異世界灯台守の日々   作:くりゅ~ぐ

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第162話 注文の多い客

 

「おい、この飴とそこの飴、それとこの焼き菓子も全部買う」

 

「あの~ 本当に宜しいので?」

 

「何だ? 何か問題があるのか?」

 

「いえいえ、私は大変ありがたいです」

 

「なーんか気のせいか含みがあるよなお前? 別に良いんだけど‥‥ てかまさか毒でも入ってんのか?」

 

「何を(おっしゃ)るのです、そんな訳無いではありませんか」

 

「そーか? だってお前毒の扱いも慣れてるだろ?」

 

「守長さん人聞きの悪い事を言うのは止めて下さい、勘弁して下さい‥‥」

 

「てか俺は前に言ったよな? モノさえ良ければ幾らでも買うってな、それなのにゴネると言う事はそう言う事かと思ったんだろ、違うか行商人?」

 

「それは‥‥ 伺いましたが‥‥」

 

「なら問題無いだろうが、おっ! そこの干しブドウも全部買う」

 

「味見は宜しいので?」

 

「一応する、うん良い味だな、全部買う」

 

まだコイツ疑ってやがんな‥‥

 

てか心配しなくてもちゃんと定価で買うわ。

 

まぁ‥‥ この前の事があるから分からんでもないが‥‥ 疑り深いのは仕事柄からかな?

 

てかコイツ、扱ってる商品自体は良いんだよなぁ。

 

本当にモノ自体は良い、目利きが良いと言うか、商人としては優秀ではあるんだ。

 

暗部なんか辞めて商人に専念すれば、あっという間に店を持てるだろうし、商会も直ぐに大きく出来るだろうにな。

 

優秀であるから暗部に居るんだろうが、明らかにコイツは商人としての才覚があるのに。

 

とは言えコイツの人生だ、俺がとやかく言うべき事でも無いしな。

 

モノが良いなら買うだけ、そして釘を刺す。

 

それで十分だし、良い商品を監視がてら運んで来るならそれで良い、それにコイツは遊び甲斐のある奴だ。

 

良いオモチャが手に入ったとでも思っておこう。

 

今まで散々監視して来やがったんだ、それ位許されるだろう。

 

うん、良い暇潰しにもなるしな。

 

「おい行商人、心配しなくても金はちゃんと払うし俺に裏は無い、それともあれか? やっぱ毒入りだから、売るのを躊躇ってんのか?」

 

「フゥー‥‥ 違いますよ、本当、人聞き悪い事を言うのは止めて下さい、私はそんな事しませんよ」

 

「おい、ため息吐くと幸せが逃げるって前に教えてやっただろ、まぁ‥‥ 俺には毒は効かんがな」

 

「魔法ですか?‥‥ 失礼ながらデタラメな力ですね」

 

「まず勘が働く、何故かは分からんがな、そして身体に入れる前に清浄魔法で毒の成分だけ除去出来る、と言っても使う機会が中々無いのが難点ではあるがな」

 

「そうそう毒が使われる状況と言うのを私は思い付きません、使わずに済むならそれに越したことはない機会ですね」

 

「確かにそうだな、でだ、俺が今言った事は本当の事か、それとも嘘かどっちだと思う?」

 

「・・・」

 

うーん、この困った様な、呆れた様な顔よ。

 

ため息吐きたいのに我慢してやがるんだろうな。

 

基本的に特級官吏の個人情報は伏せられている。

 

だが諜報員として送り込まれて来たのなら、俺の事も、俺の情報も渡されているはずだ。

 

とは言え今言った事がはたしてコイツに伝わって居るかな?

 

コイツは今思って居る事だろう、今の話は只の軽口や冗談なのか? それとも本当の事なのか? さぁどっちなんだろうな。

 

一応は釘を刺すのならば、ある程度の情報開示した上でやらなければならん。

 

流石に無いとは思うが念の為だ。

 

対処するのは面倒だからな。

 

しかし毒まで使うとなったら相当ではあるな‥‥

 

幾ら防げるとは言え、流石に手間が多すぎるし、何よりそこまで疎まれてると言う事でもある。

 

とは言え、特級官吏を毒殺と言うのは少し考えられないな。

 

際限無い殺し合いになるし、やってる事は内輪揉めだ。

 

帝国の力を削ぐ事になるし、大体俺ら特級官吏、いや、官吏同士の毒殺、殺し合いはタブーだ。

 

それをやって喜ぶのは他国、それも敵対国だけだ。

 

と言っても帝国の周辺国は、ほぼ同盟国と友好国だけだから、更にその外側の国だがな。

 

官吏はサザビー帝国を支える力の根元でもある。

 

その官吏が殺し合い等、悪夢でしかない。

 

やるとすれば他国か、我が帝国の者であるなら俺ら官吏を使う者になるから、(おの)ずと犯人は分かる。

 

犯人は限定されると言う事だな‥‥

 

「守長さん、ご冗談が過ぎますよ‥‥」

 

「そうか? おい、このナッツも全部買う」

 

「守長さん、ありがたいのですが灯台まで運べるのですか?」

 

「お前何言ってんだよ、こんだけ買ったんだぞ、お前運べよな、てかサービス悪すぎないか? お前が運べないなら村の男衆に手間賃払って運ばすが、お前無理なのか?」

 

「分かりましたよ運びます、確かにこれだけお買い上げ頂いたのです、運びましょう」

 

「ん、どうせ荷馬車で運べばそこまで手間でも無いだろ? お前が運ぶならそこの酒、白ワインとラム酒も樽ごと買う、それまだ開けてない樽だよな?」

 

「そうですが‥‥」

 

何で困った様なツラしてやがんだ?

