『――無限に増殖するデビルガンダムコロニーを相手に、全世界のガンダムが地球の存亡を賭けて立ち上がり、国籍・人種の垣根を越えて共闘する激アツ展開なんだけど……裏を返せばガンダムファイトの裏でこれだけの戦力を各国が秘匿所持していたという事なんだけどね?』
この宇宙の情勢は案外終末一歩手前、権力者達が虎視眈々と腹に一物も二物も抱えているのは変わらず――されども、地球に残って全てを見届ける『彼』の顔は非常に穏やかだった。
『後先考えずに打算抜きで全戦力を宇宙に上げるのは良いんだけど、地球上での最終防衛ラインががら空きじゃね? 全くしょうがない奴等だなぁ』
他に人のいないギアナ高地にて、正真正銘、出し惜しみ無くデビルガンダムに立ち向かう『世界ガンダム連合』の活躍を、『彼』は余す事無く感じ取っている。
それでいて、『彼』の心が穏やかなのは、全世界の人間から感受出来る負の感情の少なさが原因である。恐怖・怒り・悲しみなどの負の感情は少々あれども、それを圧倒的に上回る感受出来ない感情の渦が堪らなく嬉しい。――同時に、その暖かな感情を永遠に共有出来ない事が、酷く悲しかった。
『――今回だけの特別サービスですよ? 『世界ガンダム連合』とか銘打たれたからには、『先輩』の名代として参加しない訳にはいきませんからね!』
『彼』は喜々と指先を鳴らし――浄化済みのUG細胞が一機のMSを形成する。
それは『ガンダム』だった。この宇宙の『ガンダム』の定義からは外れているが、白と濃紺のツートンカラーを基調とし、左背面に6基の『放熱板』を背負い、左肩に『青色のLにベルが2つ』、右肩に『一角獣を模した赤文字のAを反転させた∀』のエンブレムを誇らしげに掲げた――。
『――型式番号『RX-0[ν-Re]』ユニコーンガンダム4号機、νリヴァイン。目標を殲滅する!』
――宇宙からデビルガンダムコロニーの触手が地球に降り掛かるも、『とある地点』に誘蛾灯の如く誘導され、地上から一方的に撃滅・殲滅される様を――地球に残った『唯一無二の絶対的守護者』の存在を――宇宙で戦う『世界ガンダム連合』は地球が未だにDG細胞によって汚染されていないという事実と共に見届けたのだった。
宇宙から無限に降り注ぐデビルガンダムコロニーの触手を持てる火力で一方的に殲滅し続けて――数時間の攻防の果て、それが途切れた事で、『世界ガンダム連合』の勝利を知る。
世界から負の感情が一切感受出来なくなり――最高のハッピーエンドに到達出来たという実感、無音の静寂の心地良さにいつまでも浸っていたい気持ちと同時に、『唯一にして最大の汚点』が存在している事実に我慢出来なくなる。
――どの宇宙においても、『自分』の居場所なんて存在しないし、『自分』のような『汚物』など存在しない方が良い。
産まれ落ちた事が既に覆しようのない罪過である以上、最期のケジメは人知れずに、痕跡一つ残さずに終わらせるべきだろう。
幸いにも搭乗する機体の原材料はUG細胞、ナノマシンであり、パイロットを含めて機体ごと分解する事も可能だ。――少しだけ名残惜しいが、この余韻に浸りながら逝く以上のハッピーエンドは存在しないだろう。
『――ゴッドガンダム大勝利、希望の未来へレディ・ゴーッ! ……だったのに、何で俺の処に来てるんですかね? 究極的に蛇足ですよ?』
それなのに、『彼』の予想を遥かに超えた速度で到着した、風雲再起に騎乗したゴッドガンダムに呆れ声を上げる。
……『彼』の予想を超えた要因は、『彼』が暗躍して難易度向上させた試練を乗り越えた事で、ドモン・カッシュの仕上がりが原作以上になったという自業自得の結果であるが――。
『ギアナ高地をハネムーン場所に選んだのでしたら、悪趣味と苦言を呈さざるを得ないですね?』
軽口を叩くものの、事の真相に関しては一切喋る気無く、どの道、真実を話した処で全部『嘘』になるので――。
『――『お前』にガンダムファイトを申し込む!』
……その攻め口は正直予想外だった、と『彼』は笑う。
ゴッドガンダムから降りたレイン・ミカムラと、この場から少し離れる風雲再起の姿を見届けてから――。
『……ふむ、なるほど。実際に申し込まれたのは初めての経験ですね。――良いでしょう』
ビームライフルとハイパー・メガ・バズーカを投げ捨てて、6基のフィン・ファンネルを全パージする。
これらの武装は必要無い。むしろ、邪魔だった。『拳』で語り合うには、これらの不純物は不要である。
『――ガンダムファイトォ!』
『――レディ・ゴー!』
――此処に、第13回ガンダムファイトにおける最後のガンダムファイトが、ギアナ高地にて執り行われるのだった――。