変身せよ、強き自分へ 臆病者は変われるか?   作:カフェイン中毒

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カモンズ・フューリー

 ニック・フューリー、トニーさんから耳にタコができるくらい聞かされた名前だ。主に愚痴で。胡散臭いだの人望が無いだの、秘密主義だの悪口ばっかり聞かされてた気がする。というかそれ一部トニーさんにブーメランしてない?と思ったけど言ってもしょうがないし、トニーさんにはいい方向に進みだし始めてたと思うから気にするほどでもないと思う。

 

 話が逸れたけど今俺の前にいる不法侵入スキンヘッドガングロマンはどうやら国のお偉いさんということで間違いないようだ。多少口が悪いのはホテルとはいえ自分の部屋に我が物顔で鎮座してたら流石の俺でも思うことはある。思うことがあるだけでまあいっか程度だけど。トニーさんが言うにはこの人元スパイらしいしそういうお約束的な奴があるのかな。

 

 「あー……初めまして?まあトニーさんが話したか調べたか知りませんが知ってる前提で挨拶させてもらいますけどハルト・ハヤカワって言います。一応よろしくとだけ」

 

 「ああ、初めましてだ。まず断っておくが、俺は君を今すぐ組織に引きずり込みに来たわけじゃない。将来的にリクルーティングはするが、今すぐは不可能だ」

 

 「へえ、そうなんですね。何か理由が?」

 

 「偏屈な発明家の協力がなくなったら困るからな」

 

 「あー、なるほど。俺より有能ですからねえそりゃ」

 

 フューリーさんがまず俺に指を立てて言うことにはどうやら彼は今ここで権力を盾に俺からライダーシステムを取り上げたり、S.H.I.E.L.D.とかいう国防組織に所属させたりするつもりはないらしい。ふーん、じゃあなんで俺に会いに来たんだこの人?不思議すぎるんだけど?まあ学もなければおつむもいまいちな俺が考えることの上を行く理由があるんだろう、多分。

 

 「じゃあなんでわざわざ不法侵入して俺に会いに?」

 

 「一つは人柄の確認。君が力を持つ人間なのは分かっているが、それをどう振るうかは未知数だ。アルドリッチ・キリアンをやりこめたそれを犯罪に使われたら面倒くさいからな」

 

 「俺の力はトニーさんと同じ外付けのスーツです。取り上げることも可能ですよ?」

 

 「ふん、出来るなら最初からそうする。その言い草だと取り上げたら何かしらありそうだがな」

 

 だめだ舌戦じゃ勝てねえわこれ。俺とゼロワン……正確にはゼアは一体であることを証明するためにゼロツープログライズキーでも取らせて一杯食わせてやろうと思ったけどすぐに狙いを見抜かれてしまった。素人判断でもいいセン行ってると思ったんだけどなあ。今このタイミングでシステムを取られるのはまずい超えてやばいので抵抗を試みたが無駄だったようだ。

 

 「一応聞いておくが……君のテクノロジーを公開する気は?」

 

 「ありません、というか俺じゃできません。外側から分析する分には結構ですけどね。これが大本ですけど……俺から引き離せば襲い掛かってきますよ。所有者の変更も受け付けません。これに至ってはシステムの方が上位です」

 

 「だろうと思っていた。スタークのとこのAIが突破できない時点で何か怪しいと踏んでいたが……テクノロジーに使われているのか」

 

 「……まあ、見方によっては。ただ、ゼアと俺は対等です。こいつは俺を使うんじゃなくて俺に協力してくれている、そこをはき違えないでください」

 

 ゼロツープログライズキーを見せて聞かれたことに答える。トニーさんからある程度人柄を聞いていたから意図的に俺を怒らせようとしている、あるいは俺から正常な判断を奪おうとしているのかどちらかだろうという前提で対応することが出来ているのでまだ俺は冷静な方だ。まあ俺は短絡的に力を使おうなんて思えない、というか思えてたら初めて変身したあの時からニューヨークのあの日まで使いまくってたに決まってる。自己防衛ならともかく、ムカついたとか、そういう理由で使うことはしない。

 

 「それで?一つ目の確認は終わりましたか?」

 

 「ああ、マイアミの映像とニューヨークの振る舞いを見ても合格だ。では本題に入らせてもらう。君を雇いたい」

 

 「……S.H.I.E.L.D.とやらに入れと?」

 

 「いや、そうではない。俺が個人的に君を雇いたい。理由としては自由に動ける個人戦力が欲しいから、と言えば納得か?」

 

 「何を期待してるのか知りませんが俺は素人ですよ。殴り合いならともかく、潜入だの任務だのというのなら正規軍人の方が100倍役に立ちます」

 

 何だこの人、S.H.I.E.L.D.に今入れないと言ったと思ったら今度は個人的に雇いたいだって?真っ黒いことさせようってのがありありに見えるな。というか貴方調べてか聞いたかしたなら俺の本業がフードトラックとはいえ料理人っての忘れてないか?すでに手に職あるんだぞ?店開かないと怪しまれるんだぞ?監視カメラを誤魔化すのも面倒なんだぞ、ゼア任せだけど。

