ハイスクール・フリート 海賊艦隊で大ピンチ!   作:みん提督

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2話です。
ちょっと収まり悪くなりましたが、中身は面白いはずなのでご容赦を。


第2話 犯行声明でピンチ!

東京から南へ約1300km。小笠原諸島で2番目に大きな島である父島からは約300kmの海上に浮かぶ小さな島、硫黄島。

ブルーマーメイドの編成前から重要な軍事拠点として利用されており、旧海軍の飛行船基地やドック、米軍が使用していた兵舎や格納庫などがそのまま残り、今でも使用されている歴史ある島でもある。

 

そんな硫黄島だが、現在では東京の南方海域制海権維持の要といわれる世界屈指の大要塞島へと姿を変えている。

36サンチ連装砲4基を始めとして、島のあらゆる場所に砲台が設置され、摺鉢山の頂上には旧式戦艦の艦橋をそのまま設置した観測司令塔が天守閣の如く聳え立つ。

他にも、最大20隻を収容可能な港湾施設、さらに最大8隻を収容できる水中潜水艦ドック、さらに大規模な修理や造船も可能な本土顔負けの本格的なドック、飛行船用の格納庫や発進道、自給自足が可能な食料生産プラントや避難壕など……ありとあらゆる施設を内包し、臨時の首都としても機能するほどの万能ぶりを見せている。

しかし、硫黄島要塞には最大の欠点があった。

それは、敵の侵攻を一度も受けたことがないことである。

そもそも地理的に東京から遠すぎるし、防衛拠点なら他の小笠原諸島の島々にも点在してるし、海賊たちはこの鉄壁過ぎる要塞を避けて通る。そうなるとせっかくの要塞設備が宝の持ち腐れとなってしまうのだ。

結果、海賊たちからは『鉄壁の要塞』、『ハリネズミ』と呼ばれ、恐れられる一方、脅威らしい脅威を経験せず、本土からは縮小論も上がるなど、厳しい状況に置かれる要塞でもあった。

だが、東京防衛、海賊への牽制などの目的から要塞の重要度はそこまで落ちず、今でも大半の設備が使用可能な状態で維持管理されている。

また、もう一つの特徴としてブルーマーメイドとホワイトドルフィン両組織の部隊がそれぞれ駐屯している。母港を別にすることが多いブルーマーメイドとホワイトドルフィンがどちらも駐屯する基地は珍しく、何かと対立しがちな両組織の橋渡し的な役割ももっている。

そんな歴史と論争溢れる要塞の一角に置かれた執務室からは、長閑な南国風な島からは想像つかないほどの怒号が飛び出していた。

 

「バカモノ!何がやりすぎちゃって、だ!そんな子どもみたいな言い訳しおってからに、本当にお前ら反省してるのか?特に青木、貴様!」

景気よく怒号を飛ばしているのは要塞司令官でもある硫黄島要塞駐屯ブルーマーメイド作戦部隊司令官豊島文子。歴戦の隊員で、過去に壊滅させた裏組織は数知れず。佐世保校の校長を務めたこともあり、その実力は国内外でも知れ渡っている。

彼女にキツく叱責されているのは、先の演習で同要塞駐屯ホワイトドルフィン旗艦『よるぎり』を壊してしまったブルーマーメイド艦『ちちじま』のツートップ、青木彩艦長と神余久美副長だ。この一件は『よるぎり』座乗の本多司令官が快く許してくれたおかげで終息すると思った2人は安堵したが、ブルーマーメイドとしてはそれで終わりには出来なかった。

司令官公室の窓からも見える修理ドックには、機関部に盛大に2つの大きな穴が空き、まだ排水作業が続く、満身創痍の『よるぎり』の姿が見えた。訓練用の模擬魚雷とはいえ、接射するとかなりひどく壊れるものらしい。『よるぎり』は1ヶ月は戦線を離脱せねばならない。豊島が激怒するのはそのこともあった。

