変身せよ、強き自分へ 臆病者は変われるか?   作:カフェイン中毒

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ゼロワン・イン・ラボ

 「ふむ、興味深いな。そのキーの数だけスーツがあるのか」

 

 「スーツがあるわけじゃなくて、一つのスーツの上に鎧を追加して機能を替えるって考えた方がいいかと。基本的な形態はあのライジングホッパーで、その上から能力を追加するんです」

 

 「なるほど、武器を持ち替えるようなものか。いいなそれ、僕も試してみよう。いいアイデアを貰ったよ」

 

 ずらっと並んだプログライズキーの前で唸るトニーさん。目の前にあるプログライズキーはゼロツープログライズキー、メタルクラスタホッパープログライズキー、シャイニングホッパープログライズキーを除いたものだ。流石にそれらは戦闘力が爆上がりすぎてみせられるものじゃない。

 

 ライジングホッパーですらアレなのだ、シャイニングホッパーは言うに及ばずそれ以上のスペックの物なんか人に使おうなどとすら思えない。それこそホントに最終戦争とかそんな感じだろう。特にメタルクラスタホッパーは質が悪い。アークがこの世界にないから、あれは純然たるゼア製になってる。暴走の危険性はない、と思う。俺が最初に持ってたのはゼロツープログライズキーだけだった。それ以外の全てはゼアが作ったもんだから、そこにアークの意思は介在していない。

 

 その質が悪い部分っていうのがクラスターセルだ。あれは、設定上分子ごと全てを破壊できる、らしい。ゼアの受け売りだから試すわけにはいかないが、危険極まりない。正しくあのすべてを食い尽くすバッタの群れのようなことを何に対しても行えてしまう。とりあえず絶対に変身したくない、過剰すぎる。ゼロツー?多分一人で戦争できるよアレあれば。無理。

 

 今は変身を解いてトニーさんのラボの椅子に腰かけている。デスクを挟んで座るトニーさんの前ではホログラムの画面が3つ並んで裏側から見る限りライジングホッパーの全体像が写ってるようだ。ガトリングヘッジホッグプログライズキーを弄るトニーさん、さっきボタンを押したけど反応がなくて、やっぱり俺が押すと反応する。どうやって識別してるのか?静脈パターンか?と言ってたけど俺にはよくわかんない。

 

 『トニー様、現状の技術ではヒデンアロイの再現は不可能です。いくつかの未知の元素が検出されました。ですがアタッシュカリバーの外装の構造は時間をかければ模倣可能です。必要時間は推定5ヶ月以上です』

 

 「十分だ。いいね、脳みその体操になる。そろそろ腹が減ったな……」

 

 後ろでロボットアーム2機がガランガランと音を立てて合金を片付けるのをBGMに面白そうに笑うトニーさん。未知のシステムを見ただけだが、トニーさんの目はらんらんと輝いてこれを基にしてどうしてくれようかという感じだろうか。

 

 ちなみにの話だけどあの後ゼロワンのパワーに対抗心を燃やしたらしいトニーさんがスーツを着てきてがっぷり四つ組み合う相撲みたいなことをしたが、やっぱりゼロワンで勝ててしまった。アイアンマンの強さは素手の殴り合いじゃなくて内蔵された兵器だからそこで対抗してもと思うんだけど。特にリパルサーレイだっけ?あの威力の調節が効く攻撃は実に羨ましい。

 

 「あ、じゃあ何か作りましょうか?あ、でも冷蔵庫の中食材なかったですね。いったん買い物に……」

 

 「家にプロがいるといいな。僕の家のシェフになるか?」

 

 「食いっぱぐれたら考えますけど、まだそうじゃないので遠慮しときます」

 

 「残念だ、J.A.R.V.I.S。ローディを誘っとけ。食事に行こう。ハルト、その車に乗れ、レストラン行くぞ」

 

 「ハルでいいですよ、みんなそう呼びます。しかしかっこいいですねこのスポーツカー。アイアンマンの色だ」

 

 「分かってるじゃないか。ちなみにそのホットロッドがスーツの色の元だ」

 

 アイアンマンっぽい色をしたスポーツカーがひとりでに動き出す。トニーさんは運転席に乗り込んで俺も助手席に失礼する。トニーさんはかなり多趣味のようでその一つがバイクにスポーツカーのようだ。どれもこれも高級車で変身した時ぶつかったらとひやひやしたけど。ガレージと直結してるらしい扉が開いてスロープを上ってスポーツカーはトニーさんの運転で道路に飛び出したのだった。

 

 

 

 

 

 「トニー!いきなり会おうだなんてどうしたんだ?それとそっちのは?」

 

 「ああ、あれから結局なかなか会えなかったからな。タイミングが良かった、この後暇か?うちに来て欲しいんだが。そっちのはホームステイだ」

 

