変身せよ、強き自分へ 臆病者は変われるか?   作:カフェイン中毒

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ホッパー・レインフォースメント

 『テスト結果、ゼロワンのスペックの大幅な下降を確認。現状のアイアンマンスーツと同性能と思われます』

 

 「だろう……なっ!!」

 

 「ですよ……ねっ!」

 

 J.A.R.V.I.Sの報告を変身した俺とアイアンマンスーツ、マーク18を着こんだトニーさんが力いっぱいアームレスリングをしながら答える。なんてシュールな図だ。あの後ゼアのシステムの書き換えは5日間にも及んだ。流石にゼロワンのシステム全てとフォームチェンジ全てにリミッターを設置するのはゼアでも大仕事だったらしい。

 

 それで、リミッターの内容は攻撃に関してのみ、大幅なパワーの制限が付加される。それでもやっぱり人間よりは上のスペックではあるが、それ以上は下げるなってトニーさんから言われてしまった。それ以上下げれば素早く相手を無力化するのに支障が出るだろうって。あと、武器の威力に関してはリミッター効かなかった。まあアタッシュカリバーの切れ味をどう鈍くさせるかとか考えても無駄よね。素直に峰で殴るわ。アタッシュショットガンは封印です。

 

 あ、機動力、防御力に関しては据え置きです。必殺技も据え置き、あくまで通常状態の徒手格闘にリミッターがかかります。実際はゼロワンの筋力強化スーツ、ライズアーキテクターの強化率を落としているだけなので、少しずつパワーをあげたりとかもできる。ゼア君有能、超便利。

 

 リミッターの開放は俺の判断でレスポンスゼロで行われるみたい。ただ、人相手にライダーはかなり過剰なのでリミッターを解放する予定は正直ない、パンチ一発で人殺すとか冗談でしょ、俺は絶対ヤダ。俺は人を殺すために変身するんじゃなくて人を守って助けたいんだ。悪いやつでも生かして法の裁きを受けて欲しいと思うし。

 

 ただ、そこら辺の考え方はトニーさんたちとは違うかも。トニーさんも殺したくはない、とは言ってるけど殺すのもやむなしという手段をもって選んで使っている。ミサイルとか、レーザーとか、直撃したら人は死ぬ。基本のリパルサーレイがどれだけ有情か、紛争に介入するようなことをしてたらそれくらいの武装は欲しいかもしれないけど。

 

 物理学だ、とトニーさんが言って両手を使ってきたので俺はアームレスリングに負けてしまった。大人気ないですと抗議しても、ルール違反はない、と言われたのでリミッターを解除してやろうかと思った。

 

 

 

 

 

 「このランチを食うのも最後か、残念だな」

 

 「いい台所なんですから使ってあげてくださいよ。もったいない」

 

 「僕が作るのは料理じゃなくて夢の技術だからな」

 

 なんだかんだで初日のレストラン以来、俺が食事を用意していたんだけど……トニーさんは意外にも普通にペロリと平らげてくれている、全部だ。まあ好きな料理なんですか?って聞いて食の好みを把握してご飯作ってるから嫌いな味付けじゃないとは思うんだけど。

 

 あ、夜よくペッパーさんが来るのでトニーさんはディナーに行ってるよ、俺は別に一人でいいから。まあJ.A.R.V.I.Sにお勧めのレストラン聞いて一人でライズホッパーを運転して出かけたりとか俺も俺で楽しんだ。ライズホッパーは俺のライズフォンが変形してなるバイクなんだけど……トニーさんにみせたら質量保存の法則はどうなってるんだ!?と過去一の興奮を示していた。

 

 一週間一緒に過ごすうちにトニーさんとは結構仲良くなることが出来た。まあ皮肉屋だけど、この人自分の感情を素直に表に出すのが苦手なだけで普通にやさしいいい大人なんだな。個人的に話してて面白い人は大好きだ。フードトラックにやってくる困ったお客さんに比べたらスタークさんなんか可愛いもんだね。

 

 「君の当面の目標はGEDか。勉強は……君なら心配いらないだろう。なんせ僕よりも勤勉だ、そこは素直に負けを認めるよ。ま、これからはいつでも頼ってくれ。勉強でも、就職に困っても。女の落とし方でもな」

 

 「ペッパーさんに言いつけますよ」

 

 「おお、こわいこわい。真面目なハルにはプレゼントだ」

 

 そう言ってトニーさんは机の上に一つ何かを放った。見ると……腕時計だ。スマートウォッチとかいうやつ。しげしげと見つめるとトニーさんがスマートウォッチの電源を入れる。するとホログラフが浮かび上がり、時間が立体的に表示される。おお、すごい。

