異世界灯台守の日々   作:くりゅ~ぐ

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第155話 大天使の憂鬱

 

肌寒さが日に日に強くなって来ている

 

潮風が寒さにより磯の香りを奪ったかの様だ

 

 

良し良し、綺麗になった。

 

ガラス製の温室、と言ってもミニ温室だがクリーンを掛けて綺麗になった。

 

犬小屋を二回り程大きくした物で、結構良いお値段がする。

 

育てて居るものはほうれん草や小松菜等の葉もの野菜に、ナスやトマト等々だ。

 

と言っても温室はミニサイズだし、数がそこまである訳でも無いので、細々と作って居るだけだ。

 

冬場の野菜不足を補う為であり、暇潰しの一環として栽培してるだけなので決して足りてるとは言い難い。

 

ガラスが高いから仕方ない。

 

増やす事は出来るんだ。

 

金はあるからそれこそ畑を全て温室に置き換える事も出来る。

 

と言っても資産半減どころでない位に金は掛かるがな。

 

それに割れたりしたらシャレにならない。

 

今あるミニ温室も夜間は板等で囲いガードしているし、昼間でも万が一(ひょう)が降って来たら囲いをしなければならないから、数はそこまで揃える事は出来ても維持して行くのが大変になる。

 

野菜や果物は基本的に季節によって変わり、季節や時期が変われば次の季節や時期迄待たなければならないし、この世界はそれが当たり前の事だ。

 

トマトだって夏場の物であって、冬に生で食べる事が出来るのは凄く贅沢な事なのだ。

 

それに露地栽培した物に比べれば、温室で作った物はいまいち物足りない。

 

不味くは無い、美味いのは美味い。

 

だが旨味が何だか物足りない。

 

前世でもトマトは夏場が一番美味かったし、味が濃い気がしていた。

 

例えそれがビニールハウスで栽培した物でもだ。

 

でもトマトは元々は南米の高山地帯が原産地だったはず、学校で習ったから間違いは無いはずだが‥‥

 

前世の事はほぼ(・・)覚えて居る。

 

だが学校のお勉強に関してはいまいち自信が無いし、記憶が怪しい。

 

うん、前世じゃ今世程、いや、比べ物にならない位の頭の出来だったからなぁ‥‥

 

悪くも無いが良くも無い。

 

可もなく不可もなくって言うのかな?

 

トマト、確かそうだったよなぁ‥‥

 

今のこの頭脳があれば無茶苦茶楽学生時代は楽だったんだがなぁ‥‥

 

テスト前にヒィヒィ言わなくて済んだのに‥‥

 

しかしトマトか。

 

食いたいな、とは言え今の時期に食ったら後が困る。

 

干しトマトで我慢するしかないよなぁ。

 

いかんな、見てたら食べたくなって来たじゃないか、我慢我慢。

 

トマトが制限無く自由に手に入れる事が出来るなら、前世の様に好きに料理に使えるし、食う事が出来るのに‥‥

 

ばあちゃんが作ったトマトカレー食いたいな。

 

お母さんが作ったビーフシチュー食いたい。

 

ハッシュドビーフも良いなぁ、それかトマト鍋、いやいや、タンシチューも捨てがたい。

 

うーん‥‥

 

ミネストローネも美味いんだよなぁ‥‥

 

寒さが日を追う毎により感じられる様になって来たからか、シチューやスープ系ばっか欲してる。

 

今日は夕飯に、オムレツにハム、それに焼いた魚だがシチュー食いたくなったなぁ。

 

今の時間からでは間に合わないから無理なんだけど、どうしようか?

 

今からじゃ飯食うの遅くなるよな‥‥

 

準備が間に合わないな、諦めよう。

 

いや待て!

