異世界灯台守の日々   作:くりゅ~ぐ

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第2話 銅貨一枚

 

 

カモメが鳴いている

 

朝のこの時間の潮風は少しひんやりとして気持ちが良い。

 

もう少し日が昇り始めるとあの鼻に付く、何とも言えない磯の香りがしてくるだろう。

 

この時間の磯風は中々に良いものだ、朝のランニングと鍛練が終わり火照った体に染みる。

 

ストレッチが終わり体にクリーンを掛け、そろそろ我が家たる灯台に帰ろうとしていた時だった。

 

向こうからソフィアばぁさんが歩いて来た。

 

何だか顔色が宜しくない。

 

珍しい・・・

 

こんな時間にあのばぁ様がこの辺りに来るとは何かあったか?

 

うん、俺の方に向かってきているな。

 

「ソフィアばぁさんどうした? 俺に用か?」

 

ん?・・・ 背負子を背負ってるな。

 

「あー 守長、ちょっといいかね?」

 

どうしたどうしたばあさん、まさか愛の告白か?

 

まぁんーな事は無いか、しかし顔色が悪いな。

 

「構わんがどうした? 顔色が悪いが体の調子でも悪いのか?」

 

「それが・・・」

 

ソフィアばぁさんの話しによると

 

ひ孫のアンナが昨日の晩から熱が出たらしい、

夕飯前迄 何時もの様に元気にはしゃぎ回っていたが、夕飯を食べ初めてから急に静かになり、お腹減ってるけど食べたくない、食欲が無いと言い出して結局ほとんど食わずにベッドに入ってしまったらしい。

 

それでおかしいと思い額に手をあてると、熱っぽくなっていた。

 

それでそのまま早めに寝かせたが、夜中に高熱が出てアンナは一晩中うなされていたようだ。

 

ソフィアばぁさんとばぁさんの娘、そしてアンナの母親の三人で一晩中看病していたらしい。

 

そして・・・

 

「守長、氷が欲しいのだけど・・・」

 

あー体を冷やす為か、こりゃあよっぽど熱が高いんだな。

 

「アンナの氷嚢用にだろ? 分かった」

 

俺のその言葉にソフィアばぁさんはホッとした表情をした。

 

と言うか大分疲れてんな、ばぁさんも年だからな。

 

「ばぁさんも帰ったら少し休んだほうがいいな、顔色が良くない」

 

「うんそうするよ」

 

とりあえず・・・

 

高さ30cm 横と幅20cm位の氷柱でいいか、こんぐらいならばぁさんも持って帰れるだろう。

 

今の季節直ぐ溶けるからな、この位はいるだろう。

 

生活魔法の製氷を使いさっと出す、うん我ながら素晴らしい氷柱だ。

 

氷柱を背負子にくくりつけながら氷を使った熱冷ましの効率的なやり方をソフィアばぁさんに教える。

 

体を冷やしたいならワキや太ももの内側辺りを冷やせば熱が下がりやすい事、

そして氷は革袋に入れるだろうが、革袋はタオル等で巻きあまり長時間宛て無い事、

おでこにもタオルを置き革袋を直接置かないように気をつける事、

水に塩少々 出来れば砂糖も、そして果実の搾り汁を入れたのをたっぷり飲ませて汗をかかせる事。

もしくは果実の搾り汁100%を飲ませてついでに岩塩の細かい欠片を飲ませる事等をソフィアばぁさんに伝える。

 

「ありがとう守長、それで・・・」

 

「あー ソフィアばぁさん、料金は銅貨一枚でいいから、それと魚とか飯とかもいらないから」

 

ソフィアばぁさんが困った顔をしている。

 

そりゃそうだよな。

 

こんなデカイ氷柱 今の季節に買うとなれば金貨一枚所か、ヘタしなくても金貨二枚ぐらいしてもおかしく無いのだから。

 

銅貨一枚なんて子供の小遣いより少ないんだ。

 

 

本当ならタダでも別に良い。

 

でもそうすると魚とか食いきれない位持ってくるし、飯とか暫く差し入れしてくるからなぁ・・・

そうなるとむしろこっちが気ぃ使うんだ、

だからこそ銅貨一枚だ。

 

例え銅貨一枚でも料金として貰えば

向こうも料金を払ったからと思えるし。

 

まぁそれでも色々くれるから、この銅貨一枚は俺の言い訳用だ。

 

