ハイスクール・フリート 海賊艦隊で大ピンチ!   作:みん提督

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3話です。
相変わらず、原作の雰囲気が無い話が続きますが、ご容赦を。
ちょっと長くなったので、本来の3話を2分割してお届けします。


第3話 大河原でピンチ!

フィリピン東方のとある無人島。そこにはかつて、島民500人が暮らす小さな村があり、漁業や観光業で生計を立てていた。しかし、50年ほど前に海賊が付近の海域を彷徨くようになると、漁の邪魔をされたり、治安の悪化で観光客が来なくなるなどして、村は徐々に廃れ、30年前にとうとう無人島となった。

それ以降、だれもこの島に寄り付かなくなったが、それを逆手に数年前からとある海賊たちがこの島を拠点としていた。

島は所々コンクリートで固められ、観測塔や見張り台、速射砲や港湾施設が整えられた小さな要塞のようになっていた。硫黄島などの本格的な要塞とは比べるべくも無いが、それでも、付近を航行する一般商船などからしてみれば、恐ろしく凶悪な施設であるのに変わりはなかった。

海賊たちは、島の地下に複雑な地下通路を建設し、兵舎や弾薬庫、地下牢、整備工場などの専用設備を多数設け、敵襲にも対応していたまさにアリの巣のような島となっていた。

 

その名もなき島は残虐非道な元艦隊傭兵(フリート・マーセナリー)大河原が率いる海賊『マンボウ旅団』のアジトとなっていた。

 

アジトの地中深くにある地下牢。そこには30人ほどの男たちが両手を縛られ拘束されている。程度の差はあれど、ほぼ全員が負傷しているようで、包帯を巻かれていたり、足にギブスがはめられている者までいる。

地下に無理やり作った空間であるため、天井からは染みでた海水が滴り、照明も弱々しく、薄暗い。さらに食事もまともに出されず、怪我の治療も必要最低限のもの。そんな最悪極まる環境ながら、数々の修羅場を乗り越えてきた屈強な男たち、もとい民間軍事会社(P M C)社員たちは根をあげることもなく、ただひたすらに救助を待っていた。

「船長、いつになったら助けが来るんすかね」

比較的怪我も少なく、憎まれ口を叩く余裕はある青年が、船長と呼ばれる髭面の男に話しかける。こちらは頬に大きな傷が出来ていたものの、ガーゼが貼られているだけで、傷から染みでた血がすでに赤黒く固まり、傷口と癒着してしまっている。見るからに痛そうだが、彼は気にする素振りも見せない。

「さぁな。そもそもどれくらい時間が経ってるのかもわからん。時計も、陽光もないんだからな」

船長は一通り部屋を見渡す。切れかかっている蛍光灯や、虫が這う湿った壁、海水が滴る天井、錆びてはいるが人の手では壊せそうもない鉄格子、そして、アサルトライフルを片手に目を光らせる赤いベレー帽を被った見張りの海賊が眼に映るだけだ。

「賑やかな部屋だ。選り取り見取りだぜ」

船長の軽口に社員たちは思わず吹き出す。こんな調子で、彼らは意外と気丈に振る舞っていた。見張りの海賊にはそれが目障りだったようだが。

「うるさいぞ、何度言ったらわかるんだ!」

銃床で鉄格子を叩いて黙らせようとするも、ヒスパニック系の愉快な社員たちには逆効果で、教師の言葉に逆張りする生徒のように、余計に盛り上がるだけだった。

とうとう堪忍袋の緒が切れたのか、アサルトライフルのセーフティを外し、射撃姿勢に入るが、直後に制止の声が聞こえ、動きが止まる。

「やめたまえ、彼らは大事な人質だ。殺したらその意味が無くなってしまう」

階段を降りる靴音は重い。軍用ブーツを履いているその男の顔に生気はなく、ボサボサの髪を赤いベレー帽の中に適当に収めるだけで、ファッションセンスのようなものは全く感じ取れない。

そんな男の言葉に、必要以上に畏まってみせる見張りの海賊。これだけみれば、かなり軍規の行き渡った精鋭軍人のようにもみえるほどだ。さっきまでの横暴な男は微塵も見えなくなっていた。

地下牢の前に立つと、生気のない顔とは思えない眼光で、船長らを睨み付ける。

「アンタはたしか……」

「大河原彦次郎だ。『マンボウ旅団』の大船長を務める者だ。同時に、お前たちの命を預かる者でもある」

思わず気圧される社員たち。どう考えても強い。が、どこか弱々しさを感じる。たしかに眼光は鋭く、冷たい眼には残虐非道な性格が滲み出ているが、体はそれに見合っていない。痩せこけた頬に、服の上からもわかる細い四肢、眼の下のひどいクマなど、まるで威厳のある人物には見えない。よくてヤク中だ。

「俺たちを閉じ込めて、一体どうするつもりだ?」

「まさか、風俗にでも売る気か?」

「野郎ばかりでつまらんじゃないか」

「いや、それが好きな多趣味な旦那もいるさ」

もっともな疑問からなぜか、わりと最低なジョークが飛び交い始め、地下牢に下卑た笑いが響く。

「これではどちらが海賊か、わかりませんな……」

大河原の横に控える副官がため息混じりに呟く。しかし、彼の言葉には耳を貸さず、大河原は続ける。

「お前たちの問いに答えてもいいが、そのためにはあることを徹底してもらおう」

「ほう、なにかな」

船長が代表して答える。

「二度とその下卑た笑い声を発するな。非常に腹立たしい。不愉快だ」

さっきまで愉快に笑っていた社員たちに緊張が走る。目の前の枯れ木のような男が、本当の悪人であるように見えたからだ。そのひどく無機質な声と、痩せこけた頬、それに見合わぬ眼光はアンバランスなようで、全てがマッチし、独特な違和感から来る不気味さが、その眼光の強さを助長していた。

