Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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123/『魔女』のエンブレムは『∀』

 

 

 

 

「あれれー、どうしたんですかぁ? 不慮の遭遇戦とは言え、仕留め損なうなんてらしくありませんねぇ? ああ、もしかして機体偽装の件、特別に配慮して下さったのですかぁ? いやだなぁ、一度ぐらいはユニコーンタイプとしての本領を発揮して『目撃者を1人残らず殲滅したから何も問題無い』ぐらいはやらかすと思ってましたが――もしかして、出力制限の事すら頭から無くなってました?」

 

 無事帰還した『彼』を出迎えた『頭アナハイム(初代)』は盛大に煽るが、その胡散臭い笑顔の裏で安堵の息を零していたりする。

 『ラプラス事変』において無敵を誇った『彼』だが、『彼』を撃ち落とす機会があったとすれば今回の不慮の遭遇戦に他ならない。

 『彼』視点からは弾数切れで仕留め損なった、だろうが、『頭アナハイム(初代)』視点からは弾数切れで仕留められそうになった、という今回の事変で最も心臓に悪い事態だった。

 

 ――『ラプラス事変』の顛末がどう転ぼうが、『頭アナハイム(初代)』にはどうでも良い些事だった。

 

 何故ならば、『頭アナハイム(初代)』にとっての唯一の敗北条件は『彼』という駒の損失に他ならない。『彼』という奇跡の存在は唯一無二、余りにも代替不能な人材なのだ。

 

「……今回のは俺自身の失態だ。その程度の小言は甘んじて受け入れるとも」

「そうですね。冷静な状況判断が出来ていたのならば、『ゼネラル・レビル』撃退後でも全機撃破ぐらい楽勝だった筈ですし? ――アムロ・レイは如何なる状況下でも作戦における優先順序を間違えなかった。自らの私情を最優先としたシャア・アズナブルとは違って、ね。まだまだ発展の余地が残されているとは喜ばしいですねぇ!」

 

 『彼』に対して、アムロ・レイとシャア・アズナブルに関する事は――解釈違いが起こった時点で――大体の事が地雷になるが、今回の事に関しては『自分』に非があると、ぐっと堪えて押し黙る。

 

「次からは『レスバトル』の勉強も必要では? 的確に相手の急所を突けば相手の冷静さを今回みたいに奪えますよ!」

「……この『頭アナハイム』」

「え? それが『貴方』にとって怒髪天物の罵倒文句なのですか? もうちょっとこう、何とかなりません?」

「うっさい黙れ!」

 

 この程度の語彙力では煽り返す事は出来ないな、と今後の改善点として内心チェックを入れる。

 その結果、『頭アナハイム(初代)』が煽る頻度が増えて『彼』がブチ切れする事態が数多く頻発するのだが、それはまた別の話であり――。

 

「……次は絶対殺す。必ず殺す。死ぬまで殺す。――それはそうと、今回の遭遇戦、どう見る? 『袖付き』とは別派閥だろ、あれ」

「正確な情報は掴めてませんが、ラプラスの『箱』を巡る一連の戦いとは別の動きでしょうね。この『茶番劇』が終わった後も楽しくなりそうですねぇ!」

 

 次の戦端の気配を感じつつも「まぁ『赤い彗星』の『失敗作』と此方に縁があるかは、別の話ですがね――」と、再戦の機会の確約までは出来ないと締める。

 

「――さて、ラプラスの『箱』を巡る旅の最終章を『特等席』で見届けましょうか。……あ、最終決戦に参加出来なくて不満ですか?」

「いいや、『後輩(バナージ・リンクス)』ならやり遂げるさ。最初から『老兵(ニュータイプの出来損ない)』の出る幕じゃない」

 

 全幅の信頼を置いて去る『彼』に――背後で仄かに『虹色』に光るユニコーンガンダム4号機の姿を見て、『頭アナハイム(初代)』は自陣営の完全勝利を確信したのだった。

 

 

 

 

「呼ばれて飛び出てくるとか『ガンダムファイター』じゃないんだから――! 決闘の時もそうだったが、あのシールドファンネル、やっぱり推進力無しで動いてやがる!? そして『星間戦争』にも投入したネオ・ジオング、此処で出てくるか!?」

 

 訪れるは始まりの地、インダストリアル7において『箱』の正体が遂に開示され、『箱』の開示を巡って『赤い彗星の再来』フル・フロンタルとの最終決戦となる――。

 

「……わー、今までのオカルト現象の総決算って感じ。宇宙世紀の人間、良く解らないものを良く解らないまま使いすぎじゃ?」

 

 間違いなく『サイコフレーム』由来の謎技術により、MSの武装だけ自爆させるというオカルト現象を見たミオリネは『エネルギー切れでも稼働したり、金縛りにしたり、超巨大なビームサーベルを発したり、半コロニーレーザー級の砲撃をフィールド張って防いだり、果てには小惑星押し返したり、いつもの事ね!』と宇宙世紀の『ニュータイプ』達が起こすオカルト現象の数々を目にして大分毒された反応をしていた。

 

「――全武装を自爆させられて、っ!? まさか『ビスト神拳』!? ビストって、ビスト財団からかよ!?」

「『ビスト神拳』って何よ!?」

 

 全武装を失ったユニコーンガンダム1号機は素手でネオ・ジオングに殴り掛かり――手刀で装甲抉ったり、露出したケーブルやらパイプを引き千切ったり、何処かで見たようなえげつない攻撃手段を目の当たりにしたグエルは、これが本家本元の『ビスト神拳』なのかと直感する。

 

 更には、常軌を逸した超常的な戦闘が続き――。

 

「え? 時間遡行? 最早何でもありだな!?」

「アクシズ、一年戦争、ラプラス事件――」

 

 イメージ映像であって欲しいが、今までのとんでもっぷりからグエルは一概に否定出来ず、ミオリネからしたら、見覚えのある光景の数々が巡ってくるので、時を遡ったかの描写に逆に納得し――。

 

 

『――これが事の始まりだ。やはり君にも見えるようだな。では、この宇宙の刻の果てまで、共に行こうか、バナージ君』

 

 

 これが『ニュータイプ』同士の交感、『オールドタイプ』には理解出来ない領域の話だと無理矢理納得せざるを得ないのか――。

 

『――え?』

『! 何だ、これは!? 一体何が――!』

 

 その困惑の声は、作中の二人からであり――。

 突如、壮大なスケールで描かれる時間移動の旅が強制的に介入され――1機のMSが、地球を舞う。

 

「え? あのMSは――」

「あれは――」

 

 それはさながら、超巨大な蝶の羽だった。『虹色の奔流』は瞬く間に地表を塗り潰し、人類の文明を悉く分解していく。

 そのMSに、ミオリネとグエルは見覚えがある。この特徴的な『ヒゲ』の『ガンダム』など、一度見たら忘れられないだろう。

 その左肩のエンブレムは、一角獣を模した『A』を反転させたものであり――。

 

 

『――アイムシンカァ、トゥトゥトゥトゥトゥ~』

 

 

 宇宙に響き渡る虚無の歌声は、間違いなく『彼』のものであり――『彼』が終わりにして全てである『∀ガンダム』を駆る意味を、驚愕する2人に見せつける。

 スレッタとグエルが初めて決闘した日、この『∀ガンダム』に乗り込んでいた『彼』が一体何をしようとしていたのか、否応無しに強制的に理解させられる事となる――。

 

 

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