嵐の滅竜魔導士   作:厄介な猫さん

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懲りずに浮気してますが、読んでいただければ幸いです。
てな訳でどうぞ。


《死神》は不運。《妖精》は幸運。

フィオーレ王国。

人口一千七百万人の永世中立国。

ここは魔法の世界。魔法は普通に売り買いされ、人々の生活に根付いている。

 

そしてその魔導を駆使して、生業としている者がいる。人々は彼らを“魔導士”と呼び、魔導士達はそれぞれのギルドに属して依頼に応じて仕事をする。

その多数ある魔導士ギルドの一つ、《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》にはこんな話がある。

彼処には炎の竜と嵐の()……二体の“ドラゴン”がいると。

 

 

――――――

 

 

オシバナ駅の中にある公衆トイレにて。

 

「オロロロロロロロロッ」

 

便座の前で、膝竹まであるグレーの上着の袖を腕捲りにして着ている銀髪の男性―――“テン・フリーダム”は顔を青くして口から虹色に光る何かを吐いていた。

 

「大丈夫かニャ?テン」

 

二本の鍔付きの鉄棒を背中に背負った、マスコットのような可愛い二足歩行のちっちゃい薄茶の虎猫―――テンの相棒である“フライ”が心配そうにしている。

 

「大……丈夫に、見え……るのか……?ウロロッ」

 

テンはフライにそう返すと、再び便座の前で吐く。

テンが便座の前で吐いている理由は至極単純。数分前まで乗っていた列車で酔ったからである。

もうお分かりだろうが、テンは典型的なまでに乗り物に弱い。それこそ途中で窓の外から吐瀉する程に。

 

「本当に駅のトイレまで吐かずに耐えたニャ。その分、ダメージが大きくニャったけど」

「吐けないって、本当にキツ……ヴエエエ……」

 

今まで我慢していた分を吐き出すように便座に吐いているテンは、今にも死にそうな表情だ。

 

「気合いと、根性でも……乗り物酔いは今回も、乗り越えられなかった……ガクッ」

 

吐き出し終えたテンはそう言って、便座に突っ伏すかのように気絶した。どれだけ乗り物に弱いんだとツッコミたくなる程だ。

 

「気絶してしまったニャ。依頼も終わってもう帰るだけニャから、別にいいんニャけど」

 

フライは如何にも慣れたといった感じで呟き、そのまま壁にもたれた。

 

 

――――――

 

 

「ここは……どこ?」

 

目が覚めた少年は辺りを見渡す。

青い海。白い砂浜。ここは海辺のようだ。

 

「なんで俺は、此処に……?」

 

少年は何故自分が此処にいるのかを思い出そうとして―――表情を青ざめさせた。

 

「え……?」

 

少年はどこか縋るように頭を抱え、身体を震わせていく。

 

「何も……思い出せない……!」

 

少年は何かを思い出そうと必死に頭を働かせるも、何一つ思い出せない。

故郷も、両親も、自分の名前さえも。

 

「あ……ぁああああああああああああああッ!!」

 

少年は否定の一心から悲鳴を上げる。その声に答える者はいなかった。

 

 

――――――

 

 

「うう……」

 

テンは夢見が悪いのか、呻き声を洩らして魘されている中、フライは魚が丸々一匹入っているパンをモグモグと食べていた。

相棒が魘されている中、更に用をたすトイレの中で平然と食べる辺り、フライは結構図太いかもしれない。

 

「このお魚パン、すんごい旨いニャ。お土産にたくさん買ったし、兄ちゃん達も喜ぶはずニャ」

 

このお魚パンは魚一匹をパン生地に包んで焼いた、際ものの部類に入る食べ物だ。そんな見た目にも関わらず、味は文字通り抜群なので名物として結構売れている。

そのお魚パン以外にも、グロックベアーの肉や上質な木炭、有名店のお菓子やビンテージもののワイン等、様々な物を土産として買ってきている。

それらの土産の殆どは、駅員に預かってもらって手元にはないが。

 

