ハイスクール・フリート 海賊艦隊で大ピンチ!   作:みん提督

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全然海戦始まんないじゃん。とか思っている方、本当にすみません……。
もうちょっとだけ、非戦闘シーン続きます。



第6話 不穏な影でピンチ!

ブルーマーメイド・ホワイトドルフィン連合艦隊第1部隊は、フィリピン東方の所定海域に到達していた。

二列縦陣を作りつつ、艦隊は主力第2部隊の到着を待つため、海域を遊弋していた。既に日が落ちはじめて来た海は、次第に青い姿を喪い、何もかも飲み込んで消し去りそうな黒い姿へ変わって行く。

夜の支配領域が広がっていくのと平行して、連合艦隊には焦りの表情が見え始めていた。

 

連合艦隊旗艦『ほたか』の飛行船格納庫内には、広域艦隊行動司令部が置かれ、10人の艦隊指揮スタッフが詰めていた。元々は飛行船の複数機同時運用を行うために建造された『くらま型飛行船母艦』の派生型の1つである『ほたか』の旧格納庫、もとい司令部では徐々に混乱が広がっていた。

「第2部隊と連絡が取れない?」

「はい。本来は1時間前にはランデブーし、艦隊再編を終えているはずだったんですが……」

作戦の要といえる主力艦隊、第2部隊が未だに到着していない。作戦遂行のために必要不可欠な要素の1つが丸々いないなど想定しきれない状況だ。司令部クルーも慌ただし動き始める。

「第2部隊に何かあったのだろうか」

「連絡艇は?」

「出そうにも何処にいるかすらわからない」

「通信装置の不具合では?」

「『なぎさぎり』、『たきゆき』、『あねじま』の3艦からも連絡を試みたんだが、全て応答なしだ」

「まさか、()られたか?」

「あっちは15隻の大艦隊だぞ? そうそう沈られるはずがない……」

「じゃ、なんでいないんだよ」

司令部に走る動揺に、流石の連合艦隊司令官豊島(とよしま)も焦りを隠せなくなっていた。しかし、司令官として部下に強気な態度を見せるのもまた、彼女の仕事だ。

「落ち着きな、アンタら。第2部隊がどうなったのかはまだわからんが、今は目の前の敵に集中するんだ。艦隊は予定通り、二列縦陣を組んで敵に備え、引き続き第2部隊を呼び出しておいとくれ。以上」

豊島の強気な態度に冷静さを取り戻したクルーたちは敬礼し、それぞれの持ち場に戻る。受話器をとって、艦隊に指示を出す者や、海図にコンパスを当てて、第2部隊の推定位置を算出しようとする者、艦橋に上がって現場指揮を執る者。それぞれが仕事に戻るのを見計らい、豊島は思案にふける。横にいる副官も、不安そうな表情で豊島を見つめる。

「大丈夫ですかね、司令」

豊島は苛立ったように返す。

「大丈夫な訳ないよ。ホワイトドルフィン主力の第2部隊の火力あっての作戦なんだからな。アタシらだけじゃ、敵の斥候抑えるので精一杯だよ」

「そうですよね……」

苦虫を噛み潰したような顔で、副官は答える。

だが、全く当てがないわけでもなかった。

「せめて、あの生意気ひよっ子(・・・・・・・)が時間を稼いでくれればね……」

艦隊に走る緊張感の原因は、第2部隊の遅れだけではなかった。

 

二列縦陣の右翼、機動力に劣るものの、安定した性能を持ち、改インディペンデンス級よりも防御力に勝るホワイトドルフィン外洋艦はつゆき型戦闘艦『たきゆき』の艦橋から、それは見えていた。

