変身せよ、強き自分へ 臆病者は変われるか? 作:カフェイン中毒
車が走る。どうやら目的のデータというものは研究所内のスタンドアローンの端末、バートンさんが持ってる情報とイズが研究所の中身を覗き見た情報を照らし合わせるととある研究者の私室のパソコンにある可能性が高いという結論が出て、とにもかくにもいったん研究所の中に入ってみないことにはわからないということになってしまった。
『付近一帯の監視カメラ映像の改竄が終了いたしました』
「ん、ありがとイズ」
「なるほどな、スタークのAIも便利だとは思っていたが……俺にも1台欲しいくらいには便利だ」
『お褒めに預かり恐縮です』
ゼロツープログライズキーの上で腰の前で腕を組んだミニイズが恭しく頭を下げる。深夜とはいえ人目は避けられない、人目を最小限に避けるためにバートンさんは監視カメラの少ない道を通っていたが残念ながらアメリカは俺の前世の日本と違って治安が世紀末な場所もあるので監視カメラが当たり前のようにそこかしこにある。
そこで出番なのがイズ、もといゼアである。フルスペックを発揮すれば0.1秒に2兆通りの行動予測が可能なゼア、その機能を発揮すればダミー映像をここら全てのオンライン監視カメラに忍ばせることなど容易いのである。潜入ってことは万が一にも気づかれちゃ困るだろうし。
目的地の研究所は山の中腹にあるので山の麓に車を捨てるらしく、この車は目的を果たすと自動運転で本部に戻るのだとか。じゃあ俺たちは如何するのかと言えば研究所の職員全員とテロリストをしょっ引いてぐるぐる巻きにして、S.H.I.E.L.D.の他の部隊が来ると同時にとんずらするらしい。
「逃げる必要ありますか?」
「表向きは「勇敢な研究所の職員がテロリストを鎮圧」ってことにする気らしいからな。よし、降りるぞ」
んな無茶な、と思わなくもいないけどここは銃社会アメリカ、ありえないことではないのだろう。路肩に止めた車から降りる俺たち、バートンさんは運転席の椅子をスライドさせると椅子の下には真っ黒の矢が詰まった機械的な矢筒とダイヤルが付いた折り畳み式の弓矢、ダガーナイフなどがあった。バートンさんは俺の椅子を指さすので俺もスライドさせるとその下に防弾ベストなどが詰まっていたので俺も無言でそれに着替える。
「スーツ、着なくていいんですか?」
「あの真っ黄色のスーツは目立つからな、真正面から殴り込みに行くわけじゃない。最小限の力で最大の成果を見せるのがプロだ。力で何でも解決できるならソーを連れてきた方が早い」
手袋をつけて、矢筒を背負ったバートンさんはワンスナップで弓を変形させて構える。やべえ超クール、超かっこいい。あと実際ゼロワンが派手なのはまあ……うん、うるさいし。いやまあ仮面ライダーの中では静かな部類だけどうるさいのは事実。待ってイズ、不思議そうに俺を見ないで、変身しないんですかみたいな顔しないの。
「何かスーツ無しで使える武器はないか?」
「あるにはありますけど……」
そう言って俺はアタッシュショットガンを見せて変形させる。毎度おなじみ威力過剰なマスターキーの登場である。盾にもなって便利なことこの上ない、人に当てられないことを除けば。今回の相手ってエクストリミスもなにもない一般人間なんだよね、いやまあそれが普通なんだけど……
「……今回は閉所での戦闘もあり得る。流石にそれは小回りが利かないだろう。他にはあるか?」
「他には……うーん」
『ハルト様、でしたらこちらを』
アタッシュショットガンは確かに大型銃だから狭い廊下でこれ振り回す余裕はないか……と思ってたらイズからの提案でゼロツープログライズキーのビームエクイッパーが稼働し、空中に一つのものを作り出した。それを見た俺はああ、と納得した。青い拳銃型デバイス、エイムズショットライザーである。変身機能はないだろうけど。
変身機能がないのはエイムズショットライザーとゼロワンシステムは別物で中身が全く違うからである。まああれだ、武器としては全く同じだけど変身機能がないパチモンです。ゼアの中に設計図があるというのは分かってたけどね。でもこれあんまりアタッシュショットガンと変わんないんだよなあ。
威力はそりゃアタッシュショットガンの方が高いんだけど、こっちもこっちで威力過剰なんだよね。なんせ発射するのは50口径対ヒューマギア徹甲弾、つまり対物拳銃という物騒なジャンルなのだ。うん、50口径ってことはあれだから、デザートイーグルとかのおっきいやつと一緒だから。マグナムだから、それが徹甲弾で対物仕様ってことは威力は推して知るべし。うーんこの。一緒に生成されたホルダーを腰につけてショットライザーを収める。
「……一回それ構えてみろ」
「こうですか?」
