Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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01/『魔女』と12の人形

「……なぁ、事前の取り決めでは一対一の個人戦だったよな?」

『そうだよ、君と『僕』の、何度目か解らない決闘だよ? 今更怖じ気付いたのかな!』

 

 第一決闘場、型式番号『MD-0032G』ディランザを駆るグエル・ジェタークは目の前の光景に苛立ちと困惑の声をあげる。

 目の前の『因縁の相手』と決闘するのは今に始まった事ではない。全戦全不成立、形式上は未だに決着が付いてない唯一の相手である。

 

「じゃあ何で決闘場にテメェのMSの他に12機並んでるんだよ!?」

 

 またもや見た事の無い新型MS――背部に巨大なL字型の翼部ユニットと巨大な砲塔らしきものを背負った特徴的なMSと、頭部以外瓜二つの12機のMSが眼下に並んでおり、始まる前から一対一の決闘の御題目が空虚な戯言扱いになっているのは明々白々だった。

 

『これはおかしな事を。基本的にレギュレーション内ならば『武器』の持ち込みは自由の筈だけど?』

「武器だァ? これ全部自立型ドローン兵器か……!? そんなのありかよ!?」

 

 幾ら何でもMS12機を『武器』扱い、いわば持ち込み自由な『ビームライフル』や『ビームサーベル』などと同列に語るのは無理がある。

 が、目の前の『因縁の相手』は楽しげに否定する。

 

『おいおい、奇抜で知られる『我が社』がその程度の子供騙しを『新兵器』と謳う訳ないじゃないか。紹介しよう、型式番号『GX-9900-GB』――無人MS型端末、つまりはMS型のビットだとも!』

 

 

 

 

「……これより審問会を開始する。『アナハイム・エレクトロニクス』代表に問う。あれは『ガンダム』か?」

 

 ベネリットグループ総裁にして監査組織カテドラル総括代表デリング・レンブランは重々しく問い質す。

 ベネリットグループの上位企業の代表達が集う中、全員の視線が集中する審問席の『少年』は笑顔を見せた。――いつもと同じように、全てを嘲笑うが如く。

 

「いいえ、あれは『Gビット』です」

「……その『G』は『ガンダム』の『G』か?」

「いいえ、『ガンダム』以外の『G』です。何の『G』かは開発者の私も解りませんね!」

 

 その白々しい返答に、各代表達は疲労感漂わせた溜息を吐く。……毎度恒例となったやり取りに「またか」と呆れ果てて。

 

「それでは『今回』のプレゼンテーションを開始しましょう。型式番号『GX-9900-GB』、無人MS型端末『Gビット』は従来の『GUNDフォーマット』技術を使わない、全く新しい次世代群体遠隔操作兵器システムです」

 

 この場は条約で禁止された『ガンダム』を製造した疑惑で、ほぼ一方的に糾弾される有罪率100%の魔女裁判であって、新兵器を紹介するプレゼンテーションでは断じて無いが、どこ吹く風と、審問会場の巨大なディスプレイに各種データが表示される。

 

「馬鹿な、『GUNDフォーマット』技術を使わずしてあんな事が出来るかっ!」

「いえ、確かに、パーメット流入値の基準をクリア……しているどころか、検出すらされませんでしたね。いつものように……」

 

 その事実に各代表達が「まさか本当に?」「いや、そんな筈は……」「どうやって隠蔽した?」と騒然とする。

 

「当然ながら『GUNDフォーマット』由来の『データストーム』など発生し得ない。――超長距離遠隔通信制御システム『フラッシュシステム』搭載の『GX-9900』は同性能の12機の子機を操って戦場を支配する次世代型戦略級兵器となります」

 

 今回の決闘にて12機の子機は、まるで1機1機が完全独立行動しながらも一つの頭脳に統率された群れが如く完璧なコンビネーションをもってジェターク社のMSを瞬殺して見せた。

 ……最新版の意思拡張AIを組み込んだとしても同じ結果に到底ならない事は誰の目からも明らかだった。

 

「一人の『エースパイロット』よりも千人のパイロット。いつの世も『数の暴力』というものは『質の暴力』を無慈悲に凌駕する。――『フラッシュシステム』はその『エースパイロット』を『数の暴力』にして無敵にするシステムなのです」

 

 ――唯一対峙したMSパイロット曰く「全てが『ヤツ』と同等の動きをしやがった」という感想が全てを物語っているだろう。

 

「卓越した腕前を持つ『エースパイロット』が操作する、『エースパイロット』と同等以上の脅威を誇る12機の『Gビット』、その有用性は私の口から語る必要も無いでしょう!」

 

 自社の新製品の有用性をこれでもかと語り、この一人舞台に立つ『少年』は高らかに宣言し――。

 

