少し前の話。『プラント・クエタ襲撃事件』が起こり、何とか生き残って、関係者一同がベネリットグループ本社のフロントに移動し――。
「――ああ、そうそう、グエル。2週間ぐらい事情聴取の名目で軟禁状態で拘束されると思うから、暇潰しにどうぞ!」
「……何だこれ? 膨大な動画ファイルか……?」
「我が社の紹介動画だよ! 見応えと面白さは保障するとも!」
『アナハイム・エレクトロニクス』代表である『彼』から手渡されたタブレットには、凄まじい数の動画ファイルが保存されており――謎の年号・年代と『タイトル』という法則性以外、正体不明の動画ファイルがずらりと並んでいた。
「――『宇宙世紀(U.C.)』は時系列順で、それ以外は大体単品だから順不同で鑑賞出来るよ!」
……いや、まずはジャンルを説明して貰いたいのだが。『アナハイム・エレクトロニクス』社の紹介動画で面白いってどういう事だか?
「1週間ぐらい経ったらミオリネも誘ってあげてね。……今は完全に滅入っているから、時間経過での解決ぐらいしか対処法が無いね――」
この『男』が他の誰かの事を心底心配している光景が見れるとは、欠片も思わなんだ。
……なお、即座にやらかしてベネリットグループ『総裁代理』にして監査組織カテドラル『統括代行』になるのはちょっと先の出来事であり――。
「ミオリネの方は宇宙世紀0093『第二次ネオ・ジオン抗争』まで鑑賞しているみたいだよ! それじゃーねー!」
有無を言わさず、早足で立ち去る『彼』の姿を唖然としながら眺めつつ、グエルはタブレットに目をやりつつも冷静に分析する。
「……本当は自分の手で対処したいが、本当に時間が無くて出来ないから任せたってか? 『解り辛ぇヤツ』……」
……純粋な好意を出力して、此処まで解り辛く歪曲するのは意図的な欠陥だろうか? それとも無意識の内に発露する『呪い』の類だろうか?
「……しかしこれ、どれから見れば良いんだ?」
宇宙世紀と銘打たれたシリーズは宇宙世紀0079『一年戦争』から宇宙世紀0152『ザンスカール戦争』までずらりと並んでおり――宇宙世紀から見るならこの最初の『一年戦争』からだが――73年分で何でこんなに物騒な戦争・抗争が立て続けに敷き詰められているのだろうか?
「……暇潰しには丁度良さそうだが、少し骨が折れるぞ?」
とりあえず、動画の方向性を知りたいから、何か手頃な単品物から始めたい処だが――。
「――西暦2314年『第三次『地球外変異性金属体(ELS)』星間絶滅戦争』?」
旧暦なのに2314年も続いている上に、タイトルが余りにも異色過ぎるのが目に入る。
B級のパニック映画みたいな感じか? 第三次と銘打っているのに第一次と第二次が見当たらない。この矛盾の塊に、逆に惹かれる事となり、グエルは此処から見始める事となった。
『――システム、オールグリーン。量子型演算処理システム『ヴェーダ』と2万体の『脳量子波』の同調完了、いつでも行けます』
地球を眼下に展望出来る一室にて、20歳後半の背広を着た『男』がオペレーターからの報告を受ける。
姿・形は全く似ず、人種すら違うが、その胡散臭い雰囲気は、何処か『彼』を思わせるものがあり――。
『……こんなふざけた『終末兵器』に頼らねば、人類圏の意思統一など数百年経っても到底叶わないとは嘆かわしいな。だけど、今回は手段も選ばない――世に平穏のあらん事を。『エンジェル・ハイロゥ』起動せよ』
胡散臭い笑顔のまま、正体不明の『終末兵器』の起動を指示し――「ミラージュコロイド解除、サイコウェーブ、発振」――何もない宇宙空間に、最大直径20kmもの巨大な5重のリングが取り囲んでいる超巨大戦略兵器が突如出現し――。
『――オリジナルの『エンジェル・ハイロゥ』は地球圏の人類全てを幼児退行させて永続的に眠らせる自殺装置であり、ナンセンスだ。――もっと徹底的なまでに悪用出来るだろうに』
心底呆れた顔で『……『木星帰り』の発想は狂ってるなぁ』と他人事のように呟く。
オリジナルとの差異は精神干渉した際の結果であり、全人類を安楽死出来る出力での洗脳である。
『――この宇宙に人間は唯一人。『天使の光輪』の上にて、空っぽの玉座に君臨する、か……』
皮肉が効き過ぎて突発的かつ衝動的に自殺したくなる。地球圏から悪意の声は綺麗さっぱり消えていき――。
『エンジェル・ハイロゥ、全機能・正常稼働――地球圏の全てが、『代表』の手に収まりました』
『――大変結構。それじゃ始めようか。地球圏統一を成した精神支配帝国による、三度目の正直ってヤツを――『Stellaris(ステラリス)』を始めようじゃないか』
劇場版『機動戦士ガンダム00 第三次『地球外変異性金属体(ELS)』星間絶滅戦争 -精神支配危機帝国『アナハイム』- 』