変身せよ、強き自分へ 臆病者は変われるか?   作:カフェイン中毒

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迷いのJ/もう一つもJ

「ウィンターソルジャーがスティーブさんの戦友、バッキー・バーンズだった。ですか」

 

「ああ、正直……今でも信じられない。だけど、彼はヒドラに捕まっていろいろと弄られたみたいなんだ。僕よりも、ね」

 

「でも、生きてるんですよね?」

 

「……そうだ」

 

 嬉しさ、苦しさ、悲しさ、あらゆるものがないまぜになったような表情で、スティーブさんは頷く。トニーさん製のフードトラックの中、運転席に俺、助手席にスティーブさん、後ろにはキャプテンアメリカの象徴である盾という状態で、俺はカリフォルニアに車を走らせていた。

 

 あのヒドラをシールドごと潰した件から数か月、まあすっかりボロボロになった俺の体も回復し、ついでにトニーさんとペッパーさんからリアライジングホッパー禁止令を授けられたのもいい思い出かもしれない。

 

 その数か月で何があったか、という話なんだけど……まずフューリーさんが死んだ、ことになった。公的には死人になった、らしい。実際生きてるしね、今何してるかは知らないけど。ライズフォン受け取らなかったし。

 

 で、シールドがなくなったせいでそこに所属してたエージェント、クリントさんとかナターシャさんも含めて全員宙ぶらりん、実質クビもしくは休職だ。で、俺の隣でサンドイッチを片手にイズがネットから流しているフォークソングに耳を傾けているキャプテンアメリカもそう。

 

 フューリーさんからの任務もなくなった俺は暇を持て余して本業であるフードトラックに精をだしつつ、任務をやってた時間で目の前の人に戦い方を教えてもらっている。ゼロワンの基本は徒手空拳なのでスティーブさんの技術をラーニングさせてもらってるんだ。

 

「今日はここにしよう。すまないが……」

 

『承知いたしました。付近の監視カメラの映像を精査します』

 

「助かるよ、イズ。僕も足で探そう。ハルトはいつも通りたのむ」

 

「了解です」

 

 道路わきにトラックを止めて、スティーブさんはドアを開けて出ていく。まさか盾を持ち歩くわけにもいかないので無手で。ただ、脇の下にはトニーさんから返された拳銃があるんだろうけど。

 

 ウィンターソルジャー、本名バッキー・バーンズ。スティーブさん、俺、そして今は退役軍人省の仕事で地元にいるサムさんは現在、あの戦いで戦ったヒドラのエージェントを追いかけていた。

 

 トニーさんとか今はどっかにいるであろうナターシャさん。エージェントは半分引退するっていってたクリントさんも気にしてはいるんだけど、実際どこで商売してもいい俺と彼を探したいスティーブさんで目撃情報があった州をしらみつぶしに探しているところだ。

 

 さすがはヒドラのエージェントだけあって目撃情報があった数時間後にはもう、煙のように消えてるんだけど、さがさないわけにもいかない。だって彼はスティーブさんの時代から、彼と同じように眠って旅をつづけたスティーブさんの親友らしいのだから。

 

「イズ、ここらへんでどう?」

 

『競合店もありません、人通りも多すぎず少なすぎず適当です。さすがはハルト様』

 

「お世辞を覚えちゃったか~」

 

『いけませんか?』

 

 ピコ?と可愛らしい効果音を立てて首をかしげるミニイズに成長してるねえと何視点なのかわからない考えをしながらトラックの後ろに移ってキッチンの電源を入れていく。トニーさん製の超々高性能キッチンツールだ、お値段は考えないことにする。うん、オーブンもついたよ、不思議だね。

 

「……探し人かい?わるいねえ、みたことねえや」

 

「そうなんですか、ありがとうございました。12ドルになります」

 

「ん、これで。力になれなくてすまんね」

 

 空振り、空振り、空振り。もうすでに夕刻で、ランチとはとても言えない時間帯だ。探し人と称してイズが投影しているスティーブさん製のバッキーさん似顔絵の顔を見たって人は今のところゼロ。うーん流石は大戦を生き抜いたエージェントだ。顔すらも見られてないとは。

 

 スティーブさんからの連絡であと1時間で戻るっていうしここで締めて動く準備をしてしまおう。とトラックの扉を閉めようとしたら、気になるものを見つけた。というのも、今回の目的とは全く、何も、関係ないのだけど。

 

 ふらふらと土地勘を感じさせない動きであちらこちらを見まわしながら顔をしかめる男性、茶色の跳ねた髪をソフト帽の中に納めているのが特徴的だ。かっちりと決まったジャケットは若干汚れがあって、まさに今そこで一戦交えてきたみたいな風体になっている。

 

