異世界灯台守の日々   作:くりゅ~ぐ

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第129話 籠城すれど討ち死にはせず

 

笑い声が聞こえる

 

フィグ村の女衆達の陽気な朗らかな声が

 

老いも若きも歌う様な心地好さを感じる

 

皆明るいな、良い感じだよ、祭りの日に相応(ふさわ)しい気分にさせてくれるな。

 

うん、あの笑い声を聞いてたら気分が良くなって来たな、手伝いに来て貰って正解だったよ。

 

祭りまで少し時間がある、少し村まで行こうと思って向かい始めた時だった。

 

あっ! さぁ灯台に帰ろう、俺は何も見なかった、

うん、何も見てないし、アンナも見てない。

 

「守長、なんで私を見て灯台に帰るの?」

 

そりゃ勿論、面倒臭いからです。

 

てかどうせ褒めなきゃいけないだろうし、

気の利いた事を言わないとダメってパターンだろ?

 

「チッ‥‥ どうしたアンナ?」

 

「もう! しょーがないから今日は許したげるけど~ ねえ守長、私どう? 可愛いでしょ? 似合ってるでしょ?」

 

「・・・」

 

ホ~ラやっぱり‥‥

 

アンナの奴はおめかしをして居る。

 

祭りでおめかしをして居て、それを俺に見せに来たのだ。

 

そして褒めるまでチョロチョロと付き纏ってくる。

 

これは現時点では只の予想だが、十秒後には間違いなく現実になるだろう。

 

「ねぇねぇねぇ、私可愛い? 私、守長のお嫁さんになってあげて(・・・)も良いよ」

 

「・・・」

 

何時も思うが、コイツの自信の根元はドコにあるんだ?

 

てか何で上から目線なんだ?

 

しかも悪気は一切無く、素で言ってやがるのが怖い、本当スゲーよなコイツ‥‥

 

「ねえ守長、祭り一緒に行こ」

 

「・・・」

 

何が悲しくってチンピラ少女と一緒に行かなきゃならない?

 

うん、コイツは間違いなくチンピラだ。

 

だって、褒めるまで付き纏ってくるし、それって自分の要求を相手に飲ませるまで嫌がらせをするって事でもある。

 

そして憑き‥‥ 付き纏い行為だ。

 

これもチンピラが良くやる手で、例えば飲食店等の店舗を経営して居る相手の所に居座り、他の客が寄って来ない様に威嚇、又は嫌がらせをする。

 

うん、アンナが俺の側に居たがるのは他の客、

他の女が寄って来ない様にする為でもある。

 

 

チンピラってよりケモノ?

 

マーキングとも言うな。

 

「俺は仕事だ、今日一日な」

 

「嘘だ! 守長いっつも遊んでるでしょ? 今日だけ仕事な訳無い!」

 

「お前‥‥ 人聞き悪い事言うな、俺は毎日ちゃんと仕事を終わらせてから自由時間を楽しんでるわい、あのな、祭りだからこそだ、留守番がいるだろ? 灯台守のじい様達を祭りに行かせてやりたいから今日は俺がお留守番するんだ、それと灯台には来ても無駄だぞ、今日は誰も、灯台には誰も入れるなって言ってあるからな」

 

そう、灯台には誰も、正確に言うと女は入れるなと言ってある。

 

門番兼監視にフィグ村の男衆、荷物番をして居る奴等が居たのでそいつらに大銅貨を一枚づつ払い、入り口の所で数名に警備させて居る。

 

顔見せとは言え常に祭りの場に居なければならない訳では無い。

 

まぁとは言え、もう一つの任務である、フィグ村の女衆の護衛や力仕事等で、調理をする女衆の側にも当然フィグ村の男衆は居るし、荷物番の男衆も居る。

 

なので荷物番として灯台に残る者に依頼したのだ。

 

そう、最初は荷物番だけに頼むつもりだったが、

リドリー曰く、荷物番と女衆の手伝いは交代で行われると言われたので、ついでだからフィグ村から来た男衆全員に門番を頼んだ。

 