 「わかった。しかしお前がホームステイ?どういう風の吹き回しだ?ああごめん、俺はジェームズ・ローディ・ローズ。アメリカ空軍大佐だ」

 

 「なんだ昇進したのか?言ってくれればいいのに」

 

 「いう暇なくてな」

 

 「大変だな、お互い」

 

 「あ、ハルト・ハヤカワと言います。なんかトニーさんからお誘いいただいて……」

 

 「ああ、察するよ。大変だなお互い」

 

 「おいそりゃどういう意味だ?」

 

 海を臨むレストランでトニーさんに紹介されたのは黒人のムキムキな人だった。軍人さんかぁ、トニーさんの親友らしいローズさんは俺の自己紹介を聞くなり肩にポンと手を置いて俺を慰めてきた。トニーさんはそれに対して怒っているけど、やり取りがかなり気やすいからかなり仲がいいんだと思う。

 

 トニーさんの紹介だけあって、レストランの料理はかなり美味しく、職業柄レシピが気になったりしたが味は覚えたので帰ったら再現を試みようかな。そしてどうやらローズさんもスタークさんの家に来るようなので自分の車に乗り込んでついてくるようだ。そうすると道中トニーさんは

 

 「ハル、君の事……ローディには話しておこうと思う。軍の方で君の正体がばれないように動いてもらう」

 

 「……あんまり正体をばらしたくはないんですが」

 

 「ローディは大丈夫だ、僕が保証しよう。それと、君の悩み事である手加減の事もなんとかしよう。考えれば簡単な話だ」

 

 にやりと笑うトニーさんに若干の不安を覚えたが、ローズさんが信頼できるであろうことは何となくわかったので俺は何も言わずにトニーさんに任せることにしたのだった。

 

 「それで?一体全体なんで、よりによってお前がホームステイなんか始めたんだ?」

 

 「ああ、それはこいつが今巷で話題のこれだからだ」

 

 スタークさんの家に帰ってきた後、ラボでコーヒー片手にしたローズさんがスタークさんに尋ねた。スタークさんは待ってましたとばかりに手をパンと叩くとホログラムの画面が一斉に先ほど撮影した俺がゼロワンに変身する場面に切り替わる。ぱちくりとそれを見たローズさんはふか~~~いため息をついてコーヒーをぐいっと一気飲みした。

 

 「あ~~~……なるほどな。分かった。それで?俺に何をしてほしいんだ?」

 

 「いいね、話が早い。流石はローディ!軍の方でちょっと工作して欲しい。まあ単純だ、誤魔化せ」

 

 「それかなり無理言ってるって分かってるか?まあいい、一応聞くが……君は軍隊に興味はないか?」

 

 「……ないですね、すいません」

 

 「だろうな。気にしなくていい。そういうのはトニーで慣れっこだ。ただあまり派手に暴れるなよ、俺の権限にも限度ってもんがあるからな」

 

 「あんなことがない限り正直戦おうとは思わないですね」

 

 「それでいい、それが一番だ」

 

 うんうんと頷くローズさん。この人も優しい大人だな、両親もそうだけど俺は周りの人に恵まれてると思うよ、ほんと。それで、とローズさんが言葉をつづけた

 

 「アベンジャーズのメンバーには言うのか?」

 

 「いや、言わない。フューリーに見つかると面倒だ。少なくとも今は、正体不明のスーパーマンでいてもらおう」

 

 「妥当なところか。お前のことだ、隅々まで見るんだろう?」

 

 「勿論、ケツの穴の中までな」

 

 「え?」

 

 「おい」

 

 「冗談だ、暫く研究のネタには苦労しないな。できればどうやってそのエネルギーを生み出してるかまで知りたいところだが……分解はよそう」

 

 なんかトニーさんがすげえ怖いことを言っているけど聞かなかったことにしよう。ゼロワン分解しようとかゼアが黙ってないぞ。ビームエクイッパーからシャインシステムが飛んでくるかもしれないからな!というかそのフューリーって人が昨日言ってた眼帯の人のことかな?二人してそこまで言わせるなんて相当なことやる人なんだろうなあ、こっわ。

 

 「さて、それではお待ちかねの話と行こう。ハル、君の目下の悩みである手加減が効かないという話だが……手加減できるようにすればいい」

 

 「それができないから悩んでるんですが?」

 

 「まあ慌てるな。君が殴るときに力を抜けとかいう話じゃない。単純だ、君のスーツの方にリミッターを設置すればいい。つまり、スーツの出力そのものを抑えるんだ」

 

 「……おお!なるほど!」

 

 「だろう?ボクのスーツのリパルサーなんかもそういうシステムだ。君の持ってる人工知能にリミッターを設定するようにしよう」

 

 「わかりました。やってみます」

 

 「何だったら僕がプログラムを書こうか?」

 

 「いえ、多分ゼアならやれると思うのでちょっとこっちで試してみます」

 

