Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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101/『魔女』からの総評

 

 

 

 

 ベネリットグループ本社、そのフロント外宙域にて、戦艦10隻からなる大艦隊がさながら観艦式の如く配備されている。

 これは監査組織カテドラル傘下の精鋭部隊、魔女狩り隊の異名を持つ『ドミニコス隊』――のものではなく、魔女狩り隊をお役御免にした『この宇宙で最も邪悪な企業』の手勢だった。

 

「――『アナハイム・エレクトロニクス』社所属、旗艦『ラー・カイラム級機動戦艦13番艦ブリュンヒルト』?」

「でっけぇ……! 500m級の戦艦ってマジかよ? さながら『貴婦人』だな」

 

 『スプーンから宇宙戦艦まで』のキャッチフレーズで有名な……その割には自社製の宇宙戦艦はカタログに載ってない『アナハイム・エレクトロニクス』社の専属艦隊であり、その豪華絢爛な大軍勢に、フロント内の管制は誰もが言葉を失っていた。

 

「『ガーティ・ルー級特殊戦闘艦3番艦ヘグニ』に『アークエンジェル級強襲機動特装艦3番艦ソードブレイカー』、型式番号GNMA-Y0002V『ガデラーザ』、『マクロス・クォーター級可変攻撃宇宙空母1番艦大鳳』――おいおい、10隻全部、別艦種かよ……」

 

 色々な意味を込めて「マジで変態企業だわ……」と評価するしかない光景であり――統一感の無い艦種の数々は、本来ならば単独での作戦運用が前提の特化型である事を、容易に推測出来る。

 更には――艦隊の間を飛び舞う『アナハイム』製のMSが、高速機動しており――。

 

「艦載機のMS、全部ジェガンかよ――」

「おいおい、冗談はよしてくれよ。100機以上反応あるぞ?」

 

 高い機体性能であるが、他社の量産型MSと比べて余りにも高価格過ぎるが故に天下を取れなかった、不遇の傑作量産機が平然と大量運用されており――。

 

「その気になれば、いつでも天下取れたって事かよ……」

 

 宇宙の富という富を搾取して肥え太り、いずれは宿主を吸い殺して破滅に導く『輪廻の徒花』の一端を、ベネリットグループ全体に見せつけるのだった。

 

 

 

 

「――それで、今回の一件、何処まで想定内だったの?」

 

 ベネリットグループ本社の社長室にて、また『ネオドイツ』の男の覆面の着用を強制された元エラン・ケレス、元強化人士4号にして今回悉く出番が無かった『レイヴン』は、勝手にデリング総裁の私物のコンピューター端末を漁る『総裁代理』にして『統括代行』となった新たな『独裁者』に問う。

 

 ――何から何まで、『彼』の思うままに事が進み、最高権力の座を華麗に簒奪して見せた。

 ならば、何処までが意図的で、何処までが計算尽くだったか、聞きたくなるのが人情だろう。

 

 『彼』は笑う。いつもの如く胡散臭い笑顔であり、その仮面は即座に脱ぎ落とし――。

 

 

「予定外にして想定外の連続を即興劇で乗り切らざるを得なかっただけなんだよこんちくしょう!? しかもその結果が最大の貧乏籤とか笑うしかねぇわ!」

 

 

 規制が必須の言葉汚い罵声を幾度無く口走るほど、『彼』は「どうにもなんねぇ!」と凄まじい顔芸を披露して頭を抱えていた。

 

「……最初に想定していた展開は?」

「テロリストを爆殺して大勝利! 面倒な後始末を全部デリング総裁に任せてターンエンドだよ! ……なんでラッキーパンチで重傷になってるんかなぁ?」

 

 ……『プラント・クエタ襲撃事件』において、デリング・レンブランの意識不明の重体に最も嘆いた人物は、間違いなく『彼』だろう。……こんな『問題児』の尻拭いを強制的にしなきゃならないデリング総裁の心労は察して余る。それがある時点でベネリットグループの総裁など単なる罰ゲームだろう。

 

「一番最初の予定外がグエルを誘った事。気まぐれで『難易度調整した上で初陣経験させてやるかぁ』と思った過去の『自分』を殴ってやりたい。これのせいで気づかぬ内にヴィム・ジェタークが生き残る選択肢が出現したんだよなぁ」

 

 事前にプラント・クエタへの襲撃を予想しておいて、自身の手勢を一切連れずにソロプレイと洒落込んだ癖に、第一歩から『自分』の手で不確定要素を紛れ込ませるのは自業自得でしかない。

