変身せよ、強き自分へ 臆病者は変われるか?   作:カフェイン中毒

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ホークアイ・エンカウント

 「イズ、今日の売り上げどう?」

 

 『はい、ハルト様。本日は昨日と比べて300ドルプラスです』

 

 「おっやり~。新メニューは好調だね」

 

 『喜ばしいです』

 

 トニーさんの重たい感謝の気持ちを受け取ってからはや1ヶ月、新年も終わってそろそろバレンタインとかいう魔の行事が始まろうかという季節に差し掛かった。俺は今ワシントンにて営業の休憩をしているところである。トニーさんが俺が持ってるトラックとは別のでかいフードトラックをくれたのでそっちで今営業してる。

 

 なんでわざわざ新調した自前トラックではなくトニーさんがくれた方を使ってるかと言えば俺の目の前にグラフを出して売り上げの推移をダッシュボードの上に立って報告してくれてる2頭身のSDミニイズの存在があげられる。端的に言えばトニーさんの技術力を無駄遣いして元のトラックの影も形もないくらいに魔改造されたトラックは、車内にはホログラム、あと車体をディスプレイとして映像を投影することが出来、イズはそれを使って俺とコミュニケーションをはかってくれてるのだ。

 

 フロントガラスは防弾、内側はディスプレイ、動力はアークリアクター、俺の武装やアイテムを仕舞うラックが車内につき、それでいて前のトラックの比じゃないくらい調理器具も充実、ベッドスペースまであるくらい。後使ったことないし使いたくもないけど垂直離陸システムといざという時にリパルサーレイを始めとした自動防御機能が付いてるとか。ほんとにトラックかこれ?

 

 車体自体もアタッシュウェポンの外装を模倣したものらしくて防御力抜群、起動キーはゼロツープログライズキーという俺専用設計だ。だからゼアが勝手に運転する自動運転にも対応しているハイパーフードトラックなのだ!やっぱこれフードトラックのスペックじゃねえよ……戦場に営業しに行くわけじゃないんだからさ!でもミニサイズとはいえイズと面と向かって話せるのは感謝してる。

 

 両手を腰の前で組む、よく見るポーズをしてるミニイズに手を差し出す、ハイタッチのアレである。ピコ?という音を立てて首を傾げたミニイズがゆっくりと俺の手に自分の手を重ねた。感触なんてなかったけど、ホログラムだし。生まれたばかりの彼女は今あらゆる事柄をラーニングしているところで、番組の彼女そのものの記憶などは持ってないし、シンギュラリティにも達してない。

 

 おそらくゼアはゼロワンシステムの根幹を担うイズというヒューマギアのデータを流用する形でインターフェースとしてのイズを作り上げた。だから俺が知っている番組の彼女ではないし、そう見るつもりもない。彼女のしたいように、学びたいように学んでいつか自分の感情を持ったら、トニーさんにお願いして体を用意出来れば、なんて思ってる。これが父性か……?

 

 まだまだイズはJ.A.R.V.I.Sのようにジョークで返せるほど発展はしてないのでこれからが楽しみだ、と思いつつハイタッチの体勢をやめてまた次の指示を待つ体制に戻ったイズを眺める。にしてもいい車だなあ、トニーさんこれどうやって陸運局に通したんだろう。ダメだって言われたら前の車使うけどさ。

 

 うん、まああれだ。俺にとって前の車使うよりはこっちの車使った方が得なんだよな。トニーさんありがとう大事にするよ。そう考えながら俺は運転席から後ろのスペースに移って冷まして味を染みこませた肉じゃがのコンロに火をつけて、すき焼き丼のタレと薄切り牛肉、玉ねぎ、しらたきを煮込むことにするのだった。

 

 

 「はーい、10ドルちょうどね、まいど~」

 

 『ありがとうございました』

 

 「おう、サンキューな!」

 

 休憩後の営業も滅茶苦茶好調である。というか俺と一緒にカウンターに立っているミニイズの存在が大きい。手のひらサイズのアニメっぽい2頭身SDキャラがホログラムで動いて接客してくれるというのは派手好きアメリカ人に大いに受けており、写真撮影禁止とでかでかと車体に表示させているがあまり効果がないかもしれない。で、イズを珍しがって寄ってくるアメリカンな人たちに俺は日本食を売りつけてるってワケ。

 

 マジでイズ効果ヤバいな、イズ自身は微笑んでメニューを表示させるだけだけどそれが逆に受けてるらしい。かわいいだのキュートだのどこで売ってるのだの言われてもうてんてこ舞いや。イズが出来てからJ.A.R.V.I.Sに頼ることも減って、というかイズがJ.A.R.V.I.Sに聞こうとしたことを「お困りですか?」とインターセプトしてくるので減った。トニーさんに連絡とるときぐらいしかJ.A.R.V.I.Sとはもう話してないかも。

 

