――記念すべき一回目は呆気無く滅びた。
木星圏から突如現れた月と同質量の、直径3000kmという超弩級構造物は、地球圏の全てを飲み込んで侵食し――文字通り、何も残らなかった。
ただし、盤外の存在である『彼』にその存在を認識されるという致命的なミスを犯す事となるが、次元単位で彷徨う『迷子』の認識など異星の存在でも不可能だったのだろう。
――二回目もまた呆気無く滅びた。
情報収集の為に完全に投げ捨てた回であり、『地球外変異性金属体(ELS)』に関する情報は全て此処から入手するに至る。
『個』でなく『群』全体が『個』として種族間でネットワークを形成して並列思考する金属生命体であり、同化・吸収・侵食及び擬態能力の脅威は――数多の宇宙を巡ってきた『彼』からしても規格外と評価せざるを得ない。
戦略的・戦術的行動は取らないが――人類程度の文明圏相手ならば取る必要も無いだろうが――艦隊やMSに擬態して此方の行動パターンを真似る傾向が随所に見られる為、ある程度の誘導は可能だと思われる。
最早世界観が全く異なる『異星からの侵略者(インベーダー)』が当時の地球圏の1万倍以上の戦力で押し寄せてくるのだから、既存の方法での対処は不可能だと『彼』は判断する。
――巡り巡ってきた三回目、『彼』でさえ普段は自重している全ての『禁忌技術』を解禁するに至る。
「……何と言うか、頭を空っぽにして見る系の怪獣映画か? それにしては見覚えのある機体がちらほらあるが……」
近くて遠い世界観に、見事なまでの『完全管理社会(ディストピア)』が繰り広げられ、唯一人の『狂人』による地球圏の箱庭運営が行われる。
派閥争いが一切存在せず、唯一人の絶対意思で爆発的な勢いで発展する歪な人類史――未来の脅威に対抗するという唯一の目的の為に、人類の全リソースを以って躍進する様は非常に……非常に『気持ち悪い』と言わざるを得ない。
完璧な『独裁者』による究極の統治は、女王蟻と働き蟻を見ているが如くであり――何よりもその最強で無敵の『独裁者』が完全に白けきっているのが目に見えて居た堪れない。
「……それにしても、何で来訪する前から、その『地球外変異性金属体』とやらの全性能を把握してるんだ?」
或いは、逆かもしれない。その絶望的な未来を知ってしまったからこそ、逆算的に破滅的行動を強いられている……のだろうか?
その映画には『独裁者』の視点しかないのに、いや、だからこそ『独裁者』の心情も過去も何も語られない。語る相手など既に存在せず、孤独な『独裁者』は表情一つ動かさずに采配を振る――。
――来るべき西暦2314年、木星圏より『地球外変異性金属体(ELS)』が来訪し、地球圏の全戦力を以って迎撃する。
「何で最終防衛ラインの超巨大軍事防衛施設が『超巨大ガンダム』に変異してるんだよ!? 急に出てきた自己再生・自己進化・自己増殖の三大理論を備えた『UG細胞』って何!?」
小惑星を改造する形で建造した、全長15kmに及ぶコロニー型外宇宙航行母艦がいきなり『アルティメットガンダム』に突然変異(トランスフォーム)し――地球圏の全戦力を結集させた全艦隊による『人類の叡智(核ミサイル祭り)』から開幕する。
『――核は持ってて嬉しいコレクションじゃない、とは誰の台詞だったかな! その意見には全く以って同意だね――地球圏に存在する全ての核兵器の在庫処分だ、派手に行こう!』
無限に犇めく『地球外変異性金属体(ELS)』に、幾百幾千の核の炎がひたすら炸裂する。
『――UG・核ミサイルへの『ELS』侵蝕率、一桁代。逆侵食はやはり不可能でしたが、全基正常に起爆』
『まぁ予想通りか。――ニュートロンスタンピーダー準備、そろそろ擬態してくるぞ』
宇宙を焼き続ける核の炎から、無傷の『地球外変異性金属体(ELS)』が続々と進出し、自らの形状を変異させ、此方側の巡洋艦に形作り、性能すら模倣し、人類の叡智である核ミサイルの発射態勢に入り――。
『全艦打ち方やめ。――ニュートロンスタンピーダー起動。これよりフェイズ2に入る。全艦隊、ニュートロンジャマー起動。MS隊、全機発進!』
『――ニュートロンスタンピーダー起動! 敵艦隊の核兵器……起爆成功! 起爆成功です! 全艦隊はニュートロンジャマー起動、これより作戦フェイズ2に移行!』
『地球外変異性金属体(ELS)』側の模倣した核兵器だけを強制的に起爆させた後、無駄に学習させた核兵器を完全無効化する『自称穏健派』のマジキチ対抗兵器によって一方的に蓋をして――死が大前提の囮部隊を出撃させる。
『――GNジェガン、全機発進! 全機発進!』
同化対策にUG細胞を施され、この宇宙特有の技術であるGNドライブを組み込んだ――この宇宙の定義では『ガンダム』扱いとなる――宇宙世紀における最終量産型の現地改修機が戦場に投入される。
これらの総勢千機以上の囮部隊は『本命』をELS中枢に届ける為の陽動に過ぎない。
『――GX-9901-DX-GB『DXFビット』12機、全機起動。NZ-999『ネオ・ジオング』、出撃する』
『赤い彗星』由来の終末兵器など気に食わないという次元ではないが、今回は特別に大盤振る舞いだ。全部余さずくれてやる。
血も涙も無い『異星人』風情に地球は絶対渡さない。守る理由はもう無くても、本末転倒だと誰もが罵っても、全てが無駄だとしても、結局人類は人類の手で滅びるとしても――。