「違う、両手で、こうだ。そう、トリガーに指をかけるな。誤射するぞ。トリガーガードに指を置いて両足を肩幅に開け。よし。いいか、銃は危険だ、正しい扱いを学べ、というのはお前の立場じゃ難しいか。狙うのは……真ん中から少し外れた場所でいい。肩や足の付け根だ。当てても死ににくい。末端は難しいからおすすめしない、いいな?」
「……はい」
俺が両手でショットライザーを構えるとそれを見たバートンさんは即座に構えを矯正してくれた。凄い気が回る人、さすがプロだな。その後、ホルダーから抜いて構えを7,8回繰り返して構えがとりあえず形になったのでバートンさんはそれでいい、と言ってくれた。
「いくぞ。姿勢を低くしてできるだけ音を立てないようについてこい」
そう言ってバートンさんは静かに藪の中に入っていく。渡されたインカムで通信は繋がり、車の中で覚えさせてもらったハンドサインを頼りに道なき道を上って山の中腹を目指す。中腰なので正直キッツいし、慣れない装備のおかげで息が上がるのも早いが、バートンさんは俺のペースに合わせてくれるので何とかついていけてる。初仕事がこれってハードだなあ。
バートンさんがとまれのハンドサインをしたので俺は素直に止まる。彼は矢筒から一本矢を取ると、木の陰から弓を構えて放った。くぐもった声がしてどさりと何かが倒れる音がする。藪から出たバートンさんについていくと、先端にゴムのようなコルクが付いた矢が地面に落ちていて、額が真っ赤になった男が倒れていた。バートンさんは手短に男に猿轡代わりの布を咥えさせて両手両足を縛って藪に放り込む。手際がよすぎるなあ。
「よし、この先は研究所の中に入るから、俺の前に出るなよ。銃は抜いておけ、両手で持って、トリガーからは指を離すのを忘れるな」
バートンさんの言う通り、俺の前には研究所の裏口の一つがあった。裏口は電子キーじゃなくて物理キーだったのでショットライザーで鍵を壊す。中に潜り込んでいるイズ曰く、近くに人はいないので手っ取り早い方法をとった。そのまま中に入る。
バートンさんは取り回しの悪い弓を仕舞う、ことはなくそのまま持って潜り込んでる。バートンさんクラスになると武器を変えるほうが不利ということなのだろうか。トニーさんだったら……ハッキングして何とかするだろうなあの人なら。もしくは研究所を丸ごと買い上げて真正面から行くに違いない。
イズのおかげで研究所内の監視カメラを完全掌握してるので俺たちは止まることなく目的の部屋を目指す。途中で会う研究員や警備員たちはバートンさんが鮮やかな手際で締め落とすとか気絶とかさせられて手近な部屋に放り込まれてついでにイズが電子ロックをかけてしまう。俺いる?これ。
「ここだ、開けられそうか?」
『問題ありません。ですが他より少々ロックが堅いです……開錠終了』
目的の部屋についた俺たちがドアの前に着くとバートンさんの問いかけに答えてイズが電子キーを外してしまう、がほとんどノータイムで開けられた今までのそれと違い3秒ほどの時間を要した。中には部屋の主がいるようだったので監視カメラと通信に細工を施したイズのおかげで素早くかつ無音でドアを開けて部屋に入ったバートンさんの見事な右フックが顎に突き刺さり、部屋の主の禿げ散らかしたデブいおっさんは沈黙する。
「このパソコンかな?イズ、繋ぐから中身全部移して」
ドアを閉めて念のため鍵をかけなおしたバートンさんを後ろに俺は部屋にあった端末にライズフォンをつなげてみる。すると出るわ出るわ汚い金のやり取りの記録とか人体実験の記録とかエイリアンの解剖記録とかえげつないものが。顔をしかめてしまった俺だがバートンさんは顔色一つ変えずに中身を確認して持ってきていたメモリに移した。情報量が多すぎるため5分ほど時間がかかるらしい、するとイズから警告が入った。
『ハルト様!気づかれたようです。現在小隊がこちらに向かっております、1分もかかりません。装備構成にC4爆弾を確認。扉ごと爆破するようです』
「ええ~……」
「なりふり構わずという感じだな……仕方ない。お前はここで……」
「いや、俺が行きます。爆弾程度なら問題ありません」
「しかしだな……」
「やらしてください。足手まといではいたくない」
やると決めた手前、ここで何もせずにバートンさんにおんぶにだっこ状態になるのは憚られる。これがいくらあのフューリーさんが強制してきたことといえど、やると決めたのは俺なんだから、責任を持つのが筋ってやつだろう。俺はプログライズキーを手に取ってゼロワンドライバーを腰に巻く、音声にバートンさんが顔をしかめた。
「潜入には適してないな、それ」
「まったくです」
「……終わったら飯食いに行くか、奢ってやるよ」