 そして、明らかに異様なのが……彼がアジア人、というか日本人っぽいというのが不思議だ。なんというか、しぐさがとても日本人っぽい。歩き方とかアメリカ人のそれじゃないし。カリフォルニアの地元民にしては服装も気どり過ぎてる。だからって、まあ俺が気にする必要があるかどうかといえば……

 

「どこなんだよここ~~~~!!!!」

 

どうやらあるみたいだ。明らかに日本語で叫んだのでイズと目を合わせて首をすくめる。俺もアメリカ人っぽくなったもんだね。ああごめんなさいスティーブさん、面倒ごとがやってきてしまいました。だけど、俺に見捨てるって選択肢はない。困ったときはお互い様、親切は巡り巡って自分に返ってくるものならば、人助けは苦にならない。

 

「あー、あの~~?どうかされましたか?」

 

「っ!?日本語!?な、なあアンタ!ここどこだ!?」

 

「え、っとカリフォルニア州のマリブですけど……」

 

「カリフォルニアあああああっ!?」

 

 おぎゃあああんっ!みたいな感じで叫ぶ人に思わず顔をしかめると同時にその人の顔をはっきり見た瞬間、とてつもない既視感、デジャブに相当する感覚を覚えた。その人のことは俺は知らない、知らないけれど知っている。確信はないけど、わかる、前世の記憶がそう言っている。

 

 面倒ごとだ、それもとびっきり。多分これは、場合によってはS.H.I.E.L.D.を壊したときと同じくらいの面倒ごとになりそう。というかなってる。だって彼は、たぶん……。話を聞きましょう、と俺はフードトラックの中に彼を案内する。まるでクモのような腕時計をした彼は、平静を取り戻して俺の案内に従うのだった。

 

 

 

 

 

「とりあえず自己紹介しましょう。俺はハルト・ハヤカワ。日系のアメリカ人です」

 

「お、おお。俺は左翔太郎。ハードボイルドな私立探偵だ。見ての通り日本人だぜ」

 

「探偵さんですか。ここには何か調査で?」

 

「ああ、まあそんなもんだ。土地勘がなさ過ぎて迷うなんてな。風都とは勝手が違いすぎてな」

 

 嘘がドヘタクソだなこの人!?っていうのはまあ……そうだとして。やっぱり、というのが今の俺の感想。左翔太郎……またの名を風都の仮面ライダー……W。顔を見た瞬間からそうだと思ってた。外れてほしい予想は、外れないのが常だ。

 

『……申し訳ありません。オラクルグリッドにアクセスしたところ日本には「風都」という都市は存在していません。何かお間違えではありませんか?』

 

「風都がねえ!?どういうことだ!?というか誰だ!?」

 

「イズっていう……まあAIとか人工知能とかそんな感じで覚えてくださいな。左さん、と呼ばせてもらいますけど……あなた何か嘘ついてません?パスポート見せてもらっても?」

 

「いや、誓って嘘はついてねえ。言えないことが多いだけだ……すまねえ」

 

「なるほど、まあいいでしょう。なにやら訳ありみたいですし……事情をうかがうわけにはいかないんでしょうね」

 

「……信じてくれるのか」

 

「目を見りゃ正気かどうかくらいわかりますよ」

 

 困ったな、というのが本音。俺は確かに仮面ライダーをある程度知ってるけど、それは所詮前世の話でしかない。世界を超えるのってディケイドとかじゃなかったっけ?ほらあのオーロラカーテンってやつ。他は知らないんだけど……。

 

 そう考えてると、爆発音が響いた。なんだ!?と外に飛び出す。続いて左さんも顔を引き締めて飛び出してきたあたり、何か知っていそうだ。というか、もしかして……

 

「ハルト!」

 

「スティーブさん!」

 

 外に出たら、足が異様に発達した化け物がスティーブさんと取っ組み合いを繰り広げていた。劣勢なのはスティーブさんだ。念のため持ってきていた盾を思い切りフリスビーのように投げてスティーブさんに投げ渡す。

 

 スティーブさんは俺の投げた盾の軌道を先読みしてバックステップで離れ、盾をキャッチするのではなく蹴りで軌道を捻じ曲げさらに威力を付加して化け物にぶち当てる。たたらを踏んだ化け物と、一人でに戻ってきた盾をキャッチしたスティーブさんが化け物と相対する。助けないと!

