嵐の滅竜魔導士   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


厄災の悪魔

テンとエルザは捕まえた二名に一通りの案内をさせた後、臨時の集落にいた。

 

「一体ナツは何処に行ったのだ……」

 

縛り上げたルーシィとハッピーをフライに見張らせて天幕の中で大人しくさせている中、エルザが疲れたように言葉を零す。

捕らえたルーシィ達に吹き飛ばされた集落へと案内させ、テンとエルザはナツを回収しようとしたが当の本人は既にいなかった。敵の姿もなかったので追いかけていった可能性が高い。

 

「幸いナツの臭いは残っていたから、追う事自体は問題ないが……」

 

テンはそこで言葉を濁す。そこで言葉を濁したのは、この島の現状からである。

ガルナ島の住民は【月の雫(ムーンドリップ)】という、《ゼレフ書の悪魔》の一体である“《災厄の悪魔》デリオラ”を凍らせている氷を溶かす解除魔法の副作用で“悪魔の姿になっている”とのこと。

 

例のS級クエストはその“悪魔になる呪い”を解くことだが、その【月の雫(ムーンドリップ)】を行使している《零帝》一派を止めなければならない。

それだけでなく、ボロボロとなって眠っているグレイと《零帝》―――“リオン”はどうやら知り合いらしく、何かしらの因縁があるそうだ。

 

そのリオンの目的は、グレイの魔法の師である“ウル”が命を懸けて氷漬けにして封じたデリオラの復活だそうだ。その理由までは不明だが。

 

「ルーシィの話を聞く限り、デリオラの復活は今日の夜……相当逼迫した状況になっているのが痛いところだな」

 

エルザは悩ましげといった感じで溜め息を吐く。

本来であればナツを捕まえ次第、依頼主に謝罪してからギルドへと連れて帰るのだが、この状況で問題を放置して帰るのは得策どころか悪手でしかないからだ。

 

ナツ達は正式に受けたのではなく、手続きもせずに勝手にこのガルナ島に来た。正式に受けずに依頼をこなすのは、魔導士ギルドの存在意義を壊しかねない。

しかし、ナツ達の介入によって島の状況は予断を許さないものへと移行してしまった。デリオラが復活すれば、その被害はそのまま島の人達へと向かってしまう。

 

「どっちにしろ、ナツは見つけないといけないからな。俺が先に探しに行くが……タダ働きとなっても構わないよな?」

「それが最善だとお前が判断したのなら、文句は言わないさ」

 

暗にこの仕事を無償で解決すると告げたテンに、エルザは困ったような、それでいて優しげな笑みを浮かべて返す。

エルザは確かに規律に厳しいが、人心もしっかり持っている。加えて此処にはテンも……自分と同じS級魔導士がいるのだ。

 

それにエルザはルーシィ達の最低限の心構えを見定めるつもりでもある。単に名誉と報酬だけなら問答無用で連れ帰るが、そうでないなら共に解決に動くだろう。

 

当然、ルールを破った罰はしっかりと受けてもらうが。

そうしてエルザはルーシィ達がいる天幕に、テンはナツを探す為に臨時の集落の外へと向かうのだった。

ちなみに―――

 

「フライ。オイラ達の縄を解いてくれないかな?」

「ダメニャ。それをやったニャ、恐い顔したエルザに制裁されるニャ」

「そんな事言わないでよ~。後でお魚あげるからさ~」

「ほお?フライを買収しようとは……お前達は反省していないようだな?」

「「ヒィイイッ!?」」

 

フライを買収しようとしたアホ二名は、エルザから拳骨をもらう羽目となった。

 

 

――――――

 

 

「ナツの臭いは……あの建物からか」

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)特有とも言える鼻の良さで、ナツの臭いを追っていたテンは三日月のマークが入口に刻まれた、四角錐のような形状に造られている遺跡と呼べる建物へと辿り着いていた。

 

「ナツの臭いだけじゃなく、他の奴の臭いもするな。拠点も兼ね―――!?」

 

テンが鼻をクンクンさせながらそう呟いていると、地響きのような音と共に遺跡が左に傾いた。

自然に発生したものではない。明らかに人為的なもの。それを実行する相手など一人しかいない。

 

