Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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113/『魔女』は据え膳を喰らい尽くす

 

 

 

 

 ――時系列は進み、ガンダムファイト本戦。前回勝者であるネオ・香港にて予選を勝ち抜いたガンダムファイター達が覇を競う中。

 

『――ホント、ウォン首相って最悪ですね! 金払いが悪くて不味い飯食わせてくるとか生きている価値ありませんよね、とっとと馬に蹴られて地獄に落ちれば良いのに』

 

 炒飯を口にかき込みながら、その『胡散臭い情報屋』は悪名高きネオ・香港の首相、ウォン・ユンファに対する愚痴を無限に言い続けていた。

 

『食べるか愚痴るか、どっちかにしろ。……それで、俺達の情報を幾らで売った?』

『国家予算4年分を対価に請求したら無事断られましたよ! 物の価値を解ってない小物の小悪党はこれだから度し難い、非常にお買い得な金額だと思うんですがねぇ?』

 

 嘘か真か、どっちも付かずの妄言に対して、ドモン・カッシュはため息を吐いた。

 この『胡散臭い情報屋』とは思った以上に長い付き合いとなったが、未だに『彼』の人となりは不明瞭の一言に尽き、その正体と思惑は相変わらず謎に包まれている。

 『……これってさ、ガンダムファイトに確実に勝利出来るような超重要情報を暗に握っている事でしょ? 大丈夫? 絞めとく?』『やるだけ無駄よ、アレンビー。いつもの事よ……』と、仲良くなった他国のガンダムファイターと相変わらず付き添う幼馴染のメカニックにはこそこそ……いや、『彼』の耳に届くように割と堂々と話し合う。

 

『ご馳走様です、非常に美味しかったです』

『……ウォン首相が用意する高級料理よりも、こんな安飯の方を……?』

『これは個人的な感傷ですが、食事は究極的に栄養摂取以外の意味合いはありませんので、それが美味しい・楽しいと感じるのは共に席する者達の影響かと!』

 

 ドモン・カッシュ一行に対して仮宿を提供しているご老人に対し、『胡散臭い情報屋』は満足そうに両手を合掌した。

 ネオ・スウェーデン代表のガンダムファイター、アレンビー・ビアズリーはジト目で『100%に限りなく近い疑惑の席で?』『いやぁ、針の筵で誠に甘露ですよ!』と面の厚い顔で返す。

 

 

『――ああ、そうそう。ウォンの私邸にはドモンの旦那がかつて倒した2人のガンダムファイターが潜んでましたね。ギアナ高地で撃破したデビルガンダムを回収したのも十中八九、彼の仕業でしょう。……あんな小悪党と組んでいるのは東方先生とて不本意でしょうけど、小物は小物で独自思考で動いているようですね』

 

 

 『彼』が情報屋として厄介な点は、金銭に一切の価値を置かず、独自の思惑と基準でのみ動いている事。そして『彼』から一の情報を引き出している内に百・千以上も抜かれる事に尽きる。

 

『うわ、ウォンは金で買収しようとして失敗したのに此処まで一方的に情報抜いてるのは、流石は凄腕の諜報員って訳?』

『だーかーらー、『自分』はドモンの旦那一筋の情報屋兼一般人ですって。男の子はね、その人柄に惚れ込んだら何処までも一途なんですよ!』

 

 誰も信じてくれない迫真の告白に『すっげー胡散臭い上に既に裏切っているという確信に似た信頼感がっ!』『アレンビーさんも酷いなぁ! レインさんと同じぐらい酷い!』『え? 私も!?』と、和気藹々と騒ぎ立て――いつの間にか、その喧騒に慣れ切ってしまった自分がいる事に、ドモン・カッシュは改めて内心驚く。

 

『――東方不敗は、ウォンとは別の思惑で動いている……?』

 

 様々な重要情報の氾濫で思考が混乱する中、最も心の何処かに突き刺さったのは其処であり――後に、もっと良く考えるべきだったと後悔する事となる。

 

『そうはそうと『アンタ』、ウォンの誘いを断って平気なの?』

『そうですね、アレンビーさん。あの暇人の小物なら様々な嫌がらせを多岐に渡ってしてくるでしょうが、まぁ大丈夫でしょう。どうせこの大会が終わる頃には世界の覇権を失うんですから。――という訳でドモンの旦那、絶対にガンダムファイト優勝して下さいね割りと生命の危機なので!』 

 

 居直って胡散臭い笑顔で命乞いする『彼』に対して、ドモン・カッシュは呆れ顔を浮かべる。

 新宿の時も、ギアナ高地の時もそうだったが、『彼』は修羅場に慣れ切っており、絶体絶命の窮地に陥ってもレインを気遣って無傷で退避させる程度には『余裕』がある。

 東方不敗やシュバルツ・ブルーダーの猛攻もやり流せる、隠している底知らぬ実力は、未だに測り切れず――。

 

