Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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100/ドキッ☆『魔女』主催のパワハラ会議~(首)ぽろりもあるよ~

 

 

 

 

「まずは初期対応からですね。――何故、所属不明のMSが確認された時点で、緊急スクランブル&最寄りの艦隊への救援要請を発令しなかったのです? 悠長に警告などしている暇があるのに必要事項をこなしてないとか、意図的な外患誘致ですかな? その場合は物理的に首を飛ばすだけで済むので話が早くて助かるのですが」

 

 宇宙世紀を生きた者の感覚から「勧告無しで撃墜で良いだろ、こんなの」と呆れながら『彼』は言うが、フロント管理社代表からは酌量の余地無い死刑宣告でしかなく――。

 

「め、滅相も御座いません! 決して、そのような事は……!」

「――フロント管理社代表、貴方には『私』が、その場しのぎの言い訳を聞いているように見えましたか? つまらない遺言でしたね」

 

 釈明など最初から期待しておらず、意にそぐわぬ弁明をした時点でアウト判定という、どう足掻いても地獄の選択肢しか用意されておらず――『魔女裁判』など被告人の有罪率100%のお芝居なんだから、当然と言えば当然だろう。

 

「まぁまぁ『総裁代理』、現在の緊急時におけるマニュアルでは最新の状況に対応出来なかったのは事実。同じく現場に居合わせた者としては『総裁代理』のお気持ちは痛いほど同意出来ますが――此処は一つ、同じくあの場所にいた私の顔に免じて、彼に挽回の機会を与えてやってはどうですかな?」

 

 ヴィム・ジェタークから予定通りのフォローが行われる。

 窮地に陥っているフロント管理社代表が救いの神を見るかのようにジェターク社CEOを見ているが、脚本は『彼』のものである。

 

「ふむふむ、その顔で言われては否とは言えませんね! ――血で得た教訓だ、それに相応しい改正案を期待しますよ、フロント管理社代表。期日は必要ですかな?」

 

 切り捨てるのは簡単、『自分自身』の手で新たな緊急時マニュアルを作成した方が完成度は高いだろうが――大局的な眼から見れば『自身』の手駒を『自分』の手で減らし、仕事を『自分』の手で増やす愚行なので、ありもしない慈悲という名の幻想を見せて働いて貰う事にする。

 

「――可及的速やかに、纏め上げて来ます!」

「よろしい、次に――行く前に、今回のテロを踏まえ、各フロントの防衛設備がほぼ皆無に等しい現状では無防備極まると思いましてね。グラスレー社CEO、サリウス・ゼネリ殿、設備増強の草案をお願いしますね」

「……承った」

 

 死に繋がりかねない過激な鞭を見せた後に、新たに出来た莫大な利権に関する甘い甘い飴を見せつける。

 恐怖だけの支配体制は非常に脆いので、服従する事で得られる甘い蜜も提示する。それが例え一時の幻であっても、人は希望さえあれば縋るものだ。

 

 

「監査組織カテドラル傘下のドミニコス隊、『魔女』狩り、つまりは対『GUND-ARM』に特化したエリート部隊だと聞き及んでましたが――口だけ達者な素人でも集めたのか? ただのカカシか貴様等は?」

 

 

 フロント管理社代表に関してはマニュアルの不備故に苦言一つで終わらせたが、今回のドミニコス隊の働きに対しては文句がありすぎる。

 人間、自分自身の専門分野に関しては一番厳しいのは当たり前であり――それがMSの実働部隊関連の事ならば、目の前の『アナハイム・エレクトロニクス』代表は宇宙一厳しいだろう。

 

「MSの性能が足りなかったのか、パイロットの技量が足りなかったのか、どっちです? ああ、答えなくていいですよ、両方でしたからねぇ」

 

 追及されるラジャン・ザヒは無言を貫く。彼の感情に関しては全部読み解けるが、『彼』は興味無い。

 

「あの程度の性能の『GUND-ARM』を狩るのに一体何機必要なんです? ああ、ごめんなさい、例え機体性能が追いついてもパイロットの腕が塵屑なら同じ結果ですよね。プラント・クエタでも何一つ任務をこなせずに無様に全滅して無駄死にでしたしねぇ!」

 

 同僚の死を犬死にと評された事への深く激しい怒りを感じたが、現在進行形で生き恥を晒している者が何を想おうが滑稽極まる。

 