「ナツのやつ、考えたな」

 

遺跡の傾きがナツの仕業と察したテンはその狙いにも気付く。

ガルナ島を荒らしている彼らの目的は【月の雫(ムーンドリップ)】でデリオラの氷の封印を解くこと。その【月の雫(ムーンドリップ)】も魔法陣を介して対象へと照射しなければ、地下にいるデリオラには届かない。

 

つまり、遺跡そのものを傾けることで照射を防いだというわけである。

ナツは暴れたら何かしら壊していることが多いが、あれは明らかに意図しての行為だ。偶然であれば、遺跡は穴だらけとなっているだろうから。

テンはそのまま跳躍して遺跡に近づくと、鉤手に構えた右手を遺跡の壁へと当てる。

 

「【嵐龍の波掌(はしょう)】!!」

 

テンは零距離で叩くように右手から風と水を放つと、轟音と共に遺跡の壁に大きな穴を空ける。

遺跡の入口からではなく壁に穴を空けて近道しようとする辺り、テンもある意味ナツと同類である。

そんな力任せの手段で近道をするテンは、戦闘の音を頼りに同様の方法で壁に穴を空けて進んで行く。

そうして進んでいくと、部屋一面が氷漬けとなった場所でナツが白い髪の男―――リオンと戦っている場面へと辿り着いた。

 

「!?」

「何だ!?」

 

戦いの最中で突如壁が吹き飛んだことにリオンが警戒するのに対し、ナツはどこか引き攣ったような表情となる。

何故なら、ナツがよく知る臭いが、その壁に空いた穴の向こう側から感じられたのだから。

 

「よお、ナツ。本当に勝手な事を仕出かしたなぁ……!?」

 

同じくナツの存在を臭いで気付いたテンの底冷えするような声に、ナツの表情が益々引き攣る。

しかし、ナツは両手を振って慌てたように弁明を始めていく。

 

「テ、テン!これには深い事情が!」

「取り敢えず説教は後回しだ。今はこっちの方が重要だしな」

 

テンはそう言って、両手に風と水を纏わせながらリオンに鋭い視線を向ける。ナツは安心したような表情となるが、予想を越える地獄が待ち構えていることを知るよしもない。

 

「ほお……風と水、二つの属性の魔法を同時に操るのか。だが!」

 

リオンは右腕を頭上に掲げると、そのまま冷気を放っていく。

 

「その二つは俺の氷と相性が良くない!つまり、お前は俺には絶対に勝てはしない!【アイスメイク・《白竜(スノードラゴン)》】!!」

 

自身の氷に絶対の自信を持つリオンは、胴体の長い氷の竜を作り出すと、そのままテンへと向かわせる。

大口を開けて迫ってくる氷の竜に対し、テンは―――

 

「【嵐龍の(あぎと)】!!」

 

風と水を纏った両手で握りしめた拳をその氷の竜の頭部へと振り下ろし、叩き落として粉々に粉砕した。

確かに氷結させると水は氷となり、風もその氷が壁となって威力が落ちるだろう。だが、その程度で手も足も出なくなるのなら、テンはS級になれていない。

 

「な……」

「随分と脆い氷だな。グレイの氷の方がずっと堅いぞ」

「俺の氷がグレイ以下だと……?」

 

氷の竜を粉砕したテンの評価に、絶句していたリオンは顔を歪める。心無しか、身体も震えている。

 

「おいテン!俺の相手を横取りすんな!」

「そんな事言ってる場合か」

 

ナツの文句をテンは横へと流しながら、リオンの目的を探る為に問い掛ける。

 

「で、お前は地下で氷漬けになっている悪魔を復活させてどうするつもりなんだ?その力を手中に収めようとしてんのか?」

「そんな下らない事が目的ではない!俺の目的はデリオラを倒すこと―――ウルを越えることだ!!」

 

リオンのその返答にテンは事実なのかという意味の視線をナツに向ける。それに対してナツは無言で頷いて肯定する。

そんなテンとナツに構わず、リオンは言葉を続けていく。

 

「その炎の魔導士にも言ったが、俺はウルを越える為に弟子入りした!だが、グレイが……馬鹿な弟弟子がデリオラに挑んだせいで、俺の夢は潰えてしまったのだ!」

 

