『ガジラ、お前やけに俺にビビってたが、俺は
『優しく?……。いや、何でも無い忘れてくれ。一応聞くが、アンタさっき言った事は本当の事だよな?』
『本当とはどの事だ?』
『御免状ってのを持ってて、巡察使で、特級官吏ってのだよ』
『そうだな、噂偽り一切無い本当の事だが?』
それがどうしたんだ? コイツはもしかして帝国の事が多少は分かってるのかな?
『アンタさっき…… 今もだが、魔法を使ってたよな? で、使える魔法は生活魔法だけとも、そう言ってたよな?』
『そうだな、だからどうした? お前は帝国に多少詳しいのか?』
『多少は知ってるよ……。なぁ、アンタ名前はもしかして、ネイサン・サリバンって名前か?』
『そうだが、何でお前は俺の名前を知っている? 名乗って無いよな? ついでに言えば、お前とは面識が無いはずだが?』
何でコイツは俺の名前を知ってる? 面識も無いし何でだ?
『ああクソ! やっぱりか……。ツイてねえな……』
『おい、どう言う意味だ?』
何でコイツは絶望した様なツラしてやがる? 何故まるで魔王に出会った様なツラしてんだ?
『・・・』
『おいガジラ、答えろ』
『言う、言うから、言うから氷の塊と熱湯を出すのを止めてくれ! 頼む、殺さないでくれ』
『お前ちょーっと氷と熱湯を出した位で、何でそんなビビってる? 正直に答えないと分かってるよな?』
何だ? 何故コイツは絶望してるんだ? 今にも死にそうな顔してるんだ?
『言うから、殺さないでくれ…… でも正直に答えても怒らないでくれよ、頼むから、頼むから殺さないと約束してくれ……』
『・・・』
『無言で熱湯を出すのを止めてくれ! 言うから』
コイツはもしかして、俺を怒らせる魔法の言葉でも持ってるのかな? うん、魔法にそんな物は無い訳だが、気になるな。
『アンタは有名なんだよ、帝国の特級官吏にネイサン・サリバンってのが居て…… そんでそいつは、まぁアンタなんだが……。その…… 怒らないで聞いてくれよ、アンタが言えって言ったんだからな。その…… サザビー帝国の特級官吏のネイサン・サリバンは…… き、狂犬だって…… 敵対する奴は叩き潰される、そして無惨に殺されるって、その…… 無慈悲に、情け容赦無しに殺すって聞いた事があるんだ……。そんでソイツはすげえ生活魔法の使い手で、巡察使? だっけ? その巡察使だって聞いた事があるんだ……。なぁ殺さないでくれ、頼む……』
『・・・』
誰だよ、そんなガセネタを言い触らしてる奴は! 無慈悲に、情け容赦無しに殺す? 無惨に殺す? んーな事しねーよ! 人を快楽殺人者みたい抜かしやがって! 俺はサイコか? 酷い風評被害だな。
『怒らないでくれ、アンタが言えって言ったんだ、俺は、俺は聞かれたから言っただけだ』
『・・・』
本当誰だよ? まさか…… あのババアか? あのクソロリババアか? あんのクソ貧乳…… 奴か? 奴なのか?
いや、このポラポラのガジラは、三年前に帝国に来たと言ってたな、なら違うか。あのババアが南方諸島の総大使館に赴任したのは一年半ちょい前だ、今言い触らしてる可能性はあるが、少なくともコイツが聞いたのは多分三年以上前のはず、一応確認しておくか。
『おい、お前がその話を聞いたのは何時だ? ポラポラに居る時に聞いたのか?』
『えっ? 何時だろ……? 国に居る時に聞いたのは確かだけど、何時だったっけか?』
国に居る時か、なら三年以上前なのは確定だな。うん、ならあのババアが発信源では無いと言う事か。チッ……。誰がそんな事を抜かしてる? 誰だよ、そんな事を広めてる奴は?
