異世界灯台守の日々   作:くりゅ~ぐ

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第167話 二人の距離

 

「なぁお前ら今日はもう仕事は無いんだよな?」

 

「俺は無いな」

 

「俺も無い」

 

二人共今日は暇って事だな。

 

焼き芋するって分かって来てるんだ、当たり前か。

 

焼くのもそこそこ時間が掛かるし、準備だって時間が掛かる。

 

暇じゃないと来れないわな。

 

「なぁ、芋焼いて食ったらガキ共は解散してここから居なくなるよな、どう思う?」

 

「そりゃまぁ、ここは村の中心部からも、灯台からも離れてるし、ガキ達は何時も遊んでる村の広場に行くと思う」

 

「ブライアンの言う通りだな、俺もそう思う」

 

だよな、灯台の近くなら遊ぶ事はあっても、少し離れたここら辺りは滅多にガキ達も遊ばない。

 

ここで遊ぶ位なら、村の広場で遊ぶだろう。

 

「お前ら酒飲みたくないか?」

 

又二人顔見合せてるが、お前ら仲良しさんだな。

 

もしかしてコイツら出来てるのか?

 

うん、酷い絵面になるな、想像してしまった事を後悔してしまった。

 

「飲みたいな‥‥」

 

「俺も飲みたい、もしかして守長飲ましてくれるのか?」

 

「おう、折角焚き火するんだツマミも焼こう、ガキ達が持って来る落ち葉や枯れ枝だけじゃ足りなくなるだろうが、足りない分は灯台から薪や炭を持ってくれば良い、どうせガキ達は落ち葉や枯れ枝を集めるのにまだ時間が掛かるだろう、なら今の内に持って来れば良い、お前達も背負い籠を持って来てるんだ、それに入れれば良いしな、但し芋を焼き終わってガキ達が居なくなってからだぞ、さっきも言ったがツマミも持って来るつもりだが、絶対アイツら食わせろって言うだろうからな」

 

俺の言葉に二人共大喜びして居る。

 

まるで子供みたいにはしゃいで居やがる。

 

コイツらにとって、俺が普段飲んでる酒は滅多に飲めないちょっとお高い酒らしいからな。

 

そら嬉しいだろうな、しかもツマミ付きだ。

 

喜び倍増どころの話じゃないんだろう。

 

「とりあえず落ち着け、三人共この場を離れるのは宜しくない、ブライアンは留守番してくれ、ガキ達が万が一戻って来たら好き勝手しない様にお前が面倒見ろ、モリソン弟は俺と一緒に灯台に酒やツマミと薪と炭を取りに行く」

 

「分かった、行こう行こう」

 

「おう、留守番は任せといてくれ」

 

コイツら子供よりはしゃいでやがる。

 

心底嬉しそうだ、この世の春って感じだな、とは言え今はもう冬と言っても良い時期だ。

 

秋の終わり、最後の秋を楽しむ。

 

野郎だけで何ともむさ苦しいがそれも又良い。

 

外で飲む酒、それも焚き火を囲んで飲む酒は格別だ。

 

俺は割と好きだ、火照った身体が寒さで冷やされつつ焚き火の温かさで暑さすら感じ、又寒さで冷えての繰り返しが何とも言えない心地好さを感じる。

 

難点は背中が少し寒さを感じる所であるが、今の時期はまだそうでもない。

 

とは言えどうせ酒で身体は温かくなる。

 

良いな‥‥

 