「ニャ……?」

 

そんな感じでのんびりしていると、フライの耳に騒音が聞こえてくる。

 

「急に騒がしくなったニャ。テンを急いで起こさニャいと」

 

フライはお魚パンを急いで食べ終えると、便座へと上ってテンの身体を揺すり始める。

 

「テン、急いで起きるニャ」

「うう……」

 

身体を揺すられたテンは、少し唸りながらも目を覚ます。

 

「ふ、フライか……もう列車の時間なのか……?」

「違うニャ。急に駅が騒がしくニャったから起こしたニャ」

 

どこか億劫そうなテンに、フライは頭を振りながら答える。

 

「そ、そうなのか……取り敢えず眠気覚ましに食っとくか」

 

テンはそう言って立ち上がると、個室トイレから出ていく。

そして手洗い場から水を出すと、その水をゴクゴクと()()始めた。

 

「あ~、生き返る~。風と水があれば、腹は膨れるからな~」

 

普通の人間なら水はともかく、風で腹が膨れることはない。だが、とある理由から普通ではないテンは、風と水を食べることで食い繋いでいた時期があった。

 

「おし!気力も体力、魔力もバッチリだ!これで面倒ごとになってもどうとでもなる!」

「面倒ごと前提で進めないでほしいニャ……」

 

口元を拭い、先程までの調子の悪さが嘘のように振る舞うテン。そんなテンにフライは呆れ気味にそう呟く。

テンとフライは一先ず、騒がしかった駅のホームへと足を運ぶと……

 

「は?」

「ニャ?」

 

大勢の人間がボロボロの姿で気絶していた。それも縛り上げられて。

床には折れた魔法剣があちこちに散乱しているので、気絶している彼等は魔導士なのだろう。

取り敢えず適当に一人叩き起こして問い質そうとした矢先、よく知る声が駅のホームに響いた。

 

「テン!?どうしてお前が此処にいるんだ!?」

「ん?」

「ニャ?」

 

如何にも強く厳しい人物であろうと予想できるその声に、テンとフライは揃って声がした方向へと顔を向ける。

そこにいたのは予想通り、緋色の髪の女性―――同じギルドの仲間である“エルザ・スカーレット”がいた。

 

「エルザ?俺はクエストの帰りだったんだが……それよりお前は何でここに?それとこの状況は何なんだ?」

 

テンはエルザの質問に答えつつ質問を飛ばす。

だが、エルザはテンの質問に答えずにツカツカと歩み寄っていく。

 

「お前がいるなら好都合だ!今すぐ外の【魔風壁】を消し去ってくれ!」

 

エルザはそう言うや否やテンの襟首を掴むと、引き摺るように駅の外へと走り始めた。

 

「ちょっ!?頼むから状況を説明してくれ!全然分からないんだが!?」

「事態は一刻を争っている!説明している暇はない!」

 

この状況にエルザが関わっている事しか察することができないテンは詳細を求めるも、エルザは緊急事態だと一蹴して碌に説明しようとしない。

 

「これじゃヤバイことしか分からないニャ……」

 

そんな二人に、背中から生やした白い翼で飛んで追いかけるフライは嘆息するしかない。

こうなったエルザは我が道突き進むという言葉が似合う状態なので、落ち着くまで静観するしかないのだ。フライは断じて、飛び火を恐れたわけではない。

そんな感じで半ば強引に連れて行かれたテンは、向こう側が見えない程に吹き荒れている強風の壁―――【魔風壁】と対面した。

 

「おー、ビュービュー吹き荒れてるな」

「この風は中から出られないようになっているんだ。加えて強引に突破しようとしても弾き飛ばされる」

 

エルザはそう言って、傷付いた自身の右腕に手を当てる。一度突破を試みた結果、失敗したのだとテンとフライは察した。

 

「そういう事なら了解だ。これの後でちゃんと説明してくれよ」

 

