「うぅ〜痛いぞ達夜〜この天才の頭を叩くなんて、馬鹿になったらどうするのさ!」
「もう1発行く?」
「いやあのマジでやめて、拳骨は本当に痛いから」
頭を抑えて痛がる桜歌を見ながら手を振り上げる達夜。桜歌はふざけるのをやめて達夜を抑え始めた。
「……津久葉くんってそういうキャラなんだね。寡黙そうなイメージがあったんだけど……」
「コイツはおふざけが大半よ」
先程深雪の写真を撮りに気配やらを抹消していたのがバレて殴られている桜歌。達夜は美月の霊子放射光過敏症を警戒していたのにそれを無視して勝手に行動した罰だそうだ。
殴られ終えた後、桜歌は達夜とエリカ達と共にIDカードを受け取りに行く。窓口は綺麗に一科と二科に別れていたが、桜歌は気にせず二科の列に並んでカードを受け取った。
「達夜、どのクラスだった?」
「Eだ、桜歌は?」
「Aだね」
桜歌と別のクラスだということは一科と二科に別れている時点で分かりきっていたのだが、やはり残念なのは残念なのか、露骨に肩を落として残念がっている。
それを慰めるようにエリカと美月が同じクラスだとアピールするが、やはり下がった肩は中々戻らない。
エリカと美月以外の2人の女子生徒は別のクラスだったようで2人は少し残念がりながら自分のクラスのホームルームへと向かっていく。
「達夜はどうするんだ?ホームルーム」
「いや桜歌が1人になるでしょう、帰るわよ。それに深雪と約束しているでしょう?」
「……あぁ、そうだった」
桜歌に配慮してホームルームに誘おうとしていたのを我慢していたエリカと美月の心中を察して達夜にホームルームをどうするのか聞くが、達夜はホームルームは行かないようだ。
「深雪ってもしかして……」
「あぁ、司波深雪。達夜の妹で、今年の総代だよ」
「えっ、そうなの!?じゃあもしかして双子?」
エリカが驚いている。深雪と達夜では見た目や喋り方など違いが多いために2人が姉妹だとは思っていなかったのだろうか。
「よく言われるけど、私が4月生まれで深雪が3月生まれなだけよ。どちらかがひと月でもズレていたら2人とも違う学年だったでしょうね」
「いや〜本当に奇跡だよね〜」
「そうなんだ……でもそれって結構複雑なんじゃ……」
エリカは『優等生の妹と一緒の学年なんて大丈夫なの?』と言ったような侮辱とも心配とも取れるような発言を言ってしまったため、『やっちゃった』みたいな顔をしていたが、桜歌と達夜は普通にスルーした。2人とも言われ慣れてるし、聞き慣れてるのだ。
「しかしまぁよくわかったね、柴田さん。達夜の苗字は割とよくあるものなのに」
「え、司波って名字は珍しいでしょ!」
「俺の地元に割といるぜ?字は違うのが多いけど」
「え、そうなんだ」
エリカの心配を取り払うように話を変える桜歌。達夜からよくやったというアイコンタクトによるメッセージめいたものが送られる。
「面差しが似ていましたから……」
「そこまで似てるかしら……」
達夜が自分の顔に手を当てて思案する。深雪の見た目は美少女だが、自分は……と考えている様子が見て取れる。
「安心したまえ、達夜。君は十分可愛いぞ?」
「桜歌に言われてもいつも言われてるから実感湧かない」
「いえ、確かに顔も似ていますが、2人はオーラの面差しが似ています。凛とした雰囲気がそっくりです」
「あぁ、確かに!そう言われれば似てるわね!」
「千葉さんはお調子者か」
「そんなことないよ!」
達夜の容姿に関することを一通り話すと、桜歌は美月に向き直る。
「しっかし、人のオーラが見えるなんて随分とまぁ……
桜歌の言葉に美月は顔を青ざめさせる。
「え、メガネかけてるのに?」
「そういう意味ではないかな……」
「(やっと理解したわね……本当に力をこの娘の前で使わないようにね、桜歌……)」
「(めちゃくちゃ弄りがいがある娘だ!学校生活がまた楽しみになってきたなぁ!)」
達夜の胃が痛くなるまで、もう少しも時間は残っていなかったりする。
達夜と桜歌が知り合った子達と話している頃、深雪は講堂を出て桜歌達のいる方へと向かっていた……向かいたかった。
「司波さん、さっきのすごかったですよ〜」
「こんなに綺麗で、頭もいいなんて!」
「(……この人達、どうしましょう)」
