変身せよ、強き自分へ 臆病者は変われるか? 作:カフェイン中毒
「あっさり入れましたね」
「勝手知ったる我が家というやつだ、特にこの盾の男にとってはビル一棟の地図を覚えることなんて容易いだろうしな」
「トニー、褒めてるのか揶揄ってるのかどっちなんだ」
「両方」
「全く……」
「それよりも、だ。J.A.R.V.I.S、始めろ」
『了解、S.H.I.E.L.D.本部のパラボナアンテナ統括システムへ攻撃を開始、システムダウンに成功』
ヒルさんが所持してたS.H.I.E.L.D.本部のマスターキーのおかげで裏口を難なくパスして通った俺たちは、堂々とビル内に侵入し、人通りの少ない所を通ってS.H.I.E.L.D.本部の通信室の前までやってきた。こんな時にも変わらないトニーさんの軽口にため息をついたスティーブさんを面白そうに見るトニーさんがJ.A.R.V.I.Sに指示を飛ばし、J.A.R.V.I.Sはシステムの一部へ攻撃を仕掛け一瞬でダウンさせた。
当然中の人たちは疑問に思い、外に確認にくる。ドアのセキュリティキーが開錠され、細身の男がドアを開けた瞬間に、サムさんのサブマシンガン、クリントさんの弓、俺のアタッシュショットガン、ヒルさんの拳銃が男に向けられる。どれか一つが火を噴けば死ぬのを理解したおそらく善良な職員はゴクリと息をのんで両手をあげる。スティーブさんの失礼するよ、という声を聞いた男は素直に道を開けて壁に向いて手をあげたままになる。
「やあやあ諸君、お仕事ご苦労!色々あってね、とりあえずそこの君、通報システムは今機能しないから諦めるといい」
『現在、全ての通信はこちらが管理しております』
「イズ、完璧」
『それほどでもありません』
「さー始めるぞ~、キャプテン、オッケーだ」
J.A.R.V.I.Sがシステムに攻撃すると同時に開けた穴から侵入したゼアが通信システムを乗っ取ったので必死にこちらに銃を向けながら通報ボタンを連打してる職員にトニーさんが無駄な抵抗をやめるように指示し、そのまま席について鍵盤でも弾くように次々とキーを叩いてシステムを開いていく。職員放送を乗っ取ったところでトニーさんはスティーブさんに向かって顎をしゃくってマイクを差した。スティーブさんはそのままマイクに向かって話し出す。
S.H.I.E.L.D.は乗っ取られた、ヒドラがもしかしたら君の隣にいるかもしれないと。長官であるフューリーさんを暗殺し、ヒドラの現指令であるアレクサンダー・ピアーズが黒幕だと。ヘリキャリアが打ち上がり、インサイト計画が為されれば何千万の人が死ぬ、という言葉に管制室に残っている人たちはざわつく。いち早く銃を抜いてこちらに向けた人をクリントさんの弓が射抜いた。ハイル・ヒドラの叫びは信憑性を高めるだけなのに。
「僕たちだけでも立ち向かう。だが、僕ら以外にも立ち上がると、そう信じている」
そう言ってスティーブさんは通信を切る。トニーさんはヒュウッと口笛を吹きつつもすさまじい速度でキーを叩き続ける。ここで俺たちは分かれることになる。トニーさんたちはここに残ってここからS.H.I.E.L.D.の中身をしっちゃかめっちゃかにしていく。そして俺たちは、物理的にヒドラを排除する。
「ああ、くそ……スペックが足りない。ダメだ、インサイト計画の中枢プログラムに入るにはここのメカじゃマシンパワーが足りない!マザーボードが燃えても無理だなこれは」
「トニー、英語で頼む」
「システムを乗っ取れない、入る隙間を作れないんだ。ヘリキャリアが発進する」
「想定内だ、行くぞ」
「ああ」
「はい」
トニーさん曰く、ここのマシンではインサイト計画に使用されているスパコンを乗っ取るのは不可能とのことらしい。このまま横やりを入れまくるというトニーさんに後を託して、イズは撤退。J.A.R.V.I.Sが後を引き継いだ。クリントさんとヒルさんはここでトニーさんの護衛をするので残る。俺たちは……戦う。
「ハル、頼んだぞ。思いっきりやってこい!」
トニーさんの言葉を受けて、俺たちは管制室を後にする。俺はアタッシュショットガンを仕舞って、走る2人を追う。水をかき分けてヘリキャリアがせりあがる。クインジェットが規則正しく並ぶ中に、黒づくめの戦闘服を着た集団がアサルトライフルをもってこちらに向かってくる。
「キャプテン、敵と味方は如何見分ける?」
「撃ってきたら敵だ」
「じゃあ少なくともあれは敵なわけですね」
「ゼロワンドライバー!」
