小高い丘の上にある九重寺。そこは『九重八雲』という魔法師界隈で高名な忍びが住職をしているお寺である。
そんな九重寺にて、達夜は深雪と桜歌を連れて稽古を受けに来ていた。どうやら今日は乱取りを行っているようで、達夜は自分に向かってやってくる修行僧達を魔法を使わず徒手空拳で迎え撃っている。
達夜の稽古の様子を見ていると深雪が桜歌に疑問に思っていたことを聞いた。
「いつも思うんですが桜歌さんは参加なさらないのですか?」
「いや参加したいんだけどね」
「桜歌くんが参加すると皆一瞬でやられちゃうから修行にならないんだよね……」
「相変わらず神出鬼没ですね、八雲先生」
深雪の疑問に答えようとすると別の声がその疑問に答える。この寺の住職である九重八雲が姿を現して深雪の問に答えたのだ。
ちなみにいきなり現れた八雲に深雪は少し慌てた。気配を感じていた桜歌は気にせずに話しているが。
「そりゃあ僕は忍びだからね、職業病というやつさ」
「今の時代に忍者なんて職業はありません。そんな職業病は早急に治す事をお勧めします」
「忍者なんて俗物と一緒にしないでよ。僕は由緒正しい忍びなんだから」
「それは存じているのですが……」
「……深雪ちゃん、言いたいことは分かるけど、八雲先生はこういう人さ」
八雲はとても軽薄そうな言動が多い人物である。果心居士という室町時代末期に存在していたとされる幻術師の再来と謳われ、『今果心』の異名を持つ古式魔法の伝承者なのにだ。
ただ、八雲に対して桜歌は礼儀をきちんと守っている。達夜達の実家である四葉家の当主含む親戚連中には一切の礼儀も敬称もないが、八雲に対しては『八雲先生』と呼び、おちゃらけた話し方をやめている。
言動に軽薄さが出ていても、尊敬に値する力を持つ魔法師だと桜歌は思っているのだ。
「それが第一高校の制服かい?」
「はい、昨日が入学式でした」
「そうか……う~ん、いいね」
「……今日は入学のご報告にと……」
「真新しい制服が初々しくて、清楚の中にも隠しきれない色香があって」
「……あの」
「まるで咲き綻ばんとする花の蕾。萌え出ずる新緑の芽。そう……これは萌えだ!萌えなんだよ深雪君!」
制服を着た深雪に対して八雲はその姿についての感想を言う。忍者なんて俗物と一緒にするなと言っていたのに八雲の方が俗物ではないかと若干引き気味で考えてしまう深雪。
セクハラなのかよく分からないが深雪が引くようなセリフを吐く八雲に攻撃しようとする影がひとつ。
「ムッ!」
「先生、深雪が怯えています。やめていただけると嬉しいのですが」
達夜だ。達夜の手刀は空を切っていた。八雲は達夜の手刀を受け止めるのではなく避けていた。
「いや僕が悪いのは分かるんだけど……気はやり過ぎじゃないかな?」
「先生にはこれでも足りないくらいです。桜歌を止めるのにも」
達夜は八雲に対して気を用いた手刀を振るっていた。分解と再成という魔法を
気だ。気の力というのは素晴らしく、魔法を行使する力がクソカスな達夜でも身に纏わせて使うことが出来て、更には戦闘能力が格段に向上する。
その力は八雲が避けることを選択するほどの威力を発揮していた。
「止めなかった桜歌は後できっちりと……ね?」
「……あ、俺にも流れ弾が飛んでくるのね」
達夜はそのまま八雲と組手を行う。達夜は気を全身に纏わせて身体能力を拡充させ、八雲のスピードについて行き攻撃を浴びせていく。
対して八雲はその攻撃を捌きながら達夜の身体に的確な動きで攻撃を与える。達夜はそれらの攻撃を避けて攻撃仕様とするが次第に押されていく。
「(…相変わらず凄まじい技量だ、なら!)」
達夜は気を込めた前蹴りを八雲に浴びせて八雲に防がせ、後ろに飛んで両手を合わせる。
「……またやってるね」
「止めるんですか?」
「制御出来なかったら止めるけど……様子見かなぁ」
深雪が心配そうな目で達夜を見る。対して桜歌は達夜の構えを見て達夜の動きではなく
達夜は両手を合わせて想子と気を合わせる。本来なら相反し、合一することは不可能であるはずの2つを達夜は無理やり合わせる。
その技術こそ『咸卦法』。達夜が気を使い始めた頃、何となく想子と合わせたらめちゃくちゃ強い力が使えるんじゃないかとなんの気のなしに行使したとある世界では
ちなみにこれを達夜が使っている姿を初めて見た桜歌は『…なんで使えるのかな?』と言いながら必死で達夜を止めていた。
何故止めていたのか、それは…