悪くない、この季節ならではの贅沢とも言える。

 

~~~

 

「守長、こんなもんか?」

 

「いや、もう少しツマミは持って行く、それとフライパンとライ麦パンも持って行く」

 

「持てるか?」

 

「余裕だよ、ただ白ワインを入れた容器とエールのツボが持ちにくいな」

 

「そりゃ持ちにくいだろうよ、てか荷物を持ち過ぎだ」

 

「もう一回来るのは面倒だろ?」

 

「そうかも知れないけど‥‥ こぼしたら意味ないじゃないか‥‥」

 

うーん‥‥ 重さは余裕だけどちと持ちにくい、モリソン弟の言う様にもう一回来るか?

 

こぼすならまだしも、落としたら洒落にならないしなぁ。

 

そうだな、安全第一で行こう。

 

 

「守長、もう一回取りに行くってどんだけ持ってくつもりだよ?」

 

「何だ、お前は少ない方が良いのか?」

 

「そりゃ多い方が良いけど」

 

「ちと手間が増えるがそこまで難しい事じゃ無いだろ、お前達が死ぬ程好きな酒とツマミを取りに行くだけだ、嬉しい仕事だろ?」

 

「まぁそうだな」

 

荷物が多く感じるのかも知れないが、薪だの炭だのがあるからだろう。

 

酒も何やかんやで嵩張ったし、追加でツマミも持って来た。

 

ハムやベーコン、ソーセージに穴空きチーズにカマンベールと追加だ、何て言うか気分が乗った。

 

夕飯の時間位までって思ったが、日が完全に落ちてからも飲むのも良いかなと思った。

 

なので酒にツマミに薪や炭も追加する事にしたが、まるでバーベキューみたいになりそうだな。

 

「なぁ守長、守長って結婚しないのか?」

 

「お前いきなりだな弟、どうした?」

 

「いや、どうなのかなぁと思って」

 

「どうも何もするつもりは無いな、相手も居ないし、その気も無い」

 

「相手はこの前船に乗って来た人はどうなんだ?」

 

「あの人はそんなんじゃ無い、妹みたいなもんだ」

 

「でも手繋いでただろ?」

 

「お前あれはエスコートって言うんだよ」

 

コイツも誤解してやがんな‥‥

 

エスコートって物を、見た事が無いから仕方無いのかも知れないが、端からみたらそう見えるんだよなぁ‥‥

 

「エスコートねえ‥‥ 中々の美人だったし、皆守長の好い人かって言ってたぞ」

 

「本当お前ら噂話が好きだよな」

 

「いや、あんなお姫様みたいな扱いしてたらそらそう思うよ、それに言葉遣いも何時もと違ったし、まぁ噂話が好きなのはそうだな」

 

「もう何度も説明したが、上流階級では当然のマナーだ、勿論相手との親しさとか距離感とかもあるが、俺はあの人が四歳の頃から知ってるんだ、出会った四歳の時からあんな接し方だ」

 

もう何回説明したか‥‥

 

俺は平民だが上流階級に属する、であれば当然のマナーであり、ましてや親しい相手でもあるから当然であり当たり前の事なんだがなぁ。

 

「そんなもんかねえ、俺にはいまいちピンと来ないが、金持ちなりの礼儀って事か」

 

「簡単に言うとそうだな、あの人が四歳の時、俺は十六だったんだぞ、好い人になると思うか? それともお前、俺が幼女趣味だって思ってるんのか?」

 

「いやそうじゃ無いけど、でもあの人俺位の歳だろ? 昔はともかく今は丁度良い歳じゃないか」

 

「俺は今幾つだと思ってんだ? 年齢が離れ過ぎてるわ、十二違うんだぞ」

 

「守長は今二十九だろ? なら相手は十七か、ならおかしくは無いと思うんだけどな」

 

「お前やけにあの人を推して来るが、まさか金でも貰って工作してるんじゃないだろうな?」

 

「そんな訳無いだろ、ただどうなのかと思って‥‥ それにお似合いだったしな」

 

お似合い? そらそうだろ、マデリン嬢は俺に相応しい、俺好みの女‥‥ レディになる為に今まで努力してきたんだからな、お似合いなのは当たり前だ。

 

そんなの分かってんだよ、努力も想いもその全てをな。

 

本当に頭が痛い‥‥

 

マジで俺の最大の秘密を伝えなければならないかも知れないな‥‥

 

「なぁ守長はどんな女が好きなんだ?」

 

「お前今日は色々とブッ込んで来るな‥‥ 好みか? 美人でおっぱいおっきくて、腰回りが(くび)れてて、小尻で足が細くって、無駄に正義を押し付けて来なくって、人並みの常識と恥じらいを持ってて、思いやりのある優しい女だな」

 