 

昆布粉でスープモドキを作って溶き卵を入れるか。

 

アリだな‥‥

 

ワカメも入れて、うんそうするか。

 

なんちゃってスープだな。

 

 

「あの、守長‥‥」

 

「おっ、どうしたジゼル」

 

「その‥‥ 本を返しに来ました」

 

あー 何時もの返却か。

 

帰りに又新しいのを借りて帰るだろうが、今日は何を借りてくのかな?

 

「ジゼルが来たって事はそんな時間なんだな? それにしては何時もより遅いな?」

 

「はい、学校が終わってから家の手伝いをしててそれで少し遅くなりました」

 

だよな、学校終わって直ぐ来たなら、夕飯変更が難しい何て考えて悩む訳は無いからな。

 

「家の手伝いか偉いな、因みにアンナは?」

 

「遊びに行っちゃいました‥‥」

 

アイツもそろそろソレが許されない歳になって来てるんだが‥‥

 

多分来年辺りには手伝いしなければ怒られる様になるだろうな。

 

今はまだギリギリ見逃されてるが、今年までのモラトリアムってやつだ。

 

家によってはアンナと同級生の子達の中で、既に手伝いしてからでないと遊びに行けない子も居るからな、今だけの特権だな。

 

「ジゼル、新しく借りてくだろ?」

 

「はい、出来れば」

 

