラを弄っていたはずの桜歌は講堂の壇上にいた。手にはカメラを持っている。

 

「深雪ちゃんにちゃんと見ていてくださいと言われてちゃんと見ないわけが無いじゃないか。ついでに至近距離で写真を撮ってアイツの墓に供えといてやる……」

 

何故桜歌が壇上にいるのに誰も騒ぎ立てないのか、それは彼のウルトラチート特典『抹消』によるものが大きい。

 

この抹消、元々は『僕のヒーローアカデミア』の『相澤消太』の個性である抹消から来ているものだ。桜歌が持つ抹消は相澤消太の抹消をさらにチート化させたものではあるが。

 

やろうと思えば魔法技能だろうとなんだろうと消せるものを何でもかんでも消すことが出来る。目で見なくても消すものを心の中で思い浮かべれば消せるため、もはや別物と言っても過言じゃない。

 

桜歌は今回、自分の存在と自分が出す音を消した。これによって誰も桜歌がどこにいるのか、何をしているのか把握することが不可能になっている。

 

「こうなってしまえば達夜だろうがハゲ忍者だろうが把握することは不可能だ。誰であろうと俺を把握はできない……1回把握されかけたけど」

 

存在感と音を消しているだけなので監視カメラには普通に残る。講堂に監視カメラはないということを確認しているので存在感と音だけで見えないようにしているが、バレかけた時の教訓から殺る時は己に関する全ての誰かが感じる感覚を消している。

 

「にしても始まってから結構経つのに深雪ちゃんの答辞まだ始まらないのかぁ……」

 

実は達夜達が自己紹介を終えて少し経った頃には入学式は始まっており、今は長ったらしい来賓のジジババ共の話が続いている。唯一いい話だなーと桜歌が思ったのは校長の話だけで、残りはつまらなくてついちょっかいを入れそうになっていた。

 

「……そうだ、深雪ちゃんに話しかけてみようかな。深雪ちゃんだけ見えるようにすればいけるでしょ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……桜歌さんがいない!?)」

 

深雪が異変に気づいたのは入学式が始まってすぐの事だった。桜歌が自分のためにカメラを何台も使って撮ってくれることに嬉しさを感じていたのだが、いつの間にか消えていたのだ。

 

「(まさか、私とお姉様をおいてどこかに消えてしまったのでしょうか……)」

 

自由奔放な桜歌ならあり得ると思い、少し心の中が寒くなる。不安から本来は制御できているはずの自分の魔法が制御できなくなる。

 

「深雪ちゃん、深雪ちゃん」

 

「……うひゃあ!?……桜歌さん!?」

 

「俺の魔法忘れてない?」

 

「……抹消で存在感を消したんですか」

 

深雪は驚きから落ち着くためにはぁはぁと息を整えなければならなくなった。そりゃあいきなり横から姉の婚約者が出てきたら驚くだろう。動悸も激しくなるに決まっている。

 

「一体何をしに来たんですか……お姉様は?」

 

「なんか女の子達と仲良く話してて……話しかけずらいから深雪ちゃんの方に来たのさ……」

 

「なるほど……」

 

さも達夜が悪いと宣うが、カメラを弄って誰も話しかけんなオーラを醸し出していたのは桜歌の方だ。

 

まぁそんなことは露も知らない優しい深雪は桜歌に優しい目を向ける。

 

「まぁ今の俺は深雪ちゃんにしか見えないから、深雪ちゃんの写真を撮りまくってついでにアイツの墓に供えてやろうかと」

 

「アイツって……お母様のことでしょうか?」

 

「うんうん。可愛い娘の入学式の写真を墓に供えに行こうかなって」

 

「……お母様、まだ死んでないんですけどね」

 

懐かしそうにする桜歌に対して深雪はツッコミを入れる。

 

「え〜でも俺が診療しようとすると、『あんたなんかに診てもらうくらいなら死んだ方がマシよ!』って言われるんだけどな〜」

 

桜歌の言うアイツ、深雪の言うお母様とは司波深夜のことである。再婚して出番が1回くらいしかないヒステリオバサンではない。

 

司波深夜は達夜と深雪を産んだ後、達夜に仮想魔法演算領域を植え付けて感情をなくさせてそのまま数年後に死ぬ運命だったのだが……

 

桜歌と言う異物(チート転生者)のせいで達夜は仮想魔法演算領域を付けられただけで感情は健在で、深雪と達夜の懇願で寿命を伸ばされたお陰でまだ生きていた。

 

ただ病気とかは無くせなかったので月一で桜歌が診療しないといけなくなった。普通の病院は色々とまずいので。

 

『深夜オバサンの面倒見るの楽しいわーあっはっはっは』

 

『クッソ、コイツウザすぎる!!』

 

『落ち着いてください、奥様!』

 

『そうそう、落ち着けよ。血圧上がるぞー』

 

『殺す!』

 

大体の四葉家の大人が嫌いな桜歌は当初は深雪と達夜のお願いを聞くだけ聞いて実際には実行しなかったのだが、桜歌が寿命を伸ばせば永遠に深夜を弄りまくれると気づいたためにそれをやったのだ。

 

「お母様はツンデレ?と言うタイプらしいので仕方ないですよ」

 

「それ誰に聞いたの?」

 

「牛山さんからです」

 

「なるほど」

 

まさか娘からツンデレ認定を受けているとは思わないだろう深夜に対して少し笑ってしまう。

 

「……そろそろみたいです」

 

「お、頑張ってね〜」

 

深雪は答辞の時間になると立ち上がって壇上へと向かう。桜歌はその様子を見送ってから深雪の姿をカメラで撮り始める。

 

「……昔とは比べ物にならないくらい良い子になったな」

 

桜歌は答辞を行う深雪を見て感慨深げにそう呟いた。

 

『何故あの無能と仲良くするのですか?』

 

「…………本当にさ」

 

そんなふうに過去を振り返っていた桜歌は、席に戻ったら勝手に行動したということで達夜に頭を1回殴られた模様。




☆司波深夜のスペック
名前:司波深夜
得意魔法:精神構造干渉系魔法

原作主人公の感情が薄くなった要因。桜歌によって寿命は伸ばされたが、定期的に錬金術などを用いた検診を受けなければならない上に毎月愉しそうにする桜歌の顔を見なければならないために寿命を伸ばしたことをちょっと後悔している。

別に達夜のことは嫌いではなく、桜歌の気まぐれで渡される達夜と深雪の写真を見て嬉しそうにしている面もある。口には出さないが。というか嫌いだったら仮想魔法演算領域は設置していない。

最近の悩みは長年連れ添ったガーディアンが達夜と深雪の方に行こうとしていること。
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