 

「次に、自社のMS乗って押っ取り刀で戦場に出てきたヴィムCEOをからかいに行った事。……いやぁ、最高に煽り甲斐あるからとは言え、何で行動方針すら定めずに曖昧な状態で行ったんかねぇ。無視すれば勝手に死んでいただろうに」

 

 自棄糞気味に「久方振りの戦場で舞い上がっていたとか、恥ずかしい話だ」と豪快に笑う。

 相変わらず性格が悪い。此処まで腐っていると一周回って逆に清々しく思えるほどだ。これが直接の上司になっているのだから、振り回される身になって欲しい。……『彼』が他人を顧みる事は到底有り得ないだろうが。

 

「グラスレー社とジェターク社が裏で結託してデリング総裁暗殺に乗り出し、ヴィムCEOは間抜けにもシャディク如きに出し抜かれて巻き添えという腹筋大激痛の喜劇が悪いね! ……戦場で俺相手に背後から誤射しようとしたヴィムCEO、良く生き残れたなぁ。100回やって99回は殺している場面だよね?」

 

 「何でだろうな、間違いなく死神に魅入られていたのに?」「……もっと恐ろしい『死神』が追い払ったからじゃない?」と元『氷の君』は表情を変えずにツッコんでおく。……またあの覆面姿でシュバルツ・ブルーダーを名乗らされているが。

 

「デリング総裁が無事なら、2社の沙汰なんて対岸の火事扱いでニヤニヤして眺めていられたのだが、重体で意識不明となっては話が変わってくる」

 

 半分以上当事者なのに他人事扱い出来たのは、絶対的な支配者であるデリング総裁が余りにも有能過ぎて、『彼』からのキラーパスの数々を何でもかんでも処理出来たからであり――。

 

「ジェターク・グラスレー両社が自滅して、此処にいないペイル社の1人勝ちとか、誰得だよ? ……という訳で即興で口裏合わせて結託、『総裁代理』という最悪の貧乏籤を引くに至ったよ! 何の罰ゲームだよ、やだこれもー!」

「……最初から好き勝手やってるからね、『アナハイム・エレクトロニクス』社は。今更ベネリットグループの頂点に立っても余計な手間と義務が増えるだけか……」

 

 両社が潰れれば、強制的に無傷のペイル社と相争う事となり――どうにでもなるだろうが、更なる面倒事を嫌った『彼』は、次善策を取らざるを得なくなった。

 これが今回の『アナハイム・エレクトロニクス』社による独壇場の真相だと知れば、ショック死する者も続出するのではないだろうか?

 

「あとシャディクが全部悪い。一手で全部掻っ攫える状態で此方の眼下に差し出すの、最近流行りの誘い受けってヤツなの? 俺は我慢弱くて欲張りな『侵略者(インベーダー)』だからね、据え膳は他人の物でも遠慮無く全部食らうよ?」

「『アナハイム』代表相手に隙を見せるは自業自得だけど、一手で全てを台無しにされたシャディクが余りにも哀れ過ぎる……」

 

 用意周到なシャディクの事だから、これを布石に次の手を、という計算尽くの段取りだったが――ただ一手で全てを台無しにする『規格外』の前で悠長に積み木するのは褒められた行為ではない。

 そもそも謀をする上で『存在するだけで全部引っ繰り返す『彼』からの介入を0にする』事が大前提の気がするのだが――どういう訳か、シャディクは妙な対抗心や執着心を『アナハイム・エレクトロニクス』代表に抱いている気がする。正気だろうか?

 典型的な『触らぬ神に祟りなし』的な存在だと思うのだが。勝手に動いて無作為に周囲を祟る災厄の部類だけど。

 

「……しかし、俺の勘も鈍ったもんだ。大きな戦乱の気配がプラント・クエタ関連だと見抜いたのは良かったが――小事に潰されるとはなぁ。物凄く残念だ」

「……どういう事?」

「デリング・レンブランという人物は本当に稀有な傑物だった、という話さ。――『クワイエット・ゼロ』、この宇宙で唯一、我が『アナハイム・エレクトロニクス』社に対抗出来る鬼札を用意してやがったぞ?」

 

 「これが実現していればシャディクの道化劇よりも数億倍愉しめたのになぁ!」と、『人類種の天敵』はこの宇宙の全要素を投入して繰り広げられる、阿鼻叫喚の凄惨な戦場に恋い焦がれるのだった――。

 

 

 

 

 

 

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