Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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120/『魔女』の箒

 

 

 

 

『――ミッションを説明しましょう。依頼主はアナハイム・エレクトロニクス社。目標はユニコーンガンダム1号機の援護です。詳細な作戦プランは『貴方』に全てお任せします。好きに暴れて下さいな』

 

 ……なお、完全な第三勢力であり、此方からの意図的な情報提供は指示が無い限り行わない為、1号機側視点からは正体不明の敵勢力として扱われる模様。

 更には完全に孤立無援、文字通りの『唯一人の軍隊(ワンマンアーミー)』として活動する為、初期条件からして正気の沙汰じゃない依頼である。更に更には――。

 

『――まぁ縛りはあるんですけどね! 『貴方』のユニコーンガンダム4号機は本来存在しない機体です。これの存在露呈は我が派閥にとって致命的な悪影響を齎すので――出力制限を施させて貰います。具体的には『シャアの反乱』当時の『νガンダム』程度ですね!』

 

 あれから3年の歳月が過ぎ去り、当時の最新鋭機体も旧型に型落ちする。量産機と比べればまだまだ高性能だが。

 『νガンダム』とユニコーンタイプの性能差は、他ならぬ『彼』が誰よりも思い知っている事だろう。

 

『……木を隠すなら森の中とは言うが、爆弾の中に『核爆弾』を隠すとか隠蔽している事になるのか?』

『これから『貴方』は全陣営に対して『白い流星の亡霊』として振る舞う事になりますから――案外、誰も気づかないと思いますよ? 『貴方』が機体の出力制限を取っ払って全性能を発揮するような緊急事態にならなければ!』

 

 ――『白い流星の片割れ』が『白い流星の亡霊』として蠢くとか、性質の悪い笑い話でしかない。

 未だにニュータイプ脅威論に支配されている連邦上層部としては笑い話を通り越して単なる恐怖でしかないが――。

 

『――面白い冗談だな。言葉による弁明など意味が無いし、結果で全て答えるとしよう。その上で、是非とも依頼主の口から俺の事前評価を聞きたいのだが?』

 

 これらの数多の制限がある上で、任務遂行が果たして可能なのか、自己評価はともかく、依頼主側からの評価を敢えて聞く。……任務遂行が到底不可能だと判断している依頼主の意向に従う義理など無いし、返答次第では――。

 

 

『――『貴方』は『宇宙で2番目に強いパイロット』ですよ。『1番目』が出て来ない限り、戦場で『貴方』に敵う駒など存在しない』

 

 

 自信満々に断言するその『胡散臭い笑顔』に、『彼』は盛大に舌打ちする。

 普段は平然と土足で人の心を踏み躙る癖に、的確に核地雷だけは回避する様は、逆に惚れ惚れとする。

 

『――最近はネオ・ジオン残党に『赤い彗星の再来』を名乗る『亡霊』風情が幅を利かせているようですから、『伝説(彼等)』を知る先達として、是非ともその称号の重さをご教授して下さいな』

 

 それの噂は『彼』の耳にも当然届いている。――それに対して如何なる感情を抱いているかは、『当人』のみぞ知るで――。

 

『……ふん、その口は随分と調子良く囀るようだ。……ところで、このロングレンジ・フィン・ファンネルなんだが――』

『必須装備ですよ! 貴重な実戦データ、とても楽しみにしてますよ! ああ、今回の依頼の査定要素に装備の状態云々の比重が『と・て・も!』大きいので心に留めておいて下さいね!』

 

 開幕即パージ&雑に扱う事を禁じられた『彼』は思わず『口汚い放送禁止用語』で絶叫する。

 

『クソッタレが! こっちの方が余程縛りプレイじゃねぇか!? 想定する状況設定がそもそも意味不明で使い勝手が最悪の複合兵装としてこれでもかと酷評してやったのに何一つ伝わってねぇ!?』

 

 不本意ながらもロングレンジ・フィン・ファンネルの武装テストを行った身としては、報告書にあらん限りの罵倒と欠点指摘を可能な限り書き込んだのだが、残念ながら『此方』の意図は欠片も受け入れて貰えず――。

 

『人と人が解り合えるようになるのは難しいですねー! 『オールドタイプ』と『ニュータイプ』の埋めようのない断絶が感じられますな!』

『マッドな技術者に正論と理屈が通じねぇという最悪なまでに絶望的な話じゃねぇか!?』

 

 『オールドタイプ』と『ニュータイプ』どころじゃない隔絶を口々に文句垂れるが、『頭アナハイム』には何一つ届いていないようだ。

 

『いやいや、冷静に考えてくださいな? 趣味と実利の何方かを優先するかと言えば、百人中百人が趣味と答えるでしょ?』

『テメェの言う百人は全員『頭アナハイム』なのかよ!? つーか、あのゲテモノ複合兵装の事をさらっと個人的な趣味だと自白したな!?』

 

 ……妥協案として、通常のフィン・ファンネル6基の装備許可も取り付け――これのせいで完全に重量過多状態となり、不本意ながらもロングレンジ・フィン・ファンネルを足りない推進力代わりとして縦横無尽に大活用せざるを得なくなり――本体に装着したままロングレンジ・フィン・ファンネルの推進力をフル活用して殺人的な超機動を行う『白い流星』が再誕し――コクピット内で壮絶に罵倒しながら生命線として死守する事になるとは、今の『彼』は知る由も無い。

 

 

 

 

「……『アイツ』にさ、『頭アナハイム』って罵ったら『史上最上級の侮辱だ! 起訴も辞さない!』って割りとマジキレするの、知ってた?」

「……それは初耳だな。初耳だし、色々混乱してきた……!」

 

 νリヴァインに搭乗している事から、今の面影が全く無い『テストパイロット』が『彼』なのは明白なのだが、面影しかない超胡散臭い『頭アナハイム(初代)』のせいでグエルの脳が盛大にバグる。

 ミオリネとしても凄まじく混乱しており――『頭アナハイム(初代)』に対するお決まりの罵倒文句だったから、『自身』に使われたら全力で拒絶反応を起こすとか、予想外にも程がある。

 

「……なぁ、薄々思っていたんだが、『アイツ』って基本的に『赤色』嫌いだよな?」

「……そうね。多分だけど物凄く嫌いだと思う。『宇宙一の歌馬鹿(唯一無二の例外)』を除いて、赤のパーソナルカラーを採用するなんてまず有り得ないし」

 

 ダリルバルデの色も原色の赤から青に変更するほどだし、何かしらの理由があって然るべきだと考えていたが――。

 

「その原因の九割以上が『赤い彗星』由来だとか、想定外なんだが!? 『ヤツ』がオススメしなかった仮面シリーズ、絶対『赤い彗星』由来だろ!?」

「……あー、『変なヘルメットつき仮面』と、『サングラス』と、『赤い彗星の再来』の?」

「まさにその通りだよこんちくしょう!?」

 

 『赤い彗星』への罵倒文句だけで凄まじい長文となる。幾ら若いとは言え、あの『彼』に此処まで罵倒される個人の存在がもう異次元の領域レベルである。

 

「――宇宙で『2番目』に強いパイロット、それが『ヤツ』の自称で……その意味合いとその言葉の重さを、俺は見誤っていた」

 

 ――『自分』如きを打倒出来ずして、『1番目(アムロ・レイとシャア・アズナブル)』を超えるなど絶対に言わせない。

 『現存する最後の記録保持者(レコードホルダー)』として、『彼』はその存在を示しすぎた。連邦の上層部が空想する『ニュータイプ』の脅威を、性質の悪い現実として――。

 

 

 

 

 

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