テンはそう言うと、口を大きく開ける。すると、駅を覆い尽くすように展開されていた【魔風壁】の風がテンの口へと吸い込まれ始めた。

 

「この風、結構魔力が込められてるな。味は苦味が凄くて最悪だが」

 

テンは味の酷さに顰めっ面になりながらも【魔風壁】の風を物凄い勢いで食べていく。

 

具体的(ぐニャいてき)には?」

「以前土産に買った燻製の十倍くらい」

「ああ、あれか。酒のツマミに合うとマスターには好評だったな」

 

そんな呑気な会話をしつつも、飛び込めばバラバラになるであろう威力のある風の壁をテンはモグモグと食べていく。

そして、一分にも満たない時間でテンは【魔風壁】を綺麗さっぱり食べ尽くした。

 

「ゲプッ……取り敢えず、ごちそうさん」

 

【魔風壁】を食べるという、常識はずれな行動で障害を消し去ったテンは口の中の砂利を吐き出し、口を拭う。

 

「で、これは一体どういう状況なんだ?」

 

テンはそう問い質すと、エルザは余裕が出来たのか現在の状況を説明していく。

エルザの話を要約すると、ギルド《鉄の森(アイゼンヴァルト)》が“ギルド連盟”から追い出された恨みから【呪歌(ララバイ)】という音色を聴いただけで死に追いやる魔笛を使って何かを企んでいるとのこと。

 

ちなみに“闇ギルド”というのは、暗殺や誘拐……所謂非合法な依頼やギルド連盟が定めた規則(ルール)を大きく逸脱したギルドのことを差す。つまり、逆恨みからの凶行である。

閑話休題。

 

その闇ギルドの企みを阻止する為に、エルザは“ナツ”と“グレイ”、“ハッピー”と最近新しく入った新人の“ルーシィ”と共に彼らの本拠地に乗り込もうとし、その途中で遭遇して今に至るとのこと。

 

「奴……《死神》の“エリゴール”はこの駅で【呪歌(ララバイ)】を吹くと宣言していたが、実際は私達を閉じ込めただけだった。奴の行き先は一体……」

「エルザ!此処にいたのか!」

 

エリゴールの狙いが見えずにエルザが思案したタイミングで、駅から黒髪の少年―――“グレイ・フルバスター”がどこか慌てた様子で駆け寄って来る。

 

「まずいぞエルザ!奴らの狙いは―――」

 

グレイはそう言いかけるも、外の景色が普通に見えていることに目を白黒させた。

 

「……あ?何で【魔風壁】がないんだ?奴の話じゃ……」

 

グレイはそこまで呟くと、エルザのすぐ近くにいたテンに気付いて目を見開く。

 

「テン!?何でお前が此処にいるんだよ!?」

「クエストの帰り。駅を覆っていた【魔風壁】の風も俺が食った」

 

要点だけ抑えてテンはそう言うと、グレイは納得がいったような表情となる。

しかし、すぐに表情を険しくさせた。

 

「なら急いでエリゴールの野郎を追うぞ!奴らの狙いはじーさん達だ!」

「何だと!?」

「ニャッバァーーッ!?」

 

グレイが告げた事実に、エルザとフライは驚愕の声を上げ、テンは目を大きく見開く。

グレイはギルドの長―――《マスター》のことを“じーさん”と呼んでいる。つまり……

 

「まさかそいつは、俺達のギルドに向かってるのか!?」

「違う!じーさんは今、ギルドの定例会でクローバーの街にいる!奴はその定例会場で【呪歌(ララバイ)】を吹いてじーさんを含めたギルドマスター達を殺すつもりだ!」

 

テンの焦った言葉をグレイは連中の目的と共に否定する。

鉄の森(アイゼンヴァルト)》の真の目的は、自分達のギルドをギルド連盟から追い出した正規ギルドのマスター達を始末することだったのだ。

それを聞いたテンは、素早くどうすべきかを決める。

 

