「……うわ、どっちも見覚えのある機体だ……」
以前、推進ユニットのオススメを聞いた時、渡されたカタログを流し読みし――100m級の巨大外殻『ハルユニット』として掲載されていたのを意図的にスルーしたのを思い出す。
「……全身緑色に発光している上に、背部に光輪のような何かが形成されてやがる……」
そしてこの超巨大なMAのコアユニットとなっているMSは、一度見たら絶対に忘れられない、『ヒゲ』のあるガンダムであり――その周囲に展開される12機のMS型ガンビットは、これまた以前に『アイツ』が決闘に使っていた代物、を更に発展・強化させた後継機に……推進ユニットでオススメにあげていた『Gファルコン』とドッキングした状態のもの――。
「……これに乗っているの、間違いなく『ヤツ』だよな?」
例え宇宙がもう一つあったとしても、こんな馬鹿げた超巨大MAに12機のMS型ガンビットを同時に操作出来る『例外(イレギュラー)』など、『アイツ』以外存在しないだろう。――この結論に関しては、ほぼ間違いないと確信出来る。
「……モチーフが『自分』自身だとしても、こんなふざけた『独裁者』を『自分』モチーフで作るか? 幾ら性格が捻じ歪んでいても……?」
もしも『アイツ』がこの『独裁者』を評したら「うわぁ、随分と一人遊びが得意な『ぼっち』ですね『ぼっち』! 人間不信の極限で、色々哀れ過ぎて同情しちゃいますよ!」ぐらいは煽ってくるだろう。
それに関しては、この場で答えなど出ないだろうから、ひとまず置いておいて――。
「――これまで派手にやっているのに、まさか『地球外変異性金属体(ELS)』側の損傷率0%?」
動画で時々現れる戦術グラフ&戦況表示図に、計測不能となっている敵性存在の勢力図は人類の叡智である核兵器祭りを敢行しても何一つ変わりなく――。
それは、千機以上のGNジェガンが接敵しても変わらず、大艦隊による絶え間無い援護射撃、最終防衛ラインから対コロニー級の主砲を継続的に撃ち続ける『アルティメット・ガンダム』にコロニーレーザー『グリプス3』、戦略級兵器『ジェネシス』が超弩級ELS本体に撃ち放たれ――一時的な無力化は出来ても、形を失って分散したELSがすぐさま再集結して融合・合体して巡洋艦orGNジェガンに擬態して再攻撃を行う為、人類軍は消耗の一途を辿り――短時間の戦闘で人類統合軍の損傷率は30%を超える。この数字は軍事学では機能維持が不可能とされる『全滅』を意味し――。
「……あ、これ無理ゲーだ」
この宇宙の人類が遭遇したどう足掻いても絶望的な状況を、視聴者のグエル自身も否応無しに理解する事となる。
――最初から解り切っていた結果である。既存の通常兵器では『地球外変異性金属体(ELS)』に何一つ通用しない。
精々模倣している状態を崩す程度が関の山であり――GNフィールド&UG細胞で接触による侵食・汚染を抑止しても圧倒的物量で潰されるだけだろう。
『――ツインサテライトキャノン、3連射!』
最大出力のサテライトキャノン6砲が前方に存在したELSを全て一掃して超弩級ELSまで届き――『本命』を運ぶネオ・ジオングは超弩級ELSに向けてひたすら直進していく。
ツインサテライトキャノンを撃ち放ったDXFビット3機は即座に月施設からのマイクロウェーブを受信し、再チャージしていき――。
――小型のELSがGNジェガンに擬態し、中型のELSが巡洋艦に擬態、全ての武装の照準をネオ・ジオングに向けられる。
ELS全体から膨大無比なる脳量子波が『彼』個人に発せられ、『彼』のニュータイプ能力も『僅か』に感知するが、内容は不明瞭で判然としない上に意味が無い信号だと切って捨てる。
『――『エンジェル・ハイロゥ』で統一された全人類の意思は、全てネオ・ジオングに注ぎ込まれている! 『赤い彗星』もどきの真似事など不本意極まるが――!』
原理は良く解らないが、敵機体に干渉して自壊に追い込むという謎現象の再現――『サイコ・フィールド』の運用は理論的に行使可能であり――擬態したMS及び巡洋艦を容赦無く自壊させる。
これで一手浮いた上に3機のDXFビットの再チャージも完了した。ELS中枢に突撃するまでの露払いの手数は完全に確保出来た――此処で、超弩級ELSに変化が訪れる。
