『――これが、こんなものが、『未来』……!?』
宇宙にある筈の大量のコロニーは既に跡形無く消え去っており、人類の文明がただ1機の白いMSによって塗り潰されていく。
人類の歴史の終焉が、此処まで明確な形をもって描かれるとは予想外も甚だしく――。
『いや、違う。これは、引き寄せられた!? ――未知の事象に、干渉されているとでも……!?』
刻の果てまで導いた『赤い彗星の再来』フル・フロンタルさえも想定外の光景に絶句し――ぴたりと、『白いMS』があらゆる物理法則を無視して唐突に停止する。
首だけがぐるりと回転し――その赤く光るツインアイは、時間と次元の壁すら無視して、此方を一方的に観測していた『ユニコーン』と『ネオ・ジオング』を捕捉した。
『――覗き見だけで『さよなら』なんて寂しいなぁ、少し遊んで行けよ』
その『白いMS』は自身の右掌を軽やかに握り込み――それだけで、隔てていた空間がひび割れ、一瞬の内に崩壊し、物理法則の外にある『ユニコーン』と『ネオ・ジオング』と同じ土俵に踏み込んできた。
敵対し、その四肢を拘束していた『ネオ・ジオング』が即座に『ユニコーン』を解放し、その2機が『共通の敵』に向かって並び立つ。
『ニュータイプ』による共感など使うまでもない、無言での共闘という有り得ざる光景が広がり――。
『――あ、『赤い彗星』の『残滓』はいらないや。自主的に自害して退場しないとか気の利かないヤツだなぁ、空気読めよ』
その『白いMS』の姿が消失したと思ったら、真正面から『ネオ・ジオング』を、コアユニットのシナンジュごと真っ二つに両断しており――踊るように背を向けた途端、背後から噴出した『虹色の奔流』が『ネオ・ジオング』を跡形も無く分解し尽くす。
『――は?』
恐らくは、あの『赤い彗星の再来』ですら、自分が殺された事にも気づかなかったぐらいの、余りにも呆気無い瞬殺劇であり――手に握る小型のビームサーベルの刃部分は恐ろしいぐらい細く、一条の線と言わんレベルまで極限圧縮されていた。
『驚く必要ある? 敵の心配をするとか『主人公』様は余裕だね!』
いつの間にか、無手だった筈の左手に奇妙なフォルムのビームライフルが握られており――それが空間転送されただけという、未知の未来技術による武装補充システムだと気づくには余りにも酷な話であり、気づいた処で対処出来ないので無意味とも言える。
『――!?』
そして気軽に連射されるは、一発一発がコロニーレーザー級のビーム射撃攻撃であり――それらを回避出来たのは、あの『白いMS』の『パイロット』が完全に遊んでいるからに他ならない。
『――『白い、MS』……『ガンダム』!?』
『はいはい、おヒゲが特徴的な『ガンダム』ですよ! 割と格好悪いけど見慣れれば味があるというか、物凄く独特だよね? 設計者の『私』が言うのもなんだけど!』
撃ち飽きたコロニーレーザー級のビームライフルを雑に投げ捨て、次々に桁外れの脅威の異次元武装を空間転移させてはトリガーハッピーが如く乱射する。
『ネオ・ジオング』のサイコシャードによって全武装を失っている今、『ユニコーン』は回避する事しか出来ず――。
『その、『エンブレム』は――!』
『お気に入りだよ! 本来は全称記号なんだけど、始まりの『A』を反転させたから『∀(ターンエー)』だよ!』
――あとは、『それでも』と、必至に足掻き続けるしかない……! 唯一、届く声だけを上げて――。
『どうして『貴方』が、宇宙を、地球を、文明を、全て埋葬する!? アムロ・レイと一緒に地球を守った『貴方』が、何故……!』
ぴたりと、攻撃の手が止まる。予め決めていた正解を引いたが故のサービス行為であり、ある意味、史上最悪の精神侵略行為となるが――。
『――君は真の『ニュータイプ』なんだろう? ならば、自らの感性で感じ取ってみると良い。――心せよ、『深淵』を覗けば『深淵』もまた此方を覗いている。ELSの脳量子波による情報過多よりはマシだと思うけど、頑張って正気保ってね!』
手心は加えるけど、カミーユの如く精神崩壊しても責任は取らないという無責任スタイルで、『彼』は気軽に必然的破滅への誘いを行い――。
「――この『私』は『白い流星の片割れ』の最果ての可能性、この多元宇宙を鎖す『名無しの亡霊』、史上最も多くの人命を奪った個人『人類種の天敵』の抜け殻、終焉を謳う『輪廻の徒花』――こんな大サービス、天地開闢以来の快挙だよ? 『最新の友』よ」
その声は、有り得ない事に、動画からではなく、ミオリネとグエルの背後から生じ――ミオリネとグエルの意識が同時に落ちる。
深い深い深い闇に、深淵に、深遠に――。