異世界灯台守の日々   作:くりゅ~ぐ

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第184話 ハイラー邸にて

 

店から何事も無く歩いて来た

 

途中で身形の悪い奴等が居たが、この人数と見た目、皆漁師だから良い体つきをしており、流石に襲い掛かって来るアホは居なかった。

 

最後尾にチンピラブライアンがおり、目を光らせて居たからってのもあるんだろう。

 

しかしコイツらあんだけ食ったのに、全く変わらずだな?

 

ちょっと足りないって言ってた位だが、若さゆえか?

 

次コイツらが来た時、魚市場の近くで食うかな?

 

魚市場の近くなら腹いっぱい食ってもあまり問題は無い。

 

と言うより危険度がかなり下がる。

 

しかしあの辺りに良い店あったかな?

 

クランツじいさんにでも聞いてみよう。

 

「なぁ守長、この辺デカイ家が多いな? 家ってより屋敷? 何かいかにも金持ちが住んでそうな所だな? どの家も門番が居るし」

 

「ん? 実際この辺は金持ちが多いぞ、てか金持ちしか住めない、それに門番もそうだが専属護衛も雇っているぞ、それと私設自警団もこの辺の家が金を出しあって常に巡回してんな、治安が悪くなったからでは無く、昔からだ」

 

「スッゲーな、どんな奴が住んでんだよ‥‥」

 

「どんな奴って金持ちだよ、商人が多い」

 

「守長の知り合いも商人だっけか?」

 

「俺の知り合いは海事法弁士だよ、てかモリソン弟、お前は忘れたのか? 前に言っただろう」

 

「そう言やそうだったっけか? てか海事法弁士って儲かるんだなぁ‥‥」

 

「そうだな、だがあのじいさんは又特別だ、バハラで一番の海事法弁士って言われてるじいさんだからな」

 

クランツじいさんはバハラの海事法弁士で一番有能だと言われてる。

 

あのじいさんに頼めば負ける事は無い何て言われてる位だ。

 

当然依頼料も高額だが、それに見合う仕事をしてくれる。

 

ん? 見廻りの自警団か? 何か俺を見ながら歩いて来てるが?

 

「失礼、私はジョージ・クライストと申します、この辺り一帯の巡回警備を専任で担当しています、官吏の方と見受けられますが、この様に大荷物を持ち、この人数でどの様な用件で伺われたのでしょうか?」

 

「ああ、専任自警団、いや、警備担当者か、俺はネイサン・サリバン、特級官吏だ、知人のクランツ・ハイラーの家に行くところだ」

 

「ハイラー様より伺っております、失礼致しましたサリバン卿、私も仕事故に一応の確認をさせて頂きました」

 

うん、念の為の確認か、流石この辺の私設警備の者だな、分かって居ても念の為に確認するか。

 

官吏の格好をした悪人が来ないとも言えないからな、きっちり確認するのは当然の事だ。

 

そして礼儀正しくもあるな、俺がもし官吏服を着て居なくても同じ様に確認し、この様に頭を下げただろう、うん、俺が官吏であろうが無かろうが同じ様に確認し、礼儀を持って接し、コイツは確認が終わったら頭を下げただろうな。

 

金持ちが多い地域だから礼儀作法はバッチリなのも当たり前だし、確認は徹底的にかつ失礼の無い様にか。

 

この辺りに入る道の入り口辺りにもこの私設の専任自警団は居たが、声を掛けては来なかった。

 

何故だろうと不思議に思って居たが、じいさんが前以て伝えて居たからか。

 

と言うよりも、入り口側に居た私設自警団の中に去年じいさんの家に行った時に見た顔があった。

 

ちゃんと覚えて居たからってのもあるんだろう。

 

うん、それに加え例えそうであっても、もしじいさんが前以て伝えて居なければ、さっきも声を掛けられて居ただろう。

 

今、声を掛けられたのは念の為、最終確認の為だろうな。

 

しかしこのジョージ・クライストは去年見なかったが、新しくここら辺の専任警備になったんだろうが、かなり身体つきが良いし、体幹もしっかりして居る。

 

軍人上がりっぽいが、他にも同じく軍人上がりと思われる奴がちらほら居るな。

 

今のバハラの状況からすると、軍人上がりは引く手あまただろう。

 