「なら俺とフライがそのエリゴールを急いで追いかける!そいつの特徴は!?」

「鎌を背負った半裸の男だ!私達もナツ達と合流次第、急いで追いかける!」

「今はそれが最善か……()()という意味でもな」

 

エルザとグレイが了承してすぐ、フライはテンを抱えて空を飛んでマスター達がいるクローバーの街へと向かっていく。

 

「俺達は、風になる!」

「ニャーとテンが力を合わせれば、兄ちゃんとナツのMAXスピードにも負けないニャ!!」

 

本当に風になったかの如く、猛烈な速度で真っ直ぐにクローバーの街へと向かうテンとフライ。

エリゴールは風の魔法の使い手で空を飛べる。なら、余計な回り道をせずに真っ直ぐにクローバーの街へと向かっている筈だ。

その考えの下で最大加速で線路に沿う形で追いかけていると、線路の上で一時休憩している鎌を肩に担いだ半裸の男―――エリゴールの姿を捉えた。

 

「見つけたぞ、逆恨み野郎!」

「あ?―――グホァッ!?」

 

見つけて早々、不意討ちに近い飛び蹴りをエリゴールの顔面に叩きつけると、振り返ろうとしていたエリゴールはモロにその足蹴を喰らい、線路の上をバウンドしていく。

 

「倒したニャ?」

「いや。このくらいじゃ倒れないだろ」

 

線路が敷かれた鉄橋に着地したテンがフライにそう返していると、バウンドしてうつ伏せに倒れていたエリゴールはすぐにムクリ、と起き上がった。

 

「テメェ……一体何者だ?」

「ギルドの魔導士だ」

 

エリゴールの憎々しげな言葉に、テンは右腕にある《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》のギルドマークを見せつけながらそう返す。

 

「その紋章……妖精(ハエ)のやつか。さっきの妖精(ハエ)共といい、悉く俺の邪魔をしやがって……」

 

エリゴールは苛立ちを隠さずにそう呟くと、印を素早く結んでいく。

 

「吹き飛べ!【暴風波(ストームブリンガー)】ァ!!」

 

エリゴールはそう叫ぶと、手から竜巻を放つ。

それに対しテンは―――その竜巻を真正面から受け止めて、食った。

 

「……は?」

 

てっきり避けるか防ぐかして対処するのだと予想していた為、テンの食べるという行動にエリゴールは目が点となって動きを止めてしまう。

 

「テンに風の攻撃は効かないニャ」

 

背中で我が物顔でフライがドヤッていると、テンはエリゴールが放った竜巻を食べ切る。

 

「お、俺の風を食っただと!?」

「プッ……相変わらず苦味が凄いな。根性なしで性根が腐っているのが原因か?」

 

我に返って愕然とするエリゴールに対し、砂利を吐くテンはそう言葉を返す。

エリゴールが放った【暴風波(ストームブリンガー)】が【魔風壁】と全く同じ味だったので、目の前の男がエリゴールだと確信できたのは良かったと内心で思いながら。

 

「ふざけるのもいい加減にしろ!―――【暴風衣(ストームメイル)】!」

 

エリゴールは怒り心頭といった感じで叫ぶと、今度は自身の身体を唸りを伴う強い風で覆っていく。

 

「お前の魔法がなんだろうと、この【暴風衣(ストームメイル)】は物理攻撃の威力さえも殺す!例えお前が風を食おうと、その隙に鎌で斬り飛ばしてくれる!」

 

エリゴールはそのまま、【魔風壁】を人間サイズに落とし込んだ風の勢いを強めていく。それは第三者が見れば嵐のような風だ。

だが―――

 

「そんな()()()で威張るな、根性なし」

 

テンにとってそれはそよ風程度でしかない。

 

「見せてやるよ。俺の風……“嵐”をな」

 

テンはそう告げると、仰け反りながら息を大きく吸い込む。そして―――

 

「―――【嵐龍の、咆哮】ッ!」

 

