異世界灯台守の日々   作:くりゅ~ぐ

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第126話 大灯台の蓮華

 

少し冷たさを風に感じた

 

秋風の旅人が目的地に達しようとしてるのだろう

 

マデリン嬢からの手紙をもう一度読んだ。

 

~~~

大灯台の篝火台から共に見たバハラの街並み

 

昇降機にて怯える(わたくし)の手を包む暖かさ

~~~

 

あれはポートマン家の皆を大灯台の篝火部屋と

展望台に招待した時だ‥‥

 

 

「サリバン殿、本日は御招待有難う御座います」

 

「いえいえ、マデリン嬢と約束しましたのでね、だからお気になさらずポートマン殿」

 

「しかしマデリンがサリバン殿に無理を言い強請(ねだ)り‥‥」

 

「まぁ私がマデリン嬢に大灯台の事をかなり話しましたからね、興味を持たれた原因を作った様な物です」

 

「申し訳ありません」

 

「あー 頭を上げて下さいポートマン殿、私はこれでも一応は特級官吏です御招待する権限もあります、そんなに手間も掛かるものではありませんし大丈夫ですよ、まぁ今日は気にせず楽しんで下さい」

 

うん、別にそんな気にしなくても良いのに、

子供のちょっとした可愛いおねだりなんだ、

まぁ相手は特級官吏だからな気持ちは分からんでも無いが‥‥

 

マデリン嬢をチラッと見ると大人しくして居る、

少し俯いてるのは両親に怒られたかな?

 

それか注意か? 折角の大灯台見学ツアーなんだ、

前にも怒られてるはずだし余り萎縮させるのもいけないな‥‥

 

「有難う御座いますサリバン殿」

 

「いえいえ本当にお気になさらず、さあさあ行きましょうかポートマン殿、あー 所でマデリン嬢の手を取っても宜しいですかポートマン殿?」

 

「勿論です、マデリン、サリバン殿がエスコートして下さる様だ、失礼の無い様にな」

 

「はい‥‥ あの‥‥ ネイサン様、今日は申し訳ありませんでした、マデリンが無理にねだってしまって‥‥」

 

「大丈夫ですよ、私は気にしてませんし大した事でも無いですから、さぁマデリン嬢今日はご案内させて頂きます、お手を取っても?」

 

「は はい! お願いしますわ」

 

ん、やっと笑ったか、折角なんだ楽しんで貰わなきゃな、それにこの子には笑顔が似合う。

 

ポートマン家は父親と母親、それにマデリン嬢と二歳になる妹と生後三ヶ月の弟、それに乳母の六人だ。

 

六人共が大灯台の上に上がるのは初めてらしい。

 

まぁ抽選に当たらなきゃ基本的に上には行けない。

 

それがポートマン家の様な大きな商会であってもだ、例外は大灯台で勤務する者の家族だがそれでも無制限と言う訳では無い。

 

寧ろ制限がかなりある。

 

それでも抽選を経てと言う人間に比べれば、遥かに恵まれてるしマシではある。

 

大灯台の上に行くには基本的にだが、普通は抽選によってのみしか上がる事が出来ない。

 

そして本当の意味での例外、それが俺みたいな特級官吏だ。

 

本当、特級官吏の権限は大きい、大概の事は出来るし制限も無い事が多い、と言うより出来ない事の方が少ないと言うべきか?

 

そりゃ皆なりたがるわ。

 

てか今日も大灯台を見物してる奴が多いな、

中に入れないが近くで見物してる奴が結構居る、まぁ入れないからこそせめて近くで見たいと思うのかな?

 

大灯台を見物する者達目当てに屋台が結構出てる、

その為ここら辺は何時も賑わってる。

 

家族連れやカップルも多い、ベンチもあるし小さいが公園もあるし、並木通りの様な物もあり、観光客にとっては良い見物スポットになっており賑わい、華やかだ。

 

まぁ大灯台で働いて居る奴にとってはただ邪魔なだけだと思ってる奴が多いがな。

 

「そろそろ帰ろうか? マーラに任せて来ちゃたし」

 

「そうね、マーラに任せて来ちゃったしあんまり遅いと悪いわよね」

 

「気を利かせてくれてたまには二人で行ってこいって言ってくれたけど、あんまり遅いと村に帰るのも遅れるし、そうなったら()親父もおふくろも煩いからな」

 

「ごめんね‥‥ 私に子供が出来ないからお義父さんとお義母さんにも言われてるのよね?」

 

「子供はその内何時か出来るよ、二人共煩いけど出来れば何にも言わなくなるし気にすんなよ」

 

「うん‥‥」

 

 

俺と同い年位か? 子供って事は夫婦かな?

 

女の方は俯き気味で髪で顔も隠れて居るから表情は分からないが、多分愉快な表情では無いだろう。

 

世界が変わっても同じ様な事で人間ってのは揉めるもんだな‥‥

 

子供が出来ないのは女だけのせいでは無いのに、

男にも原因がある場合もあるんだが‥‥

 

この世界ではその辺りが認知されて無いからな、

まぁ前世でも何故か女のせいになってたが‥‥

 

「ネイサン様どうされたのですか?」

 

「何でもありませんよ、この辺りは人が多いから気を付けて下さいね、もう少ししたら人が少なくなり歩きやすくなりますから」

 

「はい! 分かりましたネイサン様」

 

うん、元気になったな、この子は何時もみたいに笑顔が一番だ。

 

てか何時にも増して見られてるな、まぁ特級官吏の服装だし短剣も身に付けてるから目立つんだよ。

 

それに加えてドレスを着た少女、いや、幼女の手を引き歩いてるから余計目立つか‥‥

 

もう一つの服、現場服ならまだマシだったか?

