まさか最後の最後に設定衝突があるとは作者の目を持ってしても見抜けなんだ……! まぁ致命的でなく、非常に些細なものなので大丈夫でしょう。強化グエルくんがエアリアルのガンビットを真っ二つに薙ぎ払った時よりはセーフセーフ。
アニメ本編が綺麗に終わって、作者も分解されるパーメット粒子の如く浄化されかかりましたが、この宇宙は最高に不幸な事に『頭アナハイム』がいますので――『彼』の織りなす最高に傍迷惑な大波乱劇をもう少しお付き合い下さいな。
「――は? 『U.C.(宇宙世紀)』の方にロンド・ベル隊!? な、なら、『ヤツ』の言う『宇宙で1番強いパイロット』は!?」
グエルの興奮した顔に対し、ミオリネは「何それ聞いてない!」とむっとしながら嫉妬心を密かに滾らせる。
「……『アイツ』を凌駕し、心の底から尊敬する『先輩』ならいたわ――それに、恐らくは『アイツ』自身と思われる『パイロット』も。……今と外見も、性格も全然違ったけど」
それに対してグエルは「は? 尊敬する『先輩』? 『ヤツ』を超えるキリングマシーンってのは聞いたが、其処まで聞いてねぇ!?」と情報量の違いに人知れず嫉妬する。
互いの情報を照らし合わせて、(当人にとっての)新情報が出る度に百面相を浮かべる2人の顔は何処ぞの『頭アナハイム』が見たら爆笑必至だろう。……それが『自分』の事でなければ、だが――。
「『アナハイム・エレクトロニクス』社が誇る傑作量産機、ジェガンも作中に登場していたけど――あれの型式番号は現実でも作中でも『RGM-89』……νガンダムの型式番号が『RX-93』だったから、これらの数字はロールアウトした年を示しているんだと思う」
「νガンダム? νリヴァインではなく?」とグエルは首を傾げながらも、あのMSの型式番号は『RX-0』だったし、見るからに例外扱いだから特殊例だと割り切り――。
「……宇宙世紀0089年に製造された事を示している? 確かプラント・クエタの時、『ヤツ』が乗っていた後期最終型のジェガンの型式番号が『RGM-148』……!?」
「え? 何それ、聞いてない?!」
額面通りに判断するなら、初期型から60年後の新規技術で製造されたとなるが――。
「型式番号が製造された年を示しているなら、何故ダリルバルデMk-A.Eの型式番号は『A.S-001』なんだ? A.S.122でなければ――いや、そもそも何で『A.S.(アド・ステラ)』と念打っているんだ?」
今までの型式番号の命名法則から考えれば、唐突に『A.S.(年号)』を念押しているのに違和感があり――。
「……『A.S.』におけるMS開発一号機……?」
半信半疑ながらも、ミオリネは仮の結論に辿り着き、グエルも驚愕で目を見開く。
『アナハイム・エレクトロニクス』社が『A.S.』においてMSの新規製造を行っていないのならば、あのダリルバルデMk-A.Eこそが『A.S.』における最初のMS開発事業だったのでは――。
「……後々気づいたんだけど、作中に『パーメット粒子』どころか『パーメット関連の技術』は一切登場していない。多分だけど、グエルが見たのもそうでしょ?」
「まさか――い、いや、確かに一度も出てこなかった……!? 言われてみれば……!」
「『アナハイム・エレクトロニクス』社はパーメット関連の技術に関して宇宙一遅れている企業という『アイツ』の自虐は、恐らくは真実だと思う」
GN粒子やらELSやらUG細胞やら、こっちに無い技術系統は多々見受けられたが、『A.S.』宇宙にとって基礎であり根幹技術の『パーメット関連の技術』は一切登場していなかった事を改めて自覚し「『アイツ』にとっては、ガンダムは『GUND-ARM』ではなく、『GUNDAM』みたいよ?」とミオリネも困惑を強くする。
「常識を遥か彼方の宇宙に放り投げて、結論から先に言う。――『アイツ』は、少なくとも十数回以上、作中に近い『数多の宇宙』を生き抜いている。不世出の天才程度ではなく、人生を十数回以上繰り返してないと有り得ない能力値なのは当然の結果でしょうね」
複数の欠片を繋ぎ合わせて、組み上がってしまった有り得ざる真実を一笑出来れば、どれほど気楽だったか。ミオリネは自分自身を訝しみながら、自身の唇を噛む。
「有り得ないという感情論と常識が思考を邪魔するが――納得している自分が、何処かにいる。そもそも有り得ないというなら、余りにも多方面に渡って万能過ぎる『ヤツ』自身の存在がそうだしな……」
――この結論に対して、一番拒絶反応を起こしているのは一種の感情だ。……グエルが視聴した物語が、『彼』が辿った宇宙の一つだとしたのならば――あんな結末は、余りにも酷で辛すぎる。
グエルが顰めっ面を浮かべる中、ミオリネの方は――何かに気づき、見るからに顔を真っ青にする。
「……どうしたんだ、ミオリネ?」
「あの時は、単なる冗談だと、思っていたのに……! ――『アイツ』、365日、毎日が誕生日だって……!」
自身の感情を整理出来ないのか、ミオリネ自身も戸惑いながら感情を荒らげて叫び――。
「は? そんなの、最低365回生まれ変わっている事になるぞ? ……いや、確率論的には――」
期待値2000回以上、とグエルの思考が即座に計算してしまい、即座に絶句する事となる。
ミオリネとグエル、両者共に処理出来ない感情の渦に翻弄され、暫しの時間、沈黙し――数分足らずか、或いは10分以上後か、2人は意を決して言葉を口にする。
「……俺が見た作中の『ヤツ』らしき人物は、今の『ヤツ』と近しい性格をしていた」
「……私が見た『アイツ』は、性根は同じだけど、胡散臭い仮面なんて被っていなかった。――グエルが見た『宇宙』は比較的後期で、私が見た『宇宙世紀』は比較的初期……?」
――最初は、気楽な気分で視聴していた。引き込まれる世界観に胸を躍らせた事もあった。
だが、これが――『彼』がかつて辿ったであろう異なる宇宙の物語だと自覚した瞬間、『パンドラの箱』を開けている心境に陥った。
「――『アイツ』がどういう意図で、この物語を綴ったのかは、今の私達には理解出来ない。けれども、私達の求める結論は、『アイツ』が綴った物語の先にしか、無いと思う」
「――続きを、見るしか、ないか……」