口から轟音を響かせる突風と弾丸のような無数の水飛沫が混ざりあったブレスを、エリゴールに向けて解き放った。

放たれた風と水のブレスはエリゴールを呑み込み、並大抵の攻撃を防いでしまう守りの風である【暴風衣(ストームメイル)】をいとも簡単に吹き飛ばしてしまう。

 

「な……にぃッ!?」

 

暴風衣(ストームメイル)】をあっさりと破られ、少なくないダメージを受けたエリゴールは驚愕の声を洩らす。

そこでエリゴールは思い出した。思い出してしまった。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)》には《火竜(サラマンダー)》と呼ばれる魔導士だけでなく、嵐を具現化したかのような竜―――東洋の“龍”の姿を思い浮かばせる魔導士もいると。

その者の異名は―――

 

「《嵐龍(ハリケーン)》……!」

 

火竜(サラマンダー)》―――滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)のナツが炎を食べるように、ナツとは違った形だが滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であるテンは風と水を食う。

つまり、風属性の魔法の使い手であるエリゴールにとっては相性がこの上なく最悪の相手である。

 

「くそがぁ!風翔魔法【翠緑迅(エメラ・バラム)】!!」

 

テンが古代の魔法である滅竜魔法の使い手だと気付いたエリゴールは、強力な風の刃―――【翠緑迅(エメラ・バラム)】を放つ。

当然、この風の刃もテンには通用しない。テンは受け止めてすぐに風の刃を吸い込むように食べていく。

 

その間に、エリゴールは全力でこの場を離脱しようとする。

何せ自身の魔法がまったく通用しないのだ。ここで戦っても魔力をイタズラに消耗するだけ。なら、動きを止めている内に逃亡を図るのは至極当然の考えだった。

 

「貴様はクソじじい共を殺した後で殺ってやる!この【呪歌(ララバイ)】で……!?」

 

エリゴールはそう告げながら後ろを見て―――驚愕したように目を見開く。

何故なら、既に風の刃を食べ終えたテンが猛烈な勢いで、風を纏させた脚で空を飛んで向かって来ていたのだから。

 

「お前が逆恨みすんのは勝手だが、そんな気合いも根性もない手段で勝てやしねぇよ」

 

テンは拳を握り締めながらそう告げると、そのままエリゴールへと肉薄していく。

エリゴールはここで自身の失態に気付く。【魔風壁】に【暴風波(ストームブリンガー)】、【暴風衣(ストームメイル)】に【翠緑迅(エメラ・バラム)】と相応の魔力を使う魔法を連発していた。

 

対してテンは【嵐龍の咆哮】を使ったが、【暴風波(ストームブリンガー)】と【翠緑迅(エメラ・バラム)】を食べて魔力を回復している。おそらく【魔風壁】の風も。

つまり、魔力を消耗した自身(エリゴール)では、どう転んでも魔力が有り余っているテンからは逃げられないのである。

 

「このハエがぁああああああああああッ!!」

 

もはや追い付かれると悟ったエリゴールは、鎌を大振りに構えて迎撃体勢に入る。

エリゴールはそのまま鎌を振り下ろし……迫り来るテンの後ろに羽衣のような白い皮膜を靡かせた龍の姿を幻視した。

 

「【嵐龍の空拳】!」

 

テンは風と水を纏った拳を、振り下ろされた鎌を粉砕しながらエリゴールの顔面へと叩き込む。

まるで風と水を叩きつけられたかのような衝撃を顔面に受けたエリゴールは、そのまま縦回転しながら吹き飛ばされて近くの岩場へと陥没する勢いで叩き付けられる。

岩場にめり込む形となったエリゴールは白眼を向き、ピクリとも動かなくなった。

 

「本当に気合いと根性が足りないな。ナツなら耐えられるってのに」

「ナツは負けず嫌いニャから当然ニャ」

 

存外にナツ以下だと気絶したエリゴールに告げ、テンは鉄橋の上へと降り立つ。

《死神》エリゴールとの戦いは、テンの圧勝で終わったのだった。

 

 

 




“龍”は誤字ではないのであしからず。
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