 

 「……俺に何させようっていうんです?」

 

 「紛争地帯への介入、テロリストの鎮圧、不穏分子の排除……まだ聞くか?」

 

 「……専門のプロにさせた方がいいでしょうそれは」

 

 「だが必要なことだ。生憎真正面から突っ込んでスターク以上の防御力を持つ存在など他に一人くらいしか思いつかなくてな」

 

 「じゃあその思いつく人にやらせればいいでしょう」

 

 「怒りに支配された緑の大男にできると思えればな」

 

 おちょくってんのかこいつぅ!まあ、何だ……言われたことはそりゃあ、戦うって決めた時点で経験するであろうことだ。この世界において仮面ライダーが打倒するべき怪人は存在しない。怪人じみた存在はいるんだけどそれでも大多数相手するのは人間だ。しかもエクストリミスみたいな強化もされてないやつら。それに戦うって覚悟決めたばっかりだ。でっかくため息をついた俺はいくつか彼に質問をすることにする。

 

 「……いくつか質問します。俺は素人です、仮にテロリストの鎮圧を求められても真正面から突っ込んで殴ることしかできません。内密に、とかなかったことに、なんてのは不可能です。そこら辺如何するつもりなんですか?」

 

 「それでいい。君に足りないものを一つ教えてやる。経験だ、君が望むと望まざるとにかかわらず俺のような手合いには会うだろう。その際にいくら力が強かろうが経験がなければ話にならない。チームにも入れない、その経験を積むチャンスを俺から与える、そのためだ」

 

 「有難迷惑もいいところですね。べつに俺の力が特別必要なわけじゃないでしょうに」

 

 「いや、戦力はいくらあっても足りない。あのニューヨークのようなことを起こさないためにも」

 

 その言葉で俺は閉口することになる。確かにあのニューヨークのようなことが再び起こる可能性は高い。なんせあのエイリアンの艦隊を見てしまったから。もうあんなことが起こるわけないなんて口が裂けても言えない。この人が言ってることはかなり自分勝手で俺の都合を考えてない事柄だ。突っぱねようと思ったが、トニーさんの話を聞くにホントに何を仕掛けてくるか分からない不気味さがある。

 

 「……聞きますが、俺が断ったらどうなるんですか?」

 

 「俺の方で止めているお偉いさんがたが君に直接いろいろ言ってくるだろうな。まだ君の中身は知らないが」

 

 「それ脅しってわかってやってます?……条件があります。受け入れてもらえないのなら、俺はこの国から消えます」

 

 「言ってみろ」

 

 「殺人はしません。それが絶対の条件です。今の仕事もやめません。俺はヒーローじゃないし、なろうとも思わない」

 

 俺はヒーローになりたいとは思わない。正直、守りたいもの守れればそれだけで満足できる。ニューヨークの時の一般市民や、今回のトニーさんのことだって。彼らの助けになれたという事実だけで正直十分だ。名声とか、お金とかそんなもんは必要な分だけあればいい。名声なんて無くてもいいぐらいだ。ありがとう、その言葉だけで十分なほどに。

 

 「いいだろう。もともとそのたぐいの仕事はさせないつもりだった。依頼という形で一つの任務に相応の報酬という形をとらせてもらう。君が成人するまでは、君の正体を誰かに知らせることもしない」

 

 「……随分と俺に都合のいい話ですね」

 

 「まず一つ、S.H.I.E.L.D.は少年兵を必要としない。そして、今君にへそを曲げられたら面倒だ」

 

 困る、ではなく面倒ときたか。断ったら余計に面倒なことになる感じだな。この人、多分トニーさんが出した条件を潜り抜けるようにここにやってきて色々俺に言ってるんだ。うっわ~、こういう人苦手だわ。マジでトニーさんが真顔でメタクソに言うだけあるわ、しかも断ったら多分法に則って色々ありそうだし、ここは受けるしかなさそうだ。即答で俺の条件に乗ってきた当たりこれ以上譲歩を引き出せる気がしない。S.H.I.E.L.D.に入らなくてもいいというだけ儲けもんか。

 

 「……わかりました。いいでしょう、貴方に雇われますよ。ただ、毎日出ずっぱりは勘弁してください、俺にも生活があるんで」

 

 「交渉成立だな。誤魔化せることはこちらで誤魔化す。君はいつも通りの生活の中に、仕事を溶け込ませろ」

 

 「勝手な人ですね」

 

 「よく言われる。すまないがこちらも必死でな。何でもやらないと、世界なんて守れない。清濁併せ吞むと日本では言うだろう?汚い部分から目を背けるのは感心しないな」

 

 「じゃあその汚い部分を学ばせてもらいますよ」

 

 「期待して待ってろ」

 

