変身せよ、強き自分へ 臆病者は変われるか? 作:カフェイン中毒
「ガイアメモリに財団X……悪いが聞いたことないな」
「ガイアメモリは風都のあたりでしか流通してないはずだからしょうがねえ。財団Xも秘密結社だ。知らないのが当たり前だぜ」
「そうじゃない。そんなものがあるなら真っ先に目をつける奴がいる。その財団とやらもだ」
「確かにフューリーさんなら真っ先にスカウトしそうですよね。財団は潰すか利用する方向で動きそうですし」
仮面ライダージョーカーが叩き込んだライダーキックで爆散した後には……何もなかった。ガイアメモリならそこにはメモリを差した人間がいるはずなんだけど……。ジャンプメモリを回収した後に変身を解いた翔太郎さんをまたフードトラックに詰め込んでサイレンが響く中、とりあえず脱出したわけで。
「しかし、地球の記憶を封じ込めたUSBメモリ……そんなものが存在するとは。君が持っているものはあんな化け物にならないのか?」
「俺のメモリはこのドライバーの使用を前提にしたものなんだ。ドライバーを介して使うことでメモリの毒素を遮断しつつ力を使うことができる」
「ハルト、君のは違うんだよな?」
「あのですねえ、プログライズキーはあくまでデータの塊でしかないんです。純粋100%の科学ですよ?オカルトなんて混じってません」
「で、だ。今度は俺からも質問させてくれ、アンタらなんなんだ?」
「そう、だな……僕らはアベンジャーズだ。聞いたことはあるか?」
「……いや。そもそも風都がないっていうのが信じられねえ」
正確には俺はアベンジャーズではないんだけど些細なことか。翔太郎さんから説明されたのは俺の記憶と同じ、ガイアメモリについての説明とすでに滅んだミュージアム、それに付随する財団Xの話だった。
今度説明するのは僕らの番だ。とりあえずなんだけど今いる場所はアメリカの一都市、インターネット検索でも日本に風都という都市はない。日本にもスーパーパワー犯罪がないでもないけどそれはそれで別の話だ。
とりあえず直近の事件というか世界の契機になったニューヨークの地球外生命体の襲撃に端を発する話をして、スーパーパワーを持つ人間をかき集めたヒーローチームに所属していることを説明。今は探し人を探していることを翔太郎さんに説明した。
「なんかよぉ……こっちもこっちで大変なんだな。俺は聞いたことも見たこともねえ」
「あー、じゃあやっぱりその……いわゆる別世界か並行世界なんじゃないでしょうか。ほら、あるじゃないですかあの……マルチバース理論ってやつ」
「……それはもう絵空事だろう?」
「いや、ありうるぜ。現に俺はいろいろ体験してる」
一般的に見れば突拍子のない話だと思うし、スティーブさんは否定的だけど翔太郎さんはそっち方面を信じるようだ。ということはあれ?もしかして某世界の破壊者と会ったことがあるんだよね?映画で共演してたような。
「話を戻そう。君が追いかけてるガイアメモリ……これはあとどのくらいあるんだ?」
「本数だけならわかってるぜ、こいつ含めて8本だ。ただ、どの記憶を封じ込められてるのかはわからねえ。なにせそいつは風都に残されてた研究施設から回収した時に、ひとりでに動いて……きっとああいうのがワープゲートっていうんだろうが……それを作って俺ごと飲み込んで、今ここってわけだ」
「8本……しかも使うだけで人を怪物に変えるものがこの町に、か。わかった、ショウタロウ。君の話を信じる。今君は土地勘もない状態だろうし、良ければ僕らと行動を共にしないか?僕らも実は今人探しの最中でね」
「日本じゃ困ったときはお互い様と言いますし、ドーパントっていうんでしたっけ、それ相手でも問題なく戦えます。まあ俺は暫く前線はきついですが」
ゼロワンドライバーのアップデートに今しばらく時間がかかるのでゼアは今何も作ることができない。持ってきてるのはアタッシュショットガンとアタッシュカリバー、あとショットライザーだけど怪人相手に真正面から殴り合うのはちょっと……普通に死ぬよ。多分ジャンプドーパントに蹴られただけでも俺死んでたかもしれんし。
「いや……でもなあ……ああ、わかった。俺も今は相棒と離れ離れの状態だ。今の状態で強がってもなんもいいことねえ。悪いが、しばらく厄介になる」