リオンのその言葉でテンは、グレイとリオンとの関係を何となく察した。

 

「だから俺はデリオラを復活させ、奴をこの手で倒す!それだけが、夢の続きを見られる唯一の方法だ!その邪魔をさせはせん!!」

 

リオンはそう叫ぶと両手を広げる。

 

「【アイスメイク・《大鷲(イーグル)》】!!」

 

リオンが腕を振り下ろすと、氷で造られた何体もの鷲がテンとナツに向かって飛んでいく。しかし、テンとナツは向かって来る氷の鷲達をかわしていく。

 

「本当にそんな方法で越えられんのかよ?」

「仮にそいつを倒せたとして、その師匠に対して胸を張れるのか?」

 

ナツとテンのその疑問に、リオンは一瞬だけ顔を顰める。しかし、すぐに怒りの表情で告げる。

 

「お前達に何が分かる!?ずっと目指していた目標を奪われたのだ!グレイがデリオラに挑まなければ、ウルが【絶対氷結(アイスドシェル)】を使って死ぬこともなかった!!」

「―――ああ、その通りだ」

 

リオンの叫びを肯定する、テンとナツがよく知る第三者の声。その場にいた全員が声をした方に顔を向けると、包帯を身体に巻いたグレイがそこに立っていた。

 

「ナツ、テン……こいつとのケジメは俺につけさせてくれ」

「あ!?オメェ、コイツに一回負けてんだろうが!」

 

グレイの交代の要望にナツは反発するも、グレイは構わずにリオンと対峙する。そんなグレイを、テンは無言で見守っている。

 

「十年前、確かにウルは俺のせいで死んだ。だが、仲間と村を傷つけ、あの氷を溶かそうとしているお前を許すわけにはいかない」

「許さないだと?俺は別に許しなど求めていない」

 

リオンの冷たい返しにグレイは何も答えず、両腕を交差させるように突き出した構えを取る。

 

「その構えは……【絶対氷結(アイスドシェル)】!?」

「そうだ。氷漬けになりたくなかったら、降服しろ。それが俺が与える最後のチャンスだ」

 

ウルが命を落とす原因となった魔法の構えを取ったグレイは、リオンに最後通告とばかりに投降を促す。

 

「ふん……結局ただの脅しか。くだ―――」

 

リオンはそれがハッタリだと判断しかけるも、グレイから放出され始めた冷気を見て顔を強張らせる。

 

「貴様、まさか本気で!?」

「ああ、本気だ。俺が原因でウルが死んだ事実はずっと変わらない。その責任を゛っ!?」

 

そんなグレイに、テンは脳天に踵落としを叩き込んで魔法の発動を強制終了させた。

 

「テン!いきなり何しやがんだ!?」

「それはこっちのセリフだ。あっさり命を捨てようとしてんじゃねぇよ」

 

頭を押さえたグレイの文句に、言葉の節々に怒りを滲ませながらテンは睨み返す。

 

「死ぬことで責任を取る?少なくとも(ちげ)ぇだろ。こんな馬鹿な真似をさせる為に、そのウルって師匠はお前らを助けたんじゃないだろ。第一、そんな事して《妖精の尻尾(オレたち)》が止めに入らないとでも思っているのか?」

「……それでも、これは俺の問題だ。お前らに横から言われる筋合いはねぇ」

 

テンのその指摘に、グレイは顔を逸らしながらもそう返す。

グレイ自身も分かっている。こんな真似をして止めようとしない人物は、《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》には一人もいないことを。

当然、ナツもそんなグレイの行動に意義を唱える。

 

「そうだぞ。第一、アイツは俺が倒すんだ。相討ちでしか勝てないお前と違ってな」

 

………盛大な煽り文句で。

その煽り文句を受けたグレイはイラッと来たのか、こめかみに青筋を浮かべてナツを睨み付ける。

 

「あ?誰が相討ちでしか勝てないって?テメェこそ溶かせていねぇだろうが」

「こんな脆弱な氷、俺が本気を出せばすぐに溶けるってぇの。半裸野郎」

「こんな力の籠ってねぇ氷に苦戦してる時点で説得力ねぇぞ。焚き火野郎」

 