 「すき焼き丼をもらおうか」

 

 「…………まいど」

 

 「態度が悪いな」

 

 「そりゃすいませんで」

 

 ニコニコで接客していた俺の顔が一瞬で無になったであろう。その原因と言えばカウンター前に居座っている眼帯の黒人のせいである。つまりフューリーさんである。なんでここにいるの。仕事を溶け込ませろと言われた手前若干固まってしまった顔をほぐしてできるだけ初対面を装って接客をする。イズがドルマークと共に金額を表示させるとフューリーさんは1ドル札を複数枚重ねて出した。俺は無言でそれを受け取ってレジとは別の場所に置いて代わりにすき焼き丼を渡した。

 

 「悪くない匂いだ。如何せんオフィスに缶詰だと手料理に飢えていてな、ありがたく頂こう」

 

 「自信作なんで熱いうちにどうぞ」

 

 「ああ」

 

 フューリーさんはさりげなく、ポケットを撫でてから踵を返して雑踏の中に消えていった。俺はピン札の中からメモ用紙を見つけてどでかい溜息をついて、仕込んだものがなくなったタイミングで本日閉店と車体に表示して車内にイズと共に引っ込むのだった。

 

 「んもー、今まで特に連絡してこなかったくせに今になって突然現れるなんてな~。イズ、端末の方連絡入ってたりする?」

 

 1ドル札の合間に挟まってたメモには「仕事だ。3日後、端末の住所に左手に黄色のリストバンドをしていけ」とだけ書いてあった。はぁ?と切れつつイズに確認するとフューリーさんが置いていった端末に潜り込んだイズが複雑に暗号化されたメールを解錠して中身を読み上げてくれた。時間と住所、それにおもりだという人が両手に赤のリストバンドをして現れるから、その人に端末見せろっていう指示だけ書き込まれた簡素な内容だった。

 

 仕事の内容は書いてない、現地で説明する気なのだろうか?お付きの人も大変だね、それはともかく……気が重いけどやらなきゃなあ。トニーさんはメタクソに言ってるけどフューリーさんは多分手段を択ばずに確実な方法で平和を勝ち取ろうとしているのだと思う。トニーさんの話から推測するに、だけど。

 

 これから俺がやることになるであろう仕事もつまりは困っている人を助けるため、なのだと思いたい。多分あの人1を切り捨てて9を取るくらいは平然とやりそう。知らないうちに俺が1を切り捨てたりしないように用心しないといけない。やる気をなくした俺はイズに家まで運転して、と言ってベッドを引っ張り出して倒れ込んだ。運転席にイズのホログラムが投影されて自動運転が開始され、トラックは緩やかに俺の家に向かって出発するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 「イズ、目的地までナビよろしくね」

 

 『了解しました。ジョージタウンまでのナビを開始します』

 

 そんなわけで3日後、時刻はほぼ深夜に俺は左手に黄色のリストバンドを付けた後ライズホッパーで指定された場所に出発した。サムさんには昨日の夜に別の州の日本料理のイベントに行くというのは話してあるので大丈夫。実際にあるイベントだったから言い訳が立ってよかった。だからまあ、深夜に出発するのは知らないけど明日の朝に俺がいないことは多分サムさんも分かってる。ほんとごめんね。

 

 ヘルメット内側のディスプレイに投影されたナビに従ってジョージタウンの路地裏にやってきた俺は指定の時間の10分前に待ち合わせ場所につくことが出来た。ライズホッパーをライズフォンに戻してそこに座ってろとメールに指示があったベンチに座り込んでライズフォンを弄る。画面にイズが出てきて御用でしょうかとテキストで訪ねてきた。俺はそれにほっこりしながら適当にイズとテキストで会話する。

 

 約束の時間ぴったりになると、俺の真横に座る人がいきなり現れた、監視カメラを監視していたイズは写っていませんでしたと俺に教えてくれる。無音で監視カメラを避けつつ俺の真横に座り込んだらしい男の人は両手に赤いリストバンドをしていた。サングラスで顔を隠した男の人に俺は無言でフューリーさんからもらった端末を見せると彼ははぁ~~とどでかい溜息をついた。

 

 なんかすげえ気持ちは分かる。きっとこの人も俺よりは知ってるにしろ唐突にあのフューリーさんにここに行って協力者と合流しろと言われたとかそんな感じで行ってみればいるのが若造とか何の冗談だと思う。無言で立ち上がった彼はハンドサインで着いてこいとだけやって歩き出した。俺もそのまま彼についていくと、そこにあったのは真っ黒の車、メン・イン・ブラックみたいだな、と思ったけど助手席を指されてそのまま乗り込む、彼も運転席に乗り込んでエンジンをかけ、郊外に向かって車を走らせた。

 

 「本当にお前が任務のバディなのか?フューリーのやつは何考えてるんだか……」

 