 ――MSを全機撃墜され、危うくデリング・レンブラン及びミオリネ・レンブランを守り損ねたとか、こんな大失態を犯して良くまぁのうのうと生きているものだと関心する。

 

「そんな不甲斐無い皆様の尻拭い、同じくプラント・クエタにいた『私』も精一杯頑張ったのですがね。『4匹』ほど踏み潰し損ねてプラント・クエタ内に侵入されてしまいましてね。幾ら無能でも『4匹』程度の処理はして貰えると思っていたのですが――どういう訳か、貴方達は何一つ仕事を全う出来ていないようですね?」

「……返す言葉も、御座いません」

 

 この無能に対する文句は無限に湧き出てくるが、時間が勿体無い。……同じ管轄なら首を物理的に飛ばして全員粛清すれば終わるのだが――。

 

「――今の『私』はベネリットグループ『総裁代理』であって監査組織カテドラルの総括代表ではありません。ただ飯食らいの無能組織に権限が及ばないのは誠に無念ですねぇ」

 

 非常に残念な事に管轄外なので、迂闊に手出し出来ない。魔女狩り隊が狩るべき本命の『魔女』の管轄下に納まる事をよしとしないのは当然であり――確定している潜在的な敵に対する容赦など『彼』の中にある訳がない。

 

 

「――『アナハイム・エレクトロニクス』社として、監査組織カテドラルへの出資は今後一切取り止めさせて貰いますね! これに関しては各社の善意、言わば自由裁量ですので、構いませんよね?」

 

 

 これは単なる一企業からの出資金が0になる、という単純な事ではなく、ベネリットグループのトップが出資金を打ち切るという事実上の死刑宣告的な意味合いが強く――トップからの信頼を完全に失ったとなれば、流れを見る事に賢明なベネリットグループ傘下企業の代表達は挙って監査組織カテドラルへの出資金を打ち切るだろう。

 

「っ、そんな事をすれば……!」

「安心して下さい。無能な貴方達がこなせない業務は我が『アナハイム・エレクトロニクス』社専属の精鋭部隊が責任をもって『代行』しますので!」

 

 権限が無くても財布を握っているからには、経済的に無力化する事は非常に簡単で、成してきた業務を実力をもって『代行』する事で全権限をなし崩し的に略奪する――それに対する正式な抗議を行える者は、眠っているデリング・レンブランのみである。

 『総裁代理』に対抗する総括代行を用意出来なかった時点で、回避不能の決定事項であり――。

 

「あらあら、それでは結局、ベネリットグループ『総裁代理』にして監査組織カテドラル『総括代行』ではありませんか」

「誠に鮮やかなお手並みで。祝言はお必要ですかな?」

 

 もうこの場における絶対的勝者は覆らないので、ペイル社共同CEO達は率先して勝ち馬に乗ろうとする。

 既に結託しているジェターク社とグラスレー社と違って、見える形で忠誠を誓わねば生贄の羊にされかねない。

 

「必要ありませんよ。デリング総裁が目覚めるまでの代行業務ですので。一日も早いご快復を祈るばかりですとも」

 

 それに関しては、『彼』を含めて全員一致の願望であり、この『彼』を1人で御していた偉大な独裁者の復活を、誰もが切望したのだった。

 

「さて、これにて閉会――おっと、そうだそうだ、言い忘れていた。シャディク」

 

 わざとらしい口調で、『彼』は胡散臭い笑顔でグラスレー社CEO、サリウス・ゼネリの隣に立っていた義理の息子、シャディク・ゼネリを見る。この場にいる全員の視線が、シャディクに集中する。

 

 『彼』の脚本に書かれていない事に、ヴィム・ジェタークとサリウス・ゼネリは不審そうに首を傾げるが――。

 

「久しぶりに楽しかったけど少々食い足りなかったから、今度は新生『ネオ・ジオン』ぐらいの規模を用意してね!」

 

 ――ヴィムは思わず「ざまぁみろ!」と無言で爆笑し、サリウスは顔を歪めて歯軋り音を上げる。

 

 その言葉に、シャディクは意図を掴めずに首を傾げたが――この場にいる全員の眼の色が豹変した事で、完全にしてやられたと全部察する。

 

 ――最後の最後に、親愛なるデリング総裁を重体に追い込んだ世紀の大戦犯を暗に暴露し……今後、シャディク・ゼネリを担ぎ上げようとする時勢の見えない者は決して現れないだろう。

 

 

 

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