『カンチョー!』
その日も元気にあのアホな掛け声が聞こえてきた
思えばあの日が最も輝いて居たのかも知れない。
そしてそれは最後の輝きでもあった。
カンチョーを愛し、カンチョーに魅入られた者達の落日である。
村民有志の会合後、出席者達は村長に訴え出た。
曰く、
『何とかしてくれ』
『こんなアホな遊びは禁止にしよう』
『何でこんな事になったか原因を調べよう』
『正式に話し合おう』
『各々の家で叱っても根本的解決にならん』
『村全体で話し合って決めなきゃ又繰り返す』
そして、
『村民会合の開催を!』
斯くしてハルータの村民会合が開催される事となる。
そして何故この様な遊びが流行ったのか?
何故こんな事になったのか?
村民会合の前に、調べられる事は徹底的に調べ原因を探り、そして準備した。
子供達への聞き取り調査はスムーズにいった。
皆が口を揃えてやり始めたのはアンナだと言った。
アンナも自白‥‥
素直に認めた、アンナの場合は聞き方を間違えると死んでも言わないが、それは反面 聞き方さえ間違わなければ普通に言う。
おそらく会話の中で何気なく聞いたんだろう。
そしてアンナは悪気なく、俺に教わったと言った。
更に子供達から裏取りをし、証拠を固めたと思ったらしい。
更に調査を進めて準備した。
当然その間も、あの掛け声は村に響いていた。
『カンチョー!』
今や当たり前になりつつあるアホな掛け声だ。
何故ガキ達は誰にも止められず、カンチョーライフを謳歌出来てたかと言うと、大人達に泳がされて居た様だ。
因みに俺は、村民会合が行われ、どの様な内容か分かって居た。
微妙に普段と様子が違う村民を見て、何かあると感じたのだ。
様子もそうだが、俺を見る目に違和感を感じ、情報得る為に、偵察部隊に探らせた。
更に、密偵にも探らせた。
まぁその密偵も偵察部隊もアンナなんだが‥‥
まずアンナには、鉄の結束を誇る同盟の者に話を聞かせた。
一つ一つはそれ程意味が無い様な、どうでも良い話しでしか無いが、それら全てを集めさせ混合玉石の内容から推測して、村民達の企みを看破した。
そして情報の裏取りの為、アンナに偵察に行かせた。
それらの情報から会合と会合内容を把握した俺は、アンナに何があっても堂々と、普段通りにしておけと伝える。
本当に俺は、帝国一可哀想な官吏さんである。
そしてその日は来た。
今日は村民会合があるから、夕方に村長宅の前に集合と言われた。
一応は何故 俺も参加なのか聞いたら、
『守長にも関係ある』の一点張りであった。
まぁ良いだろう。
俺には何も
ついでに言うと、俺悪く無いもん。
うん、欠片も悪く無いね。
村長宅前に行くとハルータの村民が殆んど集まっていた。
灯台守のじい様達も、夜番のジョージのじい様以外みんな居た。
『皆、広場に移動しよう』
カンチョーにより臀部の特殊な部分を負傷した村長の呼び掛けに皆が移動し始めた。
途中アンナを見掛けたが俺に言われた通り、堂々として居た、ついでに言うと若干ふてぶてしい気もしないでもないが、奴は元々そんなんだったなと思い気にしない事にした。
最近は俺の前ではそんな事無いんだが、普段通りにしろと俺が言ったのであの態度は正解だ。
しかし男のガキんちょ達はみな顔色が宜しくない。
まぁこれから始まる事を考えると仕方ない。
今から始まるのは村民会合と言う名の村民裁判だからだ。
裁判長は村長、そして嫁のカレンは村長補助と言う名の裏裁判長と言った所か。
しかし酷い裁判もあったもんだよ。
被告と容疑者には法弁士が付かないんだから。
これでは裁判では無く、広義の意味での弾劾裁判と言った所だな。
まぁ‥‥
裁判の名は、カンチョー裁判なんだがな。
締まらんなぁ‥‥
『さて、今日皆に集まって貰ったのは、最近子供達の間で流行っている遊びについてだ』
うん、その遊びで村長エライ目に合ったよね?
『私もやられたが、カンチョーと言う遊びについてだ』
ここは笑う所なんだろうか? まぁ村長は真面目に言ってるから違うんだろうが‥‥
『守長、アンナ、前に出て来て欲しい』
嫌です、そう言ったらどうなるんだろうか?