 

まさかコイツ‥‥

 

「お前まさか俺が金払えないと思ってんのか?」

 

「違いますよ、前に言っておられましたが、本当に買って頂けるとは思わなかったもので‥‥」

 

「俺はモノさえ良ければ買うと言っただろう? その酒も美味いと評判のワイナリーの白ワインだし、ラム酒も値段の割に美味いと皆言ってる蒸留所のやつだ、だから買う、それともまさかだが、お前中身を違うトコの粗雑な酒とすり替えてんのか?」

 

「そんな訳無いじゃないですか、私はその様な阿漕な商売等致しておりません、信用は築き上げるのに時間が掛かりますが、失うのは一瞬です、そして信用は商人にとって最も足る財産です、その大切な財産を失う様な真似等する訳がありません」

 

「ん、ならお前のその商人(・・)としての矜持、商人(・・)と言い張る矜持を信じて買うんだ、何の問題も無いだろ? 行商人よ」

 

実際扱ってる商品は良い物が多いし、本当にモノは良いんだ、なら買うのに何の問題も無い。

 

今日買った物は自分でも飲み食いするが、振る舞ったり、お駄賃代わりに渡したりするのに丁度良い。

 

それに金なんて貯めこみ過ぎてもしょうがない。

 

ある程度は使わないとな、金が世間に回らんし、買い物するのは意外と良い気分転換にもなる、たまにはパーっと使わなきゃやってられない。

 

「私としてはお買い上げ頂けるのは嬉しいですが、かなりの量ですね」

 

「振る舞ったり、お駄賃代わりに渡したりするからな、おい、その白カビチーズは北方の物だな? それも全部買う」

 

「六つありますが?」

 

「おう、ホールで六つ買う」

 

良いな‥‥ 北方産のカマンベールか‥‥

 

アレ美味いんだよなぁ、白ワインに合わない何て言う奴も居るが、俺は好きなんだ。

 

カマンベールには赤だって、頑なに言う奴も居るが、俺は白を飲みながら摘まむのが好きだ。

 

この辺りは個人の好みだろうがな。

 

「北方産だと良くお分かりですね?」

 

「そんなもんお前分かるだろ? お前バハラから来て、この村から商売を始めたんだろ? なら仕入れはバハラでしたって事だ、てか東方から帰って来たのなら積んである商品は東方の物が多いはずだ、だがバハラで仕入れた商品が多いって事は、東方からの帰りにここで店を広げてる訳では無いからな、単純に積んである商品で見分け位つくわ」

 

「良く見ていらっしゃいますね」

 

「当たり前だろ、観察は基本だぞ基本、色んな意味でな」

 

「そうですね‥‥ 仰る通りです」

 

微妙に含みがあるな、だが含みがある言い方してるのは俺も同じか。

 

てかコイツこれから東方に行商に行くんなら、注文しておくかな?

 

「お前これから東方に行くんだよな? なら向こうでハムとベーコン、それに腸詰めを仕入れてこい、ハムは生ハムがあれば原木で二~三本欲しいな、その他もあればあるだけ買う、ついでに穴空きを一ホール欲しい、後チーズも他の種類のもあるだけ買うから仕入れろ、但し適正価格で売れよ、ぼったくる様であれば買わんからな」

 

「それは構いませんが‥‥ あるだけ買われるので?」

 

「おう、適正価格であればな、お前目利きは確かだからな、心配しなくてもボラ無い限りちゃんと買う、あっ! 毒入りは止めろよお前」

 

「そんな物入れませんよ、本当に勘弁して下さいよ守長さん‥‥」

 

「いや、一応言っとかないとな、てかフリとかじゃ無いからマジで止めろよ」

 

「・・・」

 

そんなツラすんなや、俺が冗談交じりに言ってんのは、別にコイツをいじる為では無い。

 

こんだけ言っておけば毒は使いにくい、そんな状況を作る為だ、いざ毒を使う時にコイツが上に報告し、毒を使うのは得策では無いと前以て分からせる為にやってるだけで、他意は‥‥ あんまり無い。

 

しかしそこまでヤルとは思わんが‥‥ 念の為だな。

 

「あの守長さん、それは置いといて、実際問題として商品が大分減りましたので一旦バハラに帰り、仕入れ直さないといけません、なので何時もよりこちらに来るのが遅れると思いますが‥‥」

 

「それは構わんが今日ここで仕入れた分はどうするんだ?」

 

「幸いと言いますか保存の利く商品ばかりです、それに季節はもう冬になりますし、もしくは東方に行く前にもう一度ハルータ村に仕入れに来るかも知れません」

 

「ああ‥‥ 大分減ったもんなぁ、バハラに帰って仕入れ直さないといけないか」

 

「はい、と言っても時間的にフィグ村に行ってからバハラに帰る事になります」

 

「お前時間的にって言うが、夜に街道を走る事になるぞ?」

 

「いえいえ、街道の中程にある宿場町に泊まるか、出来ればフィグ村で納屋でも借りれればそちらで泊まります、それからバハラに帰ります」

 

宿場町と言ってもちゃんとした宿では無く、精々雑魚寝する様な部屋だろうな。

 

それすらも惜しいと思ってるだろうから、フィグ村で納屋を何とか借りてそこで寝るつもりだろう。

 

それか強引に宿場町まで行ったとしても、下手すりゃ駐車場に荷馬車を停めて、その荷馬車の中で寝るかも知れない。

 

荷台は空いているんだ、それに季節的にギリギリまだ荷馬車の中で一晩位なら寝れるからな。

 

行商人も大変だよ、俺は官吏で良かったわ。

 

 

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