いや、短剣を身に付けてる時点で目立つわ。

 

どのみち一緒か、それに今日は案内だからな正装の方が良い、格式ってのは必要な物だ。

 

「ネイサン様、今日はお祭りなのですか?」

 

「違いますよ、何故ですか?」

 

「お祭りの時のように屋台が出ているのです、いっぱい出ています、それにお祭りの日みたいにみんな楽しそうにしていらっしゃいます」

 

「あー そうですね、ですがこの辺りは何時もこの様な賑わいです、ですがそうですね、毎日が祭りと言えるかも知れませんね」

 

「そうなのですか? 毎日お祭りなのですか?」

 

「まぁ祭りと言っても賑わいや華やかさがそう見えるだけで祭りではありませんが‥‥ 祭りの様な賑わいと言うか‥‥ 説明が難しいですね、ですが祭りと言っても間違いではありませんね」

 

祭りでは無いが祭りの雰囲気とか空気感はある、

まぁ毎日が祭りってのも決して間違いでは無いんだよなぁ‥‥

 

軍人や大灯台職員や関係者用の専用道はあるにはあるが味気無いんだ、折角大灯台に行くならこの道を通る方が気持ちが盛り上がる。

 

まぁその道の入り口は屋台とか出てる広場の隣だから結局人は多いんだがな。

 

往き来する奴が多過ぎるんだ、とは言え今進んでいる道に比べれば遥かに通りやすい。

 

ん?

「マデリン嬢、もしかして揚げイモが気になりますか?」

 

「ち 違うのです、マデリンは食事を済ませて来ましたからお腹は減って居ないのです」

 

うーん‥‥

 

今、思いっきり見てたよな?

 

まぁ本人が違うと言うなら違うのだろう。

 

んー?

「もしかして飴細工が気になりますか?」

 

「そ それは‥‥ す 少しだけ気になります‥‥」

 

「今から大灯台に行きますから帰りにでも買いましょう、ですが祭りの時に買ったのはまだ食べて居ないのですよね? ここで食べるのなら帰りに買いますがどうします?」

 

うん、父親と母親を交互に見て困って居る、

てか前を見て歩かないと危ないんだがなぁ‥‥

 

「マデリン、欲しいのなら買ってあげるからサリバン殿に強請ってはいけないよ」

 

「そうよ、強請るなんてはしたない事はダメよ」

 

「まぁまぁそう言わず、ポートマン家の美しいお嬢さんに私が贈りたいのですよ、ですからマデリン嬢とエブリン嬢、それに奥方に贈るのを許してくれますかポートマン殿」

 

奥方が「まぁ」何て言ってはにかんで居る、

ポートマン殿が困って居るな、マデリン嬢がおねだりした様に感じたのか、それとも奥方をお嬢さん扱いした事か判断が難しいところである。

 

「ポートマン殿、折角来たのですお土産ですよ、それに私も飴細工の職人が作る所を見たいのです、御許し頂けないでしょうか?」

 

「分かりました‥‥ しかしマデリン、サリバン殿におねだりする様な事はダメだよ、分かったね?」

 

「はいお父様、その‥‥ 飴細工はいりません」

 

おいおい、何でだよ、まぁ今の言い回しならダメって聞こえたのかも知れないな。

 

「マデリン嬢、お父様は良いと仰ったんですよ、ただ人にねだる事はダメと言われましたが今は良いのです、ポートマン殿、お父様は許可を出されましたからね」

 

うん、そんな困った顔して俺とポートマン殿を見なくても良いのに‥‥

 

まぁ躾がちゃんとされてるって事なんだろうが、うん、ポートマン殿がマデリン嬢を見て頷いてる、それを見てパッと花が咲いた様に笑って‥‥

 

うーん‥‥

 

妹達を思い出すな、妹達もこうだったわ、

二年も会って無いからなぁ、大分背も伸びただろう

 

手紙では二人共元気にしてると書いてあったが、

俺に会えず寂しがってるみたいだが‥‥

 

「その‥‥ よろしいのですかネイサン様?」

 

「ええ勿論良いですよ、マデリン嬢は何を作って貰いたいですか?」

 

「マデリンは、マデリンは蓮華が良いですわ」

 

「蓮華ですか?」

 

「はい、マデリンは蓮華が良いのです」

 

思えばマデリン嬢が蓮華を好きになったのは間違い無く俺が原因だろう。

 

俺が着ていた官吏服には蓮華が刺繍されて居たし、

前世でも今世でも俺は蓮華が好きだ。

 

そしてマデリン嬢の心に色んな意味で蓮華が入り込んだ。

 

蓮華はマデリン嬢の中に花を咲かせた

 

その心の中に小さな蓮華の花を‥‥

 

 

 

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