 

「いや、待て。俺の仕事だ。そっちのシールドマンも離れてていいぜ」

 

「君は誰だ!?一般人はさがってろ!」

 

「いいや、関係者だ」

 

 飛び出そうとした俺を手で制した左さんの手には……USBメモリが握られていた。知っている、知っている。ガイアメモリ、その一つを。左さんは懐から今度はバックルを取り出して腰につける。伸縮したベルトが腰に巻き付いて固定された。スティーブさんが俺のゼロワンドライバーとの共通点に眉を顰める。

 

「JOKER!」

 

「変身」

 

 鳴り響くガイアウィスパー、左さんはそのままジョーカーメモリをスロットにさして、左手で開く。塵が集まるように左さんの体が変わっていく、黒紫の装甲、赤い複眼……間違いない、彼は

 

「仮面ライダー……ジョーカー」

 

 短く名乗った仮面ライダージョーカーが向き直った化け物に颯爽と飛び掛かる。洗練されたコンビネーションの打撃の連打は化け物を的確にひるませ、異常発達した足の蹴りは悉く逸らされている。

 

 拳の一撃で火花が飛び散る、蹴りは抉るように鋭く。あれが……あれが本物の仮面ライダーか。俺のように力を振り回すだけじゃない、力の意味と責任、覚悟が完璧にそろったあれが……俺が到達すべき姿。

 

「ハルト、彼は何だ!?」

 

「わかりません!さっき迷ってるところに出くわして話を聞いてたところで……だけど……」

 

「ああ……君に……ゼロワンに似ている。あの化け物のことも知っているみたいだ。協力するぞ!」

 

「はいっ!」

 

 俺はそういってアタッシュショットガンを構える。実はまだ、ゼロワンドライバーは補修中なんだ。正確にはゼアがリアライジングに耐えられるように強化改修中、あと二日もすれば終わりというタイミングでなんて間が悪い!文句は言えないけど!

 

「左さん避けて!」

 

「援護する!」

 

「うおっ!へっ、やるねえトラックボーイにシールドマン。これで決まりだ」

 

 事前警告なしのスラッグ弾が化け物をのけぞらせ、そこを見逃さなかった超人兵士がフランケンシュタイナーという荒業で化け物……おそらくはドーパントを投げ飛ばす。背中から地面に倒れた化け物はダメージを感じさせない動きで立ち上がる。

 

 もう一撃のスラッグ弾、のけぞるドーパント。俺の銃撃に合わせて接近したスティーブさんが右へ左へ盾を持ち換えながら盾の重さを感じさせず、それでいてコンクリートをも陥没させそうな威力のコンビネーションを繰り出して動きを封じてしまう。

 

 それを短く褒めた左さんは、メモリスロットからジョーカーメモリを引き抜き、腰にあるスロットに叩き込んだ。電子音が鳴り響き、仮面ライダージョーカーの左足に紫色のエネルギーが収束する。

 

「JOKER! マキシマムドライブ!」

 

「ライダーキック……おらあああああっ!!!」

 

 空高く飛んだ仮面ライダージョーカーの飛び蹴り。ライジングインパクトと同じ技。ライダーキック。それはスティーブさんに封じ込められたドーパントに向かって過たず炸裂した。飛びのいてよけたスティーブさんが盾で庇うと同時に、ドーパントが大爆発を起こす。

 

「終わったのか……?」

 

「え、と……たぶん?」

 

 カチャンカチャンと硬いものが俺の足元に転がってくる。黄色いUSBメモリ……ガイアメモリ!?しかもクリアカラーで四角くて、ボタンがメタリックかつ端子が青……もしかしてこれ映画のT2ガイアメモリってやつじゃないか!?

 

 俺が思わずそれを拾い上げてしげしげと見つめていると、それをぱっと黒い装甲の手が奪っていった。ぷらぷらとそれを振る仮面ライダージョーカーから左さんの声が聞こえてくる。

 

「悪いな、こいつぁものすごくあぶねえもんなんだ。俺の仕事ってのもこれを追いかけることでよ……っておい!」

 

「なら、同じものを扱っている君にはなおのこと渡しておけないな。詳しく話してもらうぞ、仮面ライダージョーカー?」

 

「……しょうがねえか」

 

 仮面ライダーの手からいともたやすくメモリをぶんどったスティーブさんが警戒して盾を構えつつもそう言うと、左さんは観念したように変身を解いた。

 

 俺はそれを見て、スティーブさんが手に持っているメモリを見る。黄色のガイアメモリ、大文字は……J?足の形をしたJだ。つまり対応する言葉は……『JUMP』

 

 因果なものを感じながら、俺は倒れているドーパントになっていた人もまとめてトラックに放り込んで、その場を後にするのだった。

 




 なんか久しぶりに書けそうだったらから更新。プロットが風都探偵がアニメやってた頃のものなので思いっきりこうなりました。あえて言うならMCU版ゼロワン単独映画風を目指してます。Wはあれです。師匠役。本物の仮面ライダーを見たハルト君、君はどうなるのだろうか。

 あ、次話あったら必殺技とか変身演出の色文字オミットします。大文字太文字だけになるかと。ごめんちゃい。

 ではまたいつか
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