「ああ、よろしく。差し当たってなんだが……君の見解を聞きたい。この、ガイアメモリが行きつく先は、どうなるだろうか?」
「……T2ガイアメモリの厄介なところは自分で適合者を探しちまうところさ。だが、もっと厄介なのは財団Xが追加で付けた機能だ。起動……つまりボタンさえ押しちまえば人間が居なくてもドーパントが出てくる。T2.5ってところか」
「つまりさっきのドーパントが爆発した時に誰もいなかったのは、落ちどころが悪くてボタンが押された、と」
「ああ、人が押したら……わかるだろ?」
「わかりたくなかったですねえ」
「だな」
言外に、どこに行くかわからないしわかっても怪物出てくるかもしれないし、しかもこれ壊れないし。悪いことしかないなこのガイアメモリ。いやもともと悪いものっちゃ悪い物なのかなあ。
そんなこんなで俺たちが向かうのはハイウェイである。室内、というか車内でもソフト帽をかぶっている翔太郎さんの筋金入りともいえる美学にある種のかっこよさを感じながら俺たちはとある場所に向かっている。とある人に協力を仰ぎに行くところだ。
「しかしまあ、科学者なんかにはいい思い出がないんだが……此の際しゃあねえか。どっかのてんっさい物理学者みたいなやつじゃねえことを祈ろう」
「安心してください、とびっきりの変人ですから。ただ、彼と同じくらいには僕は尊敬しています。いくら叩いても歪まない鉄の信念をもってますからね」
「フィリップがいればなあ……あいつがこっちの地球にアクセスできるかわからんが、俺一人で考えるよりゃよっぽどましになるはずなんだが……ない物ねだりはよそう。あいつは怒るだろうが、巻き込まれなくてよかったかもしれねえ」
「ああ、まあ……トニーは確かに少々偏屈ではある。が、君のように困っている人間を見過ごすことは絶対にしないだろう。テクノロジーといえばぼくたちは彼を頼るのが当たり前になっている」
「あんたらが言うなら安心できそうだ。なんせ、ヒーローらしいからな」
翔太郎さんのその言葉に対してスティーブさんは苦笑を、俺は違いますよと否定して件の人……アイアンマンことトニーさんに連絡をかけた。いつも通りコール音なしの直通でJ.A.R.V.I.S.につながって、そののちすぐ目的の人がホログラムに現れる。
『ああ、ハルにスティーブか。どうした?残念ながら今僕はとても忙しいんだ、雑談なら付き合ってやれそうにない。遊星から物体Fがふってきたからね』
「物体F?Xじゃなくてですか?今度は隕石をアーマーの材料にしようとしてたり?」
『それも悪くないが、なにせ降ってきたのは科学の結晶だ。実に興味深いね、見たこともない記録媒体だよ』
「おいあんた!もしかしてこれもってんじゃねえだろうな!?」
かなり上機嫌っぽいトニーさんの詩的な内容を俺の中で反芻してみると空から降ってきた記録媒体ってことは……まさかガイアメモリじゃないのか!?そう考えたのは俺だけじゃないらしくスティーブさんは顔をしかめ翔太郎さんは大慌てでジョーカーメモリをトニーさんに見せている。
『誰だ、君は?まあそんなことはいい、君が持っているそれと確かに似ているよ、ただ文字はJじゃなくてFだがね。まあ、起動もしていないし回収したのはダミーだ。防護ガラスにも入れている。どうやら厄介なものらしいな?よし分かった、君たちが来るまで触るのはよそう』
「ああ、そうしてくれ。化け物になるぞトニー。そのUSBメモリは人体に刺すことで後天的にミュータントを超えたナニかにするものだ」
「いそいでくれハルト!俺の予想が正しければそのメモリはそいつが適合者だ!おいあんた!そいつから今すぐ離れるんだ!」
『ああ、僕も今嫌な予感がしているよ。J.A.R.V.I.S.!』
トニーさんの研究机の上では、3重の防弾ガラスらしきものに包まれた、燃え上がる「F」の文字が刻印されたガイアメモリが置いてあった。翔太郎さんが警告を入れた瞬間にガイアメモリが震え出した。それと同時にトニーさんがスーツを呼び寄せるもののガイアウィスパーが鳴るほうが速かった。
『FORCE!!』
分割されたアイアンマンスーツがトニーさんの全身を覆ってマスクを下ろす、前にフォースメモリはトニーさんの額に刺さり、同時にスーツのマスクが下りた。まずいっ!と車の垂直離着陸システムをオンにしてハイウェイじゃなく直行でトニーさんの家に向かう。ここからなら3分だ!