 トニーさんが俺に提案してくれたのは目から鱗だった。思いっきりやっても人が死なない程度にパワーそのものを抑え込んでしまえばいい。圧倒的すぎるゼロワンの強化率そのものを弱くしてしまえばいいのだ。流石は天才トニースターク、スーツそのものを弱くするなんてなかなか思いつかないだろう。だって普通それは強くしていくものだから。

 

 「なあ、何の話してるんだ?」

 

 「ハルのスーツの話だ。そのまま使う、まあ例えばテロリストなんかと戦うと皆殺しにしてしまうくらいにパワーが強い。それを抑え込む方法について議論してたんだ」

 

 「お前のスーツよりもか?」

 

 「残念ながら、ゴリラもびっくりだ『POWER!』ハル、アイテムで遊ぶな」

 

 ゴリラもびっくりというトニーさんの声にお応えしてパンチングコングプログライズキーを鳴らしたら怒られてしまった。解決の糸口が見えてちょっと調子に乗ってしまった俺が改めてどのくらいの感じに設定すればいいかなとスタークさんに聞いてみる。

 

 「とりあえず僕のスーツを参考にするといい。対人戦の非殺傷のデータが……これだ。今回は何も仕込んでないから安心しろ」

 

 スタークさんが端末をぴっぴっと弄ってデータを表示させて俺にホログラムの画面をパスした。俺はゼロワンドライバーを腰に装着してゼアにアイアンマンスーツのデータを基にしたリミッターを設置するようにゼアに提案すると、ゼアはこれを受け入れてデータを基にしたプログラムを作成しだした。

 

 「あ、作り出しました。行けそうです」

 

 「お、いいねえ。その人工知能、どうなってるか見たいもんだ。J.A.R.V.I.Sの方が上だろうがな」

 

 『光栄です』

 

 「対話インターフェースは搭載されてないみたいですからね。ただ、優秀だとは思いますよ」

 

 「僕のハッキングをはじいたからな」

 

 「なんか根に持ってません?」

 

 「いや?」

 

 「とにかくわかった。仕事を抜け出してきてるから俺はこれで失礼するよ。トニー、あまりティーンエイジャーに無茶させるなよ」

 

 「当然だ、僕を何だと思ってる?なあハル?」

 

 「自意識過剰な正義のヒーロー、ですかね?」

 

 「いいなそれ採用!」

 

 「……意外と相性いいみたいだな。心配するだけ無駄みたいだ、ハルト……根を詰めすぎないようにな」

 

 苦笑しっぱなしだったローズさんだけど、最後に力強く俺の背中を叩いて颯爽と去っていった。ゼアのプログラムの変更はどうやらしばらくかかるみたいなのでそれまで変身はできないみたいだ。なので俺はトニーさんのアイアンマンスーツの研究について詳しく聞くことになった。というかトニーさんが説明してくれてる。と言っても詳しい話は学がない俺には理解できない話だけど、ようは……かっこいい!つよい!最先端!こんな感じだ。

 

 「おお、すごい。こんな感じなんですね……結構思ったより軽いです」

 

 「だろう?軽量化と耐久力の両立は難しいが、それを何とかしてしまうのが僕ってわけだ。そういえばハル、君……ハイスクールは通わないのか?」

 

 「あー、それなんですけどね。両親が死んじゃってから自分で稼がないといけなくって……もう少し落ち着いたらGEDを受けるつもりです」

 

 現在開発中だというアイアンマンスーツの腕部分を付けさせてもらった俺がトニーさんの難しい解説を頑張って聞いていると、トニーさんはハイスクールには通わないのかと聞いてきた。まあ、確かにミドルスクールは卒業できたけどハイスクールに入れなかったし通ってないから疑問に思うのも無理はない。

 

 だけど別に俺はこれでいいと思ってる。アメリカ版高卒認定試験であるGEDに向けて毎日こつこつと勉強自体はしているし、試験自体も3か月に1回、受けようと思えればいつだって受けられる頻度だ。俺がやってるフードトラックなんて学歴関係ないからね。

 

 「GEDか。勉強してるのはいいな。僕を見ればわかる様に学は身を立てるからね。ああ、勉強で分からないことがあったら聞いてくれ、そこらの大学より分かりやすい講義をしてやろう」

 

 「天下のトニー・スタークが家庭教師なんて、贅沢ですね」

 

 工具を使って俺の手からアーマーを外すスタークさんにそう言われたので、とりあえず俺は素直に礼を言うことにするのだった。




 次回でホームステイ編は終了ですが、9時ごろ間違って次の話を投稿するバグを発生させてしまいました。ネタバレ食らった人は申し訳ない。

 次からは気を付けますですハイ。ゼア君が有能すぎるがそれはそれでヨシ!

 ではまた次回、次回以降投稿間隔を少し開けます。ストックが切れました!
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