異世界灯台守の日々   作:くりゅ~ぐ

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第148話 名称変更

 

少し冷たい風が吹いた

 

秋も深まり 一歩一歩冬に近付いて居る

 

冬の海風に比べればまだマシだ、いや、冬の海風は今と比べ物にならない位に冷たい。

 

厳しい冬が近付いて居るのを風で感じた。

 

「おじ様達は何と言いますか、過保護ですのよ、花街のアマネを販売していますお店の辺りに、自警団の方達を重点的に配置してくれましたの、おじ様達が仰るには、(わたくし)のお店のあるあの辺りは花街の顔に当たる場所だから気にしないで良いと仰るんですの、でも自警団の方が定期的に廻って下さって、声を掛けて来てくれますのよ」

 

「連中相変わらずですね、マデリン嬢はあの者達のお気に入りですから、花街に関しては治安は中々良いと聞いてますが、実際どうなのでしょう?」

 

「自警団の方達が大勢居らっしゃいますのでそこ迄悪くは無いですわね、ですが二年前に比べて悪さをした人を捕まえる頻度は上がっている様です、花街自体の治安は悪くは無いと思います、ですが先程言いました様に自警団の方は二年前とは比べ物になら無い程増えております」

 

花街は奴等のシノギの中でも重要な場所だからな。

 

犯罪自体は自警団により未然に防がれて居るだけで、犯罪発生率はかなり増えていると言った所かな?

 

あそこのアガリは奴等に取っても重要な収入源になっているんだ、そりゃ必死になってスリやこそ泥を捕まえるし、未然に防ぐ為に重点的に力を入れるのも当然か。

 

夜遊び交流会が発足するまでは、お世辞にも治安が良いとは決して言えない場所だった。

 

だが今は違う、奴等は縄張り等関係無く協力し、花街全体の治安向上に努めている。

 

だがこのままでは駄目だな、やはり元から絶たないといたちごっこを続ける事になる。

 

奴等の努力も結局は対処療法でしかない。

 

しかし花街や他の縄張りだけで無く、バハラ全体に自警団を送り込んで治安維持に努めて居ると言うのも不思議なものだな。

 

効率が悪いな‥‥

 

自警団と衛兵と軍を有機的に連動させる事が出来れば更に効果的だが‥‥

 

とは言え自警団は衛兵や軍に使われる事を嫌う。

 

それは衛兵や軍も一緒か‥‥

 

だからこそ官吏が中心となって三者を纏め、統一司令部の様な物を作れば良いんだが‥‥

 

今のままでは無理だな、連絡調整官たる官吏が裏社会の奴等と上手い事行って無いし、それ以前の問題として人と人、人間関係自体築けて居ないのだからな。

 

官吏であれば衛兵は兎も角、軍人も嫌々ながらも言う事は聞く、後は裏社会の奴等だけ何だが‥‥

 

無理だな今のままでは‥‥

 

「マデリン嬢の御自宅付近はどうですか? 軽犯罪の類いは増えましたか?」

 

(わたくし)のお家の付近は大丈夫ですわ、護衛を雇って居る家が多いですし、衛兵の方達も重点的に見廻りをしてくれておりますし、従業員から人を出し、自発的に見廻りをさておりますから」

 

「マデリン嬢の御自宅辺りは大きな商会が多いですからね、従業員から人を出して自警団を自前で用意出来ますが、他の場所となりますと‥‥」

 

「その様です、他の場所となりますと被害にあう方が多いみたいですわ、(わたくし)も学園への行き帰りで何度か見ました」

 

やはり元から絶たないと今のままでは状況が悪化するだけだな。

 

ケレイブ・カーンに授けた策が実行されると多少はマシになるんだが‥‥

 

「マデリン嬢もお気をつけ下さいね」

 

「はい、ありがとうございます、(わたくし)にはジョディが()りますし、最近は父が男性の従業員を一人必ず付けておりまして、護衛は二人体制ですのよ」

 

「今日もですか?」

 

「ええ、今は船に残っております、と言っても小舟にですが」

 

なるほど、上陸する時に乗ってた小舟か。

 

と言っても小舟には何人か居てたから誰か迄は分からん、今日乗って来た船自体がポートマン商会の物だから、あの船の船員自体が護衛とも言えるな。

 

しかし奴等め、マデリン嬢には甘いな。

 

俺に対する態度と大違いじゃないかよ。

 

とは言え奴等も最初はマデリン嬢に脅しを掛けやがったがな。

 