走りながらそんな言葉を交わして俺はドライバーを腰に巻く。初めて聞くであろうそれにぎょっとしたサムさんだったけど気を取り直して背中のジェットパックから翼を広げて飛び立った。スティーブさんは走る速度を上げて盾を投擲する。複雑な軌道で跳弾した盾はヒドラの戦闘員を打倒してちょうどスティーブさんの手元に戻っていく。残された俺はプログライズキーのスイッチを入れた
「JUMP! AUTHORIZE!」
「すぅーっ……変身っ!」
「飛び上がライズ!ライジングホッパー!A jump to the sky turns to a rider kick」
顔を隠すことない初めての変身、大きく息を吸った俺はオーソライズし展開させたライジングホッパープログライズキーをベルトに装填する。こちらに向かってくる装甲車のエンジン部分を踏みつぶすように出現したライダモデルが分解され、走り続ける俺に組み付いて鎧を形成する。変身が完了した俺は脚力に任せて思いっきりジャンプし、こちらに飛んでくるクインジェットの片翼をエンジンごと変身と同時に現れたアタッシュカリバーで切断、同時に手を操縦席に突っ込んで操縦者を引っ張り出した。
『ハル、統括ヘリキャリアは胴体に1本赤いラインが入ってる。それで見分けろ』
「了解!」
基地内を走り回りながらトニーさんの通信にそう返す。正直もう半分やけくそに片足突っ込んでるので超スペックを活かして直進行軍をすることにした。積みあがった資材も、コンクリの壁も、モルタルの壁も全速力で走ってぶち抜き、離陸して浮いている統括ヘリキャリアに近づく。そうして走って車を撥ね飛ばすという我ながら頭がおかしいことをした後にライジングホッパーの超脚力で思いっきりジャンプし、統括ヘリキャリア、ではなくその隣のヘリキャリアに飛び乗る。
ヘリキャリア4機を二人で相手取るのは厳しいので俺が2機、サムさんが1機、スティーブさんが2機という受け持ちで作戦は決まっている。なので俺はこのヘリキャリアを制圧し、そのあとに統括ヘリキャリアに乗り込むのだ。俺が甲板に着地したのを感知したらしい自動攻撃システムが砲口をこちらに向ける。俺は慌てずにプログライズキーを押し込む。
「ライジングインパクト!」
甲板に蜘蛛の巣状の罅を入れて飛び上がった俺はこちらに向かって砲弾を放とうとする砲塔全てにキックを叩き込み、最後の一発で甲板を蹴り割って内部に侵入する。イズが表示するマップに従い、隔壁を蹴り壊したりしていたが途中でアタッシュカリバーで切ったほうが早いことに気づいて、アタッシュカリバーを振り回して時に地面を、時に壁をぶっ壊し無理やり道を作って最下層にあるサーバールームにカチコミをかける。
途中でこちらに向かってくる人間がいるかと思ったが本当にほぼ無人らしく、甲板で見かけたクインジェットの中で冷や汗をかいていたパイロット以外は本当に無人なのかもしれない。そう考えながらサーバールームの扉を一刀両断して中に入り、中央のサーバーを操作しておりてきた回路の一つを入れ替える。
「こっちは終わりました!」
『こっちもだ!サム、どうだ!?』
『あー今立て込んでる!……入った!3機目終了!』
『よし、4機目の制圧に向かう。ハルトはそのまま統括ヘリキャリアに乗り込め!』
「はいっ!」
『ハル、すぐ追いつくからお前はのんびり行けよ』
「お茶用意しとくよ!」
サムさんの心配の言葉をジョークで返し、強化ガラス張りのサーバールームの外壁をチャージしたカバンダイナミックですっぱりと切り飛ばして大穴を開けて飛び降りる。そのままフライングファルコンプログライズキーを起動して、ライジングホッパープログライズキーと入れ替えた。
どうやら俺がヘリキャリアを制圧しているうちに統括ヘリキャリアはかなり高度を上げているらしい。だいぶ上まで行ってしまっている、がフライングファルコンならその高度でも問題ない。俺はすぐに音速を越えて舞い上がり、対空砲火を躱しながら統括ヘリキャリアの甲板に降りたった。すぐさま展開していた部隊が弾幕を張ってくるが俺は気にすることなく突っ込む。
「ゼロワンを援護しろ!」
「キャプテン達の力になるんだ!」
「ありがとう!この船ぶっ壊して不時着させるから安全なところまで逃げて!」
ヒドラの戦闘員たちをなぎ倒しているとどうやらヒドラじゃない正規のS.H.I.E.L.D.職員たちがヒドラの態勢が崩れたのを好機ととらえて俺を援護してくれた。一応このヘリキャリアはリパルサーエンジンをすべて失っても不時着できるように作られているので艦内にはセーフティースペースが用意されていると教えてもらっている。なので甲板にいる最後のヒドラを気絶させると俺はそう彼らに伝えた。