「レーダーにも映っています。確実に艦です。何なら目を凝らせば見えますよ」

すっかり日が落ち、あたり一面真っ暗闇に包まれた海上に、連合艦隊を監視するかのような位置に陣取る1隻の艦影が見えた。

「あれか」

赤と青の半々に塗り分けられた、艦長専用であることを表すストラップ付きの双眼鏡で、クルーの指差す方向を見る大柄な男、『たきゆき』の藤崎(ふじさき)艦長だ。

その横にいるのは、青一色のストラップ付き双眼鏡を覗く同艦の副長だ。

「はい。艦種は護衛艦、情報通りならキャノン級護衛艦に間違いありません」

灯火を落とし、艦隊前方を行く艦影は、3門の3インチ砲や533mm魚雷発射管を始め、20mm、40mmの各種機関砲、対潜迫撃砲などをハリネズミのように装備した旧式護衛艦で、とっくの昔に退役しているはずの艦だ。

「かつては黎明期ブルーマーメイドを支えた名艦も、中古市場に流れてからは悲惨だな」

藤崎の言葉に、副長が相槌を撃打つ。

「まったくです。今や裏組織御用達の水上艦ですからね」

艦隊前方で警戒を続けるキャノン級を眺めながら、2人は対策を練ろうとしていた。

「しかし、あの位置では我々を追跡するというよりも先導しているみたいですね」

「緊張をかけたいのか、それとも素人なのか……」

光を漏らさないように、照明を落とした艦橋で藤崎は副長らと協議を始める。対象は当然、件のキャノン級についてである。

「我が艦隊の位置は既にアジトに伝わっているでしょうし、いつ主力が現れてもおかしくないかと」

「沈めるか?」

「いや、作戦通りなら青木さんが交渉を続けているはず。もう少し待つのは……」

「しかし、このままでは先手をとられる危険性が……」

『たきゆき』艦橋では議論が続く。積極的な攻撃を提案する者もいるが、概ね静観する方向でまとまりつつあった。

「ところで、豊島司令はなんと?」

藤崎が副長に確認を入れようとする。

「先ほど積極論も併せて、打電しました。回答はまだ…………!?」

言葉を詰まらせたのは副長だけではなかった。艦長の藤崎ら、艦橋クルーは唖然として、後方から飛翔する物体に目を奪われる。

墳進魚雷だ。

「なんだ急に! 敵の攻撃か!?」

「敵にしては様子がおかしい」

「キャノン級の方へ飛んでったぞ!」

『たきゆき』の艦橋は一瞬にして混乱に包まれた。突然の事態に対処しきれなかったクルーの中で、唯一藤崎だけは状況を瞬時に理解した。後方に布陣する僚艦を睨み付けると、苦々しく呟く。

「『なぎさぎり』だ……あんの国分(バカ)、勝手に撃ちやがって……!」

墳進魚雷を撃ったのは、国分艦長率いるホワイトドルフィン艦『なぎさぎり』だった。艦首に装備された特徴的な箱形ランチャーからまだ発射煙が燻っているのを見るに、今まさに発射されたに違いなかった。

攻撃を想定していなかったであろうキャノン級は、なんとか対空攻撃を始めるも、時既に遅く、魚雷は着水していた。

その直後、逃げる暇もなかったキャノン級の横腹に大きな水柱が上がる。魚雷は小型とはいえ、旧式小型のキャノン級を戦闘不能にするには十分すぎる威力を持っていた。キャノン級の甲板が炎上し、大きく傾いて急速に沈没する様子がはっきりと確認できた。

あまりに突然のことに、艦隊は一時時が止まったかのようだった。

最初に動いたのは『ほたか』の豊島司令だった。

 

「何してんだいあのバカ助は! 今すぐ回線を繋ぎな!」

豊島の喝に、ようやく他の隊員たちは動き始める。すぐさま『なぎさぎり』と直接回線が繋がれた。

「国分艦長! 何勝手なマネをしてるんだい! 攻撃許可はまだ出してないよ!!」

開口一番、凄まじい剣幕で国分に怒りをぶつける豊島だが、受話器の向こうにいる彼はいたって冷静だった。

「許可を得ずに攻撃を開始したことに関しては陳謝いたします。しかし、既に敵は我々に宣戦布告し、戦闘行動をとっています。これを排除するのに何をためらう必要がありましょうか」