うんうん、良い事だよ、軍人が報われるってのはな。

 

「職務上当然の事、気にして居ない、頭を上げてくれ」

 

「はっ!」

 

「ところでだ、俺の後ろに居る奴等は一月後に又来る、俺の迎えの為にここいらに来るから宜しく頼む」

 

「分かりました、同僚にも伝えておきます」

 

これでハルータ村の愉快な仲間達は顔を覚えられた。

 

俺の迎えに来る時、スムーズに事が運ぶな。

 

とは言え、入り口で自警団に一言声を掛け、来た理由も伝えさせる様に村の奴等に言い聞かせておこう、念の為にな。

 

ブライアン何て知らん奴が見たら、チンピラ以外の何者でもないんだ。

 

その辺りも考慮しておかなければなぁ‥‥

 

「おいお前達、一月後に俺を迎えに来る時、ここいらに居る自警団に一声掛けて説明しろよ、くれぐれも揉め事を起こすなよ、ブライアン分かったな?」

 

「分かってるよ、何で俺を見て言うんだ?」

 

「お前が仕切ってるからだよ、ついでに言うとだな、お前は見た目がチンピラだからな」

 

「・・・」

 

これは事実だ、だからそんな傷付いた顔すんな。

 

実際問題として、来月に俺抜きでここまで来るとなれば、止められる可能性が大きい。

 

その際に、揉めないとは言い切れないんだ、であれば今の内に言い聞かせなければ、後で揉めて迎えに来るのが遅れる事を防げる。

 

「ブライアンだけで無く、お前達もだぞ、ここだけで無く、自警団に声を掛けられたら素直に答え、決して揉める様な事はするなよ、俺を迎えに来るのが遅れたら堪らんからな」

 

「分かってるよ守長、なぁみんなも分かってるよな?」

 

うーん‥‥ ちゃんと返事してるが、いまいち不安なのは何故だろう? コイツらの日頃の行いのせいかな? まぁ良いだろう、一応は信じてやる。

 