まぁ仕方ない、少々付き合おうじゃないか。
『アンナ、このカンチョーと言う遊びはアンナが始めた、そうだな?』
『そうだよ』
アンナの言葉に村長が重々しく頷いた。
コイツ格好付けてるがこの前カンチョーされて悶絶してたよな?
『でだ、守長がアンナに教えた、間違い無いかな?』
『そうだな、教えたが何か問題があるのか?』
『・・・』
何でカレンの方を見るんだ?
あまりにもスムーズに行き過ぎてセリフをど忘れでもしたのか? それか俺が素直に認めないとでも思って居たんだろうか?
『あー ‥‥ 守長は村の今の状況をどう思ってるのかな?』
『村長、質問の
『・・・』
いや、だからそこで黙るなよ、この様な場合は自分のペースに持って行かないとそれだけで不利になるのに‥‥
コイツは勝つ気があるのか?
てか何で俺が村長の心配をしなければならないんだ?
『おいカレン、通訳してくれ』
『守長はカンチョー遊びを教えた、それで村が大変になったけど、どう思うか、あとは‥‥ 責任を感じて居るのか? その辺りをウチの人は聞いてると思う‥‥』
カレンが自信無さげだ、まぁカレン自身はこの弾劾裁判には反対だったみたいだからな。
俺を責めて、ましてや責任を取らせるのは無理があると思っている、ついでに言うと、俺には勝てないし、意趣返しも怖いと思ってる様だ。
まぁどうせ新任の若い灯台守長に 一発カマシを入れとこうとでも思って居るんだろう。
ついでにこんなアホな事を村の皆がしないように、見せしめにしてやろうもあるかな?
そう思って居た、だがこの状況を使い俺に
まさかまさかだよ。
予想は半分当たった、ちっとも嬉しくは無かったがな。
しかし舐められたもんだよ。
バカめ、カマすなら赴任した時にやるべきだったな、まぁ、結果は変わらんがな。
『確かに俺はアンナに教えたが、俺はアンナにも他の子供達にもやれ何て一言も言って無いが? ついでに言うと
『うううん、そんな事 私一言も言って無いよ』
『だ そうだが? それなのに何故、俺とアンナはこの騒動の犯人かの如く吊し上げられてるんだ?
アンナだけで無く、他の女の子達も堂々として居る、アンナから堂々として居る様に言われてるからだ。
俺がアンナに、そしてアンナから女の子達に伝えたからな、実際このバカ騒ぎの途中で同盟、女の子達は自分たちから仕掛けて無い、当然カンチョーテロにも参加して居ない、寧ろ最近はカンチョーテロを阻止してた位だ。
それは俺のアドバイスにより、アンナが同盟の女の子達に呼び掛けたからだ、それによりカンチョーテロはかなりの数、未然に防がれた。
『・・・』
『どうした村長? 何故黙る? そして子供達、まぁ男の子供達があんなアホな事をやってる間、お前達大人は何をしていた? 放置して居たよな? それなのに何故、注意し、止める様に何度も言ってた俺や、女の子達が槍玉に挙げられる? コレ、完全に俺や女の子達を槍玉に挙げて叩く為に開いただろ? 違うか?』
『・・・』
ほら黙りやがった、アホめ、こんな程度のザル裁判で俺を叩けると思うなんざ舐め腐ってやがるな、きっちりとコイツらには分からせてやらねばならんな。
『で? どうなんだ村長? あんなアホな事をしてた子供達にまさか気が付かなかったのか? お前達の目は節穴か? なぁ、事が起こってから対処するなんざ誰でも出来るんだ、ましてや
『それは・・・』
『それはとは? 因みに女の子達は子供ながら途中で気付いて止めて、反省し、男の子達を止めてたが、それなのに何故に俺達が槍玉に挙げられてるか教えてくれないか? 村長で無くても良い、誰かにご教授願いたいんだが?』
バカめ、村長だけで無く他の大人もだんまりか‥‥
確かに俺が事の発端かもしれないが、ちゃんと手は打ってたわ、それよりも・・・
俺を舐めた事を、それがどの様な結果をもたらすか分からせてやる。
官吏は舐められたら商売あがったりのお仕事だからな、そして残念ながらお前達に勝ち目は無い!
きっちり 分からせてやる。