国分は静かな声で反論を綴る。確かに言わんとしていることはわかる。戦闘行為を始めるのが遅いか、早いか。それだけが問題となる現場だったのも事実だが、しかし。

「……『ヤマタノオロチ作戦』の基本策定案を無視してでもかい?」

この言葉に、国分は少し反応を見せる。彼にとっては許せない人物の1人が立ち上げたも同然の作戦であるから無理はない。

「無論、基本案は周知しております。しかし、それとこれとは話は別です。青木2等保安監督官が交渉を続けたとしても、開戦は免れません。ならば、先制攻撃を加えるのが海戦の定石です」

いちいちごもっともだ。そもそも国分は間違ったことは言っていない。基本に忠実で、かつ徹底的にこなしているだけだ。ようは敵艦を見逃す方向で纏まりつつあった雰囲気を壊し、最悪の場合、青木の決死の作戦を無下にするかもしれないという状況に、豊島らの怒りがある。つまり、国分は真面目すぎるが故に、空気が読めなかったといえる。もはやそんな軽い表現で終わらせられる事態ではないが。

「……ふん、起こしたことはもうしょうがないさね。ただし、これ以降にアタシの命令を無視した場合には更迭してやるから覚悟しておきな」

怒りを鎮めた豊島の言葉に、やはり無機質な声で国分が返答する。

「了解しました。肝に銘じておきます」

国分が受話器を置くと、不安げな顔で部下が尋ねる。

「いいんですか、艦長。司令かなり怒っておられましたが」

部下の言葉に返しながら、国分は艦長帽を被り直し、艦長席に着席する。

「いいさ。言わせておけばいい」

続けて、墳進魚雷の再装填を命じつつ、国分は言葉を続ける。

「"自由戦闘指令"も発令されているんだ。僕の判断は本部の見解を拝借するなら予防防衛。攻撃の可能性ありと見られた敵艦を排除したまで。むしろ部下に余計な叱責を浴びせたとして司令が処罰される可能性もある」

「さすがは艦長。機転を効かせた見事な判断です」

国分の言葉に完全肯定するのは彼だけではなかった。彼の部下はそのほとんどが彼の意志、あるいは戦い方に感銘を受けており、特に『なぎさぎり』の艦内は彼の支持者で占められていた。

公明正大、規律を重んじ、伝統を墨守する彼の精神に感銘を受ける士官は多いが、同時に上層部からは熱狂的な支持者による軍閥化を懸念されたり、格上や年長者であっても怖じけず物申す格好をよく思われなかったりと、上層部の間では扱いに困る腫れ物のような扱いだった。今作戦でも上記の性格から来る協調性の無さが不安視されていたが、それが早くも露呈することとなった。

 

「困りましたね、"ホワイトドルフィンの猟犬"とやらは……」

『ほたか』艦内では、副官が困り顔で豊島に愚痴をこぼしていた。当の豊島はといえば、もはや怒りを通り越してあきれた顔で作戦卓を睨み付けている。

「猟犬なんて頭の良い奴じゃないよ。その渾名を考えた奴には比喩表現力が足りないね」

そうして話す2人の元に、1人の部下が慌てて駆け寄ってきた。

「た、大変です! 司令!」

息を切らして通信室から走ってきたらしい彼女が豊島に1枚の暗号文を手渡す。

瞬時に解読し、内容を理解した豊島は唇を尖らす。

副官が尋ねるより先に、豊島は苦ったらしく呟く。

「先行していた『ながしお』と『まごじま』が敵主力を捉えた。もう動き出してるようだね」

暗号通信紙を握りつぶしながら、怒りに震える豊島。

副官含め、その場で聞いていた全員が、嫌な嫌な想像をしてしまっていた。

 

「間に合わなかったってのかい……青木…………」

 

太陽はすっかり水平線の向こうに隠れ、次第に黒さを増していく海上に、さらなる暗雲が立ち込めることなど知る由もない連合艦隊は、決戦へと近付きつつあった。

 




このままだと国分くんがド正論空気読めない堅物。みたいになっちゃいそうなので、そこそこかっこいい活躍シーン入れたいと思います。いつか、できれば(有言不実行)
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