『ば~か』

 

チッ‥‥ 又思い出したじゃないか‥‥

 

「守長も結構好みが細かいな‥‥ 兄貴も大概だが、守長も大概だな‥‥」

 

「お前アイツと一緒にすんなや、失礼だな‥‥」

 

「いや‥‥ 守長もそれはそれで失礼だと思うぞ、でも最近の兄貴を見てたら否定出来ねーな‥‥」

 

「お前の兄はマジで最近酷い、元々はしっかりした奴だったのに」

 

「だよなぁ、最近ちょっとなぁ‥‥ てか守長の好みの女なんてこの村じゃアマンダ位だな」

 

コイツ何か今日は色々切り込んで来るな?

 

別に良いんだけど、何だろ、酒飲めるからテンション上がってんのかな?

 

「守長さぁ、アマンダと最近微妙にギクシャクしてないか?」

 

「そうか?」

 

うん、してるね、俺とアマンダの二人にしか分からない位の微妙な感じと言うか、ギクシャクしてるな、本当に微妙~~~な位だがな。

 

しかしコイツが気付いて居たのは意外だな、別にコイツはアホとは言わんが、この微妙な感じは二人にしか分からんと思ってたわ。

 

「その~‥‥ 前にマーラおばちゃんが、言ったんだ『何か二人共微妙にギクシャクしてるねぇ』ってボソッと言ってたんだ、で、言った後慌てて口押さえて他の奴に言ったらダメだよって、そんで俺もそれから守長とアマンダを見てたら確かに微妙にギクシャクしてんなぁって気付いて‥‥」

 

「・・・」

 

マーラの野郎何を抜かしてやがんだよ、あんの野郎めが‥‥ いやまぁマーラは女だけど‥‥

 

しかしコイツが気付いたのはマーラが原因か。

 

マーラの奴良く見てやがんなぁ。

 

「あー 守長、俺別に誰かに言ったりしてないから、てか守長とアマンダは仲良かったのにケンカでもしたのか?」

 

「いーや、多分お前達の気のせいだと思うぞ、何時もと変わらずだし、ケンカ何かしてないんだ、お前達の気のせいだろ?」

 

「そっか、俺やマーラおばちゃんの気のせいか」

 

マーラの奴め‥‥ 本当良く見てやがるわ。

 

てかいらん事抜かしやがってからに‥‥

 

アマンダが一時期俺を、王子様呼びし始めてから微妙~にギクシャクしてんだよなぁ。

 

本当に微妙になんだ、表面的には普通と言うか、今までと変わらんし、俺にしてもそうだが、アマンダも多分含むところは無い。

 

ただあの王子様呼びから何かこう‥‥

 

二人にしか分からん程度にギクシャクしてんだよなぁ。

 

微妙にギクシャクしてるが、含むところは無いが、お互い困ってると言うか、戸惑ってると言うか、距離感が掴めないと言うか何と言うか‥‥

 

言葉にすると陳腐になるが、そうとしか言えない。

 

何なんだかなぁ‥‥

 

 

「守長、又えらい荷物だな、言ってたより多いが薪も追加で持って来たのかよ? これならガキ達に落ち葉集めさせなくても良かったんじゃないか?」

 

「いや、何か守長は軽く飲むつもりだったみたいだけど気分が乗ったらしい、そんで酒とかツマミ、それに薪に炭も追加で持って来たんだ、てか元々は芋を焼くって言って準備したんだ、落ち葉じゃ無いと芋が焦げちまうよブライアン」

 

「そう言えばそうだな、芋焼くなら落ち葉を灰にする方が良いな」

 

「そうだよ、てかもう一回酒とかツマミとか薪に炭に道具も取りに行くってさ」

 

「マジかよ? 今でもかなりの量だぞ、良いな、しこたま飲めるな」

 

「守長がツマミもかなり持って来たし、更に追加で取りに行くから腹がはち切れる位飲み食いして良いってさ」

 

「マジか? 流石守長だな気前が良い、本当に来て良かった」

 

「守長、早く取りに行こう、あっ! ブライアン、ガキ達にコレ見つからない様にしといてくれって守長が」

 

「おう分かった、ガキ達が欲しがりそうだもんな、おっ、穴空きもあるな、楽しみだ」

 

 

深く考えるのは止めだ。

 

コイツら二人の会話を聞いてたら気が抜けたわ。

 

心底嬉しそうにしやがって‥‥

 

とりあえず今はコレを楽しもう。

 

 

 

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