動画の見出しだけでネタバレ含まれてるのは回避しようがないですね!
新一派
東方不敗
王者之風
全新招式
石破天驚
看招!
血染東方一片紅
――第13回ガンダムファイト、『終』!
「……え? 此処で終わり!? ちょっと待て、まだ何も――!?」
確かに長きに渡る師弟対決の決着は、史上最大にして最強至高のガンダムファイトは、美しくも儚く、何よりも鮮烈に終わった――。
だが、これでは、このままではドモン・カッシュの物語は余りにも救いが無い。全てを失ったまま、空の玉座(ガンダム・ザ・ガンダムの称号)を手に入れたところで何になろうか?
「――あれ? 『母が死んで父が冷凍刑で兄が指名手配されたり』……何処かで聞いた事のあるフレーズ……って、『ヤツ』がスレッタに言ってた『ガンダム』を駆る『主人公』の運命じゃねぇか!?」
……やはり、この物語、前回のもそうだが、ただの空想話として片付けるには余りにも不自然な点が多すぎる。……『アイツ』が決闘で実際に使っていたゴッドガンダムが模していたのは、このドモン・カッシュが振るう流派東方不敗としか思えないし――。
「……まさかと思うが、これは『ヤツ』の実体験……!?」
常識的に考えれば与太話に過ぎないだろうが、『ヤツ』に関しては常識など欠片も当て嵌まらない。既存の定規を捨てて見定めなければ『ヤツ』の実体など永遠に見えて来ない。
有り得ない、という前提を排除して思考するのならば――2つの動画で出てきた異次元の技術系統は――ほぼ確実に『アナハイム・エレクトロニクス』社に存在している。
決闘で使ってきたゴッドガンダムだけでも、このガンダムファイトが行われている『F.C.』宇宙のとんでも基礎技術を全部吸収している証明であるし――考えれば考えるほど、訳が解らなくなる。
「そして姿形は変われど、『アイツ』のように『胡散臭い情報屋』はいるし――」
恐らく実際に暗躍していると思うが、未だに尻尾を掴ませてない飄々さは真の黒幕か裏ボスの風格であり――様々な感想と疑問が無限に湧き出て――仮にこれが単なる空想話だった場合、純度100%のスペーシアンである『ヤツ』の視点から、地球を捨ててガンダムファイトのリングにして荒廃させた視点が出てくるだろうか?
余りにも現実世界に似通った情勢であり、『戦争シェアリング』によって地球を代理戦争の舞台にしている自分達としては、この視点は諸に心にぶっ刺さる。
「……国家の代表による代理戦争……東方先生は血も流さぬ茶番だと仰ったが――」
この宇宙の人々は、自分達が生きる宇宙よりも遥かに理知的で賢明だと、グエルは強く実感する。
例え茶番だと罵られようとも、血は、流れぬ方が良い。
「……ん? おいおい、あんなに堂々と『終』って筆書きしておいて、続きあるじゃねぇか!」
一喜一憂しながら、グエルは視聴し続ける。初めは『MSでプロレスって、どうなの?』と思っていたが、今は完全に意識外に吹っ飛び、夢中で物語の続きを見るのだった。
「――あーれま、見事に黄昏れちゃってますね」
第13回ガンダムファイトが終結し――共に戦い、切磋琢磨したシャッフル同盟のメンバー達の言葉も届かず、そんな木偶の坊と化した彼等をかき分けて『彼』は現れた。
「……『お前』か。……新宿の時、師匠を引き付ける際に挑発として言った、『ガンダムファイトを勝ち抜いた時に見た光景』……『お前』は、師匠の事情を、知っていたのか?」
新宿において東方不敗の手によって絶対的な窮地に陥った時、『彼』から咄嗟に「30秒程度稼ぎます! 遺言は悪党に墓はいらないで!」と割りと死を覚悟して躍り出て――聞く耳持たずに瞬殺しようとした東方不敗・マスターアジアに対し『第12回ガンダムファイトからのファンです! 東方先生が千切っては投げ、勝ち抜いていく姿には感動さえ覚えましたとも! 是非とも――ガンダムファイトを勝ち抜いた際に見た光景の、ご感想をお聞きしたいですね!』と、あの東方不敗を我を忘れさせるほど激昂させ、見事に30秒以上の時間を稼いで血路を切り開いたが――武人として遥か格上で、精神面も超一流の東方不敗を言葉だけでかき乱す事がどれほど驚嘆すべき事態か、あの時のドモン・カッシュは気づけなかった。
「ええ、『私』はガンダムファイトのファンですので。御自身の手で地球を蹂躙して絶望した東方先生の事ならば、実際に見て知ってましたよ。……不器用な人です、一人で背負い込む責任では無かったでしょうに」
らしくない顔をした後、「ドモンの旦那が東方先生を喝破した結論には感動しましたよ? 『赤いアイツ』に百回は聞かせてやりたいですとも!」と別の誰かに対する憎悪を滾らせたが、どうでも良い話だ。
――事の発端は、ネオ・ジャパンの軍人であるウルベ・イシカワと共謀したミカムラ博士、レインの実の父親――が、デビルガンダムと変化する前の『アルティメット・ガンダム』の強奪に乗り出した事であり、その真実を知ったレイン・ミカムラは、ドモンの前から去った。
どうして止めれようか。一体、何を言えば良い? まともな思考すらままならず、ドモン・カッシュは立ち止まっていた。
「さてと、気落ちしている人を奮起させるなんて柄じゃないので、正論で殴りつけますね。――レインさんを手放して良かったのですか? 大切な事なのでもう一度言いますけど、レインさんを何で手放したのです? ちなみに、感情面での情緒を一切考慮せずに実利一辺倒での発言です」
――人の感情的な機微を意図的に無視する『彼』からの言葉が、ドモン・カッシュの思考に疑問を生じさせ、あの『彼』が二度強調するほどの緊急事態である事を自ずと悟る。
「……どういう事だ?」
「はい、これがウォンの研究成果です。彼なりのデビルガンダムの運用法ですね――結論から申し上げると、デビルガンダムに最適な生体コアは男性でなく、生命を育む『女性』の方であり――此度の事件を仕込んだ全ての黒幕であり、貴方からの逆襲を何よりも恐れているネオ・ジャパンの上層部が選ぶ次のデビルガンダムの生体コアが誰なのかは、最早言うまでもありませんよね?」
これを言わせておいてまだ腑抜けた面しようものなら全力でぶん殴ってやろうと思っていた『彼』だが、まぁ絶対に有り得ないなと確信していた。
「――惚れた女がいるなら最後まで手放すな。ガンダムファイトは終わったが、ドモン・カッシュの物語は全然終わってないんだぜ?」
『彼』の知るドモン・カッシュは、愛する人の危機に対し、立ち止まるような男じゃない。
即座にドモンはゴッドガンダムを呼び出して搭乗し、『風雲再起!』という呼び声と共に白馬のモビルホースに跨って騎乗する。
『最後に聞いておくが――お前は一体何者だったんだ?』
随分と懐かしい、最初に出会った時の第一声も似たようなそれであり、『彼』は胡散臭く笑い――されども、長く付き合ってきた者のみ見いだせる、ほんの少しだけの気恥ずかしさを籠めて答えた。
「最初に言ってたでしょ? ドモン・カッシュという男のファンだって」