『で? ポラポラじゃあ有名な話なのか? 俺のその話は?』
『知ってる奴は知ってるって程度だと思う。俺は国では商会で働いてて、貴族と取引があって、確か会頭がその貴族からそんな話を聞いたって言ってたと思う』
『そうか…… 情け容赦無しに、無慈悲に、無惨に、容赦無く殺すか…… 酷い風評被害だな』
『でもアンタ御免状っての持ってんだろ? アレって俺が聞いた話じゃ、人をブッ殺しても許されるし、確か皇帝がその生涯でたった一度与える事が出来るって、無茶苦茶貴重な物だって聞いた事がある。だからアンタはブッ殺してもお咎め無しで、気軽にブッ殺してるって聞いたぞ』
『お前コラ! 陛下って敬称を付けろや、このデコ助が! 何お前呼び捨てにしてるんだ? あぁ? お前舐めてんのか? 身体中の骨と関節を曲がらない方向に曲げてやろうか? コラ、マジでやってやるぞ。お前の
『ごめんなさい、ごめんなさい、許してくれ、いや、許して下さい、もう二度と言いませんから、言いませんから許して下さい……』
チッ……。このボケが……。先帝陛下を敬称無しで抜かすとか、良い根性してんな。マジで教育してやろうか……。
クソが、コイツは他国の人間だから仕方ないが、先帝陛下を侮辱された様な気がして気分悪いな。
とは言え他国の奴だ、仕方ないが…… 腹は立つな、こんな犯罪者に言われるのは。
しかし大分誤解があるな、誰が気軽にブッ殺してるだ? そんな事してねーよ。
それと御免状だ。確かに時の皇帝が、生涯に一度だけ、それも在位十年以上の皇帝がただ一度だけ与える事が出来る物だ。
俺の場合は先帝陛下に与えられた物で、陛下は御免状を本来は誰にも与えるつもりは無かった。だが俺に与えられた。
『サリバンよ、ソレがそちを守るであろう……。余が死した後…… その只の紙切れがそちを守る防壁となろう…… 余が……』
クソ、何で陛下はお隠れになられたんだ? 人には寿命ってのがあって、永遠は無いってのは分かってる、だがもう少し健在で在られれば……。
クソ! 人との別れってのは、どんな世界であっても、どんな体制でも辛いもんだよ。親しい、近しい人との別れってのはな。
『お前、俺が持ってる御免状は、殺人許可書じゃ無いからな。まぁ…… 人をブッ殺しても
『はい、分からました』
『分からました? お前舐めてんの?』
『舌が上手く回らなかっただけです、すいません』
『お前次は無いぞ、分かってるな?』
『はい、すいません。以後気を付けます』
しかし御免状に関しては、色々誤解されてる部分があるな。確かに貴重だ、実際時の皇帝と言われた人達の中では、与える事無く儚くなられた方達も居るからな。
先帝陛下もそう公言されておられたが、俺に与えるとなった時はかなり騒がれた。
サザビー帝国の皇帝がその生涯において、只一度与える事が出来る物。それ以外で手にするには、時の皇帝、それも公的な立場での皇帝として、そして大臣達、元老会、その他諸々の許可が要るし、与えられるまで数十年掛かると言われてる物だ。つまり実際には与えられる事等皆無と言って良い。だからこそだ、値打ちがある。
いわば時の皇帝が個人として与える権限を持つ御免状は、私的な物であり、その時々の皇帝の私的な権限でもある。
先帝陛下が俺に与えられたのも先帝陛下の私的な物、権限で、だから下賜では無く、敢えて、与えられると言う。
それをコイツはマーダーライセンスみたいに言いやがって……。御免状は殺人許可書じゃねーよ。
ピーーー。ピ~~~。ピーーー。
ん? 笛の音? 小路に気配が……。
「そこのお前達動くな!」
『そこのお前達動くな、我々はバハラ駐留軍である、抵抗した場合身の保証は出来ない。大人しくその場に留まれ』
「繰り返す! 我々はバハラ駐留軍である、抵抗した場合身の保証は出来ない。大人しくその場に留まれ」
軍か? 帝国語と南方諸島共通語での呼び掛けか。しかし少ないな? 三人か? いや、後ろにも二人居るか、そうだよな、五人一組が基本だもんな。
笛を吹き続けてる、これ即、軍だけで無く衛兵や自警団の連中が集まってくるな。尋問は中止かな。
「おい何だこの氷の塊は?」
「最初からありました」
あらら、入りにくそう。