深雪は目の前に群がる同学年の生徒達をどうしようか悩んでいた。きつい言葉を浴びせて退かしてもいいが、それをしてしまうとこれからの学校生活が送りづらくなる。
桜歌か達夜が来て連れ出してくれないかと考えていると……
「司波さん、お姉さん達と待ち合わせをしているのではなくて?」
「え?はい」
先程まで答辞の内容について話していた真由美が助け舟を出してくれた。周りの生徒から抜け出すことに成功し、真由美と共に達夜と桜歌の元へと向かう。
「姉と桜歌さんのことを知ってらしたんですね」
「先生方が話していたのを聞いたのよね。お姉さんの方がペーパーテストが全科目平均96点、しかも魔法理論と魔法工学が満点。津久葉くんは全教科満点に加えて実技も深雪さんより上って聞いてるわ」
「……つまり総代は本来桜歌さんなんですか?」
「ええ。なんで総代として壇上に立ってくれなかったのか不思議で仕方ないわ」
真由美の疑問を当たり障りのない言葉で返しながら、深雪は氷のオーラを纏い始めていた。
『あのね、深雪ちゃん。俺は現代魔法にあまり精通してないし、達夜は魔法理論やペーパーテストが満点でも実技がダメダメなんだよ?仕方ないことさ』
「(なーにが現代魔法に精通してないですか!ガッツリ使いこなしてるじゃないですか!?帰ったら覚悟してくださいね……!)」
「(なんかめっちゃ怒ってるわね……)」
真由美は深雪の怒りを確かに感じ取っていた。気づいただけで何もするつもりもないが。
「会長、そろそろ本題を……」
「話に割り込むのは無粋よ?」
「ですが……」
『服部刑部少丞範蔵』という2年生にして生徒会副会長が真由美に話しかけるがその発言は跳ね除けられてしまう。尚も食い下がり、真由美に話しかける。
服部が話したいのは深雪の生徒会勧誘の話。世間話もいいがそろそろ話を進めたかった。
「……あら、あそこにいるのお姉さん達じゃないかしら?」
真由美が深雪に桜歌達がいる方向を指さすと深雪はそこに駆けていく。真由美もニコニコしながら深雪の後を追う。
「お姉様、桜歌さん、お待たせしました」
「案外早かったと思うよ?深雪ちゃんのことだからもっとかかるかと思ったもん」
桜歌は深雪がもっと大量の人に囲まれて1時間くらいはこっちに来れないのではないかと考えていた。
「桜歌さん、そちらの方達は……」
「千葉さんと柴田さんだ。入学式で一緒の列に座ってねぇ。深雪ちゃんが来るまで話してたのさ」
「そうですか」
桜歌が簡単な紹介をしたが、自己紹介をしないのはまずいと思ってエリカと美月は深雪に自己紹介を行なう。
「さて、深雪ちゃんも来たしそろそろ帰りますか」
「そうね」
達夜と桜歌は深雪が来たら帰るつもりだったのでそのまま校門に向かって歩き始める。
後ろで真由美と服部が深雪を帰すか帰さないかで話していたが、桜歌はそれを無視した。仮に話があると言われても家の用事があるんですと言って帰ろうとするだろう。
「ところで桜歌さん、先程嘘をつきましたね?」
「え?この俺が嘘をつくことなんて滅多に「総代、蹴ったそうですね」……深雪ちゃん、どこでそれを……」
「七草先輩から教えてもらいました。帰ったら覚悟しておいてください」
「……実家に帰りたくなってきた」
「諦めなさい、こんなことするからいけないのよ」
「達夜が冷たい!」
桜歌は大きい声を上げながら逃げようとするが、達夜によって掴まれて逃げられなくなった。どうやらお仕置を食らうのは確定らしい。
一緒に帰っていたエリカと美月は苦笑いをしていた。
『主席の妹と劣等生の姉か』
『
『よく同じ学校に入学したな、恥ずかしくないのか?』
入学式の後、深雪と合流した時にヒソヒソと達夜に対して深雪に着いてきた生徒達が言っていた言葉である。
桜歌はしっかりとその声を耳にしていた。ニコニコと笑顔を浮かべていた裏で達夜に向けて言われていた言葉に怒っていた。
「……文句をつける奴らなんて実績で黙らせればいい。達夜が何も言われず、楽しく学校生活を送れるようにしないとね」
桜歌くんが司波家に住むことになった経緯
登場人物:桜歌、夕歌(桜歌の姉)
夕歌「お前ウザイから深雪さん達のところ行って」
桜歌「え?」
家族全員がめちゃくちゃやらかす桜歌に疲れてしまったため、手綱を握れて尚且つ桜歌を送り付けても迷惑がるどころか嬉しそうにする姉妹の所に住ませた。
四葉家ほぼ全員納得している。(一部の例外あり)