無事に青雉から逃げたシロウは赤い土の大陸から下に向かって落ちていた。自分に減速の魔術をかけたおかげで風圧を感じる事なく安全に降りているため体には影響は無い。
シロウは先ほどの戦闘で自分の課題を再確認していた。
「『三池典太』を使わずに黒鍵と魔術だけで戦いましたが覇気の有無で言えば習得していない私では、今後の対ロギア戦では圧倒的に不利だ」
覇気は3種類存在する
相手の心を読み敵の攻撃を避ける“見聞色の覇気”。
鍛えれば、未来を見ることも可能になる。
武器や体に纏わせ自然系にも攻撃することが出来る“武装色の覇気”。
攻撃にも防御にも使え、自身の力を底上げする。
相手を威圧する力“覇王色の覇気”
第一に優先すべきは武装色の覇気だ。青雉は覇気を纏わせた氷のサーベルで魔術で強化されていた黒鍵を難なく破壊して見せた。それだけ覇気の力を纏った武器と纏っていないのとでは威力は段違いなのだ。これを習得すればさらに戦闘での視野や選択が広がる。今後、自然系と戦うためには覇気の取得は優先するべきだ。
シロウが先ほど使った魔術 『アグニ』 は元々は、施しの英雄『カルナ』が使っていた炎だ。あれは宝具級の威力がある為、使用する際は膨大な量の魔力が必要である為多用はできないが…この体の魔力は調べたところバカみたいな量の魔力がある為、ある程度の英雄の技は再現できる。
それこそ
仮にだが、自信にある膨大な魔力が枯渇し、魔術が使えない、魔術が封じられてしまった状況を考えると魔術以外の攻撃方法が欲しいのだ。覇気は勿論のこと海軍で開発された“六式”などもある程度習得したい。
「まずは、覇気の取得を急がなければ。だが、一人では間違いなく行き詰まる…どうしましょうか?」
そうこう考えているうちに赤い土の大地を下り終え止めてある船を確認するがそこに船は無かった。助け出した奴隷達が乗って行ったのだろう。彼らの脱出に使われたのならよしとしましょう。幸い食事は数日分は積んでいましたから大丈夫でしょうし。
「船が無いとなりますと…一番近いシャボンディ諸島に行きましょう。運が良ければあの人・・・に会えるかもしれませんからね」
シロウは頭でそこに行けば目的の人物に会えると信じて飛行魔術を使い飛んだ
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マリージョア襲撃事件から3日後
〜シャボンディ諸島〜
シャボンディ諸島の13番GR にひっそりと佇む建物「シャッキー'S ぼったくりBAR」。
ここでは現在、金髪と立派な口髭と特徴的な眼鏡を掛けた男性が朝買った世界経済新聞を広げ読みながら酒を飲んでいた。
彼が元ロジャー海賊団副船長の『冥王』シルバーズ・レイリー。現在、彼は海賊稼業から身を引き、シャボンディ諸島の職人がやっているシャボンを使った船のコーティングを担うコーティング職人として余生を送っている。
「あぁシャッキー…この新聞に載っている天草四郎時貞という人物についての情報はないか?」
「それが全然よ…全く情報がないのよ」
「そうか。君が知らないとなるとこの少年は随分と面白い子だな」
シロウが引き起こしたマリージョア襲撃事件はすぐに世界を駆け巡った。ある者は『英雄』と彼を称え、ある者は『世界的大犯罪者』と彼を恐れた。
たった一人でマリージョアを襲撃し様々な種族の奴隷達を助けだし大将を欺き逃走したことは世間に伝わる衝撃は想像に難くない。若さとは裏腹に計り知れぬ実力を有する謎の青年…天草四郎時貞。レイリーは彼に興味を示していた。
「あら、レイさん。この子が気になるの?」
「気にならない方がおかしいさ。君はどうなんだ?」
「そうね…少し気になるわね」
「…ほう。やはり君もか」
チリンチリン…
「あら、いらっしゃッ…あら?」
「ん?ほう…」
扉をあけて入ってきた人物はたった今話していた、たった一人でマリージョアを襲撃した修道服と赤い外套を身に纏う褐色の青年…天草四郎時貞だった。
「どうも。近くにお店がありましたのでこちらに寄らせていただきました」
「君が…天草四郎時貞くんか?」
シロウは目を見開き、その反応を見たレイリーは笑みを深める。
「ご存知でしたか…しかしなぜ名前を?」
「ハッハッハ!!ご存知も何も新聞に載っているぞ」
シロウは笑っているレイリーから手渡された新聞を見て苦笑いを浮かべた。
「ここまで広まっていましたか…まさか伝説の海賊にも名前を知られていたとは…恐縮です」
苦笑いしながら頬を書くシロウ。
「それにしても、君どうしてここに来たのかね?ただ、酒を飲むために来たってわけではないのだろう?」
「そうですね…貴方の海賊としてのお話も聞きたかったのですが。単刀直入に言います。教えてくれませんか?覇気の使い方を」