互いに零距離で睨んで罵倒し合う二人。何時もの二人である。

その罵倒にテンは肩を竦め、蚊帳の外となったリオンはこめかみをひくつかせていると……地響きが起きた。

 

「な、何だぁ!?」

「こいつは……」

「傾きが直ってきているだと……!?」

 

地響きと共に傾いていた床が元通りとなっていく事にテン達は驚きを露にする。

テン達が驚いている間に、ナツが傾けた遺跡は元通りになってしまった。

 

「何で元通りになるんだよ!?」

 

壊すのに一苦労したナツが床や壁を八つ当たりするように叩く中、ナマハゲのような仮面を被った小柄な男がその場に現れる。

 

「ほっほっほ。リオン様、遺跡は元に戻しましたぞ」

「よくやった、ザルティ」

 

仮面の男―――“ザルティ”の報告にリオンはつれない態度で誉める。

 

「オメェがやったのか!?」

「いかにも」

「余計な事してんじゃねぇぞ!!」

 

ナツは怒りを露にザルティに殴りかかるが、ザルティは跳躍して避けるとそのまま通路の奥へと消えていく。

 

「逃げんなコロヤロー!!」

 

そんなザルティを、ナツは追いかけていった。

部屋に残ったのがテンとグレイ、リオンの三人となった中、テンが口を開く。

 

「……グレイ。コイツとの決着はちゃんと着けろ。そして、絶対に死ぬなよ」

「テン?急に何を―――」

 

グレイが意味が分からずに問い質すが、テンは構わずにしゃがむと床に手を当てる。

 

「【嵐龍の波掌】!!」

 

テンは【嵐龍の波掌】で床に穴を開けると、そのまま下へと降りて行ってしまう。

 

「お前、まさかまた遺跡を傾け―――」

 

グレイの驚きの言葉を後にしつつ、テンは遺跡を再び傾かせる為に破壊行動を行うのだった。

 

 

――――――

 

 

「待ちやがれー!!」

「ほっほっ、ほ……?」

 

ナツとザルティの追いかけっこが続く中、どこからか破壊する音が聞こえてくる。それと同時に遺跡が再び揺れ始める。

 

「おやおや……どこかの誰かがまた性懲りもなく、遺跡を壊し始めましたか」

 

状況的に、グレイかテンのどちらかが行っていると察したザルティは呆れたように溜め息を吐く。

いや、グレイとリオンの因縁を考えれば、遺跡の破壊を行っているのはテンであろうと当たりをつける。

 

「いくら壊そうと、この魔法の前には……!?」

 

ザルティはそう言って、遺跡の傾きを直した魔法を発動させるが、そこから感じた違和感に言葉を詰まらせる。

そして、信じられない事に気付く。

 

「バカな!?私の【時のアーク】が作用しない……いや、効きが悪くなっている!?」

 

ザルティが使う魔法【時のアーク】―――無機物の時間を自由に操れる《失われた魔法(ロストマジック)》の効果が思うように発揮していないのだ。

一体どのような方法で【時のアーク】を妨害しているのかは分からない。だが、このままでは遺跡が再び傾けられ、【月の雫(ムーンドリップ)】の照射が失敗に終わってしまう。

 

(このままではマズイ……!集中すれば戻せないことはないけど、この男に追いかけられながらだと、それもできない。こうなったら―――)

 

ザルティは()()()()()の為、()()()()()に支障が出ない範囲で動く事を決め、デリオラが眠っている地下空間へと向かう。

そして、二人はデリオラが眠っている地下空間で対峙した。

 

「もう逃げるのは終わりかよ?」

「ほっほっほ、私も悠長に出来ない事情が出来ましてね」

 

ナツの臨戦状況からの質問に、ザルティはふざけた感じで返す。

上から響く音は断続的に響いており、再び遺跡が傾くのも時間の問題だろう。

 

「どうした?遺跡を元に戻さなくていいのか?」

「そうしても良いのですが……貴方達が鬱陶しいのでね」

 

内心を悟らせない為に敢えて煽るように言葉を返すザルティ。そんなザルティにナツは何故か食い付かずに質問をぶつける。

 