リドリー始め、フィグ村の男衆が全員良いのかと何回も聞いて来たが、俺が本気だと分かって皆喜んで居た。

 

うん、ちょっと監視すりゃ、それだけで大銅貨一枚だ、美味しく見えるんだろうな。

 

確かに話しだけ聞いて居れば簡単に思える。

 

だが美味い話には裏がある、そして俺としては気を抜いてやって欲しくは無い、なので釘を刺す事にした。

 

最初は何故、警備を頼むかと言う事を皆に話した。

 

祭りの間、灯台には基本的に俺と一人になる。

 

そんな所に女が来たら悪い噂が立ってしまう、

それに祭りでテンションが上がって、若い男女が灯台を密会場にでも使われたら困ると。

 

後、祭りの熱気に当てられたアホが夜這いならぬ、

昼這いにでも来られたら困ると。

 

うん、アンナ(チンピラ)とかジル(変態)とかアンナとかジルとかに来られたらたまった物じゃ無い。

 

アンナはまだ良い、所詮はケツの青いガキだ、

まだシャレで済まされる。

 

まぁロリコン疑惑と言う問題があるが、その件については今は、目を(つむ)ろう。

 

だがジルは駄目だ!

 

本気でシャレにならない、てか既成事実を作ったと周りに嘘八百をほざかれでもしたらマジでたまらない。

 

因みに今晩は跳ね橋を上げ、門も閉める予定だ。

 

俺は今晩は籠城する気満々である。

 

まぁアンナとジルの件はあえて言わなかった。

 

だが灯台をラブホ代わりに使われるのは嫌だし、

誤解を招く様な事をして追い込まれるのは嫌だ。

 

それは本心から思って居る。

 

なので女、それこそガキだろうが、ババアだろうが、若かろうが関係無く立入禁止にしたい。

 

男は良いが、一応股間を触って確認しろと言っておいた。

 

それを聞き、フィグ村の男衆は物凄く嫌そうな顔をして居たが、俺は冗談で言って居る訳では無いと言い聞かせた。

 

「女が男に変装して来たらどうするんだ?」と‥‥

 

そんなまさかとか、それは大袈裟なのでは等と(ぬる)い事を言いやがったので、嫌ならやらなくて良い、金は払わんと言ったら黙りやがった。

 

大銅貨が惜しいらしく、渋々ながら股間チェックは受け入れて居た。

 

だが俺も鬼では無い、なので合言葉を言った奴は股間チェックは免除にしてやった。

 

てか灯台守のじい様達に股間チェックを受けさせるのは流石に酷だと思ったのだ。

 

勿論合言葉は二つ言う様にさせた。

 

二重チェックだ、安全性は飛躍的に高まる。

 

因みに灯台守のじい様達には既に伝えてある、

そして合言葉を漏らしたら俺は本気で怒るからなと、伝えた。

 

じい様達は俺がマジだと感じたらしく、特に何も言われ無かったが、目は勘弁してくれと言って居たのを俺は見逃して居ない。

 

ついでに、もし合言葉を忘れたら股間チェックを受けなければいけないので、泥酔する程飲むなとも伝えてある。

 

そして村には伝えに行くが、伝えるのは当然村長で無くカレンに伝える。

 

そしてそれだけでは周知出来ない可能性と、知らなかった等と白々しく言い訳される可能性も考慮し、入り口にデカデカと立入禁止とその理由を書いた物を張り出しておいた。

 

フィグ村の男衆はそれを見て、安易に引き受けるべきでは無かったか? みたいな事を言って居たが、一度引き受けたからにはきっちり仕事はやって貰うと言い聞かせてある。

 

当然フィグ村の男衆は灯台に入って来て良いが、

女衆は一度出たら立入禁止なので忘れ物には注意する様に何度も注意した。

 

大体この村には顔見せがてらの手伝いではあるが、

顔見せのメインはあくまでも女衆なのだ。

 

その女衆が誤解を招く事をして居たら本末転倒である、その為しつこい位に言い聞かせた。

 