あの月に匹敵する大質量のELSが一部分だが擬態行動に移り――恐らくは地球圏に到達する前に同化・吸収した未知の異星文明圏の超兵器――超巨大な砲身を形成する。
『――! ツインサテライトキャノン、12連射! ヤキン・ドゥーエ要塞に通達、目標、敵・超弩級ELS中枢の正体不明砲身部、警告無し・最大出力で『創世の光(ジェネシス)』を放てェ――!』
今まで一度も無かったイレギュラー事態に『彼』は持てる最大火力で対応し、それでも足りないと直感した『彼』は此処より遥か後方に建造した切り札の1枚を切る。
12機のDXFビットから撃ち放たれた24条の巨光は、超弩級ELSが擬態する超巨大砲身に直撃し――最悪の予想通り、此方の最大火力をもってしても正体不明の防御フィールドに弾かれ続け――超弩級ELS側の主砲の発射シーケンスが着々と進んでいく。
『――ジェネシス、照準用ミラー展開、起動電圧確保。ミラージュコロイド解除、フェイズシフト展開。ニュークリアカートリッジを撃発位置に設定。全システム、接続。オールグリーン。――目標、超弩級ELS中枢、正体不明砲身部。照射――』
大量殺戮兵器に定評のある『C.E.(コズミック・イラ)』においても、史上最悪の終末兵器と評さずを得ない――『彼』をしても、これを同じ人間相手に使おうとか『頭C.E.』かよ?という史上最悪の罵倒を使う事になる。
理論上は地球の全生物を一撃で絶滅させる、天文学におけるガンマ線バーストを再現するような正気の沙汰じゃ有り得ない対星兵器が事前勧告無しで撃ち放たれ――射線上に存在した無数のGNジェガンのパイロット達は即座に沸騰・破裂して即死し、機体すら欠片も残らず爆散し――射線上に存在した小型・中型ELSを纏めて葬り去り、正体不明の防御フィールドを突き抜け、未知の異星文明圏の超兵器に直撃、更にはそのまま超弩級ELSを穿ち貫いて完全貫通し――僅か数秒足らずで復元、チャージ完了した未知の異星文明圏の超兵器がネオ・ジオングに発射された。
『――!』
その超兵器の破壊規模が対星級、背後の『アルティメット・ガンダム』を穿ち貫いて――遥か後方の地球すら一撃で葬る過剰殺傷威力だと直感し、12機のDXFビットを眼前に展開。12機のDXFビットの装甲がひび割れ、緑色の結晶体が姿を現し――最後方に位置するネオ・ジオングも合わせて、13枚のサイコ・フィールドのバリアを即座に形成し、未知の超兵器と衝突する。
もはや原理すら不明の対星砲撃によって――花びらが散るように、1枚ずつサイコ・フィールドのバリアが四散していき、遂にはネオ・ジオング本体に辿り着き――機体の細部から崩壊・蒸発しながらもその場に踏ん張り、耐え忍んでいく。
……この攻撃を、回避する事は出来た。12機のDXFビットを使い潰したお陰で出来た猶予で安全圏までの退避は確実に行えた。
だが、『彼』の背には地球があった。それだけで回避するという選択肢は『彼』の中から完全に消え去っていた。
――その地球には、『彼』自身の手で洗脳されて人形となった存在しか残ってないのに。
――守りたかった人間なんて、もう何処にもいないのに。
――かつての誓いさえ、時の果てに摩耗して消え果てて久しいのに。
『――知るかよ。こちとら、もう伊達と酔狂で馬鹿げた『矜持』しか残ってないんだからなァ――!』
――もしも太陽系の外から異星人が攻めてきたら、どうします? 『先輩』。
――そうだな、その時は――『全員』で手を取り合って、皆で守らないとな。『地球』も、『コロニー』も――。
『――俺はいつまで経っても、ロンド・ベル隊の隊員の1人で、『先輩』の僚機なんだよォ――!』
背後の『アルティメット・ガンダム』から数百・数千に及ぶ『ガンダム・ヘッド』がネオ・ジオングの背部に殺到し、融合・接続、自己再生・自己進化・自己増殖の三大理論を備えた『UG細胞』が投与され、ネオ・ジオングを補強し続けて――ネオ・ジオングが消滅して相殺しきれなかった分を『アルティメット・ガンダム』が代わりに受け切って跡形も無く消滅し――青く煌めく『地球』だけは、完全に守り切ってみせたのだった。