マデリン嬢がアマネを販売するにあたり、花街での販売を計画した。

 

花街での販売は俺の真似をしての事であるが、実際花街での販売は儲かる。

 

最初はポートマン商会の端を間借りしての販売だったが、売れに売れた。

 

マデリン嬢が父親に強請(ねだり)、俺に許可を求め俺も許可してアマネの販売を始めた。

 

当然契約は交わしてある。

 

それらを始めるに当たってマデリン嬢は一生懸命商売の事を学んだ。

 

それも俺が帝都に帰還する前からだ。

 

花街での販売にあたり幾つか問題や懸念は合ったが、特に懸念されたのは裏社会の顔役の奴等だった。

 

それらをマデリンは説き伏せ、父親も納得した。

 

だがジョディは憂惧(ゆうぐ)した。

 

俺とは一応は和解したし、俺に逆らえないと言うのも分かっては居る。

 

しかし最初にマデリン嬢始め、ポートマン家を脅しの道具にした事、そしてそれ以前の問題として所詮は裏社会の奴等だと‥‥

 

確かに最近は表に出て来ては居る。

 

バハラの行政府とも協力関係を結んでも居る。

 

だが何故、裏社会の顔役達がその様になったかの原因、大元をジョディは知っており、更に言うなら、俺を脅す一環としてマデリン嬢を脅しの道具に使った事等も全て把握して居た。

 

ジョディは思った、マデリン嬢に対する安全は?

 

果たして顔役達が俺との約束を守るのか?

 

俺を脅す為に又マデリン嬢を使うのではないのか?

 

安全確保の案がジョディには考え付かなかった。

 

直接害を加えて来るのなら、我が身を以てマデリン嬢を守る、その決意等とうに済ませて居る。

 

だが間接的に害を、陰謀に類する物であったら?

 

ジョディが俺を頼るのは必然である。

 

マデリン嬢が俺に手紙を出す時に、ジョディはついでに自分の手紙を俺に送った。

 

私では良き案が思い付きません、と‥‥

 

なので俺は簡単な解決方法を提示した。

 

奴等が一言でも脅しの言葉を抜かしやがったら、こちらも同じ事をすれば良いと。

 

俺はバハラから帝都に帰還してからも、バハラの裏社会の事を、顔役達の事を気にして居た。

 

どの位気にしてるかと言うと、愛人の増減から、子や孫達の日々の細やかな変化や、普段の生活に居場所、それらを事細かく把握して居た。

 

顔役や幹部の全てを把握して居た俺は、関係者にランダムに贈り物等をして交流を深めて居た。

 

ちょっとしたサプライズってやつだ。

 

皆喜んでくれた事だろう。

 

中には把握して居ながら敢えて放置して居た関係者等もおり、それ等の情報をジョディに伝え、俺が奴等と初めて顔合わせした時の様にすれば良いと‥‥

 

因みにジョディにはあえて放置して居た関係者の内、半分しか教えて居ない。

 

残り半分は俺が挨拶がてら贈り物をしようと思ったからだ。

 

贈り物を送るタイミングは、マデリン嬢が奴等に挨拶に行く日に合わせる事にした。

 

所謂サプライズである。

 

俺自身はサプライズは好きでないが、世の中にはサプライズ好きな奴は結構居る。

 

多分きっと関係者や顔役達は喜んでくれるだろうと思った。

 

奴等は悪意無く、マデリン嬢にカマす(・・・)だろうと思った。

 

悪意無く、軽い冗談気分で脅しを掛けて、いたいけなマデリン嬢を虐めて悦に浸る、そんな奴等だ。

 

なら此方も御礼に贈り物をするのは人として当然の事だ。

 

関係者には欲しがっている物を贈れば、俺の誠意と言う物がきっと分かってくれるはずだ。

 

しかし結果は俺の想像の上を行った。

 

男子三日会わざれば刮目して見よ。

 

前世の有名な言葉である。

 

マデリン嬢は女だが、俺と離れて三年。

 

女としての強かさや、本人が元々持って居た豪胆さや芯の強さ。

 

商人としての才覚や胆力と大胆さ。

 

マデリン嬢は人の機敏を見るのにも長けて居た様で、それ等が急速に開花していた。

 

その根本は俺に対する想い、只それだけ。

 

そして人が聞けば只それだけ事、想いがマデリン嬢を飛翔させたのだ。

 

更に得難い資質としてマデリン嬢は、それ等の物と共に天真爛漫さと、純真で裏表の無い心も備えて居る事だろう。

 