「2ヶ月前の要塞騒ぎ以降、各地で海賊やら何やらが活発に動いている。そんなくそ忙しい時期に、貴重な外洋艦を演習なんかで壊しおって、貴様ら何がしたいんじゃ!」

机をバンバン叩きながら怒り狂う豊島。他の若い隊員なら泣き出してしまいそうな迫力の持ち主だが、2人は冷静だった。なんなら反論までするので、結果火に油を注ぎ、どんどんとエスカレートさせるのだ。

「そうは言いますがね、豊島司令。本気で行けと仰られたのは貴女ですよ」

神余がまたしてもぶっきらぼうに答える。記憶力もいい彼女は、言われた言葉を逐一記憶しているのだ。

「確かに、アタシはそう言ったさ。だがね、『よるぎり』を大破させろとまでは言ってないぞ!」

豊島の止まらない怒りは同じ階の高官フロアだけでなく、すぐ下の階にある一般業務フロアにも響き渡っていた。叫ぶ度に古い建物は揺れ、パラパラと木屑まで落ちてきていた。

「今日もやってるねー、豊島さん」

「あの2人そろそろ降格されそう」

「艦長たちに責任押し付けたみたいで申し訳ないっすね……」

『ちちじま』のクルーたちはこの一件から、『よるぎり』の修理が完了するまでの1ヶ月の間、当面の陸上勤務(ようは謹慎である)を命じられていた。だが、結局のところ、罰の多くはツートップが受けているようなもので、監督者責任とはいえ、少々申し訳なくなっていた。

「じゃあ、私がそろそろ止めてくるよ」

そう言って立ち上がったのは、『ちちじま』航海長の斉賀千春。青木と神余の同期であり、幼なじみの彼女はこうして2人が上に突っ掛かっている時に間に入って仲裁するのが仕事だった。昔から歯に衣着せぬ言い方をしていた彼女らにとっては渡りに船だが、今回はどうだろうか。

3人分の紅茶を用意し、豊島の執務室の戸をノックする。彼女の返事が来る前に速攻で扉を開ける斉賀だが、直後に流れ弾を喰らう。

「今、取り込み中だ!後にしたまえ!」

思わず紅茶を載せたトレイを落としそうになる。あわてて体勢を立て直すと、気丈な声で。

「まぁまぁ、司令。そろそろ2人も懲りたと思いますよ。私からもキツーく言っておきますので、今回はその辺で許してやってくださいな」

と言いつつ、紅茶を勧める。断る余地を与えないのが彼女のやり方だった。何か言おうとしたが、グッとこらえ、出された紅茶を飲み始める豊島。こうなればこっちのものだ。と、リードを握った斉賀は2人にも勧める。

「僕、コーヒー派なんだけど……」

青木が渋そうな顔をして、紅茶を断ろうとすると。

「たまにはいいじゃない。ね?」

お礼を言って先に紅茶をもらっていた神余が一口紅茶を啜る。

「やっぱり美味しいわね、貴女の紅茶。本場イギリス仕込みは格別ね」

斉賀は照れるといつもするクセで髪の毛をワシャワシャする。その仕草がなんだかかわいいと評判だった。ついでにファンも多い。

「……うん、美味い」

普段はコーヒー派な青木も、素直に味を認める一杯。こうなればこっちのものだ。

「ねぇ、豊島司令、2人も懲りたでしょうし、司令もまだお仕事ありますでしょ?お互い忙しい身ですし、今日はこの辺で勘弁してやってくださいな」

両手を合わせて頼み込む姿勢は彼女が完全にこの場を支配した証拠。こうなると豊島も黙るしかない。斉賀の不思議な才能の一つだ。

「……わかった、わかったよ。先方も許してくれたことだし、今回はこの辺にしとくよ。2人とも退室してよろしい」

豊島の言葉に2人は敬礼し、部屋を後にする。斉賀は最後に。

「ありがとうございます、おば様」

とウィンクして見せた。ため息をつくと、彼女にも退室を促す。

こうして、即座に終戦したお説教だったが、2人には第2ラウンドが待っていた。

 