バートンさんが俺の緊張をほぐそうとしてそんなことを言ってくれる。最初から今までずっと俺のことを気遣ってくれるバートンさんの気持ちはとても嬉しいしありがたい気持ちになる。率先して俺に手を出させないように配慮してくれていたのもそうだ。今度は俺がこの人を気遣う番、プログライズキーのスイッチを入れる。
「POWER!」
「変身っ!」
「剛腕GOGO!パンチングコング!Enough power to annihiate a mountain.」
壁を殴り壊して現れたゴリラのライダモデルが分解されて俺に纏わりつく。パンチングコングに変身した俺は仮面の内側に映される監視カメラの様子を見て、小隊がドアの前にやってきたタイミングで頑丈な金属の機密性ドアを思いっきり殴る。ドア枠ごとぶち抜いた俺のパンチがガチガチに防御を固めていた小隊の隊員を巻き込んで吹き飛ばした。どうやって気づいたんだろうか?監視カメラはこっちが掌握してるのに。
「なんだお前!?」
「誰だと思う?」
そう尋ねる隊員をボディブローで沈黙させる。ドアから出た俺を襲ったのはアサルトライフルの弾幕だった、が戦車砲とかならともかく歩兵が使える火器程度じゃノックバックもしない。ずんずんと歩いていくと恐慌状態に陥った一人の隊員が破片手榴弾を投げる。あぶっ!?爆発させたら相手に被害が出るので慌ててキャッチして握りつぶす。ぐしゃり、と形が変わった破片手榴弾は俺の手の中でしょぼい爆発を起こして不発した。
「あぶないだろっ!?」
「うぐあっ!?」
我ながらどの口が言う、という感じではあるが走り寄った俺の拳が次々と隊員を捉えて壁に叩きつける。拳での格闘性能を高めるパンチングコングプログライズキーは狭い所での戦闘に非常に適していると思う。ただ、パワーが強すぎるのが玉に瑕か、リミッターなかったらえらいことになってるわ。
『増援、きます』
「了解!」
「待たせた。ここからは俺もやる。あとは、全員を眠らせれば終わりだ」
メモリをポーチにしまい込んだバートンさんがドア枠から出てくる。俺はその言葉に頷くとまっすぐ前に突っ込んだ、後ろでバートンさんが逆側の廊下に向かって弓を構える。任務の結果は、言うまでもないだろう。しいて言うならば、やっぱり俺には向いてない仕事だっていう話くらいだ。うるさいのは仕様なのでそんな顔しないでバートンさん。
「なに?スタークはお前のこと知ってるのか!?」
「ええまあ、成り行きというかあのニューヨークの時から」
「あいつ……まあフューリーのことがあるからか」
「らしいです。なので結構目をかけてもらってます」
「あのスタークがか?」
「どんだけ信用ないんですかトニーさんは」
翌日の事、簡単に全員をのしてふん縛るとバートンさんの連絡でS.H.I.E.L.D.の待機していた部隊が到着した。幸い俺は変身したままなので面が割れることはなかったけどなんでゼロワンが!?と銃を向けられた。バートンさんが「協力者だ、下ろせ」って言ったら普通に見逃された。バートンさんもしかして結構えらい?それともアベンジャーズだから?
まあそのまま正面玄関から帰ろうとしたらテロリストの最後っ屁で武装ヘリがこんにちわしたので殴って落とそうとしたらなんとバートンさんが弓一発で落とした、すげえ。S.H.I.E.L.D.の部隊が確保に走る中、自動運転の車に乗り込んだ俺は変身を解除し、バートンさんとそのままちょっと離れたレストランにいるのである。
今回は頼れる人が一緒だったからか戦闘後でも食事ができる程度には落ち着いていた。最中常にバートンさんが冷静で余裕だったから破片手榴弾のアレ以外俺は焦ったりすることなく事を運ぶことが出来た。パスタを食べてるとバートンさんが紙切れにさらさらとアンケート用のペンで何か書き込んでテーブルの下に隠して俺に渡した。
「俺の連絡先だ、困っても困らなくても連絡してくれ。なんだかお前危なっかしいからな。一応な」
「ありがとうございます」
「気にするな。今日はよく頑張った!好きなもん頼めよ、約束通り奢りだ」
そう言ってメニューを渡してくれるバートンさんに甘えて、俺はバーガーを追加するのだった。なんか既視感あると思ったら父さんみたいな感じの人なんだわ。空気がそんな感じする、初対面の人には失礼だけど、何となく懐かしい気分に俺は浸るのだった。
駆け足だけどオリジナル終了よし!次回からウィンターソルジャー!ホークアイのキャラは結局つかめず。お許しください
それはそうと基本的にバルカンとかバルキリーとかは出しませんがアイテムは出します。便利だから。変身システムの違いから変身はできないという設定です。あるいはブラックボックスだとかそんな感じ。
ではでは次回をお待ちください。感想くれると作者喜びます