ある意味、相反する資質を当たり前の様に備えると言うのは、それも又才能の一つである。

 

マデリン嬢は顔役達の会合の終わりに特別参加を認められ、出店の許可を貰いに行き、挨拶もした。

 

花街に出店するのに顔役達の許可は要らないが、顔役達が許可を出すと言うのはそれだけで、奴等の後ろ楯を得たと言う事でもある。

 

当然簡単には顔役達の許可は出ないし、奴等も出さない。

 

だからこそ値打ちがある。

 

マデリン嬢が会合の終わりにとは言え、特別に参加する事が出来たのは異例でもあるし、だからこそ意味も価値もある。

 

少なくともそれが出来るだけの力があると言う事だし、その程度には顔役達に認められたと言う事だからだ。

 

マデリン嬢が会合に参加出来たのには様々な理由や思惑が合った。

 

一番の理由は俺と言う存在だ。

 

マデリン嬢が会合の場に飛び入り参加の特別ゲストとして、奴等に挨拶と出店許可が取れる様に俺が段取り付けた。

 

マデリン嬢は会合の場に招待された正式な客人である。

 

ジョディの憂惧はある意味杞憂でもある。

 

奴等は理由はどうあれ正式に招待した客を害する事はしないし、出来ない。

 

顔役足る奴等の面子にも関わるし、何より正式に招待した客にその様な事をしては信用を()くすからでもある。

 

とは言え後に害する事や、脅迫等は全く無いとも言えないのでジョディの憂惧は間違いとも言えない。

 

護衛であるジョディが慎重に慎重を期すのは当然の事だし、寧ろ褒めるべきはその忠誠心である。

 

忠誠心故に行った事だ、ジョディは何も間違っては居ない。

 

そして顔役達は事実マデリン嬢にカマしたし、思った通りの事をやり腐った。

 

だがマデリン嬢は俺が奴等にやった様に、関係者の名前を出して、挨拶しつつ奴等が知られて居ないと思って居た関係者の名前や現状を披露した。

 

半分計算、半分本音で奴等と堂々と渡り合った。

 

まさか十歳の女の子に逆にカマされると思って無かった顔役達は、顔が引きつって居たらしい。

 

顔役達は大人げ無く、マデリン嬢に凄んだらしいが、逆に諭された。

 

『あら、先に仰ったのはおじ様達ですわよ? おじ様達は良くってマデリン‥‥ (わたくし)はやってはいけないと言うのは不公平じゃありません? もし駄目なら理由を教えて下さいませんか?』

 

と言ったらしい。

 

それを聞いて奴等は一瞬ポカンとした後、大笑いしたそうだ。

 

そして

 

『怖い嬢ちゃんだ、度胸もあるし頭も回る』

 

『女にしとくにゃ勿体無い、ウチに来りゃ即幹部になれるぜ』

 

『おい、小気味良いじゃないか、俺ぁ気にいった』

 

『良い啖呵切るじゃないか、堂々としてやがる、しかし参ったな、こりゃ一本取られた』

 

等と言いその場でマデリン嬢の出店許可と、後ろ楯になると宣言した。

 

うん、俺も同じ様な事をしたのに、マデリン嬢は気に入られ、俺はクソガキ扱いである。

 

この差は何なんだろう? 理不尽である。

 

同じ様な事をしてこの様な差がある理由は一つ思い浮かぶ。

 

そう、奴等はロリコンなのだろう。

 

だからマデリン嬢は気に入られ、俺はクソガキ扱いし疎まれて居るんだ。

 

危険である。

 

奴等はマデリン嬢に違う意味で手を出しては居ないが、愛でてるだけと言うだろうが、ロリコンである奴等と関わるのは危険だ。

 

特に今は最も危険な時期であると言えるだろう。

 

マデリン嬢は現在十七歳だ。

 

奴等的にはイケる(・・・)と思える年代でもあるし、ロリコン的にもギリギリだがイケる歳だ。

 

奴等はマデリン嬢におじ様と言われて満更でもない様であるし、寧ろそう呼んで欲しいと思っても居る様だ。

 

うん、もし奴等と会う事があったら俺もおじ様と奴等を呼んでやろう。

 

多分喜んでくれるはずだ。

 

そうだな、ロリコンのおじ様達と言うのも良いかも知れない。

 

それと夜遊び交流会をロリコン交流会と名称を変更する様に勧告しなければならないな。

 

 

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