数十年ぶりに死の恐怖を味わった船長は、冷や汗が伝うのがバレないよう、あえて気丈に振る舞う。

「いいだろう。ウチの社員はものわかりがいいんでね。この通りさ」

社員たちは各々頷く。たった1人の男にここまで怯えようとは、船長も含め考え付きもしなかった。

「静かになって何よりだ。ここは静かだから落ち着く」

大河原は誰にでもなく呟いた。独り言なのか。

「さて、まずはお前たちの問いに答えよう。何故お前たちを閉じ込めてるのかについてだが、端的に言えば人質だ」

「さっきも言ってたな」

船長の言葉に短くあぁ、とだけ答え、続ける。

「我々はブルーマーメイド、ひいては日本政府に恨みがある。元々私たちは傭兵だったのだが、政府は私たちを英雄ではなく、犯罪者として迎えたのだ」

副官や見張りのが苦い顔をする。どうやら彼らは大河原と長い付き合いのようだ。

「傭兵法の改正とかいう、ごもっともな理由を掲げ、必要以上の破壊活動を行った……として、我々を逮捕しようとしたのだ。当然、私たちは反論したが、聞き入れられるはずもなく、捕まってしまった。それからは3年獄中で無為な時間を過ごしたよ」

大河原は相変わらず無機質な声と、表情筋を無くしたような、顔面にへばりついた顔で話を続ける。

「そこから助けてくれたのは昔馴染みのマフィアだった。それから私は仲間たちと共に海賊に転職したわけさ。傭兵時代には雑誌の表紙を飾るほどの英雄だったのにな」

自虐気味に続けるが、話が見えない。かといって、話を遮ったらどうなるか、わからないわけではない。社員たちは困惑で顔を見合わせつつ、静かに話を聞く。

「それからは色々したさ。主に薬物の輸送や製造、殺人請負、兵器の調達……忙しい日々は傷心した我々を癒してくれた。だが、その先に待っていたのは地獄の日々だ」

一呼吸置き、今度は少し熱を帯びて続ける。彼の拳が震える。

「あの女が現れたんだ。無機質で冷酷、手段を選ばないずるい女だ。俺がやって来たことを、政府が法律を盾に禁止させていたことを、あいつは同じ政府の後ろ楯で平然とやってのけているのさ。不公平じゃないか?」

鉄格子に拳を打ち付ける。痩せ細った体躯からは想像つかないほどに強力な拳は地下牢を震わせ、アジト中に響くような轟音を立てる。

「しかも俺は2度、2度もあの女に負けたんだ。ずるい女だ。2度目は俺を罠にハメやがった。仲間を人質にとられ、俺1人逮捕されれば仲間は解放されると、取り引きを持ちかけられたんだ。だが、あいつは俺を騙した。仲間はすでに本国へ送還され、俺含めて全員を一網打尽にしようとしていたんだ。俺は逃げようとしたが、あいつは容赦しなかった。追撃でおれは右腕を失い、とうとう逮捕された。今ではこの通り、サイボーグだ」

右の袖をめくると、チューブ型の人工筋肉や、カーボンの外板がみえる義手が露になった。なるほど、あの体躯に見合わないパワーはこれが理由か。船長は1人納得し、彼の話を黙って聞く。

「あいつは俺から全部奪ったんだ。なのにあいつは、ブルーマーメイド希代の英雄とかいわれて、今でもチヤホヤされている。それが許せねぇんだよ」

最後はもはや叫びながら一息に呪詛をたっぷりと塗り込んだ言葉を吐き捨てる。

「なるほどな。俺も傭兵やってるし、気持ちはわからんでもないよ。だが、さっきの宣戦布告とやらとは内容がどうも違うようだな」

大河原の顔が歪む。

「なんだと?なぜお前が宣戦布告を聞いているんだ」

すると、見張りの海賊が申し訳なさそうに。

「す、すんません、大船長。大船長の晴れ姿を自慢してやろうと、コイツらにも見せたんです……」

驚いた顔の大河原だが、すぐに事情を察し、即座に彼を許した。見張りの海賊はさっきまでの高圧的な態度とは打って変わり、借りてきた猫のようにおとなしくなった。

「とりあえず、さっきの宣戦布告とやらでは、アンタは腐敗し、堕落した日本政府を矯正してやるとかなんとか言っていたが、本心はその女に復讐したいってことなんだろ。違うか?」

すでに彼らの前でその女への呪詛を吐き散らかした後では誤魔化しようもない。

「そうだとも。この宣戦布告も、あいつを誘き出すための作戦の一つさ。あいつは俺が動いたと知れば、必ず俺を止めようとするはずだからな」

「そうしてのこのこ出てきた所を殺そうってか?」

社員たちに動揺が走る。さっきの剣幕をみればわかるように、大河原は正気ではない。いつ暴走するともわからない火薬庫のような男をこれ以上刺激すれば、どうなるか。わからないわけではない。

「船長……その辺にした方がいいっすよ」

「黙ってろ坊主」

青年が止めようとするも船長に引く気はない。

「どうなんだ?大船長どの。図星か?」

 

 

一触即発の空気感の中、大河原は不気味な笑みをこぼすだけだった。

 




精神イッちゃった人が、まくし立てるように色々吐き出すシーンいいですよね。作者の得意分野なので、かなり筆が進みましたわ。

4話でようやく主人公陣営の皆さんが本格登場します。
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