Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

103 / 144
103/『魔女』は『魔女狩り』隊で遊ぶ

 

 

 

 

「――ミッションを説明しましょう。依頼主は『アナハイム・エレクトロニクス』社、目的は同社の無人機、型式番号OZ-12SMSトーラス5機とOZ-03MDビルゴⅡ1機との模擬戦です。これは貴方達ドミニコス隊への試金石であり、場合によっては最後通牒となります。まぁ『魔女狩り』の精鋭部隊と嘯くのであれば、この程度の試練は乗り越えて欲しいものですね」

 

 節々に腹立たしい口調で、『アナハイム・エレクトロニクス』代表――否、ベネリットグループ『総裁代理』にして監査組織カテドラル『統括代行』を僭称する『学生服の少年』は、ドミニコス隊司令ケナンジ・アベリーに語る。

 

 ……今回の『プラント・クエタ襲撃事件』での不手際を咎め、監査組織カテドラルへの資金提供を完全に止めた元凶であり――『魔女狩り』が狩るべき『魔女』の1人である。

 

「ドミニコス隊からは12人選出して下さいね。同数では多分相手になりませんので。――ああ、此方は決闘レギュレーションで調整しますのでご安心を、死にはしませんよ」

「……随分と御自社の新型を買い被っている様子で」

「いえいえ、貴方達に対する正当な評価ですよ? 是非とも過大評価ではなく、過小評価扱いにしてくださいね」

 

 この宇宙で最も卓越した『魔女狩り』に対し、獲物に過ぎない無人ドローン兵器をぶつけてくるのは、若さ故の過ちだろうか。――その点を指摘してやる義理は無く、精々恥をかかせてやると決意する。

 此方の考えを見透かしてか「それと別に新型でもありませんしねぇ?」と意味深に呟く。……グラスレー社のアンチドートに駆逐された旧式のドローン兵器であるのならば尚更の事だが、目の前の人の形をしているだけの『何か』の真意など欠片も見えない。

 

「艦隊司令ともあろう者が、そのような肥満体で成り立つとは、ドミニコス隊の任務とは余程楽な代物だったのですねぇ? その様子ではプチモビ……いや、モビルワーカー……もといモビルクラフトにすら乗れないと思いますけど? ……司令自ら破壊工作の指揮を取るのはそれはそれで大問題ですけど」

 

 自分に対する皮肉に若干苛立つが、誰がどう見ても肥満体なので何も言えない。……後半部分は一体誰の事を思い浮かべて微妙そうな顔をしているのだろうか?

 

「依頼は歩合制であり、弾薬・燃料代は此方持ちです。MSの修理費は自腹ですので無理はしない方が宜しいのでは? ――ああ、これは悪意100%の罠ですけど、今回の依頼には協力機が用意されております。最終的には其方の判断になりますし、模擬戦が協力機との撃破数を競う形になりますが、どうします?」

 

 いや、初めから悪意100%の罠と喧伝しておいて乗る馬鹿が何処にいるのか――その割には、協働機の資料は無駄に充実しているようで、別途依頼料も無駄に添付されている。どうして必要無い部分に力を入れるのだろうか、そこが解らない。

 

 ……その内容は、一目見ただけでツッコミ要素が多すぎて、何処からツッコんで良いのか、解らなくなる類のものであり――。

 

「……1機目は、デザイン的にジェターク社系列の最新鋭MS? 別途依頼料が今回の報酬を遥かに上回る金額なのは見間違いですかな?」

「ジェターク社の最新鋭MSをパクって好き勝手に造り変えたダリルバルデMk-A.Eですよ! パイロットはジェターク社の御曹司、ごほんごほん、もとい謎の凄腕仮面パイロット・ボブですから、貴方達への依頼料より高いのは当然でしょう?」

 

 ケナンジは真顔で「恐れ多くて指名出来ねぇよ!? つーか、何でそんな不謹慎なMSに被害社の御曹司乗せてるの!?」と的確に突っ込む。

 ……不用意に指名して御曹司のボンボンを怪我させたとなったら、ただでさえ窮地のドミニコス隊がより悪い方向に追い込まれる事だろう。別途依頼料が莫大過ぎて赤字になる為、最初から選択出来ないが。

 

「……2機目は、どう見てもペイル社の『GUND-ARM』に見えるんですが? 別途依頼料は異様なまでに安いですけど……」

「ペイル社の『GUND-ARM』をパクって好き勝手に造り変えたファラクトMk-A.Eですよ! パイロットは我が社専属の謎の覆面ガンダムファイター『レイヴン』ですので割安ですよ! 終身雇用確定で、人件費が諸事情で安くついているので!」

 

 『魔女狩り』隊に狩るべき『GUND-ARM』を直接差し出す、不遜極まりない行為とか吹っ飛んで「うわぁ、ブラック過ぎて世知辛ぇ!? つーか『アンタ』の企業、御三家から良く刺されないなぁ!? あと仮面とか覆面流行ってるの!?」とケナンジは猛烈に突っ込む。

 

「……それで3機目は、ええ、一見してジェガンに見えるのですが……何でこれの別途依頼料は此方が支払う形じゃなく、むしろ逆に其方が支払う形で、尚且つ全額前払いなんです? しかも桁が4桁ほど間違ってません?」

 

 こんなあからさまに『騙して悪いが仕事なんでな、死んで貰おう(怪しすぎる条件)』、飛び切りの自殺志願者でもなければ選択しねぇだろう。

 

「――理由は敢えて言いませんが、1番のオススメですよ!」

「これ、選んだ瞬間に破滅するタイプの選択肢ですよねぇ!? 余りにも露骨過ぎて選べるかぁっ!」

 

 もう此処まで――純度100%の邪悪ならば逆に清々しいレベルである。無言で協力機の要請を全却下する。

 

「ちぇー、カンの鋭い人間は大好きだよ――『アナハイム・エレクトロニクス』社は、いえ、ベネリットグループはこのミッションに注目しております。くれぐれも、宜しくお願いしますね?」

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。