「トニー!おいトニー!J.A.R.V.I.S.!くそっ!切れた!」
「冗談じゃねえ!起動もせずに一人でに動くだぁ!?そんなん俺が体験したのだけで十分だ!急ぐぞ!T2は毒素が強いんだ!今メモリブレイクしなきゃ手遅れになる!」
「いそいでますよ!オーバーヒート寸前です!イズ!墜落前提でいいからリミッターカット!」
『了解、不時着に備えてください』
「その前に出るさ」
スティーブさんはそう言うと盾を持ってドアを蹴り開けた。確かにもうトニーさんの家だけどって飛び降りたっ!?さらに翔太郎さんも全く躊躇せずにいった!?俺は二人の超人に度肝を抜かれながらもトニーさんの家の庭に車を不時着させる。
「トニー、好奇心猫を殺すと日本では言うらしいぞ。聞こえてるか?」
「………………」
「聞こえてねえだろうぜ。T2に乗っ取られてやがる。いくぞ」
トニーさんの家は、燃えていた。地下から燃え上がる熱気で上の建物が溶けていた。俺はすぐさまイズにJ.A.R.V.I.S.のメインプログラムをすべて回収するようにゼアに命じた。幸いメインサーバーはギリ無事だったらしくJ.A.R.V.I.S.のすべては何とかゼアのプロセッサの中に納まる。
アイアンマンが燃えていた。ホットロッドをもっと過激にしたようなカラーリングで、溶けたような装甲で、どこか生物的な、そんなドーパントが目の前にいた。既に変身していた仮面ライダージョーカーと盾を持ったキャプテンアメリカにフォースドーパントになったトニーさんは両手を向けた。
「ぐああっ!?」
「うおおっ!?」
リパルサーレイ、なんてレベルではなかった。ユニビーム、ペタワットレーザー……それを超えるような熱線が二人に向けて発射され、直撃した。ただ、二人ともが歴戦の戦士だったのが幸いだった。余波だけで俺の皮膚を焦がして激痛を走らせたビームを二人は直撃前に防御態勢をとって守ったのだ。命だけは、という注釈がつくけど。
スティーブさんは吹き飛ばされ、アメリカの象徴の盾は真っ赤に赤熱し持ち手のレザーを燃え上がらせていた。両手にひどいやけどを負ったスティーブさんは起き上がることもできずに呻いている。
翔太郎さんはこれよりかなりましだけど、一撃で変身を解除されて転がっている。ジョーカーメモリは使用者の感情に比例して強さをあげていくメモリだが、感情を燃え上がらせる前に一撃で沈黙させるなんて……そして、無機質な熔けた鉄の面が俺を見る。間近にある死の恐怖に心が竦んだ。ゼロワンシステムが使えないむき出しの命が、今消えようとしている。
「に、げ、ろ……!」
「………いやです。借りますね、これ」
「……!よせ!」
翔太郎さんが俺が何をしようとしてるかを察したのだろう。俺の足元に転がってきたロストドライバーを見てやけどを負った手でジョーカーメモリを握り締めた。ちがう、そっちじゃないんだ。俺はもう誓った、逃げないと。もうあのニューヨークの時のようなことが起きるのはごめんだ。それに、
ガシャンッ!と特殊強化ガラスのフロントガラスを割って、お目当てのものが飛び込んでくる。一目見てからそう思ってたよ。だってお前、一回メモリブレイクした時に……一目散に俺の方に吹っ飛んできたもんな。それを握り締めて、起動する。
『JUMP!』
ジャンプメモリのガイアウィスパーが響き渡り、ロストドライバーを腰に巻いた俺がメモリスロットにメモリを叩き込んで強引に開く。ゼロワンとは別の力が全身を包み込んでいくのがわかる、チリが舞い上がって、黄色の装甲が足元から顔までを覆った。一か八かだけど……成功した。トニーさん、今助けるから!
映画限定フォーム(大嘘)
2本目の記憶はFORCE(力)です。何度も力不足に悩むトニーさんに呼応してやってきました。アイアンマンスーツをも取り込んでドーパント化してるのでクッソ強いです。なんだったらラスボスクラス。最低でもエクストリームは欲しいくらいのパワーはある。