 

 「勿論ただの時計じゃないぞ。なにせ僕のお手製だ。それは時計というよりも携帯……いや、パソコンだな。そんじょそこらのハイエンドモデルが裸足で逃げだすだろう。そして、J.A.R.V.I.Sに直通でつながることが出来る。もちろん優先は僕だがな」

 

 「いいんですか?そんないいものを貰っちゃって」

 

 「当然だ、君専用なんだから。ああ、たまに僕からも連絡入れるからちゃんと出るんだぞ。それと、護身用機能付きだ」

 

 そう言ってトニーさんがスマートウォッチのボタンを3回クリックすると画面からバチッと音がした。スタンガンの機能だろうか?実演を終えたトニーさんが机の上を滑らせて俺の前に時計を置いた。俺はありがたくそれを左腕に巻いた。ロボットアームが食事に使った皿を片していく。

 

 「トニーさん、1週間ありがとうございました。まだ戦うかどうかは決めてませんけど、道しるべは見つかったと思います」

 

 「気にするな。僕もまあ……だいぶ楽しかったからな。特にいいアイデアが沢山浮かんだよ。それじゃ、行こうか……おっと!忘れるところだった!これ、一週間分の君の給料な」

 

 「え、あ、はい……っっ!?!?こんな受け取れませんよ!?」

 

 「何言ってる、適正どころか安いくらいだぞ。君のスーツはオーバーテクノロジーの塊なんだからな?」

 

 「だとしても10万ドルって……」

 

 「小切手で悪いが銀行に行って金に換えてくれ」

 

 トニーさんがぽんっという感じで俺によこしたのは小切手、アメリカじゃあ小切手は珍しくないけど書いてある額が珍しすぎる。10万ドル、日本円にして1500万円なり、目玉飛び出るかと思った。スタークさんにとってははした金かもしれないが俺にとってはとんでもない超大金だ。慌てて返そうとしたがトニーさんはそのまますいーと行ってしまった。えー、いいの?いうてゼロワン見せただけだよ?どっちかっていうとお世話されたの俺だよ?いいの?ほんとに?ねえ?暫くニートできるよ?

 

 思い出のほとんどが吹っ飛びそうな俺は、来たときと同じようにトニーさんの飛行機に乗ってワシントンに帰っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 「ニューヨークのあれといい、マンダリンといい、テロといい……物騒になったな」

 

 「マンダリンってあの爆破テロの?」

 

 「ああ、場合によっては俺ら退役軍人の動員も検討中だとよ」

 

 「物騒だねえ」

 

 「全くだな」

 

 トニーさんにお世話になってはや5ヶ月が過ぎようとしている。帰ってから全身に冷や汗をかきながら銀行で小切手を換金した俺は相も変わらず、フードトラックで生計を立てていた。変わったことといえば家にある調理器具が豪華になったこと、筋トレの成果が出てちょっと体が引き締まってきたこと、それと格闘術がさまになってきたことくらいか?

 

 トニーさんとは1週間に一度くらい、メールなり通話なりで連絡を取り合っている。大抵はトニーさんの新しいスーツが出来て今度はどんな性能だっていう話を聞く感じだけど。J.A.R.V.I.Sにはかなりお世話になってしまっている感じだ。いやだって便利すぎるもん、何か聞いたらすぐ答えが返ってきて気が利いてるし!凄いなゼアより優秀だわ、お前は俺に何も言ってくれないもんな。一番好きだけど!

 

 ただ、最近心配なのはトニーさんの目元にクマがくっきり浮かんでて、明らかに寝不足によるハイテンションなのが見て取れるってことだ。スーツの製造速度も日に日に上がっていて、いま何か42番目のスーツだそうだ。自動キャッチ型スーツと名付けられたそれをいっそ狂気を孕んだ目で語るトニーさんに寝てくださいと言ったのも昨日の話だ。

 

 正直、心配だ。仕事に行ったサムさんを見送りながらそう考える。いっその事またトニーさんの所に行って生活の管理をした方がいいんじゃないかとすら考えてるくらいだ。J.A.R.V.I.Sからも寝てないって話は聞いてるし、俺には無理するなとか言ってるのに自分が無理してちゃ世話ないよ。どうしたもんかな。

 

 ここ何ヶ月かはテレビをジャックしてのマンダリンとかいうイカレ老人のショーが話題だ。いや話題もクソもないが、血も涙もないテロリストで、あまりにもあんまりだからいまゼアと一緒に個人的に調べているところだ。初陣がエイリアンで次がテロリストとはちょっと俺の人生ジェットコースターに乗りすぎじゃないか?

