――宇宙議会連合の戦力査定、完了。全体的な評価を一言で下すなら『数だけのハリボテ』である。
運用するMS『カラゴール』は量産性を最優先させた、簡易的な武装しか持たない低性能量産機であり、ジェガンに微妙に似ているのが何よりも許せない。全機廃棄予定。
ただ、幾ら低性能とは言っても1200機以上保有している為、その点だけは侮れない。ミノフスキー粒子散布環境下においての初見殺しで鴨撃ちにするべきだろう。
また、ラグランジュ1が所有する『L1惑星間レーザー送電システムILTS』という名のコロニーレーザーに関しては存亡に関わる重篤な危険要素の為に既に対応済み。この手の大量殺戮兵器に背中を撃たれるほど萎える事は無い。
――結論、宇宙議会連合及びアーシアン陣営に『ネームド』無し。
非常に珍しい事態だが、『プレイヤー』すらいない陣営など最早考慮の必要性すら皆無。どう雑に処理しても問題無いだろう。『アーシアン』が暴動した際の鎮圧兵器に『企業からの解答』を事前準備。僚機に『天使』を何機か追加すれば無駄な人員を割く手間が省けるだろう。
――巨大要塞『クワイエット・ゼロ』の運用に成功すれば、これらの全ての事前準備は必要無く、宇宙議会連合の戦力を全て自滅させられると試算。
ただし、特記事項が発生。この『クワイエット・ゼロ』の本来の運用方法もとい運用目的は未だに不明瞭だが、これの悪用方法には『アナハイム・エレクトロニクス』社の全リソースを費やす価値が生じる。
私情10割で申し訳ないが、我が社始まって以来の、最大規模の方針転換に迫られる。
現状、『クワイエット・ゼロ』を起動させるにはエアリアルの存在が必要不可欠であるが、パーメットスコア6程度では出力が足りないように見受けられる。最低でも8~10ぐらいは欲しい。
更には肝心要の部分をエアリアルに依存させるのは計画の主導権をプロスペラ・マーキュリーに手渡す事も同然なので、何かしらの対策が至急必要である。
――パーメットの起源に関しては不明瞭な点が多い。こんな疑似サイコフレームじみた存在が天然由来かは非常に疑わしい。人智を超えた超文明圏の遺物の可能性もあるだろう。
太陽系内に偏在する鉱物とされているが、従来の宇宙から考えれば――太陽系外から飛来した未知の元素だろうか。この宇宙では、外宇宙にも数多く分布して存在していると仮定する。
パーメットは、その元素一つ一つが情報を共有する性質を持っている。これによってエアリアルのOSVer.E.S――エリクト・サマヤの生体コードを転移させる事で、データストーム内のネットワークでの生存を可能としている。
生身の肉体から『別の器』に移し替える事例は既に経験済みであり、幸いな事に死亡判定にはならず、『器』が完全破壊されるまで次に行かない為――。
――以上の事を踏まえ、『自分』主導の『クワイエット・ゼロ』の優先度は最上位、全てにおいて優先すべき最終計画となる。
「……なぁ、今度は最初から首相官邸の宇宙ステーションがテロで爆破されてるんだが……」
「いつもの事よ。それにしても、何で今更?」
宇宙世紀の始まりを見届けたグエルは「宇宙世紀元年からこれとか、この世紀呪われてねぇか?」と渋い顔になり、二度目のミオリネは「それこそ今更ね」と返す。
なお、ミオリネの疑問に関しては作中の終盤に判明するので、もう『ラプラスの箱』の正体を見ているなど夢にも思わず――。
「『ヤツ』がエランに使っていたMS――確か、クシャトリヤだったか。最初の2機はともかく、3機目のジェガンはファンネルに対応出来ているな。戦場を支配する『ニュータイプ』という認識が現実の恐怖としてあるだけに、対応戦術も現場単位で練られているか」
「……確かに。ジェガン相手に少し手間取っていた。――『逆襲のシャア』の時代だと『ニュータイプ』専用機相手に何も出来ずに瞬殺されていたのに」
『彼』以外のサイコミュ兵器の運用現場を、グエルは興味津々と眺めており――「ジェガンも見た事の無い型だな? 中期型と特機仕様なのか?」と色々推測する。
ミオリネもまた「時代が進んで、全体で対策が進んだのか、クシャトリヤのパイロットが未熟だったのか、ジェガンのパイロットが熟練兵だったのか――」と頭を悩ませる。
「――あれがユニコーンガンダム……『ヤツ』は平然と乗っていたが、やっぱり常人じゃ乗りこなせない、殺人的な負荷持ちじゃねぇか!」
「――『アイツ』を基準に持ち出すと物差しが根本的に狂うから微妙なんだけど?」
序盤で名無しのテストパイロットが死にそうな負荷に耐えながらも、性能をろくに発揮出来ていない描写を見ながら、グエルとミオリネは好き勝手言う。
それと対比させるが如く――場面が移り変わり、別の試運転の光景となる。其処には、2人も見た事ある、白と濃紺のツートンカラーを基調としたガンダムが宇宙を飛翔しており――。