『……知らん。『お前』は殺しても死なないだろ』

『いやぁ、流石に殺されたら死ぬ人類ですよー!? 人間やめてるガンダムファイターと一緒にしないでくれません?』

『ちょっと!? 私達を人外扱いしないでくれるぅ!?』

 

 

 

 

「――ええ、ですから『君』にはドモン・カッシュの情報を売って欲しいのです。どんな小さな事でも構いません、報酬は意のままに――」

「前払いで支払えるのなら構いませんよ」

 

 目の前に積み重ねられた豪華絢爛な料理の数々に手すら付けずに、その『情報屋』風情は1枚の紙切れをネオ・香港の首相、ウォン・ユンファの眼下に叩きつける。

 その小切手には、数えるのも億劫なぐらいの0が立ち並んでおり――余りにも法外な請求金額に、ウォンは目元を怒りで歪ませる。

 

「……これは何の間違いですかな?」

「未来の試算ではなく、過去4年間の国家予算の合計にしたのは非常に慈悲深い采配だと思いますよ!」

 

 完全に舐め腐った態度に、一瞬にしてウォンの沸点に到達する。

 

「――舐めているのか? 一介の『情報屋』風情が、思い上がるな。『貴様』一人を消すぐらい、此方は簡単なんだぞ?」

 

 此方が低姿勢で接していれば付け上がる、身の程が解らない『愚者』に対して凄み――目の前の『情報屋』は心底小馬鹿にした表情で嘲笑する。

 

 

「――デビルガンダムの修復具合はどうですかな! パイロットのキョウジ・カッシュが廃人状態で修復が著しく捗ってないようですが。東方先生からデビルガンダムの支配権を奪うには駒が若干以上足りないのでは?」

 

 

 一瞬、『コイツ』が何を言っているのか理解出来ず、理解しても何故知られているのかが全く理解出来ず――。

 

「貴方の研究成果は見させて貰いましたが、デビルガンダムの生体コアに他国のガンダムファイターを選定するのは頭飛んでるんですかね? 最重要部品を外部依存とか余りにも杜撰で計画性の無さは逆に才能がありますよ、やられ役の道化としての」

 

 即座にウォンは念の為に伏せていた『手駒』に、余りにも此方の事情を知りすぎた『彼』の殺害を指示し――。

 

 

「――好奇心は猫を殺す。余計な詮索は身を滅ぼすとは先人達の金言ですねぇ? 一切活かせてないようですが」

 

 

 『彼』が身の程が解らない愚者に対して心底失望し、自分から奈落を覗き込んだ哀れな犠牲者を嘲笑している事に、漸く気づく事となる。

 

 ――もしも、ウォンが東方不敗・マスターアジアを護衛として引き連れていたのならば、今回の事は回避出来ただろうが、最初から裏切る気満々で暗躍していたウォンには酷な話だろう。

 

「ところで『DG細胞』が『精神感応金属』の一種である事はご存知だと思いますが、東方先生の強靭過ぎる精神力によって完全制御されていますが――自慢ですが、その手の悪意の出力は『此方』の方が圧倒的に上でしてね」

 

 「がっ、ぁ、アァアァぁ!?」と狂ったように苦悶する、DG細胞に汚染されているガンダムファイターの2人を尻目に「何せ『私』、元の『UG細胞』の基礎技術も最終発展技術も持ち合わせているので!」と嘲笑いながら見下し、『彼』が指を鳴らした途端に2人のガンダムファイターが完全沈黙し、白目で泡吹いて気絶する。

 

 

「――『観客席』に土足で踏み入るなよ、道化。身の程を弁えて踊れば良かったのにねぇ?」

 

 

 既に『彼』からは胡散臭い笑顔という『仮面』は無くなっており、その素顔を見たウォンは悲鳴を上げる事すら叶わず、恐怖で尻餅する。

 

「君の無能さを鑑みるに、見て見ぬ振りをしろ、という単純な道化芝居も出来ないでしょ? それじゃ選手交代と行こうか。もう少しぐらい難易度上げてもドモン・カッシュは乗り越えられると思うんだよね!」

「ま、待て! 望みは何だ!? 金なら幾らでも出す! いや、私と『君』が組めば東方不敗をも出し抜ける! 私と一緒に――」

 

 その見苦しい命乞いに耳を向ける訳無く、逃げ出す暇を与える訳無く、『彼』の手刀がウォンの身体を穿ち貫き、余りの激痛に絶叫し――即座に痛みを消し去り、自分の中の全てを消し去る無慈悲な肉体及び精神侵食に恐怖する。

 

 ――『彼』が制御下に置くDG細胞による汚染・侵食、デビルガンダムによる宇宙の永久的覇権を狙った小物は『彼』の命令にのみ従う人形に書き換えられ――。

 

「さようなら、哀れで滑稽な道化。こんにちは、惨めで愉快な道化!」

 

 

 

 

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