もしやらかしやがったら、次は無いってコイツらも分かってるだろうからな。

 

~~~

 

あれから少し歩くとやっと到着した。

 

この辺りは入り口側より更にデカイ家が建ち並んでいる、家って言うより屋敷だ。

 

家もデカイが、庭もかなり広い。

 

じいさんの家は、周りに比べ更に一回り大きく広い。

 

そして当然、門番兼、護衛の者も居る。

 

「ネイサン・サリバンだ、じいさんに話は聞いてるな?」

 

「はい、お久し振りです、奥様に知らせて参りますので、申し訳御座いませんが暫しここでお待ち頂きたいのですが‥‥」

 

「分かった、頼む」

 

幾ら前以て来ると伝えてあるとは言え、今日は仕方ない、明日からは素通りする事になるだろうがな。

 

「ヒェ~ また一段とデカイ家だな」

 

「兄貴、こう言うのはお屋敷って言うんだ、それにしてもスゲーな」

 

コイツら子供みたいな言い方だな、まぁ気持ちは分かるがな。

 

門の中に入れば、更に驚く事になるだろう。

 

庭も綺麗に手入れされてるし、花が咲き誇り、家庭菜園や、それこそガラス製の温室まである。

 

この世界でも冬でも咲く花があるが、他の季節もここの庭には、色とりどりの花が咲いている。

 

それだけでも、どれだけ金を使い、庭を手入れしてるのが分かろうと言う物だ。

 

「お前達、まだ気を抜くなよ、特にモリソン弟、お前はまだ仕事中だと言う事を忘れるな」

 

「なぁ守長、俺は何を持ってるんだ?」

 

「聞きたいか?」

 

「いや‥‥ やっぱヤメとくよ‥‥」

 

「どうした? 聞きたいんだろ?」

 

「いや、忘れてくれ守長」

 

ちょっと笑顔で理由を聞いてやったと言うのに、顔色を悪くしやがって。

 

多分だが、まずい事を聞いたとか、聞いたらまずい事だって思ってそうだな。

 

その通りだよ、お前は知らない方が良い。

 

世の中には知らない方が幸せだって事もあるんだ。

 

「ネイサン」

 

「おー、ばあちゃん、久しぶり」

 

「あらあら、大勢引き連れて、アナタあんまりそう言う事好きじゃないのに」

 

「土産が結構な量になったんだ、だからだよ」

 

「もう‥‥ いらないって言ったのに‥‥ 他人行儀ね、クランツも怒るわよ」

 

「まぁ良いじゃないか、気持ちだよ気持ち、それに今赴任してる村は美味い物が結構あってね、二人にも食わせたかったんだ」

 

「もう、そんな事を言われたら何にも言えないじゃないの」

 

「食ったら分かるよ、あー コイツらを家に入れても?」

 

「ええ勿論、立ち話も何だし、入って」

 

やっと着いたよ、テレーゼばあちゃんの顔を見ると休暇だって実感が湧いて来たな。

 

じいさんの顔を見れば、更に休みだって気持ちが湧くだろうな。

 

「おい皆、入るぞ、お行儀良くしとけよ」

 

「あらあら」

 

うーん、ばあちゃんったら微笑ましそうにしちゃって。

 

俺の事をまだ子供だって思ってるのかな?

 

「なぁばあちゃん、じいさんはまだ仕事中だよな?」

 

「ええ、でも今日は早く帰って来るって、何日も前から言ってたから、もう少ししたら帰って来ると思うわよ」

 

「夕方前に? 何か悪いね」

 

「何言ってるのよ、あの人も今日を楽しみにしてたから、それにたまには早く帰って来るのも必要よ」

 

まぁ仕事が忙しいのは良い事ではあるが、じいさんの場合は、ちょっと忙し過ぎだからな。

 

そのじいさんに働き過ぎだと言われてた官吏が、何処かに居た訳だが‥‥

 

「ねえ、ネイサン、連れて来た人は何人居るの?」

 

「ん? 十二人だね」

 

「お茶の用意しなくっちゃ」

 

「あー いいよいいよ、それよりコイツらを帰さなきゃならないんだ、馬車を呼んで貰っても良いかな」

 

「あら、いらないの?」

 

「いいよ、早く帰らなきゃ村に帰る前に日が暮れるから」

 

ん? コイツらどうも御不満の様だな。

 

「えー 守長そりゃねーよ」

 

「そうだよ、俺ら茶に呼ばれたい」

 

「・・・」

 

コイツらはさっきの話を聞いて無かったのか?

 

今は冬だぞ、日が沈むのも早いんだぞ。

 

何の為に馬車に乗せて帰すと思ってるんだ、コイツら飯食ってる時にもした話をもう忘れたのか?

 

「さっさと帰らないと日が沈み、夜の闇の中を帰る事になるぞ、それに魚市場に居る村の奴等も帰って、お前達だけで帰る事になる、何も俺は意地悪で言ってる訳じゃ無いぞ」

 

「でも少し位なら‥‥」

 

まだ不満か? 幾ら天気も良く、海も荒れて居ないとは言え、万が一の事もあるかも知れない。

 

それに、魚市場に来てる村の奴等と一緒に帰る方が俺も安心だ。

 

仕方ない、コイツらが一刻も早く村に帰りたくなる、魔法の言葉を言ってやろう。

 

「いや、お前達、帰るのが遅れれば、酒を飲むのも遅れる訳だが?」

 

「「「・・・」」」

 

「それに帰るのが遅れれば、その分飲む時間も減るんじゃないか? 明日も仕事だろ? 帰るのが遅れれば遅れる程、楽しい時間も減ると思うが、どう思う?」

 

「そうだな、夜の海に船で帰る事になったら危ないよな」

 

「だな、青空市に来てる村の奴等と帰る方が安全だよな、うん、夜の海は何があるか分からないもんな」

 

「ああ、お邪魔しちゃ悪いよな、さっさ帰ろう」

 

コイツら‥‥ 自分で言っといて何だが、凄い手のひら返しだよ。

 

さっきまで不満気だったのに、そわそわして今じゃ一刻も早く帰りたがってやがる。

 

「はぁ‥‥ ばあちゃん、馬車呼んで貰って良いかな」

 

「分かったわ、ジョーイ、ちょっと馬車を呼んで来てくれる」

 

ばあちゃん苦笑してるじゃないか。

 

しょうがない子達ね、って思ってるんだろうなぁ。

 

お前ら一月後ちゃんと俺を迎えに来いよ。

 

コイツらを見てたら、何だがちょっと不安になって来た‥‥





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