 

 おそらくトニーさんも調べているようで、スマートウォッチのメールに首を突っ込むなという連絡が来ていたが……調べるだけならセーフだろう。もし俺のほうが先に確信に至ればトニーさんと共有すればいい。無差別爆弾テロ……周りが巻き込まれでもしようものならと思うと動かずにはいられない。

 

 とりあえずテレビでも見るか、と俺はGED用の過去問題を開きながらテレビをつける。昨日から新レシピの考案で勉強に手がついてなかったし、今日は休もうと思ってたところだ、真昼間から働きもせずにテレビかじりつくとかこの時代においては最高の過ごし方かもしれないな。

 

 『私はトニー・スターク、お前など恐れない!臆病者め、お前の命はここまでだと思え』

 

 「待って何してんのあの人!?」

 

 飲みかけのコーラをぶふっ!と噴き出しながら突っ込みを入れる。テレビの中ではトニーさんがマンダリンに向かって挑発をしていた。しかも半ば公然の秘密とは言え自分の家の住所まで公開してると来たもんだ。トニーさん、見る限りにカンカンに怒ってる。何があったんだ?

 

 「J.A.R.V.I.S!昨日何かあった!?トニーさんカンカンじゃないか!?」

 

 『はい、ミスターハッピーがマンダリンの爆破テロに巻き込まれ重傷を負いました。サーはそれによって直接こいと仰せです』

 

 「何やってんの……!危ないよ!テロリストだよ!?」

 

 『肯定いたしますが、トニー様はそれで……ザッ……と、ザッ……!!』

 

 「J.A.R.V.I.S?どうしたの!?J.A.R.V.I.S!?」

 

 とりあえずJ.A.R.V.I.Sにどういうことか聞いてみるけど、話してる途中でJ.A.R.V.I.Sがおかしくなってしまった。トニーさん優先っていうのは当然の話だけど話してる途中でトニーさんの方に行くときは必ず断って挨拶があったからいきなりぶちぎられるようなことは今までなかったぞ!?なんかあったか!?

 

 「トニーさんの方は繋がらない……?ゼア、J.A.R.V.I.Sへのアクセスを補正して何があったか詳しく頼む」

 

 とりあえず何かあったのは確定なので、スマートウォッチにゼロツープログライズキーを繋いでゼアに探らせる。するとJ.A.R.V.I.Sに不具合が生じていると同時に、エマージェンシーコールが見つかった。俺は家を飛び出して慌てて鍵をかけて、ライズフォンのアプリを選択して空中に投げる。

 

 「モーターライズ!ライズホッパー!」

 

 「J.A.R.V.I.S!応えなくていいからトニーさんの居場所もしくは目的地を送って!ゼア、手伝ってやってくれ!」

 

 スマートウォッチにそう叫んでライズフォンが変形したライズホッパーに飛び乗る。正直このままマリブに行くのは難しい、どこかで変身して飛んでいくのが吉だが……トニーさんと合流するのがベストだろうか?思いっきりライズホッパーを飛ばしてとりあえず人通りの少ない山道でマリブ方面に繰り出す。

 

 数十分後、J.A.R.V.I.Sからトニーさんの目的地と無事を知らせる文字だけが送られてきた。テネシー州の、ローズヒル……?何でそんなところ……いや、マンダリンの爆破テロの前に、爆弾を使った自殺があったところだ。何か関係があるとみて間違いない。テネシー州なら俺の方が近い、多分トニーさんより先につくはずだ。そうなれば合流できるようにしておかないと、怒られるだろうけどね。

 

 「ゼア、何があったか分かるか?」

 

 ゼアに尋ねるとヘルメットの裏のディスプレイにニュースが表示された。スタークさんの家が襲撃にあった……?トニーさんが巻き込まれて死んだかもしれないというのはJ.A.R.V.I.Sからの情報で嘘だとわかったけど流石に行動が急すぎる。マンダリン……イカレたやつだ。俺はとにかく急ごうとゼロワンドライバーを腰に巻いた。最速最短、一番速いのはこいつだとプログライズキーを取り出して、ボタンを押した。

 

 「INFERNO WING!」

 

 「トニーさん、とりあえず助けに行くから!変身!」

 

 運転しながらベルトにバーニングファルコンプログライズキーをかざし、ロックが外れたキーをスロットへ叩き込みながら俺はそう呟くのだった。




アイアンマン3、開幕します。トニーと仲良くなった主人公君の活躍をお楽しみに。
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