 「お気持ちお察しします。3日前俺もフューリーさんにここにこれ付けて来いって言われただけで全く何も知らなくて……」

 

 「そうか、自己紹介が遅れたな。クリント・バートンだ。ホークアイって言った方が通りがいいか?」

 

 「ハルト・ハヤカワです」

 

 サングラスを外した彼の顔には見覚えがあった。あのニューヨークの時に、弓を操ってエイリアンを次々撃ち落としていた人だ。俺はあのニューヨークで彼とは絡まなかったから印象が薄かったので今思い出した。そうか、あの場にいたってことは彼もアベンジャーズのメンバーでS.H.I.E.L.D.のエージェントかもしくは協力者って立ち位置だったんだ。

 

 「それで、フューリーからは何も聞いてないってことでいいな?見る限り素人みたいだが……何ができる?」

 

 「ニューヨークでやったことは一通り」

 

 「それは……!?」

 

 俺は懐からゼロワンドライバーを取り出して膝の上に置いた。横目でそれを見たバートンさんは目をむいて唸る。そしてフューリーのやつ……と軽く悪態をついた。フューリーさんせめていろいろ教えてあげたらどうなの?俺はともかくこの人は身内だろうし……偉い人の考えることはよくわからんね。

 

 「……ニューヨークでは世話になったな。お前がいてくれたおかげで何人も人が助かった。感謝してる」

 

 「いえそんな。もっと早く戦えばよかったってずっと後悔してるくらいで……」

 

 「いや、それでもだ。その決断はお前にとってはとてつもなく重かったはずだ、逃げずに立ち向かった……勇気ある行動だと俺は思う」

 

 「……ありがとうございます。それでなんですけど……フューリーさんに見つかってから仕事を頼まれるのがこれが初めてなんです。マイアミの件以降戦ってないので……」

 

 「ああ、おそらくフューリーもそれを織り込んで俺を引っ張り出したんだろう。安心しろ、任務は簡単な部類、テロリストの捕縛とそいつらからのデータの奪取、以上だ」

 

 「それ簡単なんですか?」

 

 「S.H.I.E.L.D.の任務の中ではな」

 

 うへぇ、という顔をした俺を見るバートンさんの顔はプロそのものの目つきだ。しかし初任務がテロリストの居場所へと潜り込んで全員を捕らえつつデータを持ち帰るとか何それ高難易度すぎないか?いや、多分この人ならソロでやれるどころか余裕だから足手まといが一人いても大丈夫とかそんな感じ?うーんこの。

 

 「とりあえずは潜入からだ。先にデータを確保してから掃討に移る。消される前にな、データの中身は不明だが、あのエイリアンどもに関する何からしい」

 

 「場所は分かってますか?」

 

 「ああ、住所は……ここだ。この山の中腹にある研究所、S.H.I.E.L.D.を裏切ってテロリストについたらしい」

 

 「イズ」

 

 『はい、ハルト様。スヴェン研究所にアクセス成功。監視カメラのハッキング、及びスタンドアローン以外の内部データのコピーが完了しました。データを精査し表示します』

 

 「バートンさん、目的のデータありますか?」

 

 住所まで分かってるなら話が早い。イズに呼びかけると彼女は速やかに目的の研究所の衛星画像をホログラムに呼び出して確認し、そこだとわかると完全に内部を掌握してしまう。ゼアにかかれば、それがたとえ携帯の電波だろうと糸口になり、そこからネットワークを介して全ての手の内を丸裸にできる。流石にネットを介さずに動いているものは無理だが、入り口さえあればこのくらいは余裕だろう。

 

 一瞬で表示されるデータの海にイズが精査をかけて関係のありそうなフォルダをピックアップして表示する。バートンさんはその様を驚いた感じで見ていたが気を取り直したらしくいったん車を停めてホログラムを見る。バートンさんが手元の端末と表示されるデータを見比べ、最後までみて一言

 

 「無いな。どうやらネットに転がってるわけじゃない、か……やるな、ハヤカワ。予想してたよりも楽に終わりそうだ」

 

 「いえ、そんな。けどそうなると潜入するしかないですね……俺にできるかな……」

 

 「出来るさ。そのために俺がいる。エージェントのイロハを、現地で叩き込んでやる」

 

 にやりとニヒルに笑うバートンさんの頼もしさに、俺は無言で頷くのだった。正直言おう、かっこいい。




 というわけでホークアイとの共闘イベント入ります。次回でvsテロリスト、次々回でウィンターソルジャーに入ろうかな。オリジナルつまんないかな、どうかなあ。

 今回から更新を5日に1回くらいを目安に、つまりいつも通りの更新頻度で頑張ろうかなと思います。目標はエンドゲーム、頑張ります。

 ホークアイのトレースが難しいのでドラマ版を100周して勉強するのでそれ終わったら会いましょう。感想くださると超嬉しいですお願いします(懇願
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