「いや、このまま手伝わせてほしい。俺たちだってS.H.I.E.L.D.の職員なんだ、キャプテンにあそこまで言われて黙ってられない」
「わかった。このまま管制室に行ってこの船を乗っ取る!手伝ってくれる!?」
「もちろんだ!」
どうやら彼らはスティーブさんが放送で行った演説を聞いて立ち上がってくれたらしい。俺たちだけではなかったという事実を嬉しく思いつつ、俺よりもこの船に詳しいであろうから同行してもらった方がいいと判断し、10名の職員と一緒にヘリキャリアの中に入る。他の人たちはヒドラを縛り上げてセーフティーゾーンを確保するそうだ。
『残り6分だ、急げよ。おいバートン、もうちょっと静かにならないのか』
『悪い、やつらジュークボックスを持ち込んだみたいでな。音がそっちまで響いちまった』
『じゃあスクラッチ音消して曲変えてくれ。よしこっちは8割がた終わりだ。あとはロマノフとフューリー次第だな。撤収の準備を始めるぞ』
トニーさんたちもトニーさんの方で銃撃戦に陥ってるらしい。衛星とのリンク圏内まであと少し、職員たちの援護を受けながら次々とヒドラの戦闘員を倒していく。俺が突っ込めば銃撃は俺に向くので援護もしやすいだろう、それに誤射されても全く問題ないからね。他にも戦ってる人たちがいたようで道中でまた10人ほどの職員と合流できた。職員の案内で近道をし、管制室の隔壁を蹴破って俺が突入する。
ドガガガガ!とアサルトライフルを連射してくるヒドラの戦闘員たちだが、俺には効かない。そのまま殴りかかって次々と壁にキスをさせてやる。援護射撃もさすがS.H.I.E.L.D.の職員で俺が囮になってるからなのか撃たれてるのにもかかわらず躊躇なく俺の近くまで突っ込んできて正確にヒドラの戦闘員を撃ち抜いている。すっごい。制圧を終えて俺は近くのポートにトニーさんにもらった端末を差し込む。すぐさまトニーさん特製のプログラムが作動して乗っ取りを始めた。
「よし、イズお願い!」
『お任せくださいハルト様!システム起動、ヘリキャリア中枢プログラム開錠、運転システムハッキング完了!これより移動を開始します!』
「ありがとう!他の人は逃げ遅れてない!?」
「ああ、恥ずかしながら……これで全員だと思う。他のやつら多分、ヒドラだ」
「……そっか。じゃあここで衝撃に備えてて。この端末ぬいちゃだめだよ!絶対、助けるから!」
管制室に集まったS.H.I.E.L.D.職員は総勢、30人いるかいないか。怪我人も何人かいるけど手当てが間に合っているので問題なさそうだ。何百人も収容できるヘリキャリアでヒドラじゃない人たちが、たったの30人。イズにお願いしてセーフティールームの隔壁と緊急シャッターを閉じる。
「じゃあ、俺は行くよ。ありがとう、助かりました」
「いや、こっちのセリフだ。ゼロワン、君が誰なのかは分からないが……俺たちを助けてくれたこと、感謝する」
S.H.I.E.L.D.職員に見送られて管制室を出る。すぐさまイズの操作でセーフティーシャッターが下りた。俺はそのまま来た道を逆走して甲板まで出る。イズが動かすこのヘリキャリアが完全に水の上に入った瞬間か4つのヘリキャリアを制圧した瞬間にリパルサーエンジンをほぼ同時に破壊しなければならない。なんてハードゲームだ……時間もない。
「スティーブさん?大丈夫ですか!?」
返答がない、助けに行くべきか?いや……信じて待つんだ。最後の最後まで。俺はフライングファルコンプログライズキーを抜いて変身を解く。これから使うプログライズキーは今までのシステムとは異なるのでいったん変身を解かなければならないんだ。俺は今の今まで封印してきたそのプログライズキーを手に取る。蛍光イエローとクリスタルのようなブルーに彩られたプログライズキーをグッと握る。
『残り一分だ!ハル、準備しろ!」
『ハルト様、水上へ移動完了しました!』
「うん、ありがとう。いくよっ!」
スティーブさんよりイズの方が早かった。俺はもう一度深呼吸をして、握っているプログライズキーのスイッチを強く押した。
「JUMP!」
お待たせしました戦闘シーンです。といいたいところなんですけどやっぱ普通の人間相手じゃ強すぎますねゼロワンは……。
サー次回に出てくる強化形態は誰かな~?まあバレバレですよね。でもスペックを考えてここまでしとかねば不安でしてな……
ではでは次回に会いましょう。感想評価よろしくお願いします