 

「――いや、あれは『ガンダム』だ。私がそう判断した」

 

 

 初めから決まっていた結論がデリング総裁から下される。

 この場は物事の真偽を問う審問の場にあらず、最初から定められた決定事項を告げるだけの断罪の場である。

 

「わー『GUNDフォーマット』も『データストーム』も無いのに言い切りましたよ」

 

 『少年』は小声で文句を言う。まぁ『少年』自身も、最初から通るとは欠片も思っていなかったようだが――。

 

「ところで話は変わるのですが、実はこの『フラッシュシステム』、看過出来ない欠陥があるシステムなんですよ。その欠陥を解決する為にグループの皆様の助力を借りたいのです!」

 

 いつもの変わらぬ結論をスルーし、『少年』はこの場に集った各代表達に懇願する。

 「看過出来ない欠陥?」「結局『データストーム』以外の問題があるのか?」「まぁそんな事だろうと思っていたが」と周囲はまたしても騒然とする。

 何しろ『少年』の意図が全く解らないからだ。企業として知られたくない解り易い弱点をそのまま開示する訳が無い。

 ……この場にいる誰もが『少年』を子供扱いして見縊るような事が無く、むしろ理解出来ない『モノ』として認識していた。そんな目に見える異常を当然の如く受け入れて――。

 

「この『フラッシュシステム』による遠隔精密操作、誰でも扱える『GUNDフォーマット』と違って、極めて特殊で希少な『先天的資質』が必要なんですよね。システムを作動させるに足る特殊な脳波感応波、常軌を逸した空間認識能力が無いと12機の『Gビット』の精密操作なんて出来ませんからね」

 

 

 ――そんな理外の代物を平然と扱える『少年』は一体何なのか?

 

 

 此処で話は変わるが、当たり前の常識に関して改めて質問する事は時間の無駄であり、省略されて然るべき事である。

 この魔女裁判において真っ先に省略された質疑、それは即ち――。

 

 

「――その『先天的資質』を持っている人間を見つける事は極めて困難なのですが、後天的に『製造』する事は容易そうなんですよね。グループ内の、『投薬』・『睡眠療法』・『人体改造』のノウハウのある企業への協力を申し込みたいのですが? ああ、『実験動物』の提供も歓迎してますよ!」

 

 

 「――お前は『魔女』か?」という当たり前過ぎる質問は、真っ先に省略されて久しい暗黙の了解である。

 

「『ガンダム』及び子機の全廃棄、本プロジェクトの全凍結を命ずる。従わぬ場合は――」

「了解しましたー、ちぇー、今回はいけると思ったのになー」

 

 あと、当然の如く今回の決闘『も』無効となり、MSと同質量の武器コンテナを決闘場に輸送出来ないようにルール改正も成されたのだった。

 ……当人曰く「まだまだ穴あるな」とほくそ笑んだのは秘密である。

 

 

 

 

「――はい、この度は『アナハイム・エレクトロニクス』のご利用、誠にありがとうございます。ええ、いつも通りの手筈で。廃棄を装って解体し、御社に運び込みますとも。執行者は全員買収済みですので」

 

 『少年』は自身の暗室にて、ぷかぷかと浮かびながら愛想笑いを浮かべる。

 あの悪名高き死の商人『アナハイム』の名を冠するからには、この手の暗躍はお家芸なので特に言う事は無いだろう。……この宇宙世紀以外の世界には元々縁の無い存在だが――。

 

「ええ、我が社としても御社の協力は大変ありがたく。何しろ『人』に関しては専門外ですから。デリケートな分野ですものね、大雑把が売りの我々にはとてもとても」

 

 数多のプロジェクトを同時並列で進めているとは言え、タスク処理の為の時間と労力は有限資源だ。精神論ではどうにもならず、残念ながら限りある。

 新技術を新たに獲得するよりも専門に先行している企業に丸投げした方が遥かに手っ取り早い事もある。数多の有力企業が結託するベネリットグループの恩恵は『少年』にとっても計り知れないぐらい有意義なものである。

 

「それでは今後とも末永く宜しくお願いします。……互いの利益が続く限りね――」

 

 それにしても、と『少年』は思う。地球育ちよりも宇宙育ちの方が立場が高く、国よりも企業が力を持つとは珍しいケースだと独白する。

 

「――それなのに『傭兵』が活躍していないのは意外だけど、それだと別の世界観になるか」

 

 『騙して悪いが』とか大好物な展開なのになぁと『少年』は少し残念がる。

 

「もしもし、私だけど、『月』での進捗、どう? ……大変結構、隠蔽作業は徹底的にね。――やっぱり『ガンダムX』を再現するからには『サテライトシステム』は必須だからねぇ」

 

 

 

 

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