「そうかよ……ところで、お前の目的はなんだ?」

「目的ですか?デリオラの復活ですよ」

「そうじゃねぇよ。その悪魔を復活させてどうすんのか聞いてるんだよ」

「さあ、どうでしょう?私は最近仲間になったもので」

 

ザルティは惚けたように返す。そんなザルティにナツは核心を突く言葉を放つ。

 

「他の奴がどうとかじゃねぇ。()()()()の目的を聞いてるんだよ」

「……ほっほっほ。なかなかに鋭いですな。ですが―――」

 

ザルティはそう告げると、凍ったデリオラの頭上が土崩れと共に大きな穴が空き、空にある紫色の月が射し込んだ。

 

「なあっ!?」

 

まさかの事態にナツは驚きの声を上げる。そんなナツに、【時のアーク】で天井に大穴を空けたザルティは口元に嫌らしい笑みを浮かべて告げる。

 

「こうして直接繋げてしまえば、遺跡の傾きなど関係ないでしょう?そして―――」

 

さらにそのタイミングで、【月の雫(ムーンドリップ)】の光がデリオラに降り注ぐ。

 

「彼らのデリオラへの憎悪は本物ですからね。絶好の機会であれば、何としても氷を溶かそうと動きます。一人では効果は弱いですが、既に月の光の量は十分に集まってます。加えて、直接光に晒されているから―――」

 

ザルティのその言葉を肯定するかのように氷はみるみる内に溶け始め、デリオラの顔が氷の中から出始めていく。

 

「やべぇ!?氷が溶け始めた!!」

「その溶ける速度も想定より早くなる。今から術者を叩いても間に合いませんぞ」

 

ザルティはこの時点で勝利を確信した。

だが、それは予想外の形で裏切られることになる。

 

「【嵐龍の空拳】!!」

 

ザルティが【時のアーク】で開けた大穴からテンが飛び降りて来て、氷から出ていたデリオラの頭に拳を叩き込んだのだ。

ちなみにテンが此処にいたのはたまたまで、復活するなら氷が溶けきる前に倒すしかないと判断したからである。

 

「ほっほっほ、デリオラがその程度で……!?」

 

ザルティはその行為を嘲笑ったが、叩かれた頭を中心にデリオラに白い亀裂が入っていき―――氷もろとも粉々に砕け散った。

 

「馬鹿な!?あのデリオラが拳一つで―――!?」

 

あのデリオラが一撃で粉々になった事実にザルティが狼狽える中、拳に炎を宿したナツが目と鼻の距離でザルティの前に躍り出る。

 

「散々迷惑をかけたんだ。覚悟は出来ているんだろ?」

「待っ―――」

 

ザルティの静止の言葉を遮るように、ナツは見事な【火竜の鉄拳】のアッパーを決め、ザルティをその大穴から外へと殴り飛ばし、空の彼方へと消し去った。

 

「よっしゃー!俺達の勝ちじゃああああっ!!」

「まだ残ってるし、気が早いんじゃないのか?」

「グレイはあんな奴に負けねぇし、犬みてぇな奴もルーシィとハッピーがいるから大丈夫だ!!」

 

グレイ達の勝利を微塵も疑っていないナツは高らかにそう告げると、何を思ったのかテンをビシリと指差す。

 

「そーいうわけで俺と勝負しろ!!」

「意味が分からんぞ。後―――」

 

テンが何かを告げようとしたタイミングで、大穴から誰かが落ちてくる。落ちてきたのは、犬のような顔をした半裸の男だ。

そして、もう一人の人物が続くように降り立つ。そこに降り立ったのは……エルザだった。

 

「エ、エ、エルザァアアアアアアアアッ!?」

「ナツ……覚悟は出来ているんだろうな?」

 

エルザの登場にナツが恐怖するかのようにすっ頓狂な声を上げる中、エルザは冷めた眼差しでナツを見据える。

そんなナツに、テンは無言で合掌するのであった。

 

 

 




「うわぁ……ナツがボコボコに……」
「今回の首謀者ニャから、当然の結果ニャ」
「この大馬鹿ものがぁああああああああっ!!」
「ごべんな゛ざぁああああああああいっ!!」
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