「やっぱりそれを使うのはやめた方がいいと思うよ?」
「先生や桜歌に勝つにはこれを使わないといけないんです」
人間が扱うには過ぎる力を使った者に与えてしまうからだ。達夜が埒外の力を行使しうる存在であったとしても、この咸卦法によって生み出されたエネルギーを使いこなすのには苦戦してしまう。
完璧に扱えて30秒程度。その後はエネルギー自体が暴走してしまう。達夜自身が抑えきれずに。
先程までとは打って変わって今度は八雲が達夜の連撃に押され始める。咸卦法のエネルギーは達夜の身体能力を格段に引き上げているのだ。
「これは本当に捌くのも避けるのも一苦労だよ…!」
「それでも当たらない!」
咸卦法のエネルギーは強大だが、それでも八雲には攻撃が当たらない。まぁ当たったらヤバいってことが分かっているから八雲も必死で避けているのだが。
「ならこれで!」
「それはまずいかなぁ」
気の抜けた声を上げながら桜歌は手を達夜の方に向ける。達夜は手をズボンのポケットに入れてそれを凄まじい速さで抜き、とんでもない威力の拳圧を飛ばそうとしていた。
達夜がやろうとしているのは『居合拳』。拳を刀に、ポケットを鞘に見立てて発動する居合切りの拳バージョンである。
普通の状態なら桜歌が防ごうとする威力は無いが、今は咸卦法を使っている。凄まじい威力の拳圧が放たれることだろう。
八雲も咄嗟に避けようとするが、それを発動する前に桜歌が動いた。
達夜を今にも強力な攻撃を放ちそうな『怪物』と見立てて、どこからともなく現れた小型の要石が達夜を囲み、結界を作り出す。
『怪物』を閉じ込める『迷宮』。哲学兵装として作られたそれは完璧に達夜を閉じこめる。
「発動前に…ダイダロス・エンド」
要石から想子波が飛び、共鳴することで達夜を酔わせ、気絶させる。達夜を傷つけずに気絶させる為に生み出した簡易版の哲学兵装である。
「……はぁ、負けず嫌い、何とかならないかなぁ」
達夜は負けず嫌いである。婚約者である桜歌に負けたくないという一心で、勝負事になるとブレーキを踏めなくなってしまう。
八雲との稽古で咸卦法を使うのはこれが初めてでは無い。使うなと言っても使ってしまうのだ。
「……八雲先生、これで帰りますね」
「咸卦法だったかな?使いこなせるようにね〜」
危うく九重寺を壊しそうだったのだが、そんなことは気にしていないかのように気絶している達夜を背負う桜歌と深雪を見送る八雲。
感情を失わなかったこの世界の達夜は桜歌の抑え役であると同時に時折ブレーキが踏めなくなる問題児だったりする。
……分解と再成を封じといて良かったと達夜の負けず嫌いが判明した瞬間に桜歌と深夜は胸をなでおろしたりしていた。
☆九重八雲のスペック
名前:九重八雲
得意魔法:忍術・古式魔法
達夜の稽古相手で『果心居士の再来』、『今果心』という異名を持つ魔法科高校の劣等生の世界で最強クラスなキャラクター。
原作では入学編の際に司波達也に対して体術では敵わないかもと言っていたが、今作ではそんなことはなく、達夜の気を伴った攻撃を軽々と避けている。咸卦法の攻撃も避けてはいるが、結構ギリギリ。
八雲先生と桜歌が呼んでいるのは忍術と古式魔法を桜歌以上に使いこなしているから。最初は舐め腐った態度をとっていたが、態度を変えている。
☆咸卦法の小話
魔法先生ネギま!に登場する
達夜が気の使い方を桜歌から学んだ後に自分が持つ膨大な量の想子を気みたいに使えないかと考えてたら合一していた。初めて桜歌が達夜が咸卦法を使っているのを見た時『想子って魔力と同じ扱いなんだこの世界』と思った。
達夜は咸卦法を30秒くらいしか使いこなせず、それを超えると咸卦法によって生み出されたエネルギーが暴走して周囲に壊滅的な被害をもたらす。
1回四葉家でやらかしており、シール・マジックを解除して再成を使う羽目になった。
今作の達夜は原作司波達也と比べて若干弱い為、気を使って互角、咸卦法を使うことで漸く上回る。
☆簡易版ダイダロス・エンドの小話
戦姫絶唱シンフォギアXVに登場するノーブルレッドの切り札。怪物を閉じ込める結界を青いブロックを使って展開する。そして衝撃波を飛ばして中にいるモノを倒す技。
簡易版ダイダロス・エンドは小さい要石を繋いで結界を作り、要石から想子波を飛ばして相手を気絶させる。要石を1つでも破壊すれば簡易版ダイダロス・エンドは無効化される。
ちなみに要石には一つ一つに細かい術式が彫り込まれており、桜歌はこれを全部手作業で作った。