「――νガンダム」
「――νリヴァイン」
二人が同時に呟き――。
「「は?」」
二人は同時に向き合って「何言ってるんだコイツ?」という顔になるのだった。
『――いやぁ、良くまぁあんな『ゲテモノ』を乗りこなせますねぇ? 人間やめてません?』
『――リミッターを意図的に取っ払って常時『NT-D』発動状態の『パイロット殺し』仕様にしておいて、よくまぁほざく』
胡散臭い笑顔の男から投げ渡された保水パックを無重力下でキャッチし、ヘルメットを投げ捨てて笑み一つ無く不機嫌そうな顔をする『彼』は乱雑に口にする。
『……やっぱり発光しないのか。何故だ? 他の者が乗った状態で『ニュータイプ』を探知すれば強制的に赤く発光するのに――』
――此処にある『ユニコーンガンダム4号機』は、地球連邦の宇宙軍再編計画の一環にして大本命の『UC計画』の意図を完膚無きまでに、徹底的なまでに嘲笑した挙げ句に唾まで吐いている所業の集大成である。
地球連邦肝入りの『ニュータイプ』伝説の終焉を促すプランだというのに、その引導を渡したい――現存する中で最強最悪の『ニュータイプ』筆頭に『技術的特異点』を手渡すなど裏切りどころの話ではない。
……この『4号機』の存在はアナハイム・エレクトロニクス社の中でも『例外』扱いであり、社内の数多の派閥の手を掻い潜り、あの胡散臭い男の手によって秘密裏に製造&徹底的に存在秘匿されている。
『いやいや、そもそもサイコフレームは発光する材質じゃないんですがね? 気軽に未知の現象を起こさないで貰えますかね『ニュータイプ』さん!』
『その『ニュータイプの出来損ない』が乗っているから、性能がろくに発揮されないんだろう?』
『現状でも当初の想定を遥かに凌駕した超性能が発揮されてるんですがね! ――やっぱり、まだまだ先があると?』
その白々しい反応に、『彼』は鼻で笑う。それを自身の感覚で嗅ぎ分けたからこそ、この『頭アナハイム』は秘密裏での製造に乗り出したのだろうに。
『――人為的に『アクシズ・ショック』を起こせるか否かのアプローチが、フル・サイコフレームという狂気の沙汰を実現させたのだろう?』
『――そして『貴方』は、あの『奇跡』が再現性のある、原理解明されていないだけの未知の事象だと直感的に判断した』
――この『ラプラス事変』が終わるまでに、誰もが勘違いしていた事だが、カビが生えて無意味になった『箱』よりも、その『鍵』たる『ユニコーン』タイプの方が遥かに価値のある『特異点』だった。
『ラプラス事変』が始まる前にそれを嗅ぎ分けた存在が『ニュータイプ』でないなど、性質の悪い笑い話過ぎる。
『――確かに現段階においては手詰まり感が否めないですね! ですので、外部からの発想転換が必要ですね!』
遠くない将来に超弩級の厄介事に巻き込まれる事が確定したが、既にある種の熱意を失っている『彼』は諦観と共に受け流す。
もうこの宇宙の行く末がどうなろうと関係無い話であり、ただのテストパイロットとして飼い殺されている『自分』には興味すら湧かない話であり――。
『まぁその話は追々で――新武装のテストしましょう、我が社が誇る唯一の『ニュータイプ』の『テストパイロット』さん!』
タブレットと共に渡された新武装の資料を見た『彼』は、思わず二度見し――。
『……何、その、何?』
『はい、νガンダムのロールアウトの前倒しによって間に合わなかった兵装プランの1つですよ! フィン・ファンネルの火力不足を指摘され――』
『いや、その前提からおかしいだろ!? ファンネルとして破格の火力を持っているフィン・ファンネルが火力不足って、一体どんな戦場を想定してるんだよ!?』
それは、全長だけでνガンダムの全長を超えている、超巨大な砲塔であり――。
『そこでアナハイム・エレクトロニクス社から提案された武装が、ハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーにフィン・ファンネルを組み込んだ兵装『ロングレンジ・フィン・ファンネル』でございます!』
『ばっかじゃねぇの!? いや馬鹿だろこれ!? どうトチ狂ったらそんなイカれた発想に至るんだよこの『頭アナハイム』!?』
全力で抗議する『彼』に対して『頭アナハイム』は『いやぁ、そんなに褒めなくても!』『褒めてねぇよ全力で貶してるんだよっ!』と、蛙の面に水を掛けても意味は無いと言った有様で――。
『全長の延伸によってジェネレーターを更に2基搭載! 本体のジェネレーターとも直結出来るように改造しましたので、高火力のオールレンジ兵装に仕上がってます! いやぁ、手前味噌ですが素晴らしい出来ですね!』
『せめて事前に『テストパイロット』の意見を聞いてくれませんかねぇ!? 企画段階から却下だよこんなゲテモノ複合兵装!?』