「イタイイタイ、耳引っ張らないで!」

「なんで僕はほっぺなのさ……」

斉賀にほっぺと耳を引っ張られてれオフィスに連れ戻される2人。すれ違う隊員たちからはまたやってるよ。とか、懲りないねぇ。といった声がちらほら聞こえる。2人を仲裁した後は改めて、斉賀が叱るのがお約束だった。

オフィスは主に艦のメインクルーたちが勤務する士官室(ガンルーム)と、他の上陸隊員が執務を執る一般オフィスの2つがある。艦につき、それぞれ1室ずつの2室が用意されている。

士官室(ガンルーム)には主にメインクルーたちのデスクがある。

「アンタたちは毎度毎度……なんでいちいち反論するのよ。素直に反省してるふりでもしてればいいのにさ」

「ふりでいいんだ」

斉賀のお叱りにツッコミの声もあがる。

「ちょっと黙ってて十六夜さん。ともかく、なんでアンタらは……」

豊島司令よりも厄介だ。何せまくし立てるようにお説教するし、正論だから何も言えない(豊島司令も正論ではあるが……)。もしくは単なる上司よりも、幼なじみの方が反論しづらいのかもしれない。

結局、2人はまともに反論できないまま、お説教は2時間に及んだ。

 

同日18時。要塞隊舎の食堂にて。ブルーマーメイドとホワイトドルフィンの両部隊は生活スペースを共通にしているため、食堂では男女の隊員たちが各々食事を摂っていた。

その中に、やたらと憔悴しているグループがいた。『ちちじま』メインクルーたちである。大量の始末書と決裁書類に追われ、残業確定な彼女たちには食事をリラックスして摂る余裕はなかった。むしろこの後待ち受ける残業に戦慄さえしていた。

「艦長、今度からあんな無茶するのやめません?」

「考えとくよ……」

力なく味噌汁を啜る青木。『ちちじま』組のやたら暗い雰囲気は他の隊員にも伝わっていた。

「向こうの奴ら、『ちちじま』組だろ。懲りないなぁ本当に」

「今度は本多さんの艦壊したらしい」

「え、『よるぎり』を?よく許してもらえたな」

「本多さん女には甘いからな」

嫌な会話だ。聞こえてないとでも思っているのか。規則正しく食事を口に運ぶ神余の耳にも、その会話は聞こえていた。ホワイトドルフィンとブルーマーメイドの確執以前に、生意気でよく事件を起こす『ちちじま』組は疎まれることが多く、あまりいい印象を抱かれていないのが事実だ。

「どしたの副長?」

「いや、何でもないよ」

聞こえていたのは自分だけらしい。モヤモヤした気分でご飯をかきこむ神余。すると今度は他の隊員たちのざわめきが聞こえてきた。今度は自分等に関することではないらしい。

「テレビの調子がおかしいぞ」

「チャンネル変えてみろ」

「電源入れ直したら?」

ざわつきは食堂に何個か置かれているテレビに関することだった。

突然砂嵐が起こり、ニュース番組が中断されたのだ。

すると次の瞬間、テレビにみすぼらしい格好の男性が映り込む。古い軍服に身を包み、赤いベレー帽を被っているその男に食堂は混乱の渦に巻き込まれる。

そして、その男をみた瞬間、青木の顔色が変わる。『ちちじま』クルーたちも見覚えのある男だった。

「!……彩……」

神余も顔が強ばる。いつも冷静沈着な青木の顔に冷や汗が伝う。

その男は、ゆっくりと口を開く。

「…………日本国民の諸君。私は、海賊『マンボウ旅団』大船長、大河原彦次郎である」

 

長い事件の幕開けは、唐突だった。




次回以降、もっとたくさんのキャラクターたちを登場させる予定です。

あんまり多くなったらキャラ紹介でも挟む予定です。
さしあたって、『ちちじま』メインクルーたちは早めに出してあげたいですね。
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