 やなこった、と言おうとする前にフューリーさんは立ち上がって懐から見たことない携帯端末を置いて去っていった。窓から。ホテルとはいえそれは如何なん?俺はどでかい溜息をついて、ソファーと一体化しそうなほどめり込んで座って天を仰ぐのだった。天井しか見えないけど。

 

 

 

 

 

 「……なに、これ」

 

 「あー、お前知らなかったのか?なんかスタークインダストリーズの方から見舞いだっつって色々やってたんだけどな……如何せんお前の家の隣だから何も言えなくてな……」

 

 「そうですかぁ……」

 

 フューリーさんと嫌々雇用契約を結んで2日たった。あの後もう家に帰ろうかと思ってライズホッパーでバイク旅をし、ワシントンまで戻ってきた俺の目の前にあるのは俺の家……はいつも通りなのはいいとして俺の家の隣、つまりサムさんの家の反対にある空き地にでかでかと立っている近未来的な建物である。超目立つ!何してんのあの大富豪!?怪しまれる要素マックスだろ!

 

 「というかいつお前アイアンマンと仲良くなったんだ?」

 

 「あー、実はカリフォルニアに行ったとき偶然会って……話してるうちに意気投合して暫くホームステイさせてもらったんですよ」

 

 「なんだそれ。じゃあアレつまりクリスマスプレゼントか?富豪のやることはスケールが違うな」

 

 「ですねぇ……とりあえず入ってみます。サムさんは来ますか?」

 

 「いや、実は退役軍人省から呼ばれててな。すぐ行かなくちゃいけないんだわ。まあ、お前が無事に戻ってきてよかったよ」

 

 「いや、ご心配かけてすいませんでした。ただ、結構これから同じようなことあると思うんで、気にしないでくださいね。きちんと連絡はしますから、しなかったらなんかあったかもですけど」

 

 「心配させるようなこと言うなよ。まあ、お前の生活だからな、任せるけど……大人として心配はさせてくれよ。それじゃ、行ってくるわ」

 

 俺の肩をポンと叩いてサムさんは車に乗って出かけてしまった。うーん、流石にサムさんに噓つきまくってるからめっちゃ罪悪感が……しかもこの先何年も嘘をつきまくるのが確定だ、胃に穴が開いちゃう。そして目の前の建物にも胃にダメージを与えてくる。覚悟を持って玄関らしき場所に立つと、俺のことを認識したのかドアが独りでに開いた。うわぁ……ハイテクぅ……

 

 「……やりすぎでしょトニーさん……」

 

 『いや、そうでもないだろう?ハッピーメリークリスマス&ニューイヤー!まずは祝わせてくれ。そしてお礼を言わせて欲しい。君のおかげで僕は大切なものを2つ失わずにすんだ。僕自身と、ペッパーだ。この建物と其処にある車はそのお礼だよ』

 

 「お久しぶりですトニーさん。いくらなんでも受け取れませんよ、お礼の言葉だけで充分です」

 

 『そう言わないでくれ、僕の気が収まらない。それに……話を付けたとはいえフューリーが感づいたんだ、準備は必要だろう。急ピッチとはいえそれは君の前哨基地だ、隣のお兄さんに知られたくない物でも置くといい』

 

 「……そうですね、わかりました。ありがたく受け取ります。ああ、そうです。紹介したいものが。イズ、自己紹介して」

 

 『はい、ハルト様。お初にお目にかかります、人工知能ゼア、対話型インターフェースを務めます「イズ」と申します。今後ともよろしくお願いいたします』

 

 『ワオ!ついに君もJ.A.R.V.I.Sの便利さに気づいたようだな。いつ出来たんだ?』

 

 「ちょうど昨日ゼアが作りました。J.A.R.V.I.Sの仕組みをラーニングしたみたいです」

 

 家の中に入った途端に繋がった通信に舌を巻きつつトニーさんと久しぶりな感じのやり取りをする。トニーさんに紹介したのはゼアが俺がJ.A.R.V.I.Sに頼りまくってるせいで対話型インターフェースの必要性に気づいてしまったらしく、マイアミの件の後に組み上げていたらしい新しい人工知能兼インターフェースの「イズ」である。うん、声とかアバターとか番組そのまんまだよ。それでいいのかゼア。そんなに俺に頼られないのが不満だったのか。

 

 ゼロツープログライズキーの上でアバターの頭を下げたイズを見たトニーさんは通信先で面白そうに笑うのだった。

 

 




 えー、忙しくて更新が遅れたことを謝罪させてください、申し訳ありませんでした。というわけでフューリー来襲の話でした。未成年を表立ってS.H.I.E.L.D.に入れられないならこういうことするだろうなあ多分みたいな感じです。
 
 そんなわけで次回もしくは次々回までオリジナル挟んでウィンターソルジャー二位以降と思います。

 ちなみにイズが生えてきたのはゼア君が「頼って……もっと頼って……」ってなったのでJ.A.R.V.I.Sを真似すれば頼ってもらえるのではないかと思った結果生えてきました。やったぜ。
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