Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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118/3分で解る(解らない)解説シリーズ

 

 

 

 

「……続きを見るとしたら、宇宙世紀の方か。……途中から見る羽目になるのか」

「解らない点があれば私が説明するわ」

「……いや、それはありがたいんだが――いや、頼む」

 

 少し渋るグエルに対して、言いたい事は解る、とミオリネは敢えて無視する。

 自分の目で直接見たい気持ちは痛いほど解るが、ミオリネとしては同じものを見る時間が勿体無いので強制的に次に進ませて貰う。

 

「えーと、『第二次ネオ・ジオン抗争』の次は、っと……って」

「……『3分で解る、『逆襲のシャア』までの宇宙世紀解説』?」

「この流れ知ってる、絶対3分じゃ語り尽くせないってヤツ!」

 

 かつての何も解らなかった『30秒で解る、連邦の『白い流星』アムロ・レイとジオンの『赤い彗星』シャア・アズナブルの関係!』を思い起こし――この動画時間は明らかに3分じゃ済まなかった。

 

「とりあえず大雑把でも良い、流れ掴みたいから、それから頼む」

「……仕方ないわね」

 

 「絶対後悔するよ?」と半ば確信しながらも、この罠動画を視聴する。

 

『3分で解る、『逆襲のシャア』までの宇宙世紀~! どんどんぱふぱふ~! 結論から言うけど、3分で説明し切れないし、絶対解らないから普通に各種シリーズを見た方が良いよ!』

 

 開幕から『彼』の胡散臭い声がした時点でミオリネは大体察し――グエルは「最初から身も蓋もねぇ!?」「だから言ったでしょ?」とミオリネはジト目になる。

 

『――増えすぎた人類を宇宙に棄民して半世紀、勝ち組『スペーシアン』ならぬ負け組『スペースノイド』のジオン公国が負け組『アーシアン』ならぬ勝ち組『アースノイド』の地球連邦に宣戦布告! 初手コロニー落としなどの『二重の意味』での大虐殺で総人口110億の半数が死滅、人類は自らの行為に恐怖はしたが、殺戮の手は余り止めなかった! 地球に落とす為のコロニーを調達する為に内部に住む同胞を毒ガスで虐殺してから落とすとか、『頭ジオン星人』過ぎて理解出来ないね!』

 

 早口で説明する背景でコロニーが地球に落下して大惨事となり「開幕10秒余りで宇宙世紀の人類の過半数死んでるんだが!? これを『スペーシアン』側がやるんかよ!?」「わー、すっごい懐かしい反応……この程度序の口だから突っ込むだけ無駄よ?」「序の口!? 何その地獄!?」と、ミオリネはグエルの初々しい反応を堪能する。

 

『ミノフスキー粒子環境下における初のMS実戦投入で、開戦当初は有利に進めていたが、地球連邦側がMSを新規開発して戦場に投入した事で形勢逆転、国力差30倍は流石に覆せないわな』

 

 次には宇宙要塞ア・バオア・クーが爆発して「あ、両陣営のトップがコロニーレーザーで消し飛んで泥沼になった最終決戦が全部スキップされた」「どんだけよ!?」と、グエルのキレキレのツッコミにミオリネは内心「うんうん」と頷く。

 

『皆大好き『一年戦争』は劇場版『機動戦士ガンダム』3部作を見てね! あと『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』『機動戦士ガンダム第08MS小隊』『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』『機動戦士ガンダム サンダーボルト』『ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079』とかもあるから、好きなタイミングで『一年戦争』の外伝を履修すれば良いんじゃないかな!』

 

 様々な作品の1シーンが流れていき『この時系列の出来事は勝手に増えるし、縁が極めて薄いから把握し辛いんだよなぁ……』という『彼』の愚痴で締められる。

 

「随分とまぁ沢山あるな? 全部見たのか?」

「いいえ、全部見てないわ。……この時代は前日譚みたいなものだから」

「そうなのか?」

 

 一番の目的である『彼』が登場しない部分など、前日譚扱いで良いだろう。

 