そして男衆には如何なる理由があろうと絶対に灯台の入り口を潜らせるな、入り込ませるなと何度も何度も言い、もし下手打ちした場合は罰を与えると。

 

そして下手打ちは連帯責任とし、十分の一刑に処すとも言ってある。

 

罰は俺の本気のカンチョーをすると言ったのだが、

奴等は最初は笑って居た。

 

まぁカンチョーなんて半分ギャグみたいなもんだからな、なので分からんでも無い。

 

だが本気でやった場合、更にそれが完璧に決まった場合どうなるかを詳しく教えてあげたら皆黙り込んで居た。

 

顔が若干青くなって居たのは俺の気のせいでは無いだろう。

 

まぁ完璧に決まった場合の実例を詳しく教えてあげたし、このハルータ村でかって有った惨劇の話しもしたので皆、嫌になる程分かった様だ。

 

それとカンチョーを流行らせても俺は一切関係無いし、アホみたいな事でフィグ村を混乱させたく無かったら今日、この村を出る迄に忘れろとアドバイスもしておいた。

 

因みに下手打ちしても金は払うが、十分の一刑は必ず、そう、命に掛けても執行すると伝えてあげた。

 

皆、壊れたロボットみたいにカクカクと動きながら頷いて居たので多分大丈夫だろう。

 

うん、十分の一刑と言っても俺がやるのはクジで選ばれた奴に俺がカンチョーするだけだが、

本来はクジで選ばれた奴を残り九人が棍棒や石打する刑だ、勿論やられた奴は死ぬ。

 

俺のは実際死にはしないがケツは死ぬ。

 

まぁ言葉のインパクトだな。

 

十分の一刑って言葉の響きが凶悪なんだ、

まぁ俺がやるのはカンチョーな訳だが‥‥

 

だがこの位はやらないと祭りの熱気とやらに浮かされて、マジであの変態が乗り込んで来る可能性がある。

 

そして灯台の敷地内をラブホ代わりにされるのも嫌だ、盛るなら他所で(いた)して欲しい。

 

灯台と付属する敷地は愛を育む場所では無いのだ。

 

それともう一つ考慮しなければならない事がある。

 

酔っ払い、祭りの熱気に当てられたアホが強引に口説いたり、モノ(・・)にしようとお馬鹿な事をしない様に気を付けなければならない。

 

俺自身は祭りの最中は灯台に居なければならないので、モリソン兄弟と、ブライアンに頼んでおかなければならない。

 

俺が居ない事により、アマンダにしょーも無いちょっかいを掛けるバカが居るかも知れないからな。

 

アイツらにはその件を頼む為に村に行くんだ。

 

後はマーラにも頼まないといけない、まぁ女衆は皆アマンダの事は気にしてるから大丈夫だとは思うが念の為、万が一の為に出来る事はやっておかねばならない。

 

 

「ねえ何で? 守長が言ってるの本当なら私と祭りで遊べないじゃない!」

 

「いや、仕事だから仕方無いだろ」

 

「何時も遊んでるのに~」

 

「お前なぁ、本当、人聞き悪いから止めろ、さっきも言ったが俺は仕事を終わらせてから好きに過ごしてるだけだからな」

 

「前の守長は一日中仕事してたのに‥‥ 本当なの守長?」

 

「おい、俺はこれでも一応は特級官吏、世間ではお偉いと言われてる官吏なんだぞ、下級官吏と一緒にすんな、てかあの程度の仕事量なんかあっと言う間に終わるわい、つーか毎日朝イチで終わらせてるわ、とは言え今日はお留守番だからあんま関係無いがな、諦めろアンナ」

 

「もう! もう! せっかく守長の為におめかしして来たのに!」

 

 

自称村一番の美人がプリプリしながら怒って居る。

 

うん、まぁこれも運命(さだめ)じゃ、諦めろ

 

とりあえず可愛いってでも言えば機嫌も直るだろう、案外チョロいからなアンナは。

 

今日は特別に褒めちぎってやろうじゃないか

 

祭りの日だけの特別サービスだ

 

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