Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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127/『System-∀99』

 

 

 

 

「――いやぁ、素晴らしい! 既存の技術系統を大きく逸脱した脅威の技術力だね! 動力はおそらく縮退炉2基、装甲材質は自己再生能力持ちのナノスキン装甲、駆動方式はIフィールドを利用した未知の新技術、そして極めて先進的な未知のサイコミュは――」

「話が長いよ『博士』。結論からお願い出来るかな?」

 

 ――それは在りし日の光景、永遠に語られぬ物語。この物語だけは『迷子』も語る事は無い。

 

「『外宇宙から地球圏に流れ着いた未知の人型機動兵器』――外宇宙に旅立った人類が製造した『ニュータイプ』専用MSだね。如何なる経緯で流れ着いたかは宇宙規模の謎だが」

「歴史に埋もれた謎(ロマン)を語るみたいな話よねぇ?」

 

 後に型式番号『Concept-X』、『ターンX』と呼ばれるMSを前に、『博士』と呼ばれた『彼』は興奮混じりに語る。

 『宇宙世紀(U.C.)』と地続きの宇宙でありながら、最初に『彼』が生きた『宇宙世紀』から膨大な歳月が経過しており――そんな途方も無い歳月が経っても、人類は飽きもせず、人類同士で戦争し続けていた。

 

 ――あの時代を生き抜いた全ての人間に言いたい。お前達の人生は全て無駄だったと。あの戦いは、流れた血は、悲劇の数々は、全部が全部、無意味で無価値なものになったと。

 

 人類は何も変わらない。いつまでも馬鹿げた戦争を繰り返し、同じ人類を壊し犯し虐げる事しか出来ない。

 何なのだろう、この醜い汚物は。どうして自分の腐臭に気づけないのだろう。『自分』は『自分』の存在そのものが許容出来なくて、常時『自分』を『自分』の手で殺してやりたいとしか思えないのに。

 

「……外宇宙の人類にとって、このMSはどういう立ち位置だったのかな?」

「断定は出来ないし、推測しか出来ないが、2通りかな。――星間戦争規模に投入された『恒星間決戦兵器』。もしくは、『単なる量産機』かな」

「随分と振れ幅広いね? これが『単なる量産機』に過ぎないって根拠は?」

 

 そんな情勢下で外宇宙から流れ着いた『漂流物』は、まさに劇薬だった。

 外宇宙に存在していると推定された人類の存亡に関わる『桁外れの脅威』に対し、地球圏の人類(支配者層)は恐慌状態となり――彼等は既存の全ての制限を取っ払って、『漂流物(ターンX)』の技術を解析し、『対太陽外勢力殲滅用の恒星間決戦兵器』の製造を『とある企業』に命じた。

 

「これほどの技術力を持つ外宇宙勢力が回収せずに放置したという状況証拠から――回収する余力無く他勢力に滅ぼされたのか、回収するまでも無い、替えの効く量産機だったかの2択かな?」

 

 この『漂流物』を巡って、様々な思惑が交差し、陰謀の糸が多重に張り巡らされる。

 その負の思念を全部感知している『彼』は、この宇宙の結末は歴代でもろくなものにならない事を既に確信しており――最低限、技術解析だけは済ませようと決意している。

 

「――それで、私達、地球圏に残り続けた人類は、これを解析して、これと同等のMSを製造出来るのかな?」

「――その為の『アナハイム・エレクトロニクス』社だよ。……おっと、失礼」

 

 懐から多種多様の錠剤を山程取り出し、無理矢理口に放り込み、強引に飲み干していく。

 その異常な様子を、『彼女』は眉を顰め、ジト目で見ていた。

 

「……ねぇ『博士』、それ合法な薬?」

「どれが合法でどれが非合法かなんて些細な話じゃないかな? この年齢になると薬漬けじゃないと活動出来なくて困る」

 

 比率的にはご禁制の麻薬に近しいものが大半だろう。効果的にはダウナー系の複合であり――体が壊れても『感覚』を鈍らせる目的の為に服薬せざるを得なかった。

 肥大化した『感覚』はもう制御不能で、一日足りとも耐えられない精神負荷を与える。最早自殺寸前まで精神的に追い込まれているが、外宇宙から漂流した新技術は、死に勝る精神負荷を許容してもお釣りが来る興味対象であり――。

 

「余りにも不健康過ぎる! お仕事の話は終わり! まともな食べ物を食べに行きましょう!」

「えー? 栄養摂取なんてサプリメントで全部一括で一瞬で終わらせられるから、不眠不休の解析作業と洒落込もうぜ? こんな極上のご馳走を前にお預けなんて生殺しだよ?」

 

 ぷんぷん、と「私、怒ってます!」と言わんばかりに意思表示する『小動物』相手に、『彼』は文句垂れる。

 命尽きるまで外宇宙の新技術の解析に費やし、後は知った事ねぇと先に退場する予定なのに――。

 

「あら、レディからのお誘いを断るのかしら?」

「……そうだね、断ったらまた絞め落とされそうで怖いから付き合うとするよ。どうやったら善意だけで人の意識を刈り取れるのかな?」

 

 

 

 

「――実はさ、最初から知ってたんだ。君が敵対陣営から差し向けられた『産業スパイ』だって事」

「えー? 素知らぬ顔で接していたの? 知ってたけど性格悪いなぁ」

 

 血と硝煙が入り混じった、懐かしき戦場の匂い。

 倒れ伏す『彼女』は自身の血に染まり切っており――致命傷である事など見るまでもなかった。

 

 ――『ターンX』は敵対勢力に奪取され、そのターンタイプを製造出来る唯一の技術者である『私』を始末するべく、『彼女』が差し向けられ――互いに銃を向けるも、互いに撃てず――。

 

「――君になら、殺されても良いと思っていたんだけど?」

「――うん、知ってた。でもごめん、出来なかった。一生の不覚だなぁ、『君』を愛しちゃうなんて」

 

 『彼女』のお目付け役が『自身』に撃った銃弾を『彼女』自身が庇い、即座にお目付け役を撃ち抜いて今に至る。

 

「……別の出会い方、なら、こうは、ならなかった、のかな……?」

「……また出会えるかは解らないけど――もし、『やり直せる』のなら……」

 

 『彼女』の命の鼓動が止まり、その言葉の続きは、永遠に出せず――。

 また巡り会えたとしても、その時の『君』は今の『君』じゃないし、その時の『自分』は今の『自分』じゃない。

 何度繰り返そうとも、出会いは一期一会だ。連続して記憶を持つ『自分』は、違う『君』と同じ関係性を築けない。最初の出会いを絶対忘れられないから、全て引き摺られるが故に――。

 

 

「――来い、来いッ! 『∀』!」

 

 

 あらゆる障害を排除し、破壊し尽くして――『自身』の最高傑作である『System-∀99』――最後の『ガンダム』の名を叫ぶ。

 その終末機構『月光蝶』にある種のリミッターが存在するのは『誰か』の慈悲だ。人類がどれほど愚かで呪わしくても、やり直せばいつか、手と手を取り合って輝かしい未来に辿り着けると――勿論、唯一度も達成しない錯覚である。

 

 

 

 

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