「ん、良いぞ、執務室に行くか」

 

~~~

 

「守長あの‥‥」

 

「どうした?」

 

何か言いづらそうだが何だ?

 

「そんな困ったら顔して、言いにくい事か?」

 

「いえ、ただお話しをと思ったんですけど、聞いたりしちゃ駄目なのかなってちょっと思いまして‥‥」

 

「何だ? もしかして俺の年収を聞きたいのか?」

 

「ち 違いますよぉ」

 

「何だ違うのか? じゃあ何だ?」

 

ちょっと冗談言っただけなのに、コイツはリアクションが可愛らしいよなぁ。

 

「その‥‥ この前大きな船で来た美人な人ってどうなのかなぁって、でも聞いたらダメなのかもって思いまして‥‥」

 

「・・・」

 

あー マデリン嬢の事か‥‥

 

皆気になって仕方ないんだろうな‥‥

 

まさかジゼルもそうだとは、ちと予想外だったが、全く気にならないって事は無いよな。

 

「すいません、余計な事聞いちゃって‥‥」

 

「あー‥‥ 別に良いけどな、あの人は昔馴染みだよ、俺が昔バハラに赴任してた時に知己‥‥ 知り合った人だ、もう十三年も前の話しだかな」

 

「え? 十三年‥‥ あの~ 守長、あの人今何歳何ですか?」

 

「今、十七だな、初めて出会ったのは俺が十六で、あの人は四歳の時だ」

 

「幼馴染なんですね」

 

「向こうはな、厳密には俺は十六だったから幼馴染と言うのはちょっと違うな、古い知り合いってとこだ」

 

同い年位、もしくは少し上か下の歳なら幼馴染と言えるが、年齢の差があるから幼馴染とは言えない。

 

昔馴染みって言う方がしっくりくる。

 

「古い知り合い何ですね、皆が言って居たんです、守長の婚約者じゃないかって」

 

「それは無い、俺に婚約者は居ないし、居るんならとっくに結婚してる、ジゼル、俺はもう良い歳なんだぞ、居たらとっくに結婚して無きゃおかしい」

 

「そうですよね‥‥ でも守長が凄く(いつく)しんでたからそうなのかと‥‥ 皆も言ってました」

 

「アマンダにも同じ事を言ったが俺の家やあの人の家では当たり前の事だし、エスコートするのは寧ろマナーだ、社会階級の差による誤解だな」

 

「同じ事を‥‥ そうかぁ‥‥ そうですよね‥‥」

 

「ああ、皆誤解してるが、あの人は村の奴等が噂してる様な人では無い」

 

仕方無い事だが、村の奴等にとっては噂話もある意味娯楽の一つだからな。

 

とは言え勝手に噂される身にとっては困ったもんだが。

 

「凄くお似合いでした、皆が守長の事を王子様みたいだって、そう言ってました」

 

「・・・」

 

王子様‥‥

 

何か嫌だなぁ‥‥

 

俺の中の王子様のイメージは、白馬に乗って、白タイツ穿いて、薄青いのと白の縞々模様のカボチャパンツみたいなの穿いて、頭に金の王冠を頭に載っけてハッハッハって笑ってるイメージなんだよなぁ‥‥

 

「なぁジゼル、もしかして俺って王子様ってあだ名で密かに呼ばれてたりしないよな?」

 

「あだ名ですか? それは無いですけど、皆が守長は王子様みたいだって言ってますね」

 

だからそれが問題なんだよ!

 

てかマジで王子様ってあだ名で呼びだしそうだな、それは勘弁してくれよな‥‥

 

「あんなん普通の事なんだがなぁ‥‥ 村じゃ珍しいか‥‥」

 

「そうですね、私も初めて見ました、本では読んだ事はありましたけど、実際に見るのは初めてでした」

 

「てかジゼル、学園に行きたいならアレ、学園でもやるんだが? マナーとかの礼儀作法は授業でやるからな、他にも乗馬の授業もあるし、ダンスもあるな、特待生で入学した平民、と言っても中流階級だが、中流階級の人間が一番(つまず)くのがマナーとか礼儀作法の授業とダンス、それに乗馬だぞ」

 

「と言ってもマナーとか礼儀作法は本で読むだけでは学べませんから‥‥ 乗馬もダンス難しいですね‥‥」

 

まぁそうだよな、俺は親が用意した家庭教師に習ったから全く問題無いし、姉や妹達も問題無かった。

 

乗馬に関しても幼い頃から学んでたが、中流階級の家庭では難しいよな。

 

俺は乗馬は前世で経験済みだったから一切問題無かったが、マナーや礼儀作法に関しては少しだけ問題が合った。

 

と言っても覚えられなかったとか、上手く出来なかったでは無く、それ等はある意味完璧だった。

 

うん、なら何が問題だったかと言うと単純に照れが合ったんだ。

 

前世でエスコート何てした事無かったし、割と恥ずかしかったと言うか、照れが中々抜けなかった。

 

結構こっぱずかしいんだよアレ。

 

恥ずかしさに慣れる迄は大変だった。

 

と言っても結局慣れはした。

 

繰り返しは大事だって改めて認識したわ。

 

「ジゼル、乗馬はともかく、礼儀作法やマナーは教えれるぞ、ダンスは‥‥ 背の問題があるから無理だな‥‥ 身長差が有りすぎると難しい、出来ない事もないが‥‥ あれもこれもとやるよりは、礼儀作法とマナーをまずは重点的にやる方が結果的に効率が良い、どうだ?」

 

「良いんですか?」

 

「別に良いぞ、言い方は悪いが良い暇潰しになる、と言っても毎日は無理だし、それは俺だけじゃ無くジゼルもだろ? 不定期にとは言わんが、週一回位なら全く問題無い、とは言え俺が村に居る間だけ、他所に飛ばされる迄の話だがな」

 

「はい! それでも、いえ、是非お願いします」

 

「ん、修行は苦しく大変じゃぞ、じゃがワシが鍛えてやろう」

 

「はい、お願いします守長!」

 

アレ? これって又スベったかな?

 

うん、嬉しさで言い方とか口調をあまり聞いて無かったか?

 

人はそれを、いや、それもスベったと言う。

 

まぁ良いだろう。

 

ジゼルが嬉しそうだし、さっきまで憂鬱そうだったが今は表情も明るくなった。

 

それで良いじゃないか。

 

ジゼルなら一年も合ったら余裕で覚えるだろう。

 

学園に入学する事が出来るか出来ないかはまだ分からん、だが礼儀作法やマナーは覚えておいて損は無い。

 

一丁やりますか。

 

 

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