もう料金は貰ったからチャラ! あれで終わりと、話を持って行く事が出来るのだ。

 

ソフィアばぁさんは困った顔のまま流石にそれは悪いだの何だと言うから、強引に銅貨を一枚だけ貰ってこの話しを終わらせた。

 

 

さて銅貨一枚も貰ったしさっさと終わらせよう。

 

「ホレばぁさん、さっさと帰ってアンナの体を冷やしてあげな、それにここでくっちゃべってたら氷が溶けるだろ」

 

そう言うとやっとソフィアばぁさんは

何度も何度も礼を言いながら帰って行った。

 

さて、この世界だが魔法がある。

 

とは言え誰でも使える訳ではない。

 

かく言う俺もいわゆる生活魔法しか使えない、

まぁ、使えるだけでも大したものであるが・・・

 

そして、その事を口に出して言わない。

生活魔法しか使えない何て言おうものなら・・・

 

嫉妬に狂ったアホが何をやらかすか分からん。

 

と言うのもだ、近年魔法を使える人間は減って来ていた、それこそ激減と言ってもいい位に使える人間は減っている。

 

それは人族だけで無く、魔族の間でも減ってきている。

 

そうこの世界は魔族もいる。

 

見た目は人とほぼ変わらない。

 

ちなみに人族と魔族は争っている訳ではない、

ただの貿易相手、そして隣人でしかない。

 

まぁ良いお隣さんであると思う。

 

魔族はひと昔前迄、全員が魔法を使えていた。

 

だが近年、10人の内使えるのが7~8人程になってきており。

 

100人なら70~80人、

1000人なら700~800人位になってきている 。

 

人族からしたら7割も使えるだが。

 

魔族からしたら

使えない者の割合が2~3割に迄、増えているとなる。

 

人族、魔族、両種族とも魔法を使える者の割合が減少しつつあり、

学者連中等はこれを種としての進化だとか、

いやいや、退化だと盛んに議論している。

 

文明の発達と共に減って来ているから進化。

 

使えなくなってきているから単純に退化だ。

 

そんな議論があるみたいだ。

 

俺個人としては進化したから使えなくなり、

必要無いから無くなり退化したと思う。

 

何か我ながら哲学みたいだな。

 

まぁともかく、人族で魔法が使えるのは今では珍しい、例えそれが生活魔法でもだ。

 

俺としては大魔法を使いドラゴンを倒してみたいなイメージであったが。

 

現実には魔法を使える者もピンキリである。

 

それは人族、魔族、関係なく。

種火程度、喉を湿らせる程度の水しか出せない位の魔法しか使えない者は多い。

 

俺的には大魔法を使って~

ドラゴンを~ のイメージが強すぎた。

 

生活魔法に不満がある訳ではない。

 

それ所か生活魔法で良かったとすら思っている位だ。

 

攻撃用の魔法は一切使えないがそれでも、

生活魔法で良かったと心から思うし。

 

本当に生活魔法は便利だ。

 

それに俺は魔力が多い。

 

それも異常な程に多い。

 

これが生活魔法では無く攻撃魔法であればと、良く言われたものだ。

 

だがなぁ・・・ 俺は軍人でも無いしただの官吏でしかないんだ。

 

それに自分の身を守る程度の力もあるし、

金を稼ぐと言う意味では生活魔法は本当に役に立つ。

 

氷は夏場にはアホ程売れる。

 

実際子供の時はそれでかなり稼いだ。

 

子供の小遣い何てレベルでは無い位にだ。

 

商売と言える程稼いだし、実際自分で商売をしていたのだから・・・

 

氷何か100cm四方位の大きさなら幾らでも作れるし、水だって幾らでも出せる。

 

そして飲む事も出来る。

 

生活魔法と攻撃魔法の違いはその辺りにある。

 

攻撃魔法で出来た水や氷は不純物が交じり、飲めば腹を壊すし体にも宜しくない。

 

 

だが生活魔法で作った水や氷は飲んでも何ともない。

 

むしろ不純物が一切混じっていない為、

大変美味しいらしい。

と言うかただの蒸留水だ。

氷はその蒸留水を凍らせた純氷である。

 

まぁだからこそ美味しく感じるのだろう。

 

カモメがクゥー クゥーと鳴いている。

磯臭さを増し始めた香りが潮風に乗って

鼻腔をくすぐる。

 

さてと、今日も1日の始まりだ。

 

 

 

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