『ジオン公国から傀儡国家ジオン共和国が樹立したのに、ジオン残党のリベンジは続くよ何処までも! 『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』デラーズ紛争の時間じゃー! ジオン残党軍が核兵器を搭載した新型ガンダムを奪取、連邦の観艦式襲撃して核ぶっぱ、最後には恒例行事と化したコロニー落としという地獄の三本立てだよ!』

 

 グエルは自身の痛む頭を押さえながら「……なぁ、俺の感覚がおかしいのか? 何で宇宙世紀の人間、コロニーを落としまくるんだ!?」「……大丈夫よ。グエル、アンタの正常は私が保証するわ。その宇宙世紀の人間の感覚が絶対おかしいから!」と、ミオリネはメチャクチャ共感していた。

 

『――うん、やっぱりテロリストってクソだわ。なぁにがジオンの大義だ頭湧いてるのか? 地球にコロニー落として一般人を大量虐殺している時点で大義もクソもねぇよ。――コロニー落としても海抜10メートルしか上昇しなかった? テメェの故郷のコロニーの水深を10メートル上げて水没させてやれば事の重大さを理解出来るようになるのかな!』

 

 その感覚は、あの常識外れがデフォの『彼』とて同じらしく――やっぱり、この宇宙世紀の民度、途方もなくやばいのでは、という疑惑が確信に変わる。

 

『あ、余分な事に時間取られて尺無いや。グリプス戦役と第一次ネオ・ジオン抗争は『機動戦士Zガンダム』『機動戦士ZZガンダム』を見てね! きっと歓喜の余りに刻の涙を流すよ!』

 

 ミオリネは余りの雑さに驚き「え? ちょ! 2つの戦役を全スキップ!?」「……『ヤツ』らしい雑さだな」とグエルはある意味感心する。

 

『宇宙世紀0093、第二次ネオ・ジオン抗争――劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』は……うん、此処で話す事は何も無い! 『逆襲のシャア』を直接見ろ! 12話バージョンもあるよ!』

 

 一番大事な処さえ強制スキップされたグエルは「結局大本命もそれかよ!?」「……わー『アイツ』らしい雑さ」と、ミオリネは『彼』自身にとっての特別を蔑ろにする訳無いかと逆に納得する。

 

『第二次ネオ・ジオン抗争、通称『シャアの反乱』は、宇宙世紀最大の奇跡である『アクシズ・ショック』と共に幕を閉じた。――全人類が『人の心の光』を目にしたのに、人類は何も変わらなかった。違う観点で注目した愚者は、比較的沢山いたようだけどね?』

 

 かつて、『彼』が絶望と共に零した、とある言葉をミオリネは思い出す。

 

 

『――世界は何も変わらない。人は何も変わらない。地球の重力圏を超えて宇宙まで飛び立ったのに、その本質は原初の頃から何も変わらない。結局は何をしても無意味で無駄で無価値――ほら、息を吸う事さえ億劫になるだろう?』

 

 

 『彼』が何に絶望しているのか、それは未だに解らない。解らない、が、その答えが、その真相が、限りなく近くにある事をミオリネは確信する。

 

『――誰よりも、近くで、その暖かな光を見て、触れたのに……全てを見失って、一歩も前に進めなくなった、余りにも愚かしい『ニュータイプの出来損ない』がいたっけ――』

 

 その独白は、自虐は、何よりも『彼』自身の心を引き裂く呪言であり――。

 

『――『シャアの反乱』から3年、宇宙世紀0096、新たな戦乱の幕が切って落とされる! 開けば宇宙世紀の歴史を一変させるという『ラプラスの箱』を巡るラプラス事変、『機動戦士ガンダムUC』に続く!』

 

 そして現れる新たなガンダムには、2人とも見覚えがあった。いつぞやの決闘で使ってきた、変形して虹色に光り輝くヤバいガンダムであり――。

 

『――あの日から、俺の中の時間は止まったまま、『虹の彼方』に消え去った『彼』の幻影をいつまでも追い縋っている。――認めれば良かったのに。誤魔化さずに受け入れれば良かったのに。未練がましく愚かしい『迷子』は、再び『奇跡』を見届ける事となる――』

 

 

 

 

 

 

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